カルパッチョは喧騒と共に
ブクマ・評価、本当にありがとうございます!
7月2日の午前中時点で、異世界転生・異世界転移ランキング36位でした!!
あまりに嬉しくてスクショを撮ってしまいました! モチベーションが下がったときのお守りにします。
もの凄く励みになりました! 皆様のお陰です。ありがとうございます!
7月9日 追記
少し内容を書き換えました。
ヴィルさんに薪を拾いに行ってもらっている間に、私はさっと身をひるがえしてモーちゃんの車内へと飛び込んだ。できることなら、ご飯が終わるまではモーちゃんのことをバラしたくないんだよね。
きっと大ごとになっちゃうし、大ごとになったらソレに対する説明も必要になるだろうし……そして何より、ご飯の前にトラブルがあったりすると、ご飯が美味しく感じなくなっちゃうし……。
冷蔵庫のチルド室にお礼でもらったラージラペルのお肉を突っ込むついでに、ミルクトラウトの身と、お米少々、塩・コショウ、シンク下にあったオリーブオイルと、昨日出汁を取っておいたお鍋を取り出して、すぐ運び出せるようモーちゃんの入り口付近にまとめておく。外に出してて動物に食べられちゃっても勿体ないしね。
もう一度台所に戻って、まな板と、お皿、フライパン、調理台替わりの折り畳みミニアルミテーブルと折り畳み椅子2脚とを抱えて、こちらは外に。
今日の朝ご飯は、ミルクトラウトのアラ汁リゾット風おじやと、カルパッチョにしたいと思いまする。
お刺身じゃなくてカルパッチョにしたのは、オリーブオイルをプラスすることで『すこしでも腹持ちしますように……!』という切実な願いを込めている。
もちろん、具材代わりにおじやにブチこんで食べてもいいように、両方の味は調整するつもりである。
出汁殻となったアラに残った身も、ほぐして具材にする予定なので、そこまで貧相にはならない……と思いたい。
ちなみに、内臓やら骨やらは、簡単に穴を掘って埋めて始末をしました。
自然に還りますように。ナムナム。
ついでだから、もう少し具材がないか湖の周りでも見てこようっと。野草でも生えてればおつゆに入れてもいいだろうしね。
そんな期待を胸に抱きつつ近くの水場まで来てみると、『野草』はてんこ盛りに生えていた。
『ゼセリ』という野草で、葉っぱをちょっと齧ってみると、セリによく似た味と匂いがする草でした。
ただ、このゼセリ、近くに『毒ゼセリ』という非常に姿形がよく似た毒草が生えているのだ……。
生存戦略さん曰く、植物性神経毒で死ぬ可能性もある……とのこと。
「あぁー。生存戦略さんマジ有能ですわぁ……」
これを同定しながら採取しろって言われても、素人にはまずムリなんじゃね?ってくらいによく似た野草なんだよぅ!
でも、流石は生存戦略さんだ。毒草があっても何ともないぜ!!!
セリの根っこは美味しいから、味の似てるゼセリもきっと美味しかろうと、根っこごと引き抜いて持ってきていたザルにてんこ盛りに集めてみた。
朝ご飯で半分使おう。おじやに入れたら美味しいと思うんだ。
お昼は、これをさっとゆでておひたしにでもしようと思う。シャキシャキしてて香りがよくて、美味しいんじゃないかな。
水辺から帰ってきて下ごしらえを始めていたら、ヴィルさんも帰ってきたようだ。
ザルにてんこ盛られたゼセリの山に『草かぁ……』っていう顔してた。顔文字でいうなら(´・ω・`)かなー。
『お魚もありますから』って言ったら、(゜∀゜)になってた。
でも、次の瞬間には真面目な顔になって、「俺も食べて良いのか?」って聞いてきた。「同行者ですから!」と答えたら、嬉しそうに「ありがとう」って言われた。
……ヴィルさん、わかりやすいなー。
ヴィルさんが大きな流木を薪割りしてくれたので、焚火台で火を熾す。ここら辺には昨日手が出せなかった大きい流木しか残ってなかったから、非常にありがたかったですよ。
ある程度火が安定したら、金網とフライパンを置いて、まずはオリーブオイルでお米を炒めるのだ。
本当はここでニンニクとかショウガとか入れたら美味しいんだろうけど、残念ながら冷蔵庫さんに入っていなかった。日保ちするものだし、街か村の市場かなんかで手に入れられないか探すことにしましょうかね。
で、お米が透き通ってきたら軽く塩・胡椒を加え、ミルクトラウト出汁とアラからむしった身とおしょうゆ少々を入れ、火の弱い所に置き直してゆっくりと火を通していく。
あんまりかき混ぜると粘り気が出るので、底を焦げ付かせないよう、時折かき回すくらいにしておく。
敢えて蓋をしないのは、水分を飛ばしつつ煮込みたいから。
その間に、寝かせておいたミルクトラウトの身を薄切りにして、お皿に並べていく。一匹分ともなると、結構な量ですよ。
ゼセリの柔らかそうな葉っぱの部分を上に盛って、塩・胡椒とオリーブオイルをタラリとかけまわしたら、ミルクトラウトのカルパッチョ風サラダの出来上がりだ!
ヴィルさんの目が、ちらちらとこちらを窺っている。
腹の虫の悲鳴がこちらにまで聞こえてきている所に鑑みると、相当お腹が空いているようだ。
そうこうしているうちにお米が柔らかくなったようなので、刻んだゼセリを加え、さっと火を通したらできあがり!
リゾットって言うには汁気が多いしアルデンテでもないんだけど、お米を炒めて作ってるからリゾット『風』おじやなワケですよ。
待ちきれないという態のヴィルさんに、たっぷりとおじやの入ったドンブリとスプーンを手渡した。
お箸は使えないだろうから、カルパッチョ風サラダにはサーバー用スプーンとフォークを添えてある。
「本日も糧を得られたことに感謝します」
「いただきまーす!」
思い思いの食前の祈りと言葉を紡ぎ、いざ、実食!
よく煮込んだおじやは、汁……というか重湯のようにたっぷりとトロミがついている。
よーく冷まして口に運ぶと、お米とミルクトラウトの優しい甘さが口いっぱいに広がっていく。
使った材料が新鮮だったせいか、魚臭さは全然ない。出汁作りの時点でお酒を使い、味付けにお醤油を使ったせいもあるかなー。
薄味だけど、しっかり出汁が効いているおかげで物足りなさは感じない。
出汁を取った残りのはずなのに、ほぐし身を噛みしめると奥からじんわりと旨味が広がるのにも驚きだ。
火が通ったゼセリは香りマシマシで、ともすれば重たくなりがちなトロミのあるおじやがさっぱり美味しく食べられるし、柔らかいおじやの中ではシャキシャキした触感がことさら美味しく感じられるよぅ!
カルパッチョ風サラダも……うん! こっちも文句なく美味しい!何せ、生臭さとか魚臭さが一切ないんだもん。
口に入れた瞬間、ほのかに甘いミルクトラウトの脂が舌の上にジワ~っと広がり、やや遅れてじんわり融けた粗塩のしょっぱさが後を追う。
鮮やかに香るゼセリと爽やかなオリーブオイルが、全体をさっぱりとまとめあげている。
薄造りにしてるのに食感はけっこうしっかりしていて、噛んだ時にコリコリ……というかコニコニ……というか、歯を押し返すような弾力がある。
ヒラメのお刺身を、もうちょっと強くした感じ……と言えば伝わるだろうか?
あつあつのおじやに入れると簡易シャブシャブ状態になるせいか、半生の身がほろほろと口の中で崩れていく。
「うん。我ながらコレはなかなかなんじゃない、か……な…………えー……」
「…………り、リン……!……その、すまないが、お代わりを貰っても……?」
「大丈夫ですよ! いっぱい食べてください!」
やべーわぁ。我ながら美味しいモン作ったわぁ……とか自画自賛してたら、ヴィルさんが恐る恐るといった様子で空になったドンブリを差し出してきた。
深型タイプの大きめのフライパンで作ったからか、まだたっぷりおじやも残っているし、カルパッチョもまだまだある……二人ともお腹いっぱい食べることはできそうだ。
ヴィルさんと自分のどんぶりにおじやを盛りながら、次第に明るさを増していく空を眺めやった。
今後の生活を思うとどうにも割り切れない気分とは裏腹に、空は高く、青く澄み渡っていた。
閲覧ありがとうございます。
誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。
リゾットがめんどくさかったら、トラウト出汁をベースにつくったお味噌汁をご飯にぶっかけるねこまんまでも美味しいです。
作者宅では、釣りに行った日の定番晩御飯化しております。
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