レッツ クック 冒険ご飯!
もちろんあの後も探索は続いた。隊列は、事前に予定していた前衛にヴィルさんとアリアさん、真ん中に私、後衛にエドさんとセノンさんのまま……ただ、ほんのちょっとだけ歩く速度を遅くしてくれている。
常時発動とはいえ今まであまり意識せずに使っていたスキルを、意識的に使おうと躍起になっている私がいるせいだ。
皆さん本当に人間ができておられる……!
そうして色々と使い倒してみた結果なんだけど…………。
「すっごい、ビミョー……」
「採取・収集の面では非常に優秀だし、自衛にも使えそうだし、良いスキルだと思うぞ、俺は」
「せっかく時間を割いてもらったのに、戦闘面で役に立ちそうにない……っていうのが、もう……!」
索敵・罠感知等の探索面においてはアリアさんの探知可能範囲に遠く及ばず、魔物の詳細鑑別においてもセノンさんの鑑定に『戦闘面では』劣り……本当に良いとこなしだったよね!!
生存戦略さん、対象の名前と一緒に可食・不食の鑑別と毒の有無、習性や食べ方のヒントなんかはわかるんだけど、所持スキルとか弱点とかはわかんないんだよねぇ……。
しかも、スキルを発動させるには私の視界に収まっている必要がある、というね……。
それでも、意識しなくてもアラートが出るようになる程度には生存戦略のスキルを使えるようになったのは僥倖だと思う。
『視界の中』という範囲制限はあるものの、その範囲内であれば私が気付いていなくても敵や罠に反応して自動でアラートが出てくれるのだ。
もちろんアリアさんが教えてくれるだろうが、自分でも敵や罠の位置を把握できるというのは、とても大きい。
それに、食べられる物や金目のものがある時も、自動でアラートが出てくれるようになったのだ!
こちらの世界で生活をする以上、日々の食事の材料を見つけられる、換金できるアイテムを探せる……というのは手放しでありがたいことだ。
「今調理してるこの野草も、生存戦略さんの賜物ですしね!」
「……そう、だな…………野菜だな……」
「あー……動物性たんぱく質も付けますから、ね? ハムとか、卵とか!」
私の手元でザクザクと刻まれている緑の葉っぱを横目に、ヴィルさんがしょんぼりと肩を落とす。
あー……ちなみに今、暴食の卓は、野営車両を顕現させてなお余裕がある小部屋のような場所で休憩中だ。
アリアさんのフロア検索情報によると、このすぐそばに下の階に下りられそうな場所があるとのことで、フロアを移動する前に休憩を……となったわけだ。
ダンジョンの中では昼も夜もわからないけど、突入してから結構時間がたってるし、ちょうどいい頃合いだったかもなぁ。
とりあえず、血の滲まない程度に特訓をした結果手に入れた野草と、先だっての海鮮BBQの際にセノンさんがお土産で買ってきてくれたハムの残り、買い込んできた玉ねぎとトマトでミネストローネ風スープを作る予定である。
生存戦略さんによれば、このキャベツによく似た野草――ハジロカンランは日当たりの悪い所を好む植物で、食味ランクは『美味』。柔らかな食感と甘みが特徴らしい。
確かに、包丁から伝わってくるのはザクザクジャキジャキとした硬質なものではなく、サクサクショクショクとした軽い感触だ。
本来なら5mm程の大きさに刻むのだろうが、そこはアレだ。
しっかりと咀嚼して飲み込む……という行為への満足度も感じて欲しいので、あえて大ぶりに切っていくことにする。
タマネギとトマトも同様の意味を込めてざく切りに。ハムもちょっと大きめの一口大……という程度に刻んでおく。
あとはもう、油で炒めて水を入れて発掘した無限コンソメキューブと買ってきた干しキノコをぶち込んで、弱火でコトコト煮込むだけ!
きっと完璧で幸福な出汁が出てくれることでしょう!
汁物があると、食事の満足度が違うからねぇ……あと、とりあえず水分でお腹も膨らむし、食料の節約に一役買ってくれるのではなかろうか……?
「あとは、ご飯炊いて、ハムエッグ作って……にしようかな? 焼き加減は半熟の予定ですけど、食べられない人いますか?」
「半熟の目玉焼き!? わたし、好き! 大好き!!」
「あのトロォっとした黄身がたまんないよねぇ!」
真っ先に反応したのは、車内の収納庫に買ってきていた毛布や上掛けを収納してくれていたエドアリ夫婦。
期待に瞳を輝かせてこちらを振り返ったアリアさんのお尻に、ブンブン振られている尻尾が見えるのは私の気のせいだろうか……??
そんなアリアさんをにまーっと笑み崩れながら見つめる、通常運転のエドさん。
あぁー……りあじゅううらやまけしからんですぞー(棒
「願わくば、ハムの量は多めだと嬉しいですねぇ」
「ハムエッグ、か……卵とハムだけなのに、妙に美味いよな、アレ」
「ふむ……それじゃあ、全員半熟でいいですね。ご飯が炊けたら、すぐ食べられるようにしておきます!」
念のため、と外を見てきてくれたセノンさんが戻りがてら微笑めば、ぎゅうぎゅうと鳴る胃の辺りを押さえたヴィルさんがしみじみと呟いた。
……この分だとみんないっぱい食べるだろうし、ご飯は多めに炊いておこう……。
あとは生トマトとハジロカンランの千切りをご飯に乗せて、嵩増しをしつつ丼に仕立てよう……!
それと、ご飯が炊けるまでの間に、次の食事に使えるよう粉もの系の生地を作って寝かせておこうかな。
とりあえず、お米を研ぐところから始めようか……!
並列思考のスキルにでも目覚めたか……と錯覚する程に、あちらこちらに繋ぎ変わる思考回路をどうにか制御しつつ、まずはルーチンとなりかけた米研ぎの作業に没頭することにした。
閲覧ありがとうございます。
誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。
ダンジョン話、書いていてとても楽しいです! アレコレ書きたくなりますねぇ!
そういえば、ダンジョン話を書く前にお遊びで振ってみたダイス、めちゃくちゃ捗りました!!+゜*。:゜+(人*´∀`)+゜:。*゜+
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