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スキルを使いこなすには……


 ヴィルさんから受け取ったドロップ品を、顕現させた野営車両(モーターハウス)にとりあえず入れておく。探索は身軽な方が良いからねぇ……。



「ん……?? ……警告……?」


「どうした、リン?」


「あ、ヴィルさん。いや……あそこ、何だろうと思って……」



 視界の端で未だに蠢く警告アラートを眺めていると、怪訝そうな顔をしたヴィルさんに肩を叩かれた。

 報・連・相というほどのことでもないんだけど、気になることは気になるので、声をかけてもらったのをいいことにここぞとばかりにその場所を指さしてみる。

 平ら、って言われれば平らかなー……っていうレベルではあるけれど、デコボコしている周囲と比べて明らかにツルンとしてる所だ。


 

「……あれね、罠」


「アリアさん! え、あれ、罠なんですか?」


「ん。接地タイプ、の、ヤツ。(こういうの)は、斥候(わたし)に聞けば、いいよ!」


「ぐぇっ! あ、ありあ、さ……いき……息、できな……!!!」


「お、おい、アリア! リンが死にかけてるぞ!!」



 二人で首を捻っていると、ヴィルさんの背後からアリアさんがひょっこりと顔を出した。薄青の瞳が、薄闇の中でキラキラと光っている。

 流石斥候というべきか……目にも止まらぬ素早さで接近されたと思った次の瞬間には、例のけしからんお胸の中でぎゅうぎゅう抱きしめられておりましたよ、ええ!

 凄いんだけどー! 大変けしからすばらしいんだけど―!! さすがにちょっと恥ずかしいですよー!!


 極上の乳で窒息というある意味夢のような原因で死にかけた私の襟首を掴んで、現世に引き戻してくれたはヴィルさんだった。

 そのままさりげなく背中に庇われるけど、流石にそこまでしなくてももうおっぱいで窒息死はしないと思いますよ。

 

 何が不満なのか、ぷくーっとベビーピンクの頬を膨らませたアリアさんが掌の上に糸の塊を作って……それを徐に例の場所へ向けて投げつけた。



「ひょっ!?」



 それが地面に着弾するやいなや、そのままバリンと地面が割れ、糸の塊が地中に飲み込まれていく。

 その穴を塞ぐように穴の中から泥状の流体が湧き上がり、ドロリと溢れたかと思うと瞬く間に固まってしまった。



「ん……落とし穴、タイプ。ソレの周り、何にもないから、見てみてもだいじょぶ」


「なんか……何かが中から出てきてましたけど……」


「ああやって、穴、塞ぐの……。けっこう、いろんなところにある、よ」




 「なにもない」というアリアさんのお墨付きを貰い、恐る恐る近づいてみた。先ほど穴があった辺りを指で突いてみると、硬質な感触が伝わってくる。

 叩いてみると軽く響くような音がするから、中はもう空洞になってるんだろう。

 ……表面が固まると、中の流体は流れて落ちる仕組みなのかな……??


 凄い仕掛けだなぁ……。



「それにしても、よく気付いたな、リン!」


「あー……なんていうか、スキルが反応してくれたので……」


「スキル?」


「基本的に食べられる・食べられないを教えてくれるスキルだと思ってたんですが……毒草とか食べちゃいけない物への反応実績はあったんですけど、まさか罠とかにも反応するとは……!」



 毒草も罠も、『命を脅かす危険があるもの』としてアラートが反応するのかな?

 ……だとすると、上手く使えば斥候(アリアさん)の探索系スキルと併用することで、探索時のリスクを下げることができるのでは……!?


 そんなことを考えていると、こちらを見下ろしてくるヴィルさんと目が合った。

 ……チクショウ! 高身長羨ましいとか思ってないからな!! チクショウ!! 



「……どうやら、リン自身も完全にスキルを使いこなしている、というわけではなさそうだな」


「だと、思います。今の感じだと、まだやれそうなことがある気がします」


「それなら、このダンジョンにいるうちに少しずつスキルを使ってみればいいんじゃないか? どうせ長丁場になるだろうし、スキルの概要がわかれば使いこなすのも楽になるんじゃないか?」


「そうですねぇ。今までは使ってみようと思っても、なかなか使えてなかったですけど……今は周囲全部が実戦の場、みたいな感じですもんね!」



 『生存を脅かすもの』として罠が感知できたと仮定すれば、逆に宝箱とか価値があるアイテムに関しても今後の生活に役立つもの……つまりは『生存の助けになるもの』として感知できないかなー……と、思わないでもない。

 いずれにせよ、実践あるのみ、か!



「ま、あんまり無理はするなよ? 俺たちがフォローできる状況の時に、使ってみればいいさ」


「ありがとうございます! お役に立てるよう頑張りますね!」


「力まなくて、いいよ。焦ると、足元が、見えなくなっちゃう」


「へっ? う、うわっ!!!」 



 ダンジョンの中で一人、気炎を上げる私の背中を、ヴィルさんの掌が宥めるようにぽんぽん叩く。

 いつでもパーティメンバーへのフォローを忘れないヴィルさんは、本当にリーダーの鑑だし、こんな私を仲間に入れてくれた暴食の卓(うち)のパーティの皆さんはマジで優しくて心が広い。


 ……うん。焦らずに、とは言われたものの、色々と報いるためにもここはひとつ頑張ってみるべきではなかろうか……?


 そんなことを考えていたツケだろうか……爪先がガツンと何かに当たったと思った次の瞬間に、バランスを失いグラリと視界が反転する。


 あ、コケる……!


 次に襲ってくるのであろう痛みと衝撃に身体を竦めて………………ん……? 痛く、ない?



「あ……ヴィルさん…………すいません」


「足元が見えてない、って言うのは、比喩じゃなくて注意だったわけか」


「ん。段差、あったから」



 ギュッと瞑っていた目を開けると、地面ではなくヴィルさんに抱えられていた。地面に倒れ込む前に、リーダーが止めてくれたようだ。

 おぅふ! そのままヴィルさんの身体を支えにして、なんとか体勢を立て直したけど…………何とも気恥ずかしい空気ですな!!


 シレっというアリアさんの言葉に足元を見れば、確かに結構な段差ができている部分があった。ここに足を引っかけたんだろう。



「………………足元も、気を付けるようにします……」


「いや、だから、無理はするなよ……?」



 様々な方向への羞恥心を押し殺して口を開けば、蚊の鳴くような声しか出なかった。

 それもまた恥ずかしくて俯く私の頭を、ただただヴィルさんが撫でてくれていた……。


閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


主人公には、ダンジョン内部の探索を満喫していただきましょうかね!

もし、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。

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