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ウィンドウショッピングもほどほどに!


 ドーモ。例によってヴィルさんに手を引かれながら、食料品街へ向かっている小鳥遊倫です。

 ちょっとお洋服関係のお店が並ぶ通りを眺めてたんだけど、ちょっとアレだったよね!

 そうだよねぇ……中近世の下着事情……特に女性下着って、コルセットとかドロワーズとか、そういう類がほとんどだよね!

 ついでに服ともなれば布を買って自宅で縫うか、完全オーダーメイドだよね!


 ……まぁ、男性陣が毛布やら上掛けやらを見繕っている間に、アリアさんの紹介で連れてってもらったお店で、何というか何とか私も見知った形状の下着を見つけることができましたよ!


 蜘蛛人さんが営んでいる女性冒険者さん向けのお店で、アリアさんもここのお店がご贔屓なんだそうな。

 ちょっとお値段は張ったけどショーツもブラも買えたので良しとします!

 ついでに、あのシャチから貰った(?)珊瑚珠を首にかけておけるよう、細い革紐も購入しましたよ。せっかく穴が開いてたし、ポケットに入れてるだけじゃなくしそうだったからねぇ……。

 替えの服に関しては、予算の都合もあるしまた今度にしよう!



「こうしてゆっくり眺めてみると、面白い場所ですよね、ココ」


「ああ。そういえば、初めて来たときは夕方だったし、街の中を歩いたのは早朝と夜だけだったものな」


「朝も活気があるけど、昼だともっとすごいでしょ?」


「凄いですねぇ、いろいろと……!」



 ざわざわと耳を震わせる喧騒と、目の前を行き交う見慣れない姿形の人々。

 だって、目の前を二足歩行するトカゲが闊歩しているわ、若草色の柔らかなワンピースを着た獣頭人身の若奥様が鼻歌を歌いながらゆったり歩いているわ、荷馬車を曳くミニ恐竜がいるやらで……。

 なんていうか怖いとか不気味とか負の感情は驚くほど感じなくて、「異世界に来たぜー!」っていう感慨しか湧いてこないんだよねぇ。

 街全体に全体的に活気があるし、街行く人もみんな割と楽し気な印象を受けるせいかな?


 ……まぁ、それを言い出したら、初めて会った時に『鬼ぃさん』たる風貌のヴィルさんに物怖じしなかったのも不思議だとは思うんだけどね。

 アレは異世界ハイ的な何かで、アドレナリンでもドバドバ放出されていたせいだったんだろうか?



「そういえば、防具のお店とかが繊維街には見当たらなかったんですが、どこにあるんですか?」


「ああ。武器・防具や冒険に必要な道具の店は、だいたいがギルドの近くに集まってるな」


「その方が街を行き来しなくていいから便利でしょ?」



 布や皮などの大物を扱う所から、糸や染色・刺繍などの装飾系、リボンやアクセサセリーなどの小物を扱うお店はあったものの、防具やら冒険者の服やらを扱うお店がなかったなー、と思って聞いてみたら、至極まっとうな正論が返ってきた。


 そりゃそうだわな。

 冒険者の人にとってギルドは絶対に行かなきゃいけないところだし、それを思えば行く店が街のあちこちに分散してるより近くにあった方が冒険者の人も楽だし、お店としても集客効果が高いよね。



「それじゃあ、保存食とかはそっちの方ものぞいてみた方が良いのかな?」


「…………いや……たとえ費用が掛かったとしても、材料になる物を買い込んでくれ……!」


「保存食、美味しく……ない……」


「せっかく料理番(あなた)がいるのに、泥を食べる気はしないですねぇ」


「…………泥を食べる……」



 なんだろう……今、ものすごい不吉な単語が聞こえた気がするんですけど……。

 泥を食べるって……そんなディストピア飯じゃあるまいし……スプーンを入れただけでスプーンの先が溶け、ファンブると爆発して次の私が配備されるハメになる灰色のペーストとかじゃないでしょうね??


 ……もの凄ーく聞かなかったことにしたい……!



「……だ、だとすると、小麦粉とかお米とか芋とか豆とか、まずは主食になる日保ちするモノが欲しいですね! あとは燻製肉とかチーズとか卵とかのたんぱく質と、日保ちしそうな野菜としなさそうな野菜も……」


「……野菜、なぁ……」


「頑張って料理をするので、そこは耐えて頂きたい所存ですよ!」


「……ん……まぁ、リンの料理の腕は信頼しているが……実際に美味かったが……」


「そう言っていただけて嬉しいですよ! みんなで美味しく食べられるよう工夫しますね!」



 思いついた品目を指折り挙げていく私の横で、あからさまにヴィルさんのテンションがダダ下がる。

 以前にも説明しましたが、お野菜は積極的に食べて欲しいわけですよ、栄養バランス的な意味で! 栄養バランスが崩れれば、それだけ免疫力にも影響が出ますからね!

 

 がっくりと肩を落とすヴィルさんの背中をぺちぺちと叩いてみると、子供のように唇を尖らせたパーティリーダーがもごもごと言葉を紡ぐ。


 なんだろうこの『美味しかったけど野菜は避けたい』根性は! ちゃんとカロリーも加味しますから、そう嫌がらないでほしいなぁ……。


 そんな思いを込めてひたりとイチゴ色の瞳を見据えてみれば、ふいっと視線を外された。

 

 ……そんなに……そんなにお野菜が嫌ですか!?

 チクショウ! 今日は野菜どっさりミネストローネスープにしてやる!! ベーコンとチーズでコクを出して、コクも旨味もたっぷりで腹持ちもいいようにしてやる!!!

 今度も『美味い』って言わせてやんよ覚悟しろ!!!




「あ、暴食の卓さん! 皆さんお揃いですか?」


「あれー、シーラちゃんだ!」


「ん。こないだ、ぶり」


「ちょうどよかったのです。ちょっとギルドマスターを叱ってあげてほしいです!」



 決意も新たに色々と食材買い求めていると、不意に鈴を転がすような声と共に真っ白な毛玉が視界に入り込んできた。

 青いエプロンドレスを着たコボルトさん……ギルドのベテラン受付嬢・シーラさんだ。こちらを見つけてぽてぽてと近づいてくるたびに、ゆるゆると揺れる尻尾が何とも愛らしい!


 ………………ただなぁ……今日は妙に笑顔に迫力があるんだけど……。何というか、有無を言わせぬ気迫が漂っている気が……??



「……周りの人を不安にさせたくはありませんので、今ここで詳細は話せないのですが、緊急事態です!」



 謎のオーラを漂わせつつ、足音も軽やかに近づいてきたシーラさんが小声で囁いた。

 それを聞いて、ほんの一瞬だけパーティメンバーの身体が強張るが、すぐに平常を保たれる。むやみやたらに市民の不安をあおりたくないというギルド側の思惑を受け止めたんだろう。

 私も、ついさっきまで浮かべていた笑みを浮かべられるよう、必死で表情筋を操作する。


 大丈夫。自分の感情に蓋をして笑みを浮かべるのは慣れている。医療職舐めんな!!



「どうせアレだろう? トーリの野郎がヒマして暴れてるんだろう?」


「そうなのですよ! 書類仕事が嫌だ、って駄々をこねるのです!」



 呆れたようにため息をついてみせたヴィルさんが、シーラさんと共にギルドの方へと足を向けた。アリアさんとエドさん、セノンさんも軽口をたたきつつそれに倣う。


 ……緊急事態って…………聖女召喚と、何か関係があるんだろうか……それとも、まったく関係のない別件……?


 気を抜けば仕事を放棄しそうになる表情筋を叱咤しつつ、私の思考回路はグルグル渦を巻く思考に飲み込まれていくばかりだった。

閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


そろそろストーリーを動かしていこうと思います。

上手く動かせるといいなぁ……!

もし、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。

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