外つ国も 暁来たれば 鳥が啼く
間が空いてしまって申し訳ありませんでした。
何とか時間が取れるようになったので、更新を再開します。
今後ともよろしくお願いいたします。
芋が焼けた後で火の始末をして、みんながまだ残ったお酒を飲みつつ話に花を咲かせているのを何となしに聞いてた…………と思ったんだけど……。
何かが頭をもふもふと触ってくる感触にふと目を開けると、こちらを覗き込んでくるイチゴ色の瞳と目が合った。
慌てて顔を上げれば、周囲は車窓から入り込む朝日で燦々と照らされている。
「……………………寝ていた……だと……!?」
「おはよう、リン。よく寝ていたな」
予期せぬ事態にただただ呆然と呟くしかない私の頭を、柔く笑みを浮かべたヴィルさんの掌がもさもさと撫でてくれていた。
どうやら、寝ていたせいか、私の目を覚ました感触の正体はコレだったようだ。
……それにしても、昨日あれだけ『浴びるように』飲んでいたにもかかわらず、二日酔いだの胃もたれだのをしている様子がまったく見えないヴィルさんは流石というか、何というか……。
「にこにこして話を聞いてるな、と思ったら、いつのまにか寝てたから驚いたぞ。とりあえず、皿やら何やらは洗浄魔法をかけておいた」
「え!? あ、ほんとだ! キレイになってる!! ありがとうございます!!」
「寝言で『洗い物~~』とうわごとみたいに呟いてたもんでな。流石に放置はできなかった」
からからと笑うヴィルさんが示す先を見てみれば、ピカピカ光る程に綺麗に洗い上げられた食器が、調理台の上に積まれていた。
どうやら、夢の中でも洗い物を心配していた私に気圧されたのか、ヴィルさんが昨夜のうちに洗浄魔法をかけていてくれたようだ。
なんだろう。神かな?
料理を作るのは好きだけど、後片付けが苦手な私からすれば、後光が差してるように見えるよ、ヴィルさん!!
妙な姿勢で寝ていたせいか、パキパキとなる背骨をグーっと伸ばす…………と……目に飛び込んできたのはマントやら何やらに包まって、床の上で身体を丸めて寝ているパーティの皆さんの姿……。
「……え……ちょ……何で皆さん床でごろ寝してるんですか!?」
「柔らかいし暖かいし、寝るのにちょうどよさそうだったからな。何かマズかったか?」
「いや、だって、いくらモフモフのラグが敷いてるって言ったって床ですよ、床!?」
「こちらにも洗浄魔法をかけたし、問題はないと思うが? それにしても、ここで寝たら地べたで寝る生活には戻れなくなりそうだ」
……何というか、ヴィルさん曰く『冒険をしていれば野宿なんてザラ』『そもそも仮にコレが床だったとしても、雨風を防げて柔らかい床で眠れるのってサイコー』とのことで……。理屈はわかるんだけど、イマイチ納得しきれないところがあるというか……。
車の床では寝ないのが普通、っていう私の認識があるからかなぁ……?
多分このテーブルを畳んだうえでソファーを伸ばせばベッドになるみたいだし、助手席もフラットになるようだし、早急にベッド設営方法をパーティ内に拡散しないと……!
あとは、お布団とか毛布とかの寝具も備えないとなー……。
ぐぎゅるるるごごごごぎゅるうううう…………
何だかもうすっかり耳に馴染んだ肉体の悲鳴に顔を上げれば、案の定ヴィルさんが憮然とした顔で胃の辺りを押さえていた。
燦々と太陽が輝いている所から推測するに、だいぶ寝過ごしたような感じかな?
「とりあえず、朝ご飯にしましょうか。二日酔いとかは大丈夫ですか?」
「ん? ああ、酒は残ってはいないな。床に転がっている連中もそうだろう」
「了解です。それじゃあ、なるべくたっぷり目に作りますね!」
……そうか。アレだけ飲んでたのに、ヴィルさんも皆さんも、後遺症は一切なしか。改めて思ったけど、凄いな、暴食の卓……。
だとすると、起きてくれば朝ご飯もしっかり食べるだろうし…………何を作りましょうかねぇ??
まだ寝ている面々を起さないよう気を付けて歩きつつ、そっと冷蔵庫を開ければ、まだ手付かずのハムの塊と使い切れなかったトマトとチーズ、飲み忘れらしきワインの瓶がよく冷やされていた。
調理台の上に転がっているのは、ちょっとしんなりとしてしまったバゲットに玉ねぎにジャガイモ。スープだけ残ってしまったブイヤベースもどき……。
卵でもあれば、ハムエッグにするんだけど、あいにくと材料がないのでそれはパス。
うーん……コレだと、手っ取り早いのはパン粥的なメニューかな?
残ったスープを玉ねぎとジャガイモとハムと水で嵩増しして、大きめの角切りにしたバゲットをバターでカリっと焼いたのとチーズを浮かべて食べようか!
早速作業を開始しようとして腕まくりをしたところで、丸まっているアリアさんの寝顔が目に入った。エドさんに寄り添いながら、何ともあどけなく幸せそうな顔で眠っている。
なんか、このまったりゆったりした空気を炊事の音で邪魔するのも気が引けるなぁ……。
「水の音とかで起こしちゃうのはマズい気が……」
「ああ、その辺は気にしなくていいぞ。そろそろ目を覚ましてもいい頃合いだ」
「え? 睡眠時間短くないですか? 大丈夫ですか??」
「そもそも、普段ならリンが起きた気配で目を覚ます程度には気を張ってる連中なんだが……よっぽど気が緩んでるんだろうな、コイツらも」
「ちょっとは仲間として信頼してもらってるんですかねぇ? そう思うと嬉しいです!」
こういうファンタジー小説やら漫画とかでよく見かける冒険者の方々って、割と気配に敏感で誰かがちょっと動いただけでババっと臨戦態勢で飛び起きるイメージだったんだけど、『気配を消す』なんて高等技術なんてとんと持ちえない私が動き回っても一向に皆さんが起きないのはそういうワケなんですかね?
やだメッチャ嬉しいんですけど!!
とりあえず、美味しいご飯作ろう! それでもって、みんなでワイワイ言いながら食べよう!!
信頼貯金をコツコツと積み上げるべく、まずは玉ねぎをやっつけるべくまな板と包丁を手に取った。
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閲覧ありがとうございます。
誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。
ようやく……ようやく更新再開!!!
漫画ばっかり描きすぎて、小説の書き方をうっかり忘れる所でした……!
今後とも頑張っていきますので、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。





