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海老礼賛 美味礼賛

 まだほんのりと熱いエビの頭を毟り取り、片方の手で頭の角の部分を。もう片方の手で歩脚と呼ばれる細い足の部分を摘まんで、ベリっと剥がしてそのまましゃぶるようにしてエビ味噌を堪能する。

 ちょっとお行儀は悪いけど、美味しいミソを逃す手はあるまいて!!


 焼けた殻の香ばしい香りと程よい塩味。水分が抜けて濃厚さを増したエビ味噌は甘くしょっぱく蕩けていき、最後に少しのほろ苦さが舌に残る。

 鼻から抜けるのは海の味を濃縮したような、濃い潮の香りだ。コレを『香り』と取るか『臭い』と取るかは個人差があるだろうが、私はどちらかと言えば『香り』派だ。

 濃厚な旨味に痺れる舌を、カリッと焼けた歩脚をがしゅがしゅと齧ってリセットする。

 殻の出汁と僅かに入っているであろう身の肉汁が滲み出てきて、コレはコレで結構美味しいですよ? えびせん的な味というか、スナック的な感じ??



「うはぁぁぁぁ……エビ味噌が美味しいよぅ……! 香ばしいよぅ……」


 

 心ゆくまでエビ味噌を堪能したところで、身の方も頂きますよ!

 ペリペリと殻を剥くと、多少焼き縮んでいるものの、それでも十分に太い身が現れた。熱を加えすぎると表面がボロボロに荒れてしまうが、この大型車エビは火の通りが絶妙だったようだ。

 赤と白の縞目も鮮やかな身肉はしっとりつやつやとした光沢を放ち、見た目からして食欲をそそる。

 もののついでと尻尾の殻まできれいに剥いて、そのまま一口で食べてしまおうか!

 

 仄かに温かい表面に歯を立てると、パンパンに張った身が抵抗してくる。

 それに負けじと力を加えていけば、薄皮が突然破れたかのようにパツンと弾け、口の中いっぱいに旨味を含んだ肉汁が溢れ出る。

 噛んでも噛んでも弾き返されるようなプリンプリンとした歯応えも、非常に気持ちがいい。



「エビ、美味しいぃぃ……美味しいよぅ……!」


「幸せそうだな、リン」


「食べてる時が、一番幸せですからねぇ」


「わかる。なんというか……食べ物が食道を押し分けて胃に落ちていく感覚がたまらん」


「それな!」



 いつまでも噛んでいたいのに、ついにゴクンと飲み込んでしまった……。ほんのりとした甘みと舌に染みてもなお余る旨味を残して、エビが喉を滑り落ちていく。

 ほけーっと余韻に浸る私の言葉に、ヴィルさんは大きく頷いてくれたし、ヴィルさんの語る感覚も、大いに納得できるところである。

 お前は私(たましいのきょうだい)か!!



「ん! 伊勢ロブスターも美味しい!! これ、次に手に入ったら揚げ物もいいなぁ! 天ぷら!!」


「『てんぷら』とは何ですか、リン」


「え、あ…小麦粉の衣を付けて揚げた料理ですね。フリッターよりも衣が薄くて、サックリしてる感じの……」



 伊勢ロブスターは、大型車エビと比べるとキメが細かい感じの食感だった。

 大型車エビがプリンプリンでブリンブリンだとしたら、こちらはプリプリくらいの歯応え。柔らかいんだけど、だらしない柔らかさじゃなくて、芯がしゃんと通った上での柔らかさというか……。

 甘みは淡く上品で、舌触りはしっとりと滑らかな感じがする。

 だからこそ、素材の味を閉じ込める天ぷらにして、塩であっさり食べても美味しいと思うんだ。


 聞きなれない言葉に興味を引かれたのか、セノンさんが身を乗り出してくるけれど、何だろうこの微妙に心に刺さる語感は……。

 せ、セキリュティクリアランスには違反してないですよ!? 親愛なるコンピューター様に反逆する意思もありませんよ!? やめて! ZAPしないで!!


 ………………という脳内茶番はともかく、また伊勢ロブスターを手に入れる機会はあるんだろうか……。

 なければ夏野菜の天ぷらでも作ろうかな。天ぷら、美味しいもんね。


 ちなみに、エビ味噌はこっちの方が濃厚な感じ。ねっとりと舌の上で蕩けては舌の根に纏わりついてくる。

 エビ味噌を身にまぶして食べてみると、これまた予想通りに美味しかった。


 食べ続けるとクドくなりがちなエビ味噌をさっぱりとした肉汁が中和してくれて、大型車エビと比べるとちょっとあっさりした身肉をコクのあるエビ味噌が補ってくれて……。

 世の中うまいことできてますよねー。


 もちろん、ブイヤベース風スープにつけて食べても美味しかったことをここに記しておく。

 エビとトマトって親友になれると思うんだ。


 大型車エビより身が大きい分、しっかりスープを吸い込むというか、スープがまとわりつくというか……トマトの甘酸っぱさがエビの甘しょっぱさとよく合うんだよねぇ。



「しかしコレは本当に酒に合うな」


「肴としても有能ですよね! 私はお酒飲まないのでよくわかりませんけど……」



 ググっとグラスを干したヴィルさんが、満足そうに笑っている。

 ……お酒、かぁ。飲めないわけじゃないし、飲もうと思えば飲めるんだけど、イマイチ美味しさがわからないというか……。

 揚げ物にビールサイコーとか、ハイ唐イイヨーとか言われても、別にコーラか麦茶でよくね? と思ってしまう子供舌ですよ。


 ……そういえば、果実水も美味しかったけど、なんかコーラとかサイダーとか、しゅわしゅわした炭酸系の甘いのが飲みたいなぁ……。


 ほっこり焼きあがったジャガイモと、トロリと蕩ける玉ねぎを堪能しつつ、頭の片隅で手に入らないであろう飲み物に思いを馳せてしまった……。


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