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捨ててくれてありがとう!

美味しそうなものを、美味しそうに。欲を言えば、人様の食欲を刺激するような文章を書けるようになりたい! という欲望に勝てませんでした。

2000~3000文字程度の短文で、ぽこぽこ更新できるよう目指したいと思います。

 今北産業。


 美少女JKと異世界召喚された

 ゴミスキル・役立たず扱いされた

 追放!←イマココ!


 あ…ありのまま、さっき起こった事を話すぜ!


 釣りキャン遠征からの帰宅途中、突然足元にできた穴みたいのに落っこちたと思ったら、『中世ファンタジーの王宮ですが、何か?』と言わんばかりの場所にいて、真っ黒なローブを着たあやしげなオッサンに聖女召喚がうんにゃんかんにゃん言われて、なんのこっちゃと思ったら隣にいた美少女JKの前に金髪碧眼のイケメンが恭しく跪いていて優雅にエスコートを願い出てるついでに私へは『クズスキルかゴミめ!』みたいな罵声を投げつけ、退出間際に『適当な場所に飛ばして始末しておけ!』とか言ったとたんに私の足元が光り始めて、また気が付いたらなーんもないだだっ広い草原に一人立ち尽くしているという状況なわけですよ。


 ……うん。何を言っているのかわからねーと思うが、私も何が起きたのかさっぱりわからねー。

 誰かに聞きたいこと、知りたいことはいっぱいあるんだけど……ほら、私現在ボッチだから。周りに人っ子一人いないから。

 っていうか、見渡す限りが草原と森と林なんだけど、なんかこう……色々な意味で大丈夫なんだろうか……。


 何の幸運か、一緒に転送(?)されてきたらしい釣り用品とキャンプ用品を満載したカートから折り畳みいすを引っ張り出して、ちょっと状況を整理することにしよう。ちょっと地面が湿ってるけど、キニシナイ!

 この前買ったばかりのメモ帳をバッグから出して、思いつくままの疑問点を書いて書いて書き出していく。

 『聖女召喚』ってナニ?とか、『スキル』とはなんぞや?とか、『適当な場所に飛ばして』の結果がこれ?とか、そういや今思い出したけどあのJK最後にこっち見てフフン!みたいな顔で笑わなかったか!?とか……。



「……ていうか……スキルとか聞くと、TRPGを思い出すわぁ……」



 アウトドア関連では釣りとソロキャンプが好きなんだけど、インドア関連だとTRPGとか読書とかも好きなんだよねぇ。

 ステータスとパーティのバランスによりけりだけど、『接敵して殴る』戦法が取れる職業とそういったスキル構成のキャラを好んで作ってた気がするわ。

 後衛キャラとか、探索者とかが嫌いだったわけじゃないんだけどね。


 ……でも、そうか……TRPGか。



「ステータスとか見えたら、面白そうなんだけどねぇ」



 そうボソリとつぶやいた瞬間。

 フォンッと謎のフリック音と共に、私の目の前に液晶画面のようなものが突然現れた。サイズは15インチくらい。薄く緑に輝く板状の光の上には、何やら文字のようなものが書きつけてある。



 名前:リン タカナシ


 クラス:異邦人(エトランゼ)旅人(トリッパー)


 耐久:18/18 MP:15/15 


 STR(筋力):8 CON(体力):9 POW(精神力):15

 INT(知力):14 LUC(幸運):75


 特殊スキル:【野営車両(モーターハウス)】※野外でのみ使用可能


 スキル:【生存戦略(サバイバル)




 ………………マジかー。ステータスでちゃったかー。


 うん。何ていうか、こうして数値化されてみると、筋力と体力低めだなー。釣り&ソロキャン好きとしてはどうなの、コレ?

 その分精神力とか知力とかが高いのかもしれないけど、なんていうか、コレだと頭でっかちみたいなかんじ?

 モヤシっ子じゃないですかヤダー!


 ……っていうか、そうか。私の特殊スキルとやらは野外でのみ使用可能なのか。

 あー! なるほどねー。だから召喚(あの)時は屋内だから発動しなくて、『ゴミスキル』とか言われたのか。


 なるほどなるほど。良く調べもせずに切り捨てるとか、タヒねばいいのにね!


 何というか、いかにもファンタジー! という情景のステータスボード(仮称)に指を伸ばしてみると、スマホやタブレットでも触っているかのような硬質な感触が指先に伝わってくる。


 ……触れるのか!!!


 そして、何の気なしに触った文字の下に、新たな文字が出現している。



【スキル:【生存戦略(サバイバル)

 常時発動(パッシブ)

 術者が生存するために、自然環境、社会環境に適応できるよう身体面・知識面のサポートを行う。

 また、予期せぬ事態が起きても生存可能なよう、精神面・思考面を整合化し、身体面を強化する】



 ……あ(察し

 そうか。さっきから妙に落ち着いてるのはこのせいか。


 こんな状態になって、泣きわめいたり、混乱したり、絶望して虚脱してもいいはずなのに、いつもとあんまり変わらないのは、この生存戦略(サバイバル)で思考が整合化されてるんだ。

 こんな局面でも、どうにか私を生き延びさせようと……いや、私自身が生き延びようとしてるのか。


 ……あー……何か涙出そう。

 こんなワケわかんないことになってるのに、私は生きたいのか。


 そうかー。生きたいのかー。


 ……それじゃあ、生きなきゃなぁ…。



「それじゃ、この【野営車両(モーターハウス)】っていうのは?」



 滲んだ涙をぎゅっと拭って、ステ窓(ステータスウィンドウ)の『野営車両』という文字を押した途端。

 私の背後に突如ズシッと衝撃が走った。まるで、超重量級の何かが落ちてきたように、大地が揺れる。


 恐る恐る振り向いて、まず目に入ったのは緑の車体と、淡いクリーム色のコンテナキャビン。

 ツートンカラーの車体は、一見するとトラックの荷台部分に居住部分(キャンパーシェル)を搭載した、通称・トラキャンのように見える。

 だが、よく見てみると、トラキャンのように(そう)見えるよう塗り分けられているだけで、実際にはボディと居住部分が一体化された――トラック系の車両に居住部分が架装されている――通称・キャブコンじゃんか!!!

 運転席の上部にバンクベッドがついた、フロントバンクタイプのキャブコンは、『キャンピングカー』と聞いて誰しもが思い浮かべるスタイルではなかろうか?



「えぇー!!! ウソ! ウソでしょ!? イヤイヤ! マジで!? マジで!?!?」



 生存戦略(サバイバル)が発動しているにもかかわらず大興奮してしまったらしく、思わず語彙力が低下しちゃったけど、でもコレ、仕方なくない!?


 いいなー、と思って調べてみたら、本体購入費用も維持費用も莫大すぎて、そっとブラウザを閉じるしかなかった、憧れの逸品なんだよ~~~~~!!

 外に出ながら引き籠ることも可能な、アウトドアもインドアも満喫できる魔法の車だ!!!


 あー、もう! 何この神スキル!!!!


 ニマニマと緩んでいく表情は、きっと見られたものではないだろう。

 年甲斐もなくぴょんぴょん飛び跳ねながら、突如出現したキャンピングカーの周囲をぐるぐると回ってみる。

 運転席の部分と車体の下3分の1は、深いダークグリーンで。キャビン部分は淡いクリームで塗装がなされ、側面のドア部分にアクセントのように蔓草模様が優雅に踊り、ドアの取っ手部分には深紅の薔薇が描かれていた。

 デザイン性もバツグンじゃないですかヤダー!!!


 ガチャリと取っ手を引くと、プシュッとかるい音がして、自動でドアがスライドして…………。


 開いたドアの向こうには、予想もしない世界が広がっていた。



「んんん~~~!?」



 正面には、広いリビングと、窓際に設置された大きなテーブルとソファータイプの椅子が。

 右手側には、大きな冷蔵庫と綺麗で広いシンク、3口のコンロを備えたキッチンが。さらにその奥には、トイレとバスルームを示すマークが見えている。


 え。いみわかんない。ひろさ、おかしくない?


 慌てて外に出て、もう一度車体を眺めてみる。


 ………………うん。どっからどう見ても、ごくごく『普通の』キャブコンのサイズだと思う。どう考えても、あんな広さがあるようには見えないんだけど……。


 再び中に入ると、大きな窓から光が入るため照明をつけなくても明るいリビングと、清潔そうで機能的なキッチンと、見間違いでなければ洗い場を備えた広いお風呂が見える。


 うん。いみわかんない。


 そっとドアを閉じ、今見たことは一回忘れることにする。

 ……ちょっとねー、おばちゃんの理解の範疇を超えたなー。


 ………………そうだね! 運転席見てみようか!


 気を取り直して、運転席に移動してみる。

 車高が高いので乗るのにちょっとコツが要ったけど、それほど難しくなく乗ることができた。


 うん。運転席が高い分、見晴らしがいいよね。

 運転方法はオートマっぽい。MT免許だけど、マニュアル車なんて久しく乗ってないから有難いねー!


 ……マニュアルと言えば、この車の取説的なものはあるのかな?


 ダッシュボードを開けてみると……おお! やっぱりあったぜ! 黒いファイルに取説らしきものが挟まっていた。

 ……えーと……なになに……?


【この度は特殊スキル・野営車両(モーターハウス)をご利用いただき、誠にありがとうございます。

 このスキルは、野外であれば術者の任意で野営車両(モーターハウス)を召喚するスキルです。

 なお、ダンジョン内も『野外』扱いとなりますことをお含みおきください。


 車体は、大気中に含まれる『魔素』と呼ばれるエネルギー物質を取りこむことで、走行時の動力や車内装備の動力といたしますので、エネルギー切れ等を気にせずご使用いただけます。

 車内装備の水道から出る水は、車体内に組み込まれた魔法陣から生成される魔法水となっており、そのまま飲料水としてご利用いただくことができます。


 結界機能を有しており、術者が認めたもの以外の乗車はできません。

 また、車体には隠蔽効果もあるため、術者と乗員以外にその姿を認識できなくなります。


 居住部分は快適にお過ごしいただけるよう、空間魔法を使用して広さと快適性を実現しています。

 心ゆくまで、ごゆっくりとお寛ぎください】


 …………ワー。スゴイネー(棒


 ……何か……考えたら負けのような気がしてきた。『考えるんじゃない! 感じるんだ!!』的な?


 とりあえず、運転席から降りて、再び車体を外から眺めてみる。

 傷一つ、埃一つなく輝く車体。どっしりと車体を支える大きなタイヤ。


 ……なんなんだ、この特殊スキル……。

 聖女召喚とかどうとか言われたけど、聖女(そんなモノ)より、よっぽどこっちの方が良いスキルなんじゃないか!?


 ただただ呆然とするだけだった心に、じわじわと何かがこみあげてくる。

 それは歓喜でもあり、好奇心でもあり、やる気でもあり……漠然とした恐怖でもある。


 ……でも、ここでウジウジしてても何も始まらないし!

 まずは、生存戦略(サバイバル)のスキルと、年甲斐もなく湧き上がる好奇心に身を任せ、冒険の旅に出ることにしよう!

 クヨクヨ悩むのはそれからだ!!!


 足元に置きっぱなしになっていたカートをキャンピングカーの中に入れるべく、私はつる薔薇に飾られたドアを再び開けることにした。

閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


もし、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。

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