戦闘終わって 腰抜けて ドロップ品も落ちている
本文の書き直し作業も、この話でひと段落です。
また続けて更新できるよう頑張ります。
未だにグズグズと鼻を鳴らす私の対面で、ヴィルさんはまだ頭を撫でてくれていた。流石に抱っこ状態からは解放されている。
あのままだと、羞恥で私が死ぬからな!!
「落ち着いたか? リン」
「…………ご迷惑をおがげじまじだ…」
先に立ち上がったヴィルさんの手に掴まるようにして、私もよいしょと立ち上がる。
…………いや、普通なら一人で立てるよ!? 起居動作に不自由はないよ!?
ただ、今はちょっとさっきの衝撃で膝がまだ若干本調子じゃないというか、何というか……。
涙でぐちゃぐちゃになった顔と土で汚れた服を見て、ヴィルさんがもう一回『洗浄』の魔法をかけてくれた。
私の気を紛らわそうとしてかヴィルさんが色々と話してくれたのだが、洗浄の魔法はとても優秀で、身体だけでなく着ている服などの汚れも落としてくれるそうなのだ。
しかも、水洗いをしているわけではないので乾かす必要もない、と。
超べんりぃー。
ちなみに、恐慌状態に陥った際に落としてしまったハールベリーが詰まった袋だが、幸い損害は少なく、下の方が若干潰れた? くらいで済んだ。
……まさかあの状況でも、無意識に食べ物守ろうとしてた、とか……?
どんだけぇー。
さらに言えば、首を落とされて地面に転がった鳥のような3羽の魔物は、それぞれが黒い羽根の山と、嘴と爪と……そして朝方ヴィルさんが渡してくれたラージラペルの肉のように、経木に包まれた丸鳥状態となって地面に落ちていて…………。
「……え? なに、これ……」
「あ、そうか。リンは知らないのか。『魔物』を倒すと、何故かこんな風に『素材』が落ちるんだ。『ドロップ品』と俺たちは呼んでる」
「そざい……どろっぷ……」
「素材はギルドで納品依頼があったりするし、錬金術師なんかは素材自体を材料にして戦闘用アイテムをその場で作ったりするんだ」
驚きのあまり涙も鼻水も枯れ果てた私の目の前丸鳥を持ち上げたヴィルさんが「美味そうだ」と呟いた。
あ。やっぱりお腹空いてるんですね。
いやあ……しかし、素材とかドロップとか、本当にTRPGの世界だなぁ……。よくやってたヤツだと、倒した後に2D6振って剥ぎ取り判定する奴だったんだよね。
……まぁ、私の場合、キャラ作成の時とGMの時は出目が走るんだけど、冒険始めると2D6の期待値が4になる呪いをかけられてたからなぁ…。1足りないとかザラですよ、ZARA。
……あ。ちなみに、地面に落ちていた『素材』とやらは、ボディバッグに複数入れていたコンビニ袋で回収させていただきました。本来であればヴィルさんも収納用の大袋を持ってたらしいのだが、川流れ中に無くなってしまったとのことで……。
モーちゃんの四次元収納スペースに入れておけば場所も取らないだろうし、ね。
肝心の使い道としては、羽根は防具や衣料品の装飾やアクセサリーに加工したりするらしく、わりと需要があるそうなのだ。嘴や爪は、様々な水薬の材料になるらしいですよ。
うむ。使い道を聞いてなおファンタジー…………………………ん?
地面に残った小さな羽根を拾い上げようと屈んだ時に、目の前の絡み合った低木の枝の奥に何かが……?
クワっと目を見開いて――本当は、別にこんなことをする必要もないんだけど、ついノリでやっちゃうんだよねぇ……――生存戦略に集中する。
【産みたて卵(食用:美味)
ファントムファウルの卵。新鮮なものは生食も可能。
やや小さめだが、その分栄養が凝縮されており濃厚な味がする。
殻が硬く、割るにはコツか力が必要】
……産みたて……あ(察し
申し訳ないけど、関係者さんは素材とお肉になってしまったようですし、卵も頂いてしまうことにしますよ。美味しくなるよう頑張りますのでな……ナムナム……。
心の中で手を合わせつつ腕を突っ込んでみれば、鶏卵よりもやや小さめな4つの卵が巣の中に転がっていた。
「ヴィルさん、ヴィルさん! 卵! 卵もありました!! 洗浄してください!!」
「それは重畳……と言いたいが……卵に、洗浄を?」
「はい! 殻の汚れを落としておきたいんで!」
殻が硬いとはいえ、卵は卵である。落とさないよう注意をしながら回収し、ヴィルさんの元へ持っていく。怪訝そうな顔をするヴィルさんが、それでも私の要望通りに卵に洗浄魔法をかけてくれた。
……もちろん、野生環境に置かれていた卵だからホコリとかゴミとかついてそう……っていうのもあるけど、いや、ほら……鳥ってアレじゃん? 出口が総排出腔じゃん? 排泄物も卵も同じ穴から体外に排出されるじゃん??
……ついでと言わんばかりに私の手も洗浄されたみたいだけど、念のため後で手は水で洗っておこう……。
でも、卵が手に入るなんて、ものすごくラッキーじゃない? 冷蔵庫さんには入ってなかった気がするし、献立の幅と夢が広がりんぐですよ!!
さしあたっては、当初の目的通り私たちの腹の虫抑えを作る時に使わせて頂こうかと思いまする。
「ふむ……ベリークッキーでも作ろうかな。余ったら、残りはジャムにして……牛乳があったらマフィンも作れそうだけど……」
「ベリークッキー? マフィン?」
「どちらも焼き菓子ですね。ハールベリーを混ぜて作るつもりなので、甘酸っぱくて美味しいと思いますよ」
「焼き菓子! ソレは楽しみだな!」
「まぁ、ちょっと作るのに時間は頂きますけどねぇ」
こっちに飛ばされてからお菓子食べてないし、ちょっと甘いものが欲しいと思ってたところだったんだよね。
神経が張り詰める生活の潤滑剤として、甘いものは必要だと思うのですよ。
この際摂取カロリーのことは忘れる事にして、甘い誘惑に思いを馳せながら、私は忘れかけていたクッキーの作り方を必死で思い出すことにした……。
閲覧ありがとうございます。
誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。
シリアス先輩はあっという間に退場しました(´・ω・`)
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