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一段落のその前に

今回も虫描写あります。

苦手な方は後書きまで飛ばしていただければ3行あります。

 いったいどのくらいそうしていた事か……。

 さすがに氷の角が丸くなり、ぽたりぽたりと融けた雫が地面を黒く染め始めたころ……ヴィルさんがエドさんに向かって大きく頷いた。

 それを受けたエドさんが手を上げると、目の前にあった氷がきれいさっぱり消えていく。

 溶けた……とかじゃなく、本当に消えちゃったんだって!!

 あんだけの氷が溶けたら地面もぐちゃぐちゃになっちゃうし、ありがたいと言えばありがたいんだけど……裏を返せば、それだけの質量の物体をいったいどこへやったのか……って話でもあって……。

 恐る恐る視線を向けた先では、エドさんがそれはもういい笑顔で微笑んでいる。

 ………………うん! 何も考えないでおこうっと!!


『なか! はやく、なか、はいろ!! いいにおい、する!!』

「あー、もう! まって、ごまみそ! まだナニかがいたらヤバいでしょうが!!」


 前脚でてちてちと地面を叩いて、今にも飛び出していきそうなごまみそを抱えあげると、その隙にアリアさんが巣の中の様子を窺ってくれた。細い銀の糸が巣全体を覆っているところを見るに、振動とかそういったものを感知してるんだろうか??

 ……それにしても、こうして近付いてみるとかなり大きな巣だよね……。一軒家……とまではいかないけど、教室2つ分くらいはあるんじゃない?

 真ん中から木の先端がぴょこんと飛び出してるところを見ると、あそこが巣の中心で核になってるんだろうなぁって感じ。

 しばらく瞑目していたアリアさんの氷色の瞳が、カッと見開かれた。

 それと同時に、巣を覆っていた銀糸もまた、アリアさんの手の中に戻っていく


「中で動いてるのは、とくに、なさそう……!」

「よし……それじゃあ、入るか……」


 アリアさんの報告を受けたヴィルさんが、鞘ごと大剣を振りかぶった。膂力に任せて振り下ろされたソレは、巣の壁にブチ当たると破片を撒き散らしながら壁に大穴を開ける。

 あっという間に開いた穴からエドさんが光の玉を入れてくれたおかげで、中は探索するには十分なくらいの光量になっていた。恐る恐る中を覗けば、板状の巣盤が何枚も並んでいるのがぱっと見でわかるくらいには明るい。

 ……なんて言うか、六角形の巣穴からデロン……て伸びてる白いのは、幼虫……だよね?? 入り口に蓋がされてるところには、成虫になりかけのヤツが入ってるんだろうか?

 あとはねぇ……やっぱり、あちこちに足を縮めた巨大バチの死体が転がってるねぇ。

 なんとも言えない気持ちを噛みしめていると、不意にポンと肩を叩かれた。


「行くぞ、リン」

「あ、はい!」


 巣の内部を指差したヴィルさんに促され、ごまみそを抱いたまま巣の中に足を踏み入れた。大きなハチが作った巨大な巣ってだけあって、巣盤と巣盤の間は何とか歩ける程度の隙間がある。

 それにしても、さっきまで氷漬けにされてたせいか、中はかなり冷えてるなぁ。

 シンと静まり返った巣の中を中心に向かって歩いてるけど、私達の足音しか聞こえ……いや……まだなんか音がする!!

 ブブブ……と、羽を震わせるような音が聞こえるんだけど!

 音がするのは、ズバリ進行方向から……つまり、中心部にはまだ何かいるってことだ!

 進む速度を上げて巣の中を駆けていけば、謎の羽音が強くなるのと同時にすぐに開けた場所に出る。


「やっぱりまだ残ってたか!!」

「でっか!! 女王バチってやつ!?」


 瞬時に私を庇ってくれたヴィルさんの背中から覗き見た向こうには、全体的にちょっと黒ずんではいるものの、それでも盛んに威嚇する巨大なハチの姿があった。

 さっきまでいた巨大バチが柴犬くらいの大きさだとしたら、こっちはそれよりかなり大きい……バーニーズとか、それ以上はあるんじゃなかろうか??

 脅威としか言えない大きさだけど、飛べるほどに身体は動かせないのが救いだなぁ。実際、顎を鳴らして威嚇するしかできないらしく、あっという間にアリアさんの糸の餌食になってたし……。

 これで、一件落着……とも思ったんだけど……。

 断末魔の悲鳴を上げるまでもなくバラバラになった女王バチを見たごまみそが、ついに私の腕の中で大暴れし始めた。


『あれ! アレからいいにおいする!!!』

「あ、こら! ごまみそ!!」


その勢いに抱っこしていられなくて思わず取り落としたんだけど、見事な着地を決めたごまみそは一直線に女王バチの亡骸に突っ込んでいって……。


『み゛ゃーーーーーーーーーー!!!』


 私にすら解析できない鳴き声を上げたごまみその前足が、ハチの腹部を一閃する。飛び散る体液と共に、何か……光るモノが飛び出してきて私の足元まで転がってきた。

 私の握り拳よりも一回りくらいは大きいそれは、深く澄んだ青い石のようなものだった。周囲に浮かぶ魔法の灯りの光をキラリと反射している。

 ハチの体液もベットリついてるけど、それを厭うより先に手が動いていた。 だって、目の色を変えたごまみそが、コレを狙って突っ込んでくるんだもん!!

 ごまみそが飛びつくより早く、足元のナニかを掴み取り、そのまま頭の上に掲げて距離を取る。

 足元のごまみそが太長い尻尾をビタビタ地面に打ち付けて抗議するけど、その体勢は絶対に崩さないことにした。


『朕の! それ、朕のー!!』

「あー、もう! コレは朕のじゃないですー! パーティの共有物ですー!」

『やぁぁ! それ、いいにおいするもん! おいしいやつー!』


 ごまみそが駄々をこねてるけど、本気になれば私の頭に飛び乗ってこの石を掻っ攫うことだってできるだろうに……。「朕の!」と主張はするものの、私が先に取ったから我慢してあげてる……って感じがするなぁ。早いモノ勝ち、的な??

 ……でも、どうやら青い石に反応したのはごまみそだけじゃなかったみたいだ。

 私が掲げる石を見て、ヴィルさんとセノンさんがさっと顔色を変えた。二人の顔色に気付いたエドさんとアリアさんもこっちを見て……ぎゅっと眉間にしわを寄せている。

 …………え……な、なんだろう……大団円の前に、また何か問題が……!?

 つられて目を白黒させる私の足元で、みーにゃーと鳴くごまみそだけがいつもと変わらない日常を繋ぎとめていた。

以下、今回の内容を三行で


巣を凍らせて巨大バチ駆除

女王バチが生き残ってたけど撃退

謎の石が転がり出てきたんだけど…

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