超危険生物駆除作戦! 潜入した森の奥に、巨大バチの巣を見た――!
あの後、ヴィルさんがごまみそに洗浄魔法をかけてくれたので、私とごまみその抱っこ戦争はどうにかこうにか終戦にこぎつけた。
ご満悦な様子で私に抱かれたごまみその背を撫でながら、アリアさんの先導で問題のハチの巣があるところへと向かっている、わけなんだけど……。
…………うん、聞こえるんだよ。ハチの羽音がさぁ! ハチって、夜は巣で寝てるもんじゃないの!?
無言で「静かに」「身体を低くして」とハンドサインを出してきたアリアさんに従って、周りの茂みに隠れるように身体を屈める。
――――……うわぁ……なに、アレ……?
その巣を一目見た時に、そんな言葉が思わず口に出そうになった。
なんかね、めちゃくちゃデカイスズメバチの巣が、いくつもくっついて凶悪化かつ巨大化した感じ、って言って伝わる?
そんな巣の周囲を、あの柴犬サイズのハチが何匹もぶんぶん飛んでるんだよ!
半端ないスリルと躍動感! 全米も震撼した上で大号泣モンだよ、こんなの!!
……なにかの本で身体がでかくなればなるほど生産される熱が増える……って読んだことがあるし。一般的に気温が下がって活動能力が低下するであろう夜になっても動き回ってるのは、生産された熱の量が半端ないせい……とかかな?
それと、周囲を巨大化したジャイアントバットが飛び交って、はぐれバチを掻っ攫って食べてるから、超警戒態勢に入ってるってのもあるんだろうな。
………………え、待って……! その厳戒態勢のハチの巣を、これからどうこうしようって私達思ってるわけなんですけど!?
「え……コレ、素直に突っ込んでどうにかなりますかね……?」
「いや……アレを直接攻撃するのは、さすがに……」
ヴィルさんに近寄って小声で尋ねてみれば、私と同じように顔を顰めたヴィルさんが、苦渋に満ちた顔でそっと頭を横に振った。
ですよねぇぇ! あれは対策立てなきゃ無理な部類だもん!
……で、そしたらどんな対策が? ってなるわけで……。
「……アリアさんの糸で飛んでるハチを獲ってもらう……?」
「ん! 糸で、網作れば……イケる! ただ、後続に、襲ってこられたら、糸、足りなくなるし……いろいろ難しい……」
「あぁぁああぁあ……そっか……巣の方に後詰がいっぱいいるわけですもんねぇ……!」
そっとアリアさんの方を見た私に向かって、ドヤッと胸を張ったアリアさんが、次の瞬間しょぼんと肩と眉を落とす。
いやいやいや! 一匹攫ってこれたからって、この作戦が通用すると思った私の方が浅はかでしたから! そんながっくりしないでぇぇぇ……!!
確かに、どんだけ増援が来るかどうかわかんない相手に立ちまわるっていうのは、確かに難しいですよね! すみません!
……でも、外のハチはどうにかなるみたいだし、あとは巣の中のハチをどうにかすればオッケーってことなのでは……??
でも、巣の中じゃ殺虫剤なんてもんも効きにくいだろうし、そもそも殺虫剤自体が今ここにないんだよなぁ……。
他に有効そうな…………ん? あ、でも、凍らせてヤるタイプの殺虫剤っていうのが、確かあったような……。空飛ぶやつじゃなくて床を這うやつ用だったけども。
…………でも、方向的にはいいような気がする! 凍らせてしまえばよかろうなのでは!?
「もういっそ、巣ごと凍らせちゃうとか……? 昆虫系って寒くなると動けなくなるっぽいですし?」
「巣ごと、か? あの大きなモノを…………いや、いけるか?」
「あのサイズでしょー? 問題なくイケるよー!」
ちらっとヴィルさんに視線を向ければ、そのヴィルさんの視線がエドさんへと移動する。それにつられるようにエドさんの方へと目を向ければ、巣の大きさを目測していたらしいエドさんが、良い笑顔でグッと親指を立ててくれた。
かなりの大きめサイズなのに、あっさり即答できるエドさん、凄いな!
とはいえ、空中を飛び回るハチは万が一にも撃ち漏らしがあるとまずいということで……。アリアさんの糸で作る捕虫網と、効くかどうかは不安ですが、と前置きがあった上でセノンさんの睡眠&麻痺の補助魔法のバックアップ体制で挑むことになりましたよ!
『朕も! 朕もシュッシュッってする! 朕、†ゆうしう†で†れいこく†なハンターだし! ほそくしゃだし!!』
「ほそく……ああ、捕食者! ……まぁ、ハチノコとか美味しいとは聞くけど……イナゴとかも佃煮にするけど……生での踊り食いは、ちょっとやめてもらっても?」
ちなみに私は、飛び交うハチをじーっと見つめつつカカカッッと小刻みに鳴き声を上げるごまみそを押さえておくのがお仕事です! もー、こんなところでクラッキングしないの! バレちゃうじゃないかー!
なお、そんな私達の最終防衛ラインは、小回りの利きにくそうな大剣装備のヴィルさんだということを付け加えておく。
……フライパンとか持ってくればよかったかなぁ……。
ブゥゥゥンと低く鼓膜を震わせるハチの羽音と、飛び交いながらキィキィと甲高い鳴き声を上げるジャイアントバットの耳障りな鳴き声の中、ふとそんなことを思った。