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自称・「かあいい」子が発生させた地雷案件につきまして

今回、虫に関する描写が出てきます。

苦手な方は一気に最後までスクロールしていただければ、と思います。

後書きに今回の話のあらすじをまとめてあります。

 村長さんが教えてくれたねぐらは、村から少し離れた小さな丘のようなところだった。

 なるほど。近付いてみて分かったんだけど、確かに地下に繋がる洞窟のようなものがぽっかりと口を開けている。

 大きさは、野営車両(モーターハウス)がギリギリ通るか通らないかって感じ。


「確かに、この洞窟が出入り口になっているのは間違いないな」


 近くの茂みに身を隠して様子を窺っていれば、大きな影と小さな影が出たり入ったりしているのが確認できる。地上で目視したときに大きいなぁ、と思ってたけど、近くで見ると更にでかい。翼の幅は、ヴィルさんが両手を広げたより大きいんじゃなかろうか?

 キィキィという耳障りな音も、やっぱりこのコウモリの鳴き声だったみたいだ。

 ただ、なんていうか、最初見た時は大きなコウモリがいっぱいいるのかなーって思ったんだけど、小さなコウモリも混じってるなぁ。まぁ、小さいって言っても大判の傘くらいにはデカイんだけどさ。


「ふむ……翼の先端と背中の中央が白いこと、目が赤く鼻が潰れ気味なことから考えると、一番近いのはジャイアントバット、でしょうか」

「それって、こんなに大きくなるもんなんですか?」

「いえ。せいぜいあの個体くらいですね」


 しばらくの間、影を確認していたセノンさんが顔を上げる。ジャイアントバット……いかにも大きそうな名前だなぁ、うん。……と思っていた所に、まさかの情報が投下されるなんて……。

 セノンさんが指さすのは、小さい影の方……大きな傘くらいの個体だ。

 え……ちょっと待って……アレ、結構大きいと思うんだけど、あの大きさがスタンダード、だと……!?

 じゃあ、何であんなデカくなっちゃってるの?


「…………うーん……突然変異による巨大化、でしょうか?」

「と考えるには、変異している個体が少々多いような気がします。外的な要因で巨大化した、という方がまだ説明がつく気がします」

「あぁー。確かに、普通サイズのやつと、大きくなりかけのやつと、大きくなったやつって段階踏んでるもんね」


 首を捻る私たちの傍らにいたエドさんが、いくつかの個体を示しながら話に入ってきた。言われてみれば、確かに様々なサイズの影が空を飛び回っている。

 ふむふむ……サイズに段階があるってことは、突然変異ではなさそうかぁ……。

 セノンさんが言ってた外的要因の方がしっくりくるけど……どんな要因が? 今パッと思いつくのだと、めっちゃ栄養豊富なエサを見つけて、それ食べてるうちに大きくなった、とか……?

 あれ? でも、このジャイアントバットってなに食べるんだろう?


「ちなみに、ジャイアントバットの餌って……?」

「基本的に雑食性で、昆虫や果実を捕食しているようですね」

「でもさぁ、あの巨体を維持するなら、相当たくさん食わなきゃダメでしょー? 」


 茂みの中で頭を突き合わせながら小声で話をしていると、背後でがさりと音がした。瞬時に私を庇いつつ戦闘態勢を整える二人の前に、カシャカシャと乾いた音と共に何かが放り出される。

 二人の足の間からちらりと見えるのは、黄色と黒の縞々になっている大きな腹部と、よーく見慣れた水色の靴。


「……多分、それ、食べてる」

「これは……マッドホーネット!? いや、しかしこのサイズは……」

「まさか、ここら辺一帯の昆虫も巨大化してる、ってこと!?」


 あっさり警戒を解いた二人の背中から顔を出せば、果たしてそこにはアリアさんが立っていた。その足元にあるのは、羽と足がある胸部と大あごを糸でぐるぐる巻きにされた巨大なハチだった。そのサイズたるや、柴犬くらいはありそうなんですけど!

 とはいえ、アリアさんの糸で拘束され、飛ぶことも這うことも噛みつくこともできなくなった哀れなハチは、ただもぞもぞと地面の上でもがくだけだ。

 驚愕に目を見開いたセノンさんとエドさんの様子を見るに、きっとこのハチも規格外の大きさだったんだろうなぁ。

 確かにこのサイズなら、あのコウモリのお腹も満たせそうでは、あるよね。

 ……ってか、エドさんの予想が合ってるとしたら、めちゃくちゃ大問題なのでは!?

 あのコウモリがいくらか捕食してるとはいえ、このサイズのハチとかその他の肉食の虫とかが跋扈してたら、いろんな意味で阿鼻叫喚にしかならないじゃん!


「恐らく、このマッドホーネットだけだろう。周囲を探してみたんだが、他に巨大化した昆虫は見かけなかった」

「……巣、から……変な感じが、する、から……もしかしたら、それが……原因、かも?」


 ハチの観察を続けつつヴィルさんが話してくれたことには、私達がコウモリの観察をしている間にこのハチを見つけて、後をつけたんだそうな。そこで、かなり巨大な巣を発見したらしい。

 妙な気配のする巨大な巣と、巨大化したハチと、それを食べているのであろう巨大化したコウモリと……。

 この瞬間、私達の心は一つになった。そのハチの巣が原因なのでは、と……!

 お互いに無言で頷き合って、音を立てないように静かに立ち上がった、その時。

 ゆらりと尻尾を揺らしたごまみそが、もがくハチに飛び掛かった。子猫とはいえ鋭い爪で腹を――毒針のある尻の部分を抉るように切り付け、頭と胴体の境目に牙を立てて頭を切断する。

 おっふ……こんな生殺しみたいな状態で放置するのも……とは思ってたけど、まさかごまみそが介錯するとは思わんかったよ。

 口元と前足に飛び散った体液を真っ赤な舌でペロリと舐めたごまみそが、目を細めてぱかりと口を開けた。弾んだ声も合いまって、機嫌よく笑っているようにも見える。


「え、ちょ……ご、ごまみそ……?」

『……あんなー、これなー、おいしいにおいと、あじ、するー!』


 ……美味しい匂いと、味って、なによ……?

 その口から飛び出した不可思議な言葉に頭を捻っていると、毛づくろいを終えたごまみそが私の足にその顔を擦りつけようとしているのが見えた。


「だ、ダメ!! 虫の体液ペロペロした顔と口で、私にスリスリしてこないで!」

『はーあ? かあいい朕のすりすりの、なにがごふまんー?』

「やめてこないでちかづかないで!! おみそは可愛いと思うけど、虫はダメ! やめて!!」


 制止されたのが不満なのか、てしてしと前足で地面を叩くごまみそからそっと距離を取る。

 いろいろと聞きたいことはあるけれど、虫をアレコレしたばっかりのお口で私をペロペロしようとしないで!!

 まずはそのお口をきれいにしてから……話を突き詰めるのはそれからだ!!

巣を発見したけど、デカい影はコウモリだったよ

近くに巨大化したハチの巣があって、それを食べたせいで巨大化したのでは?

ごまみそがハチを()りました

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