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未知なる食材が私たちを待っている!

 目の前の肉を生存戦略(サバイバル)さんを駆使して見つめてみる、と……「暴れウシカの肉」……と、謎の単語が出てきた。

 牛っぽい角が生えた、牛顔の小型の鹿……らしいんだけど…………うん。聞いたことのない動物ですな。群れで移動するせいか草を食べ尽くしちゃったりしないよう、定期的に間引くんだってさ。

 街の近くの森に生息していて、香草を好んで食べるから良い匂いのお肉になるらしく、特に赤身が絶品とのこと!

 知らない動物だけど、美味しいのなら問題ないです!

 何かのタレっぽいのをかけて焼き上げられたお肉に、ガブリと齧りつく。

 赤身ということもあり、脂肪分が少ないから脂気はさほど感じない。ちょっと歯ごたえのあるお肉をぎゅむぎゅむと噛みしめると、中からじわじわと肉汁が染み出してくる。

 アミノ酸の旨味をぎゅぎゅっと濃縮したような感じの旨味が舌の上に落ちると、ふわっと甘く香ばしい匂いが鼻に抜けていく。

 たっぷりと太陽の光を浴びた干し草の香り……的な感じだろうか? なるほど。香草を好んで食べてるからこの匂いに……って言われても納得だな!

 そこに、フルーティな香りが漂う甘辛ダレが絡んでくると、お肉の奥底に隠れていた埃っぽさというか、粉っぽいような匂いが昇華されて、ただただ旨味が残るだけだ。


「――っっ! 美味しい! お肉も美味しいけど、タレが美味しい!!」


「そうだろう? ここの串焼きのタレが美味くてな! ……何が入ってるかわかるか?」


「うーん…………果物を使って甘みを付けてるんだろうなぁ、っていう感じはしますが、さすがに材料までは……」


「……それもそうだな。そう簡単にわかったら、商売は上がったりだものな!」


 激しく頷きながら声を上げれば、隣で魚串らしきものを頬張っていたヴィルさんがすかさず同意してくれて……そっと声を潜めて聞いてきた。

 うん。このタレ、再現できたら絶対に美味しい! けど、さすがに材料が全部わかるほど鋭敏なベロじゃないからなぁ……。 

 私にわかるのは、「たぶん、果物とか野菜のすりおろしをベースに使ってるんじゃないかな??」レベルのことだけ!

 素直にそう答えれば、ヴィルさんも再現までは期待はしていなかったんだろう。笑いながらおかわりの串を取ってくれた。

 こっちは「シャロゥ」という魚を焼いたものだ。白身の魚で、四季を通して浜辺でよく獲れる魚らしい。こちらにもさっきのタレがかけられている。

 シャロゥの方は身に癖がない分、タレの味が……特に甘みが際立つ感じ。でも、決して嫌な甘さじゃない。

 サラッとして軽やかな感じが、脂の乗った白身によく合っている。



「食べたことのない食材ばっかりだけど、美味しいですねぇ」


「これから行く王都にも、名物はありますからね。楽しみにしていていいと思いますよ」


「そうそう! シュルブランは山の幸が豊富なんだよ!」



 顔には笑みを浮かべつつ……手の方は熾烈な焼き串争いを繰り広げているエドさんとセノンさんが教えてくれる。

 エルラージュは海の幸が……シュルブランは山の幸が名物なのか……! 知らない食材、まだまだいっぱいありそうだなぁ!



「王都と言えば、ルートはメルロワ火山回りの方が良いかもしれません。ギルドで聞いた情報によると、山の方はここ三、四日、雨が降りどおしだったようですからね」


「……がけ、くずれ、そ……」


「確か、結構な山道なんですよね? 路面とかも荒れてそうだし、安全マージンは取った方が良い気はしますね……」



 争奪戦に勝利したのはセノンさんだった。エドさんの指が触れる寸前に串をかっさらい、満足そうに齧り付いている。

 エドさんはエドさんで、また別の串を手に取っていた。遺恨が残っているようにも見えないし、いつもの感じのやり取りなんだろうなぁ。

 はふはふと肉串に齧り付いていたアリアさんが、セノンさん情報にふと眉を顰めた。

 うーん……傾斜がきつい山道で雨降ってるとスリップが怖いし、安全そうな道を進んだ方が良いんじゃないかな??

 ちょっと距離は増えるみたいだけど、野営車両(モーターハウス)があるなら誤差の範囲だと思うし。



「メルロワは火山を擁するだけあって、辛味の強い郷土料理が有名なんだ。傷に効く湯が湧く場所もあるし、鍛冶も盛んだし、赴く冒険者も多い街だぞ」


「火山の街の辛い料理……ですか……それはそそられます、が……寄るのは帰り道ですかね?」


「もー! 腹括ったんじゃないのかよ、ヴィルぅ!」


「……おうじょうぎわ、わるい……」


「ぐぅ……言い返してやりたいが、言葉が見つからん……!」



 ほんの一瞬、ヴィルさんが瞳を輝かせて……アリアさんとエドさんの言葉にあっさりと撃沈していた。

 喉の奥で唸りつつエールを煽るヴィルさんの背中には、そこはかとなく哀愁が漂っている。

 メルロワの辛味系ご飯……気にはなるんですけどね。

 まずは報連相してからにしましょうか! きっと私たちのことだし、食べ歩きに夢中になる未来しか見えませんし……。

 ……まぁ、あんな複雑な家庭事情を聴いた後では、そうなる気持ちもわかるんですけどね……。


 報連相(コレ)が終わったら美味しいご飯作るんで、元気出していきましょう! ね??

閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


油鶏、作ってみたいんですよ!╭( ・ㅂ・)و ̑̑

てりってりの皮が美味しそうで美味しそうで……!!


もし、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。

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