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また髪の話してる……(´・ω・`)

 あの後、「リンちゃんも食べなー☆彡」と笑顔で口に突っ込まれたケバブに我に返った。

 もちもちの生地とシャキシャキの野菜、そしてなにがしかの香辛料を使って焼き上げられたのであろうお肉が口の中で旨味を爆発させる。

 ……これ、何の香辛料だろう……?? ほんのりと甘い匂いがして、ちょっとほろ苦くて……お肉の(くさ)みを上手く抑えつつ、風味に変化させてるというか……。

 「香辛料」の類って、交通網が未発達な時代は割と高価なイメージがあったんだけど、港町だけあって手に入りやすいんだろうか??



「……美味しいですね、ここのケバブ!」


「でしょー? 値段も良心的だし、量も多いし、行きつけの冒険者も多いんだよー」


「リンのごはん、も、美味しい! けど、こういうのも、スキ」


「わかります! コレは無性に食べたくなる味ですね!!」



 店の奥で巨大な肉の塊をぐるぐる回しながら焼いているところが見えるし、これはもう大量に仕込める「お店の味」だなぁ!

 改めてじっくり食べてみると、中のソースがこれまた美味しいんだ。

 こっちにも、何らかの香辛料だかハーブだかが使われている気配がする……!

 ……そう考えると、恐らく輸入品であろう香辛料を大衆のお店で使える程の供給はある……ってことだろうし……魔物騒ぎとか国と国との間に緊張が走っている……とかでもないんだろうな、うん。



「これ食べ終わったらさ、もう少し市場の中見て回ろうか? リンちゃんあんまりこのへん見て回ったりしてないでしょ?」


「ん。いろんな、お店……あるよ」


「楽しそうですけど、夕方になったら山猫亭に集合、って言う話ですからねぇ。まず買い物を終わらせて、時間が余ったら見て回りたいです!」



 お誘いはありがたいけど、さっきのはしゃぎっぷりをみていると、どうにも、こう……食べ歩きが目的なんではなかろうか、とか邪推しちゃうよね……。

 アリアさんもエドさんも、善意で言ってくれてるんだろうに……申し訳ないです。

 ……。

 ………………。

 ……と、思っていた時期が私にもありました。

 ケバブのお店を出るや否や、さっそく食べ歩きを敢行しようとするアリアさんとエドさんとを必死に宥め、何とか目的の買い物を遂行しましたよ!


 なんだよ! 私の直感、当たってたんじゃないか!!!


 …………まぁ、その分いろいろなお店も教えてもらったし、値引き交渉とかもしてもらえたし、その結果何本か串焼きとかを買うことにはなったけど、おやつと思えば、うん、まぁ……こういう市場慣れしてない身としては、非常にありがたかったです、ハイ。



「すっごく繊細な布細工でしたねぇ、アレ! 刺繍でできてるなんて信じらんないです!」


「ん。素直に、凄い」


「色合いとか雰囲気とか、アリアに似合いそうだったね~。やっぱり買っちゃえば良かったなぁ……」


「……いっぱいあるから、いい、よ……」


「オレが、可愛くなったアリアを見たいのー! いや、普通のままでも十分可愛いけど、いつまでも見てたいけど、おめかししたアリアはまた別腹なの!」



 今話題にしてるのは、馬車の荷台をそのまま売り場にしたような露店で売っていたお花モチーフの髪飾りとか、ブローチとか。

 立体刺繍、って言うのかな? 刺繍でできた花びらを組み合わせて、立体的なお花に仕上げてるの!! 縫い目が細かくて、均一で、凄かったよ!!

 何より綺麗だったのが、蜘蛛人さんが作る透明糸を使ったっていう立体刺繍!

 透明な糸で作った透明な布をベースに、そこに透明度を保ったまま染色した糸で刺繍をして作ってるものだから、日の光に透けて宝石みたいにキラキラしてるんだよー!!!

 これは……これは……干物を通り越して化石になってる私ですら「いいなぁ」って思っちゃう!


 でも、それに何より惚れこんじゃったのはエドさんで、淡いピンクの花飾りが特に気に入ってたみたいだ。

 残念ながら宝石みたいな透明作品シリーズはそれなりのお値段のためお買い上げは断念したエドさんが、アリアさんの髪を優しい手つきで撫で梳きながら、残念そうに呟いている。

 それはもう堂々と口説かれているアリアさんは、いつもは白い頬を薔薇色に染め、ちょっと困ったような、照れたような……それでいてどことなく嬉しそうな表情でエドさんの服の裾をきゅっと握りしめていた。

 ……仲良きことは美しきかな、というべきか、リア充爆発しろ、というべきか……。

 まぁ、お二人が幸せそうだし、まぁいいか!


 ……それにしても、立体刺繍を近くの村から売りに来た……って言ってたあの蜥蜴人のお姉さん――鋭い爪とゴツゴツした手指で、よくあんな細かい刺繍ができるなんて、そうとう器用なんだろうなぁ――がいうには、2週間ほど前にもエルラージュの街に来てるけど、その時も今日も、道中で魔物らしい魔物に襲われたことはない、という話だ。

 ………………やっぱり、聖女を召喚してまで魔物を浄化する必要、なくない???


 それに、召喚しておきながら「役立たず」だからって僻地にポイ捨てするような連中よ?

 私の場合そのバイアスが大いにかかってるせいもあって、なおさら「聖女召喚」にポジティブなイメージを見いだせないんだよなぁ……。



「リンちゃん、リンちゃん、あんまり考えこまない方がいいよ?」


「それを、確かめに、行く……!」


「……そう、ですね……! 判断は情報を集めてからでもいいですよね!」



 ……いつの間にか、私の手はアリアさんとエドさんに繋がれていた。

 ついさっきまで私の目の前でイチャイチャしてたと思ってたら、いつの間にかさっきみたいに繋がれた宇宙人状態になってたよ……。

 二人とも優しい笑みを浮かべて、私の手を引っ張ってくれている。

 ……うん、そうだね! まずは先に進んでみないことには始まらないか! 


 

『あんなー、あんまなー、しんぱいするとなー、かみのけなくなる! 朕、しってるよー!』


「ごまみそはお口チャック。お外で髪の毛の(そういう)話しないの」



 ……うん。ごまみそはもう少し空気読もうか!

 従魔の声は調教師(テイマー)以外には聞こえないらしいんだけど、ちょうど近くでお店を出していた禿頭のおいちゃんと目があった気がして……私はそっとごまみそをたしなめた……。


閲覧ありがとうございます。

誤字・脱字等ありましたら適宜編集していきます。


立体刺繍、マジですごいです! めっちゃキレイでした!!


もし、少しでも気に入って頂けましたら、ブクマ・評価等していただけるととても嬉しいです。

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