第905話。【パノニア王国】にて。
本日2話目の投稿です。
【タルキア】の中央政庁舎。
「シピオーネ。あなた達を送って行きます。艦隊ごと【転移】で輸送しますが、それで構いませんか?」
「【転移】とは艦隊ごと運べるのモノなのか?あ、いや……あなたなら運べるのだろうな」
シピオーネ・アポカリプトは言いました。
「普通は無理ですが、私なら問題ありません。あなたも【インベントリ】に艦隊丸ごと収納可能でしょう?」
「私の【インベントリ】は生命体は容れられないがな……」
「何か【タルキア】に残して行くモノなどがあれば、多少なら時間を与えますよ」
「いや、大丈夫だ。どちらにしろ艦隊は【パノニア】に帰還させる予定だったから、必要な人員や物資は既に荷卸しと積み込みを終えている。このまま運んでもらえれば差し支えない」
「わかりました。私は【タルキア】に置いて行くモノがありますので30秒時間を下さい」
「わかった」
私は【タルキア】中央政庁舎の上空に【転移】して【収納】から複数の【スパイ・ドローン】の【キー・ホール】と、【輸送機】1機と【コンシェルジュ】達5体を取り出して展開しました。
そして中央政庁舎のホールに戻ります。
「【タルキア】用として【輸送機】1機と【コンシェルジュ】達5体、それから【スマホ】と【タブレット】も【タルキア】に貸与します。国家移民計画に利用して下さい。【スマホ】からミネルヴァに連絡して運用出来ます。それから、これらも設置して行きます。【使い捨て門】と【転送装置】です。使い方は難しくありませんが、【使い捨て門】は2機で1組ですので、【パノニア王国】の王都を含む主要5都市に設置してから利用が可能になります。また【使い捨て門】の起動には【賢者の石】が必要ですので、これを、とりあえず【タルキア】用として渡しておきましょう。この【宝物庫】の中に【賢者の石】が入っています。【タルキア】の担当責任者に適切に管理させて下さい。もちろん私やミネルヴァは、あなた達を監視していますので、おかしな事を考えるなら……わかっていますね?」
おかしな事とは、私が貸与した装置類を勝手に分解したり、【賢者の石】を目的外に利用する為に着服するなどの行為を意味しました。
まあ、私が【パンゲア】の各国で行った示威の様子は【パノニア王国】にも伝わっていますので、そんな事をする恐れ知らずがいるとは思いませんが、一応釘を刺しておく必要はあります。
「もちろんだ。私が責任を持って配下の者に管理させ、有効に使わせてもらおう」
シピオーネ・アポカリプトは【タルキア】の公職者の1人に【宝物庫】と【スマホ】や【タブレット】を渡しました。
「では、艦隊を、この政庁舎の上空に集めて下さい」
「了解した」
シピオーネ・アポカリプトは艦隊を移動させます。
私はアープとカリュプソとカリュプソの従魔達、それからホールに集合した王都【パノニア】に向かうメンバーを連れて一度上空に【転移】してから、シピオーネ・アポカリプトの艦隊ごと【パノニア王国】王都【パノニア】に向かって【転移】しました。
・・・
【パノニア王国】王都【パノニア】。
王都【パノニア】の上空に到着。
私は【収納】から【輸送機】と【コンシェルジュ】部隊と【キー・ホール】を取り出し、シピオーネ・アポカリプト達と一緒に王城の大広間に再度【転移】します。
「とりあえず【使い捨て門】と【転送装置】を設置したいのですが……出来れば場所は大広間ではなくホールの方が大勢の人が出入りする導線としては使い勝手が良いでしょうね」
私は言いました。
「わかった。任せる」
シピオーネ・アポカリプトは同意します。
【ストーリア】側では、ほぼ全ての都市中央にあるランドマークは、王の居城や政府・自治体庁舎と、神殿や聖堂など信仰の祭殿を兼ねていました。
そして大半のユーザーは神殿など宗教的建築物の礼拝堂に転移座標を置きます。
これは神殿の礼拝堂がユーザーが自由に立ち入れる公共の場所で最も安全なので、【転移】即死【罠】などを仕掛けられる心配がない事と、【シエーロ】などの隠し【マップ】にアクセスする上でも立地的に便利だからでした。
私も慣習的に各都市の神殿の礼拝堂に転移座標を置いています。
しかし【パンゲア】では都市のランドマークである王城や政府庁舎が、【ヌガ法国】以外では信仰の祭殿を兼ねていません。
なので【ストーリア】では礼拝堂と呼ばれる場所が、【七色星】ではホールと呼ばれています。
私はホールに移動して【使い捨て門】と【転送装置】、それから【転移魔法陣】を設置しました。
これで良し。
「シピオーネ。ついでに、残りの主要都市3つにも【使い捨て門】と【転送装置】を設置してしまいましょう。一度で片付いた方が世話がありませんからね」
「わかった。私も同行して現地で指示を徹底しよう」
「そうして下さい」
私はシピオーネ・アポカリプトと一緒に【パノニア王国】の東西北の3つの主要都市に飛び、それぞれ【使い捨て門】と【転送装置】と【転移魔法陣】を設置して、【輸送機】1機と【コンシェルジュ】達5体と複数の【キー・ホール】を展開し、シピオーネ・アポカリプトから紹介された現地担当の公職者に【スマホ】と【タブレット】と【賢者の石】が収納された【宝物庫】を渡します。
そして私とシピオーネ・アポカリプトは王都【パノニア】に戻って来ました。
「ウチの全国民に【思念波】で国家ごと移民する布告を出すのだったな?」
シピオーネ・アポカリプトは訊ねます。
「はい。早速やってしまいましょう」
「ああ。お願いする」
私はシピオーネ・アポカリプトと【パノニア王国】のグウィネス女王の【器】に干渉して、2人の布告を【パンゲア】全土に【思念波】という形で伝えました。
【パノニア王国】だけでなく【パンゲア】全土としたのは、少数ながら【パノニア王国】民が捕虜や奴隷として他国にもいるからです。
「今日やるべき必要な措置は講じました。私は明日の夜にも、また此方に来ますので、明日移民第一陣を輸送してしまいましょう。移民が完了するまで毎晩私が通います。シピオーネの方でも、なるべく早く移民が完了するように効率的に移動を実施して下さい。何かあれば【スマホ】でミネルヴァに連絡して下さい」
「わかった」
ふ〜、とりあえずは良いですね。
今夜のスケジュールは余裕を持った予定となっていたので、2時間程巻きました。
私は宗教国家【ヌガ法国】などでは教化において多少揉めるかもしれないと考えていたのです。
しかし実際には【アブラクサス】教団が神として信仰する【アブラクサス】のカリュプソを私が押さえた事で順調にスケジュールを消化したので時間が余りました。
さてと、これから、どうしましょうか?
マイ・マスター……【七色星】の原住民である【ゴルゴーン】の子供と平和的に接触致しました……そして、その【ゴルゴーン】の子供達が暮らす集落に招かれたのですが、どう致しましょうか?
トリニティが【念話】で報告します。
接触したのですか?……わかりました……私も丁度手が空いた所なので、そちらに合流します。
私は【念話】で伝えました。
仰せのままに致します。
トリニティは【念話】で言います。
「シピオーネ。私達は、これで引き上げます。また明日」
「そうか。世話になった。また明日以降もよろしく頼む」
シピオーネ・アポカリプトは頭を下げて言いました。
「とりあえずウィールド皇太子一行は【七色星】を経由して、【ストーリア】に送り届けます」
「わかった」
ウィールド皇太子は頷きます。
私達は【七色星】に【転移】しました。
・・・
【七色星】。
森の中の拠点。
私達が【転移】して来ると、トリニティとウィローと見慣れない【ゴルゴーン】の子供がいます。
【ゴルゴーン】の子供は、大所帯で尚且つ20頭もの【超位級】の魔物連れで突然【転移】して来た私達に驚いたのか、トリニティの背後に隠れました。
「で、その子は?」
私はトリニティに訊ねました。
「この森に暮らす【ゴルゴーン】族の子供で、カルネディアという名です。どうやらマイ・マスターが放った【雷霆】を見て様子を窺いに来たようです。空腹を訴えたので食べ物を与えましたら……このような状態に……」
トリニティは腰にしがみ付くカルネディアを示して言います。
なるほど。
餌付けをしたら懐かれた、と。
【ゴルゴーン】の子供とは何ともはや珍しい。
基本的に【ストーリア】の【ゴルゴーン】は繁殖をしません。
繁殖能力が備わっていない……というか【ゴルゴーン】には女性しかいないのです。
【ストーリア】において【ゴルゴーン】は全てスポーンした個体でした。
しかし【七色星】には子供の【ゴルゴーン】がいます。
つまり子供の状態でスポーンするか、あるいは男女の【ゴルゴーン】がいて繁殖している事になりますね。
【ストーリア】でも【ワー・ウルフ】など群を形成する習性がある【魔人】は男女がいて繁殖をします。
しかし、トリニティの種族【エキドナ】のように固有種だったり、【ゴルゴーン】や【メリュジーヌ】などのように女性しかいなかったりと繁殖しない種族もいました。
カリュプソが言うには……【七色星】は初期配置で【魔人】しかいなかった……という事でしたので、もしかしたら【七色星】の【魔人】は種族に関係なく繁殖能力を有している可能性もあります。
【創造主】が、そういう世界観として【七色星】をデザインしたのでしょう。
これは常識を覆す新たな生態系として、とても興味深いですね。
もしかしたら【七色星】には、固有種であるトリニティの種族【エキドナ】にも男性の個体がいて、トリニティがパートナーと番い子供が産まれるかもしれません。
トリニティが母親となり子供を産み育てる事が可能ならば楽しみです。
「それで、トリニティ達はカルネディアの暮らす集落に招かれたのですね?」
私は訊ねました。
「はい。どうやらカルネディアの暮らしている集落では大人達がいないらしく、狩などの成果が芳しくないようで子供達がいつも飢えてしまっているようなのです。緊急を要する事態だと判断して取り急ぎ食料を届ける事にしました」
トリニティは言います。
【魔人】は食物を経口摂取するだけでなく魔力を吸収してダイレクトにエネルギーを得る事が可能でした。
しかし魔力だけで生き続ける事は出来ません。
人種がブドウ糖をエネルギーとするものの、ブドウ糖だけでは生きられないようにです。
また傷付いた肉体を新陳代謝によって修復したり、子供が成長したりするには、やはり食物を接触する方が高効率。
つまり【魔人】は人種や動物に比べれば飢餓に強いですが、それは程度問題でしかなく、全く食事を摂らなければ【魔人】も、いずれ飢え死にます。
「良い判断です。では私は一旦【ノトリア帝国】のウィールド皇太子一行を竜都に送り届けて来てしまいますので。トリニティとウィローはカルネディアの集落に向かって下さい。カリュプソは、この拠点に残りアープを守りなさい。この周囲には強力な【防御】と【魔法障壁】が展開してありますので大概の脅威には十全な防衛力がありますが、万が一【防御】と【魔法障壁】が破られるような場合には、この【避難小屋】に逃げ込みなさい」
私が、この拠点に張った【防御】と【魔法障壁】は【超神位】なので、そう簡単に突破出来るとは思えませんが、【七色星】にはギミック・メイカーなる謎の【神格者】がいるようですから安全マージンは確保しておいて、し過ぎるという事はありません。
「仰せのままに致します」
「畏まりました」
「畏まりました」
トリニティとウィローとカリュプソは頷きました。
【超神位】の【防御】と【魔法障壁】は、ユーザーやNPCが行使する【防御魔法】の【防御】や【魔法障壁】とはスペックやギミックが隔絶して異なるので何か適当な名前を付けて区別したいですね。
例えば【神の・ドーム】とか?
まあ、悪くはありませんが、私の【超神位】の【防御】と【魔法障壁】は半球蓋ではなく、地中も含めて全方向に効果範囲が及びます。
ならば【神の球体隔壁】でしょうか?
いや、厳密に言えばコレは【神位魔法】ではなく【超神位】なのですよね。
という事は、【運営による球体隔壁】でしょうか?
いや、長ったらしいですね。
どうせ私にしか使えない魔法……というか権能です。
他にない唯一無二の権能なのですから、最もシンプルに【球体隔壁】にしてしましょう。
わかり易いのが一番です。
そして魔力無限の私には魔力効率は関係ないので、使う時には【超神位】の【防御】と【魔法障壁】を同時に展開する事になるでしょう。
なので両方とも引っ括めて【球体隔壁】。
はい、決定。
私は、ゲームマスター権限で【超神位】の【防御】と【魔法障壁】を【球体隔壁】と命名しました。
これをステータス画面から、すぐ選択出来るように登録しておきます。
私は共有アクセス権を通じてゲームマスター本部関係者に【超神位】の【防御】と【魔法障壁】は……【球体隔壁】……として周知しました。
私は早速ウィールド皇太子一行1人1人に【球体隔壁】を張って保護します。
これから彼らを【ストーリア】に連れて行くに当たって、途中で大気も気圧もない真空の宇宙空間を経由しなければなりません。
何の保護もしなければ、ウィールド皇太子一行は酸欠になりますし、気圧がないので沸点が下がり体液が沸騰して死ぬかもしれませんからね。
まあ、実際には一瞬の出来事なので即死はしないと思いますが念の為です。
私は、ウィールド皇太子一行を連れて【転移】しました。
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