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第39話。パーティ登録。

本日、10話目の投稿です。

 私とソフィア、そして獣人娘達は【竜城】から【転移(テレポート)】して【銀行ギルド】にやって来ました。

 いつものようにビルテさんと挨拶。

 そして、【銀行ギルド】の入口から出て【冒険者ギルド】の裏通りを歩きます。


 まず、獣人娘達は宿泊先の料金精算をしに向かいました。

 彼女達がどんなところに住んでいたのかと確認すると、【冒険者ギルド】近くにある宿屋の……物置部屋。

 決して広くはない部屋の壁には色々な道具類がフックに掛けてあり、床には木箱や樽が並べてあります。

 一部片付けられたスペースがあり、そこに4枚の毛布が畳んで置いてあり獣人娘達の武器や革鎧などの私物が並べてありました。


 獣人娘達は、想像以上に大変な生活をしていたようです。

 雨風は凌げますが快適とは言い(がた)い環境。


 この物置部屋は、彼女達の身の上を不憫に思った宿屋のオーナー夫妻がタダ同然で住まわせてあげていたのだとか。


 料金は1泊1銅貨……日本円換算で大体100円。

 これは1人分の料金ではなく物置部屋の1泊の使用料……つまり4人分の料金でした。

 日本円換算で1人1泊25円……物置部屋とはいえ激安です。

 食事は1時間ほど宿屋の皿洗いや掃除などの手伝いをすると3食無料。

 アルバイトや冒険者稼業の仕事先で食べるお弁当は1食1銅貨……日本円換算で大体100円……これも4人分の値段なので1人1食25円……と。


 食べていた食事は正規の宿泊客と同じ物ですが、獣人娘達はお代わり自由。

 栄養のバランスが考えられたメニューです。

 だから獣人娘達の栄養状態は特に問題がなかったのですね。


 移民制限政策をしている【ドラゴニーア】では、冒険者は宿泊先の申告と宿泊実績の調査が行われている筈ですが?


 宿屋のオーナー夫妻は、獣人娘達が正規の料金を払って正規の客室に宿泊していたように宿泊名簿を改竄(かいざん)していたと……。


 それは、司法当局にバレたら不法在留幇助罪とかで、下手をしたら摘発されていたかもしれませんよ。

 まあ、善意からの行いですから重い罰は科されないでしょうが……。


 獣人娘達が毎日早朝から深夜までやっていた掛け持ちのアルバイトの稼ぎでなら、シャワー付きの部屋くらい正規の料金で泊まれる筈ですが、彼女達は【冒険者ギルド】に立て替えてもらった債務を一刻も早く返済する為に出費を極限まで切り詰めていたのだとか……。

 獣人娘達の債務は【冒険者ギルド】から、私が肩代わりする事になりました。

 債務残高は5金貨と端数。

 当初は85金貨だった事から考えると獣人娘達は相当頑張りました。


 物置部屋暮らしで水周りがないので、シャワーも使えず身体が臭っていたのですね?


 時々見かねた宿屋の女将さんが()()()お風呂を貸してくれていたらしいのですが、獣人娘達は……お金が払えないので申し訳ない……と、それすら遠慮していたそうです。


 私は……弟子に取る事になった獣人娘達を、今後多少ならば甘やかしても構わない……と思い始めていますよ。


 それから私は、この宿屋のオーナー夫妻の心意気に惚れました。


 良し。

 ここを私の弟子達と、私とソフィアが起業する【マリオネッタ工房】の社員・従業員の寮代わりにしましょう。


 この宿屋の名前は【パデッラ】。


 ユーザーが持ち込んだ地球の文化の影響でしょうか?

 屋号の意味は、イタリア語でフライパンです。


 オーナー夫妻の名前は、ご主人のユリシーズさんと女将さんのノーラさん。

 2人は【(ヒューマン)】で子供が2人。


 ご長男は、航路ギルドが運営する国際定期運行飛空船の航海士。

 妹さんの方は、現在【ドラゴニーア】の大学に通っているそうです。


 宿屋【パデッラ】は高級ホテルではありませんが、清潔で明るく家庭的な雰囲気。

 数人の従業員を住み込みで働かせていました。


 ノーラさんは獣人娘達に……危ない冒険者なんか辞めて、うちの宿屋で働きなさい……と誘ってくれていたのだとか。


 現在【神竜(ソフィア)】復活の式典や祝賀を目当てにやって来た観光客の影響で宿屋【パデッラ】の部屋は満室ですが、式典と祝賀が終われば部屋は空くそうです。

 では、そのタイミングで全室をキープしてしまいましょう。


 私の弟子と【マリオネッタ工房】の社員・従業員の合計人数は39人。

 料金は1年分前金で支払います。

 宿屋パデッラのシングル部屋の宿泊料金は1泊3食付きで3銀貨……日本円換算で大体3万円。

 シングル部屋の様子は日本のビジネス・ホテルのシングル部屋の感じでした。

 日本のビジネスホテルの感覚では3倍ほどは高いように感じますが、不動産不足の【ドラゴニーア】では、これが相場なのです。


 1泊3銀貨(3万円)……1年分は109金貨と5銀貨(1095万円)……39人分は4270金貨と5銀貨(4億2705万円)。

 端数はオマケしてくれるという事で、4千金貨という事になりました。


 にしても4億……高っ。


 い、いや……不動産価格が馬鹿高く、固定資産税と相続税も高額な【ドラゴニーア】では、これは相場。

 宿屋【パデッラ】は最低価格帯に類する宿泊施設でした。


 外縁部付近ならあと2割程は安くなりますが、アクセスを優先して中心街にと考えるなら、これは致し方ない支出でしょう。

 外縁部に住むとなれば通勤の他にも買物などの度に、いちいち交通費が(かさ)みトータルでは行って来いになりますしね。

 その点、中心街でなら徒歩圏内で、ほとんどの用事は事足ります。

 一番肝心な事は、外縁部に社員・従業員を住まわせると、私の経費は浮きますが、その損益分を被るのは社員・従業員になるという事です。

 私は、彼らを大切にする経営者で居たいのですよ。


 何よりも孤児院を出たばかりの社員・従業員は15歳、16歳の子供です。

 あ、いや、【ドラゴニーア】では成人ですが……。


 とにかく、年若い彼らに一人暮らしなどをさせると不規則な生活をしたり偏食をしたり夜遊びをしたり……という心配もありますからね。


 色々と気を配ってくれるユリシーズさんとノーラさん夫妻のような大人が見守る目は必要でしょう。


 ソフィアは……過保護じゃ……などと言いますが、これは譲るつもりはありません。


 私はゲーム会社で1部門のチーフを任されていましたが、自分の事には全く無頓着なのですが部下に対しては……。


 ちゃんとご飯を食べているだろうか?

 睡眠不足ではないか?

 遅刻などで連絡が取れないと……もしかしたら病気?まさか事故?


 ……などと、いちいち気になる性質(たち)なのです。


 これは、彼らの為というより、私の精神安定の為でした。


 ・・・


 私とソフィアと獣人娘達は、ゾロゾロと【冒険者ギルド】に向かいます。


【冒険者ギルド】で獣人娘達と同様に私の弟子となった、孤児院の問題児3人組が合流しました。

 3人は気合いが入った表情をしています。


 獣人娘達と問題児達は孤児院の先輩後輩の関係性。

 いや、姉妹・姉弟のような間柄なのでしょう。

 旧交を温めています。

 特に【ドラゴニュート】のモルガーナは、同性という事もあり獣人娘達とは仲良しだったのだとか。


「さてと、会議室を借りています。やるべき事を片付けてしまいましょう」

 私は談笑している一同を促します。


 私達は、全員で【冒険者ギルド】の幾つかある内の小さな会議室に集まりました。

 ギルド・マスターのエミリアーノさんとドナテッロさんも同席します。

 エミリアーノさんとドナテッロさんは獣人娘達に何かと気を配ってくれていました。

 今日も心配だったのでしょうね。


 多少手狭ですが問題ありません。


【冒険者ギルド】の会議室で何をするのか?


 装備品の支給です。

 私は、7人の弟子達に【収納(ストレージ)】から取り出した装備品を手渡して行きました。


 まずは孤児院生の3人組にも【不思議な鞄】を渡します。

 モルガーナだけは【収納(ストレージ)】を持っていましたが収納スペースは余分にあっても困りません。

 モルガーナは遠慮しています。

 良いから持っていなさい。


 武器関係は、とりあえず保留。

 問題は鎧などの防具類です。

 新人冒険者だからと言って低級品を与える訳にはいきません。


 この世界(ゲーム)の戦闘は結構シビアなので、簡単にコロッと死にますからね。

 ダメージをガシガシ積み重ねられてゲージが空になったら死亡なんていう甘々設定ではないのです。

 どんなに高ランクのユーザーでも無防備な急所に一撃もらえばイチコロで即死なんですよ。

 まあ、リアルと言えばリアルですが……。


 ゲーム発売初期には鬼畜ゲーと言われ、レビューでメチャクチャ叩かれましたからね……。

 すぐに防御系の【効果付与(エンチャント)】の効果を上げてバランスを取るハメになりました。


 さて装備品です。

 とりあえず私が持つ鎧の中で最高ランクの物を支給しました。

 もちろん【不滅の装備】シリーズは除いてですが……。

 全部【神の遺物(アーティフクト)】です。


 これらは全て私からの貸与という扱い。

 さすがに【神の遺物(アーティファクト)】をホイホイあげるほど私は太っ腹ではありません。

 ないとは思いますが……もしも弟子達が、この装備を私に無断で売り飛ばそうとしても私名義で所有者登録がしてありますので正規ルートでは売れません。

 裏ルートなら……まあ、そこまでして私を裏切るというのなら、その時はその時です。


 ・・・


 体格の良い【狼人(ライカンスロープ)】のグロリアには総オリハルコン製の【フルプレート・メイル】。


【ロングソード】を振り回したいという【兎人バイペッド・ラガモーフ】のハリエットは、オリハルコン製で胴体前後で装甲パーツが分かれ、身体の側面部分のバインディングでハメ閉じる方式で肩部分が丸抜きされた【胸部装甲(チェスト・アーマー)】と、それに付随する頭部と下半身の鎧セット。

 戦国末期の胴丸鎧を西洋風なデザインにしたような物です。


 なるべく種族特性であるしなやかさと素早さを阻害しない物をと要望した【猫人(ケットシー)】のアイリスには、オリハルコン製の【鎖帷子(チェーン・メイル)】と付随する額当てと小手と脚部防具。


 身体が小さく軽量級の【犬人(コボルト)】のジェシカはオリハルコン製の【軽鎧(ライト・メイル)】一式。


【ドラゴニュート】のモルガーナには本人たっての希望で、竜騎士団の実戦標準装備であるアダマンタイト製の【フルプレート・メイル】。

 紋章などはありませんが、【ドラゴニーア】竜騎士団が使用するモノと同じ本物です。


【オーガ】のサイラスには、アダマンタイト製の重厚な【フルプレート・アーマー】。


狐人バイペッド・フォックス】のティベリオには総オリハルコン製の【騎士鎧(ナイト・アーマー)】。


 私の最大【バフ】なら相当強力な攻撃でも一撃はノー・ダメージで耐えきると思いますが、【防御力(ディフェンス)】は鎧を着る者のレベルにも影響を受けるので限度があります。

【超位魔法】を食らえば、とても耐えきれません。

 それに【高位】以上の攻撃をまともに食らえば、その一撃だけで【バフ】は剥がれてしまいます。

 2撃目は喰らえば重傷……あたり所が悪ければ、さようなら……という事になります。


 しかしながら、装備は掛け値無しに世界(ゲーム)最高峰クラスの強力な物ばかりでした。

 彼女達は全員低レベルですから、強力な敵と戦うと鎧は無傷で中身はグチャグチャという可能性も……。


 所持金半減とレベル半減のコストで何度でも死亡コンティニューが出来るユーザーと違い、NPCの生命は1つだけ。

 死んだら、それで完全な終わりです。


 獣人娘達は今までボロッボロの革鎧を着ていました。

 これは先輩冒険者が新しい装備に買い換えて捨てようとしていた古い物を、ただで譲ってもらった物なんだとか。

 大きさが合わずブカブカです。


 本人達は思い入れがあるのか、保管しておきたいような表情でしたが、【収納(ストレージ)】を圧迫するので武器屋に売却させました。


 武器や防具は使い込んで身体に馴染んだ物が良いというのは一理ありますが、それに拘って換装を躊躇していると必ず後悔します。

 資金が許す限り現状選択し得る最高性能の物を常に使うべき。

 生命と安全に代わる物など何もありません。


 獣人娘達の防具は本来は捨てるような品物だったのですが……。

 そこは、それ。

 私の【復元(リペア)】で新品同様に戻し、更に私の【収納(ストレージ)】に一度しまって使用者の身体に合うギミックを付加しました。


 古道具屋のオヤジさんは使用者の身体にサイズが変わるギミックを気に入り、一着5金貨で買い取ってくれました。

 獣人娘達は債務を完済し、その上臨時収入となりましたね。


 ほら売って良かったでしょう?


 ・・・


 さてと武器の方は適当に……。


 あまりにも強力な物だと自分の力を過信して危険な事をするかもしれません。

 とりあえず適当に……魔鋼製で良いか……。

 全て私が造り【効果付与(エンチャント)】した物です。


 格闘系の熟練値に上昇が見られたグロリアには【ガントレット】。

 モフ太郎氏に憧れているハリエットは、もちろん【ロングソード】。

 アイリスは本人の希望で【ショートソード】。

 ジェシカは小柄な身体に見合った【ナイフ】。

 モルガーナは、もちろん竜騎士団を真似て【スピア】と【グラディウス】。

 サイラスは腕力が活かせる【メイス】と【大盾(スクトゥム)】。

 ティベリオは非力なので槍より取り回しの良い馬上武器の【サーベル】と【ラウンド・シールド】。


 私とソフィアが一緒にいる時は問題ないのですが、魔法職や支援・回復職が全くいないパーティ構成は偏っていますね……。

 まあ、いないものは仕方がありません。

 冒険に挑む時には大量の【ポーション】類を持たせましょう。


 孤児院生の3人組に冒険者登録をさせました。

 その後、私とソフィア、そして弟子達7人でパーティ登録をします。


 今日は午後から闘技場(コロッセオ)で試合。


 実は現在【ドラゴニーア】では各国から腕に覚えのある者が集まって来ているのです。

 4日後から始まる武道大会本戦に出場を目指す選手達でした。


 招待選手以外の残り出場枠を勝ち取る為に、今日から予選会がスタート。

 この大会は毎月の定期開催ではなく、【神竜(ソフィア)】復活を祝う特別大会。

 賞金も世界大会レベル。

 かなり高ランクの手練れが集まって来ている事でしょう。


 私は弟子達に、その予選会に参加させるつもりです。


 勝算?


 そんなものは、ありません。


 世界武道大会は、本来【銅級(カッパー・クラス)】の冒険者などが出場するようなレベルではないのです。

 最低でも【銀級(シルバー・クラス)】以上でなければ、予選会に出場を考えるだけで笑われるでしょう。


 この予選会に出場させる目的は、実戦で弟子達の動きを見て彼らのタイプなどを見定めようという事。

 まあ、何も出来ず瞬殺される可能性もありますが、【神の遺物(アーティファクト)】の装備なら、もしかしたら、マグレで1試合くらい勝つかもしれません。

 ともかく何事も経験です。

お読み頂き、ありがとうございます。


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