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第34話。内職。

本日、5話目の投稿です。

【冒険者ギルド】から【竜城】の私室に到着。


「は!【ガーゴイル】!」

猫人(ケットシー)】のアイリスが【ガーゴイル型空気清浄機】に気が付いて身構えます。


 どうやら【ガーゴイル】はNPCにとっては【遺跡(ダンジョン)】に現れる危険な魔物(モンスター)という認識のようですね。

 魔物ではありませんし【敵性個体(エネミー)】でもないのですが……。


【ガーゴイル】は【遺跡(ダンジョン)】にも出現しますが、本来は【ゴーレム】同様、単なる【魔法装置(マジック・デバイス)】に過ぎません。

 機械の類なのです。

 なので、命令(コマンド)を入力しておかなければ、他者に害を及ぼす事はありません。


 900年前には警備員や門番代わりとして、【ゴーレム】同様に色々な施設や邸宅で普通に設置してあったのですが……。


 ゲーム時代より技術力が衰退している機械メーカー【ダビンチ・メッカニカ】の現状からもわかるように、【ゴーレム】技術は現在かなり技術水準が下がってしまっています。

 更に基本的に魔法を行使しない【ゴーレム】に比べて、魔法を行使させる事を前提として運用する【ガーゴイル】は技術的に難易度が高く、現在は完全に製作が不可能になったのでしょう。

 これも900年で魔法が衰退した影響という訳です。


「心配ないのじゃ。それはノヒトが造った【ガーゴイル】なのじゃ。こちらから危害を加えねば安全じゃ」

 ソフィアが獣人娘達に、()も当然の事というふうに説明しました。


 ソフィア、あなたは私の【ガーゴイル型空気清浄機】の初号機にチョッカイを出して反撃され挙句に【神位魔法】をブッ放して消滅させましたよね?

 まあ、別に良いですけれど……。


 ・・・


 獣人娘達には、まず入浴に向かわせます。


 大浴場に向かった獣人娘達には、何人かの【女神官(プリーステス)】に付き添ってもらいました。

 あそこは風呂としては冗談みたいな水深ですから溺れでもしたら大変です。

 グロリアとジェシカは水泳が得意なのだそうですが、ハリエットとアイリスは水泳が苦手みたいですので……。


 グロリアは【狼人(ライカンスロープ)】。

 ジェシカは【犬人(コボルト)】。


 イヌ科の動物は泳げるイメージがあります。

 犬かき……うん。


 ハリエットは【(バイペッド・)(ラガモーフ)】。

 アイリスは【猫人(ケットシー)】。


 兎と猫は泳げないイメージですからね。


 そういう所は、動物の性質と【獣人(セリアンスロープ)】の性質で共通するのでしょうか?

 良くわかりません。


 ソフィアも獣人娘達と一緒に大浴場に向かいました。


「ソフィア。彼女達は疲れているのですから、お風呂遊びに無理矢理付き合わせたりしないで下さいね」


「わかっておるのじゃ。我は、あの子らを心配してじゃな……」


「そのアヒルと潜水艦は何ですか?」


「何でもないのじゃ」

 ソフィアは背中にお風呂用の玩具を隠します。


「とにかく彼女達は……とても疲れている……という事を忘れないように」


「至高の叡智を持つ我は、そんな事はわかっておるのじゃ」

 ソフィアは、そう言うと、アヒルと潜水艦を手首に装着している【宝物庫(トレジャー・ハウス)】にしまいました。


 まったく……あいつは神様だったり、国家元首だったり、幼稚園児だったり、行動や思考の振り幅が大き過ぎるのです。


【竜城】の大浴場は一辺が500mの立方体の巨大空間。

 その中央に直径250mの巨大な円形浴槽があります。

 浴槽は中央に向かって、すり鉢状に深くなっており、最深部は50m以上の深さがありました。


 この浴場は【竜城】に勤務する全ての【ドラゴニュート】達が利用しています。

 とはいえ、あの風呂は本来1人……いや、1柱用。

 つまり【神竜(ディバイン・ドラゴン)】形態のソフィアの専用浴室という設定なのです。


 彼女達が入浴している間に、私は調理の手伝い。

 食材が食材だけに、また【女神官(プリーステス)】達から下ごしらえを頼まれました。


 夜食のメインは【地竜(アース・ドラゴン)】。

 さすがに【竜城】の厨房でも【地竜(アース・ドラゴン)】の解体は経験がない、というか不可能だと言われました。

【竜城】の厨房にある調理用ナイフの類いでは、【地竜(アース・ドラゴン)】の皮や骨には刃が立たないとの事。

 なので、私が【神剣】でスッパスパと精肉にします。


 死んで魔力を帯びていない魔物の肉など、【神剣】にかかれば抵抗(ゼロ)

 むしろ、吸い込まれるようにスムーズに刃が入ります。


 一応【女神官(プリーステス)】は【神竜(ディバイン・ドラゴン)】に仕える身。

地竜(アース・ドラゴン)】とはいえ【(ドラゴン)】の近縁種を料理してしまう事に忌避感はないかと訊ねたら……。


「全く問題ありません。あの、お(うるわ)しい【神竜(ソフィア)】様と、この下賎なトカゲの魔物を同列に扱う事はあり得ませんので」


 ……と、鼻で笑われてしまいました。


 あ、そう。


 もう深夜なので、本来厨房の作業は終わっている時間ですが……。


「【神竜(ソフィア)】様が賓客としてお迎えになる方々のお食事ですので、誠心誠意お支度させて頂きます」

 との事。


 私は事前に孤児院の責任者クリスタさんからリサーチしていた獣人娘達の好物を沢山作りました。

 私は調理技術も限界値までカンストしているので料理も得意です。


「ノヒト様。お味見を……」

 調理責任者の【女神官(プリーステス)】が私にソースの具合を確認しに来ました。


 うん、【地竜(アース・ドラゴン)】の骨から取った出汁が抜群に美味い。

 その最高の出汁と沢山の野菜のエキスと色々なハーブの風味が複雑に合わさり、しかし見事に調和しています。


「私的には、これで良いと思うのですけれど……【獣人(セリアンスロープ)】の味覚はどんな感じでしょうか?薄味好きとかでしょうか?」


 確か猫や犬は人間が食べるような塩分濃度は、毒だったと記憶していますが……。


「おそらく私共と大差ないと思います。個人の好みはあるでしょうが……」


 そうですか……。


「なら、これで行きましょう」


「畏まりました」

 調理責任者の【女神官(プリーステス)】は、部下達に指示して料理の仕上げに取り掛かりました。


 ・・・


 料理は完成。

 大広間に大量の料理が運び込まれました。

 壮観です。


 程なくして着替えとして準備してもらった神官服に着替えた獣人娘達が、お風呂から上がって食事が山と並んだ大広間に現れました。

 毛並みも整い2回りほどモフモフ感がアップしています。


獣人(セリアンスロープ)】のビジュアルはそうでなくては。


 食事は食べきれない程作りました。

 今日の趣向はスモーガス・ボード……いわゆるバイキングです。


 マナーなど気にせず好きなものを好きなだけ好きなように食べて下さい。

 なあに、ソフィアがいるので食べきれないで残る心配はありません。


 今回は私の【収納(ストレージ)】に貯め込んであった貴重なレア食材を大放出。

 大盤振る舞いです。


 初めの内、獣人娘達は遠慮がちで食が進まない様子だったので、ソフィアが半ば無理矢理のように、あれもこれも、と彼女達に取り分けて食べさせていました。

 やがて獣人娘達は料理の味に負けたのか、自ら皿を持って料理を取りに向かい始めます。


 グロリアとジェシカは【地竜(アース・ドラゴン)】のリブロースに首ったけ。

地竜(アース・ドラゴン)】の骨からとった出汁をベースにしたソースをたっぷり掛けてかぶり付きます。

 ハリエットはサラダバーの前に陣取り、アイリスは本マグロが気に入った、と。


 満腹ですか?

 もう食べられない?

 それは良かった。


 ところで食後のデザートにケーキがあるのですが?


 ケーキは別腹?

 なるほど。


 食事が口に合ったのなら気合いを入れて作った甲斐があります。


 私は調理ステータスも限界値までカンストしていますからね。

 ゲームマスターは宇宙最高の料理人でもあるのです。


 大量に余った食事は半分は夜勤の竜騎士団に差し入れ、残り半分はソフィアの胃袋の中に収まりました。


 ・・・


 食後。


 私の私室にソフィアと獣人娘達を招き入れます。

 まずは獣人娘達の健康診断をしました。


鑑定(アプライザル)】で見ると……。


 やや、疲労の蓄積が見える他は栄養状態は想像していた程には悪くなく、概ね健康と言えるレベルですね。

 念の為全員に【完全(コンプリートリー)回復(・リカバリー)】と【完全(コンプリートリー)治癒(・ヒール)】を掛けておきましょう。


「さて、もう時間も時間ですので彼女達を休ませましょう……。部屋はどうしますか?」

 私はソフィアに訊ねました。


「【女神官(プリーステス)】達の寝室を用意してあるのじゃが……。ダメじゃな……あれを見てみよ」

 ソフィアが私の視線を誘導します。


 見ると獣人娘達は床に座り4人で寄り添うように、眠ってしまっていました。

 彼女達は連日早朝から深夜までアルバイト掛け持ちで長時間働き冒険者としての鍛錬までしています。

 また、今晩はソフィアに付き合ってお風呂で遊んだらしいので、寝落ちするのも仕方ありません。


 私は【収納(ストレージ)】から人数分の布団を出して、獣人娘達を【理力魔法(サイコキネシス)】で持ち上げ布団に寝かせました。


 お休みなさい。


「ソフィア。私は礼拝堂にいます。あなたは此処(ここ)で眠って、明日の朝この子達が起きたら呼んで下さい」


「わかったのじゃ、ああぁ……むにゃむにゃ……」

 ソフィアは大欠伸(あくび)をしながら言いました。


 ソフィアも今日は一日疲れたでしょう。


 ・・・


 私は私室から礼拝堂に出ました。

 さてと、日課の内職でもやりますか……。


 私は、どうも睡眠の必要がないみたいです。

 毎晩1時間程度布団に横になってはいます。

 眠る事は可能なようですが、私の肉体も精神も睡眠自体を必要としていないみたいです。


鑑定(アプライザル)】で自己診断をしても……全機能正常……と表示されるだけ……。


 なので、夜の間に手持ち無沙汰解消の為、内職で色々と作業をしています。

 既に【自動人形(オートマタ)】1体を、()()完成させました。

 ほぼ……とは、【メイン・コア】がまだありません。


 試行錯誤をしながら、細部まで最適化するのに手間取って時間が掛かりましたが、もはや最適化されたプロトタイプが出来上がったので、今後は同じモノを造るなら短時間で量産出来るでしょう。


 魔道具屋街でソフィアが見つけた、例の壊れた【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】の修理には【ダンジョン・ボス】級の【コア】……つまり、【魔法石】が必要でした。

 私が製作している【自動人形(オートマタ)】はスペックが【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】に遠く及ばないので、【ダンジョン・ボス】級までの【魔法石】は必要ではなく、【超位級】であれば事足ります。

 しかし、【超位級】の【魔法石】もストックがありません。


 この【自動人形(オートマタ)】は販売用ではなく、素材に糸目を付けずに製作した私が造り得る最高性能の逸品でした。

【コア】である【魔法石】に【魔法(マジック・)公式(フォーミュラ)】を組んで装填すれば半永久的に自立稼働しますし、丸腰でも【地竜(アース・ドラゴン)】と渡り合える戦闘力があります。


 これは【工学魔法】などの技術が衰退してしまっている、この世界ではロスト・テクノロジー。

 とても販売など出来ませんね。

 まあ、売りに出しても原価が高過ぎて値段が付けられないでしょうが……。


 自作の【自動人形(オートマタ)】を量産化する為に、まずはパーツ造りからやりましょうか。

 今日は骨格部材を5体分(まと)めて製造します。

 部材製造は(まと)めてやっても労力はあまり変わりません。

収納(ストレージ)】からオリハルコンやミスリル合金などの材料を取り出し、生産系魔法の【加工(プロセッシング)】で次々と骨格パーツを造り上げました。


 良し。


 造った骨格部材を1体分残して、残りは【収納(ストレージ)】にしまいます。

 たった今造った骨格部材と同様に、異世界転移してから暇潰しにコツコツ造り貯めてある【自動人形(オートマタ)】の各パーツを【収納(ストレージ)】から取り出し、骨格部材に取り付け組み上げて行きます。

 仕上げに、ありとあらゆる【効果付与(エンチャント)】を最大効果で【バフ】して2体目のボディが完成しました。


 こうして今後は毎日1体のペースで【自動人形(オートマタ)】のボディが造られて行く事になります。


 ゲームマスターである私は、生産系のステータスも全て最大値に設定されていました。


 私が造った【自動人形(オートマタ)】はボディも、【超位級コア】に組まれる【積層型魔法陣】も、制作サイドが創造した純正品(オリジナル)……つまり【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】に使われている技術水準に全く劣りません。

 むしろ、工学技術も魔法技術も上回っていると思います。


神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】の中身は、存外に素っ気ない程シンプルな構造ですので……。


 しかし、どうしても製造品の【自動人形(オートマタ)】のスペックは、【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】の性能には及びません。

神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】は工学技術でも魔法技術でも、私が製造する物より何世代か古い技術の筈なのに、あらゆるスペックで私の自作【自動人形(オートマタ)】を圧倒的に上回ります。


 何しろ【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】は高度な知性と、自我と感情まであるのですからね。

 機械なのにです。


 一方で製造品の【自動人形(オートマタ)】は最高の素材と先端技術を結集したとしても、知性(演算能力)はある程度高くは出来ますが、自我に目覚めさせ感情を持たせる事など出来ません。

 機械だからです。


 両者の違いは何でしょうか?


 全くわかりませんし、おそらく誰にも説明出来ません。

 ただ……そういうふうにゲーム会社が決めた設定だから……としか言いようがないのです。


 ガチ勢の生産系や開発系のユーザーからは……理不尽だ……などと言われていました。

 しかし、制作サイドが創造した【神の遺物(アーティファクト)】とは、そういう理不尽でご都合主義的アイテムなのです。


神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】の不思議設定の最たる物は前述の通り、自我と感情があるところ。

神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】に搭載された【純正(オリジナル)・コア】に刻まれた【積層型魔法陣】と完全に同じモノを再現しても、【神の遺物(アーティファクト)】ではない【自動人形(オートマタ)】に自我と感情は絶対に発現しません。


 当然です。


 何故なら【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】の【コア】に刻まれた【積層型魔法陣】には、物理学的に自我や感情を(つかさど)るような如何(いか)なる【魔法(マジック・)公式(フォーミュラ)】も含まれてはいないのですから……。


 そもそも、自我や感情とは、物理学的にどのように定義したら良いのでしょう?


 人間並の知性(演算能力)は、地球最高レベルの量子コンピューターの人工知能(AI)などが、現在それに近いモノに到達しつつあると聞きますが……。


 本来機械である人工知能(AI)が自我に目覚め感情が発露した状態とは、物理学的にどういう状態を言うのでしょう?


 私にはわかりません。


 そもそも生物の自我や感情がどんなモノであるのかでさえ、地球の現代科学を()ってしても定義自体が曖昧ですからね。


 わかる筈もないのです。


 考えてもわからないものは、考えるだけ時間の無駄ですね。

お読み頂き、ありがとうございます。


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