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第31話。ウトピーア法皇国の弁明。

本日、2話目の投稿です。

 私は、エズメラルダさんから受け取った世界地図を眺めていました。


 滅亡してしまったウエスト大陸の【サントゥアリーオ】、サウス大陸の【パラディーゾ】と【ティオピーア】と【オフィール】と【ムームー】……国家体制と国名が変わったウエスト大陸の【ウトピーア法皇国】以外は、取り敢えず私が知る世界(ゲーム)の地理と大体同じようです。

 ただし実際に訪れて確認してみないと現地が如何(どう)なっているのかはわかりません。


 この世界(ゲーム)の地理は、ほぼ全てがシンメトリーに創られていました。

 制作サイドがそのようにデザインしたのです。


 各大陸の位置関係は中央にセントラル大陸。

 東西南北にそれぞれイースト大陸、ウエスト大陸、サウス大陸、ノース大陸。


 各大陸内の構造も主要都市と【遺跡(ダンジョン)】の位置関係は同じ。

 セントラル大陸を例に取るなら、中央に【ドラゴニーア】。

 東西南北に、それぞれ【グルフォーニア】、【リーシア大公国】、【パダーナ】、【スヴェティア】。

遺跡(ダンジョン)】は南東、南西、北東、北西にあります。


 主要都市の内部構造も大体何処(どこ)も似通っていました。

【ドラゴニーア】を例に取るなら。

 中央に都市を象徴する一際巨大な建造物である【竜城】。

 中央建造物は、どの都市でも共通して【神殿】に類するモノで、信仰・政治・行政・司法・軍などの主要公的機関の中枢が集約されています。


 どの都市でも中央建造物の周囲に中心街がありました。

 中心街は公共の機関(大学、図書館、公務員官舎などなど)や、各ギルド、大企業のオフィス、大型の店舗などがあります。


 中心街を取り巻くようにドーナツ状に商・工業地や住宅地があり、その外側は外縁部。

 一番外に都市を守る城壁がありました。


【ドラゴニーア】で言えば、ここまでの範囲が【竜都】と規定されています。


【竜都】の外周城壁の外は厳密に言うと【竜都】でなく、【ハーベスト・バンク】や【ストーン・エッジ】などの固有の地名があるのですが、大陸中央に君臨する庇護者たる存在……【ドラゴニーア】で言えば【神竜(ソフィア)】の【恩寵(ディバイン・グレイス)】をもたらす【神位結界(バリア)】は都市外周城壁の外側にも広範囲に効果を及ぼし、経済大国【ドラゴニーア】では【竜都】都市城壁の外側にも延々と都市圏が広がっていて、広義の意味では相当に広い領域が【竜都】と呼ばれていました。


 国家としての【ドラゴニーア】の東西南北には、それぞれ【センチュリオン】、【ラウレンティア】、【アルバロンガ】、【ルガーニ】という都市があり、これらは、いずれも【創造主(クリエイター)】が創った主要都市です。


 ここまでが制作サイドがデザインした各大陸に共通する初期設計でした。

 この初期構造は建物などが【不滅の素材】で出来ている為に破壊や改築が不可能で、永久に形を留める事になります。


 各大陸のそれ以外の場所……つまり広大な空白地帯は各大陸ごとに多少の変化が見て取れ、山脈や峡谷や河川や湖などがあったり、人々の手で町や集落が築かれたり田畑が開墾されたり、または人種の手が及ばず原野や原生林や砂漠となったり、各大陸で様々な特徴が現れていました。


 ここで今まで触れてこなかった、ある()()について言及します。


 この世界には各大陸の他にも陸地が存在しました。

 世界の、南東、南西、北東、北西には、それぞれ、大きな島があるのです。

 南東の【エリュシオン】、南西の【マグメール】、北東の【エルドラード】、北西の【ティル・ナ・ノーグ】。

 これら4つの島は、魔物、【精霊】、【妖精】、【魔人(ディアボロス)】などの生息圏でした。


 島の魔物、【精霊】、【妖精】などは、いずれも中立な存在として設定されており……危害を加えたり、驚かせたり……魔物の方がお腹を空かせていたり、怒っていたりしなければ……基本的に襲われる事は少ないのです。

 なので大陸から上陸し、島にある貴重な素材などを採取して生計を立てている人々もいました。

 もちろん、野生の魔物のする事ですから【遭遇(エンカウント)】した場合、安全を保証する事は誰にも出来ませんが……。


 島に生息する魔物などは、やろうと思えば【調伏(テイム)】する事も可能です。


 あくまでも……やれるなら……ですけれどね。


 島の【魔人(ディアボロス)】は、人種に対する【敵性個体(エネミー)】と設定されており、【遭遇(エンカウント)】すれば交戦せざるを得なくなります。

魔人(ディアボロス)】は人種を上回る高い知性をと強大な魔力と戦闘力を持ち、【精神支配】や【呪詛】あるいは【石化(ミネラリゼーション)】など様々な特殊攻撃を使うので、もし戦うつもりならレベルや装備やパーティを整えてから挑むべきでしょう。


 ただし、島の【魔人(ディアボロス)】達は奥地に暮らし滅多に島の沿岸部までには姿を現さないので、慎重に行動すれば彼らに【遭遇(エンカウント)】する頻度は高くありません。

魔人(ディアボロス)】は人種に比較しても高い知性を持つのですが、絶対数が少ない為か社会性を築く事は少なく、総体として人種文明に及ぼす脅威度は低いのです。

 大抵は生息地の奥地で静かに暮らしていました。


魔人(ディアボロス)】の他にも島の脅威は存在します。

 島の守護獣で……【神格】を持つ【領域守護者(エリア・マスター)】。

 代表的な例を挙げるなら【神狼】の【フェンリル】が北西の島【ティル・ナ・ノーグ】の守護獣です。


 島の守護獣は基本的には中立個体でした。

 しかし、島の平穏を脅かす者にとっては敵になります。


 NPC達の定説では【神格】の魔物は人種では倒せないと言われています。

 厳密にはレベルカンスト級のユーザーが大規模パーティを組んでレイドに挑み、何度もコンティニューを繰り返しながら戦い抜けば倒す事自体は可能でした。


 このレイドに勝利して得られる報酬は莫大。

【神格の守護獣】を倒すと島の中央にある財宝部屋が開き、その財宝が全て手に入りレイドに参加したメンバーで山分けにされます。

 財宝はランダムで多くの【神の遺物(アーティファクト)】がドロップしました。


【神格の守護獣】は不死身なので、倒しても島の中央部にある【領域守護者(エリア・マスター)】の住処で1月後には復活します。

 毎月島の守護獣が【復活(リスポーン)】すると、ユーザー達は大挙して島に上陸し大規模レイドを戦うのが恒例となっていました。


 島の【領域守護者(エリア・マスター)】は【神格】の魔物ですので、当然【超位】の【ダンジョン・ボス】を上回る戦闘力があります。

 しかし【遺跡(ダンジョン)】とは違い、【|《》】スタンピード】のような災厄イベントは発生させないので、こちらから近付いてチョッカイを出さなければ人種文明を脅かすような事はありません。


 島には人種が上陸して植物や樹木を採取したり、野営など小規模で短期的な生活をする事は可能ですが、大規模に自然を切り開いて開拓したり集落などを建てて大勢で定住などをしようとすると、島を守る【領域守護者(エリア・マスター)】たる【神格の守護獣】が侵入者に襲いかかります。

 この4つの島は人種の生存圏からは隔絶した場所なのです。


「ノヒト様。そろそろお時間でございます……」

 エズメラルダさんが声を掛けて来ました。


 ああ、もう、そんな時間ですか……。


 さて【ウトピーア法皇国】は何を考えているのか?

 きっちりと説明してもらいましょう。


 ・・・


 私は【神竜(ディバイン・ドラゴン)】形態に【現身(げんしん)】したソフィアと並んで高座(スローン)に座り、在【ウトピーア法皇国】大使との謁見に同席していました。

 私とソフィアの一段低い位置にアルフォンシーナさんが控えています。


 在【ウトピーア法皇国】大使は所謂(いわゆる)特命全権大使であり【ウトピーア法皇国】の国家元首の名代である為、【ドラゴニーア】の事実上の統治責任者であるアルフォンシーナさんに対して跪いての拝礼などはしませんが、今回の場合は話が別。

神竜(ディバイン・ドラゴン)】たるソフィアと【創造主(クリエイター)】の御使(みつかい)たるゲームマスターの私は、人種の国家元首より格式では上位でした。

 国際儀礼格式上ソフィアや私に対して人種は跪いて礼を執らなければならないそうです。


 まあ、私は人としての最低限の品位を(わきま)えてくれるのならば、別に儀礼格式などには拘りませんけれどね。


 しかし、在【ウトピーア法皇国】大使は、立ったまま頭も下げません。

 それどころか爆弾発言を投げ付けます。


「我が国は【神格者】などの存在を認めてはおりません。従って【神竜(ディバイン・ドラゴン)】なる(けだもの)を崇める筋合いもない。他国の賓客を迎えるなら、ここへ降りて対等な視線で相対するのが礼儀と心得ますが如何(いか)に?」

 在【ウトピーア法皇国】大使は言い放ちました。


「ほ〜う、面白い。この我と対等と言うかよ……【(ヒューマン)】の使い走り(ごと)きが……」

 ソフィアが怒気を込めた魔力を撒き散らしながら言います。


 どうでも良い事ですが、ソフィアは【神竜(ディバイン・ドラゴン)】形態の時は、()()()()()ではないのですね。


 在【ウトピーア法皇国】大使は顔面蒼白でガクガク震えていました。

 彼は職責上本国からの指示に従って居丈高(いたけだか)に振舞っているだけで、非礼な態度は彼自身の意思ではないのかもしれません。

 きっと、あらん限りの気合いを振り絞って立っているのでしょうね。


神竜(ディバイン・ドラゴン)】形態のソフィアは50mの巨体。

 不死身で世界最強の存在でした。

 矮小で脆弱な人種など、やろうと思えば指先でプチれます。


 その上【神格者】は【神威】という一種の【精神攻撃】を発生させられるので、生半可な胆力では【神格者】の威圧に耐える事は出来ません。


 実際、在【ウトピーア法皇国】大使の彼は、かなり頑張っていますよ。

 産まれたての仔馬みたいに膝はガックガクですが……。


 取り敢えず事前に決められていた台詞だけは言い終わったからなのか、その後は在【ウトピーア法皇国】大使は、特段失礼な態度はせず粛々と謁見の段取りを終わらせました。

 先程の失礼な物言いは、きっと外交文書に……如何(どう)だ?ウチの国は【ドラゴニーア】に対して、こんな事を言ってやったぜ……的な記録を残すだけの意味しかなかったのでしょう。


 大人の対応をして穏便に事が済むかと思っていたのも束の間、ソフィアが先程の在【ウトピーア法皇国】大使の非礼な態度を混ぜっ返しました。


「ところで【ウトピーア】の者よ。我に対し非礼なる言を執った件、どのように始末を付けるのだ?其方の振る舞い如何(いかん)によっては、罪なき【ウトピーア】の民が塗炭の苦しみを味わう事になる。其方らは守護竜【リンドヴルム】に捨てられただけではなく、我をも敵に回すのか?返答次第では、今すぐこの場から飛び立って【ウトピーア】を灰燼に帰すぞ!」

 ソフィアは【神威】の出力を高めて、在【ウトピーア法皇国】大使に詰問しました。


 在【ウトピーア法皇国】大使は崩れるように膝をつき激しく痙攣し始めます。


 オロオロオロオロ……。


 あ〜あ、吐いちゃった……。


「さあ、【ウトピーア】の者よ、答えよ!答えぬなら【ウトピーア】を滅ぼす!さあ、さあ!」

 ソフィアは尚も【神威】を浴びせかけて迫ります。


 ソフィア、大人気ありませんよ……もう、その辺で許してあげたら如何(どう)ですか?


 私は【念話(テレパシー)】でソフィアを(たしな)めました。


 ノヒトよ……これは外交上のギリギリの攻防なのじゃ……公式な外交の場で我に対する非礼を許せば、それはセントラル大陸全体が【ウトピーア】の主張を是認した事になる……なあなあ、で事を済ませば、この場は穏便に済むかもしれぬが……後に取り返しのつかぬ禍根を残す……これは我としてもセントラル大陸の民の為に決して退く事が許されぬ一線なのじゃ……じゃからノヒトは、しばし堪えて欲しいのじゃ。


 ソフィアは【念話(テレパシー)】で答えます。


 なるほど、そういうモノですか?

 外交って面倒です。


「【神竜】様に対し……非礼なる言……取り消した上で謝罪致しまする……誠に申し訳ございませんでした……」

 在【ウトピーア法皇国】大使は半ば白眼を剥き泡を吹きながら言いました。


 そして謝罪を言い終わった途端、在【ウトピーア法皇国】大使はバッタリと床に倒れ込みます。


「セントラル大陸の守護竜として【ウトピーア法皇国】を代表しての謝罪を確かに受け取った。今後は両国に憂いなく共に栄える事を願う」

 ソフィアは言いました。


 ほれ、誰か早く治療してやるのじゃ……。


 ソフィアが()()を出して命じると控えていた【ドラゴニーア】の【女神官(プリーステス)】達が救護に集まり、【ウトピーア】側の外交官達も集まりました。

 やがて在【ウトピーア法皇国】大使は意識を取り戻します。


 しかし、卒倒した為に大事をとって謁見は終了。


 私は結局、在【ウトピーア法皇国】大使ではなく一段下位の公使に魔法ギルドを追放した件を問い(ただ)しました。


【ウトピーア法皇国】公使の解答は要領を得ずノラリクラリ……。


 頭に来た私は【魔力探知(ディテクション)】を【認識阻害(ジャミング)】する指輪を外して、ソフィアと同じように【神威】を発動しました。


 私は、初めて自分の意思で【神威】なんかを使いましたよ……。

 使っていて気持ちの良い【能力(スキル)】ではありませんね。


 まあ、【神格者】の【神威】は【常時発動(パッシブ)】で発散されていますが、私は相手を恐れ(おのの)かせる目的で意図的に【神威】の出力を上げたのです。


 私の【神威】に当てられた【ウトピーア法皇国】公使の弁明によると……。


【魔法ギルド】の国外退去は、【魔法ギルド】側の意思であり(嘘)、【ウトピーア法皇国】の意図するものではない(嘘)。

【ウトピーア法皇国】は国際法に照らし恥じるような如何(いか)なる不法行為も行なっていない(たぶん嘘)。


 ……と、いう事です。


 取り敢えず【ウトピーア法皇国】の言い訳だけは聞きました。

 是認も看過もするつもりはありませんが……。


 まあ、どちらにせよ【ウトピーア法皇国】には近い内に査察に行かなければいけません。

 ソフィアの脅し文句ではありませんが、場合によっては大量殺傷兵器を造っているかもしれない工場や研究所を私がブッ壊します。

お読み頂き、ありがとうございます。


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[気になる点] 主人公、これだけの力を持ってるのに……読んでいて歯痒い
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