第291話。マジック・アーチャー(魔法弓士)。
名前…イングヴェ・アトランティーデ→イングヴェ
種族…【人】
性別…男性
年齢…24歳
職種…【王家】→【罪人】
魔法…なし
特性…【才能…先導】
レベル…20
元【アトランティーデ海洋国】第2王子。
ファヴの意に反して、自らが【パラディーゾ】の王となる陰謀を画策したが、露見して廃籍され幽閉されている。
【ワールド・コア】ルームの中華料理店。
「では、そろそろ、お開きにしましょうか?」
私は、会計を頼みました。
私とトリニティは、ゲームマスター側なので無料。
ファミリアーレとサブリナの支払いは私持ち。
その他のメンバーの支払いは、原価実費のみと格安です。
「ノヒト先生。明日の準備は何を持っていけば良いのでしょう?通常の冒険に必要な物資は、一通り準備した方が良いのですか?」
グロリアが訊ねました。
この後ファミリアーレは、明日の準備に取り掛かる予定です。
「食料と飲料は、原則として、カティサークで食べられますし、グレモリーやディーテさんが引率してくれるので、【転移】で食事に連れて行ってくれる予定ですが、一応皆も4日……余裕を見て1週間分ほどの食料を持って行って下さい。着替えは、汚損防止の【バフ】付きの着替えが暑い用と寒い用で2セットあれば良いでしょう。遭難や迷子になる事を心配するのなら、念の為に清潔なタオルを多めに持ち、毛布やライトや簡易的な調理器具や医療セット、テントと寝袋などもあれば良いでしょうね。スマホや【ビーコン】は、いつも携帯しているでしょうから、そのまま持って行って下さい。あと、ダンジョン・ガイドブックも忘れずに。資材系は、どうしましょうか?」
私は、グレモリー・グリモワールに訊ねました。
「30階層でしょう?いらないんじゃない?基本的に物資は私とディーテが大量に持つし、ハグレて遺跡で迷子になったりした場合は、ノヒトが、すぐ救出に来てくれるんでしょう?」
グレモリー・グリモワールは言いました。
「はい、もちろんです」
「なら、資材系はいらないよ」
あ、そう。
グレモリー・グリモワールがそう言うのならいらないのでしょう。
「グロリア。この後、皆で、【ワールド・コア】ルーム内で買い出しをして、各自必要な食料と飲料と消耗品を揃えて下さい。支払いは、私に付くので気にしなくても大丈夫です」
私は、空の【宝物庫】をファミリアーレに配布しました。
「ありがとうございます」
ファミリアーレには、既に【宝物庫】を1個〜3個貸与しているのですが、今回、一人当たり、ストックも含めて合計5個の【宝物庫】を半永久貸与する事にします。
「それから、後でアブラメイリン・アルケミーの直販店に行って【ハイ・エリクサー】を人数分の10倍分ほどを買って、各自に持たせておいて下さいね。支払いは、私に請求書を送ってもらうように話が通っています」
「わかりました」
グロリアは、スマホのメモ機能に、私が言った事を記入しながら頷きました。
うん。
しっかり者のグロリアに指示しておけば、問題ありません。
「ノヒト。その買い出し無料は、私も対象?」
グレモリー・グリモワールが言いました。
「グレモリーは、大金持ちなので、もちろん自腹ですよ。自分で払って下さい」
「ちっ、ダメか……。ドサクサ紛れでOKになるかと思ったのに。食料やら、【ハイ・エリクサー】やらをタダで大量に買い込みたかった」
グレモリー・グリモワールは呟きます。
「サブリナは、これから装備品を揃えましょうね」
私は、グレモリー・グリモワールの欲望ダダ漏れの呟きをスルーして、言いました。
「はい、わかりました」
サブリナは返事をします。
私達は、行動を開始しました。
・・・
【無限ストッカー】ルーム。
私とトリニティとで、サブリナの装備を見繕ってあげています。
「サブリナは、泉の妖精から【長弓】をもらいましたね?」
「はい」
サブリナは、【魔女】の職種を与えられながら、泉の妖精からは、何故か、魔法杖などの【魔法触媒】ではなく、弓を武器として充てがわれていました。
これは、間違いなく、アレのフラグです。
私は、内心とても興奮していました。
「最強の弓の代名詞と言えば、【アルテミスの弓】か【ディアナの弓】ですが、長弓や豪弓なら【与一の弓】や【ヘラクレスの弓】……もはや弓の範疇には入らないかもしれませんが【ボーガン】や【バリスタ】も選択肢としてはありますね。持ってみた感じでは、どれが良いですか?」
私は、色々な弓をサブリナに持たせて、試しに弦を引かせてみせます。
「うーん……よく、わかりません」
サブリナは、どれもピンと来ない様子。
無理もありません。
初めて弓を握ったのですから、良し悪しなどわかりようもないのです。
しかし、持ってみたら……何だかシックリ来る……というようなモノがあるかもしれないと思い、ダメ元で持たせてみました。
「なら、無難に【アルテミスの弓】ですね。これが一番癖がありませんので」
私は、【神の遺物】の【アルテミスの弓】をサブリナの【主武装】に選びます。
【アルテミスの弓】は既存の弓の特性を究極まで高めた長射程・超威力の【神の遺物】の弓。
なので、通常の弓と同様の扱いが出来、弾道計算なども物理学が、そのまま利用出来ます。
【ディアナの弓】は水平射撃特化なので、ライフル銃のように矢が射程限界まで直進する為、曲射には向きません。
曲射が上手く狙えないので、城壁などを超えて遮蔽物の向こう側にいる敵などに射る為には、不向きでした。
【与一の弓】は命中精度が上がる補正がかかりますが威力の点では【アルテミスの弓】と【ディアナの弓】に劣ります。
【ヘラクレスの弓】は城壁を崩すような威力がありますが、命中精度は存外にアバウト。
【ボーガン】や【バリスタ】は使用法からして、弓とは大分違います。
まあ、【アルテミスの弓】が無難でしょう。
【アルテミスの弓】がメイン・ウエポンに決まれば、防具は当然【アルテミスの鎧】でしょう。
【アルテミス】シリーズや、【ディアナ】シリーズは、全【弓士】垂涎の装備一式ですからね。
「それと、コレを使って下さい」
私は、【神の遺物】のヤドリギの枝【ミストルティン】をサブリナに手渡しました。
「この枝は?」
サブリナは、困惑します。
「【ミストルティン】というアイテムです。葉っぱを1枚むしってみて下さい」
私は促しました。
サブリナは、言われるがまま、【ミストルティン】からヤドリギの葉を1枚ちぎります。
すると、ヤドリギの葉は、サブリナの手の中で矢に変わりました。
サブリナが葉をちぎり取った後には、すぐ新しい葉が生えて来ます。
「へっ?!」
サブリナは、驚きました。
「この【ミストルティン】は、無限の矢筒のように働くアイテムなのです。これを、ベルトなどに括り付けておいて下さい」
「わかりました」
サブリナは、頷きました。
私は、密かにワクワクしています。
サブリナは、魔法への高い適性を持ち、チュートリアルを経て【魔女】の職種を得ました。
しかし、泉の妖精からは【弓】を武器として与えられています。
つまり、サブリナの将来の職種は、【魔法弓士】。
私は、【魔法弓士】が好きなのです。
プライベート・キャラとしてグレモリー・グリモワールを作る時、私は、【死霊術士】か【魔法弓士】かの選択で最後まで迷ったくらいに。
【魔法弓士】の最終形態は、【魔法弓師】……サブリナは女性なので、【魔法弓師】ですね。
矢に魔法を纏わせ、遠隔から敵を射抜く。
実に格好良く、ロマンがあるのです。
格好良さ以外でも、【魔法弓士】は魔力効率が良く、非常に優秀な【後衛】でした。
最大火力の点で、やや弱いものの、【アルテミスの弓】や【ミストルティン】など強力な弓や矢を持てば、その弱点も補え、また、レベルが低い時点から【超位】級の攻撃威力値を叩き出せます。
【魔法弓士】は、パーティに1人は、入れておきたい存在ですが、育成が難しく、極めてレアな職種でした。
【魔法弓士】の育成に失敗して中途半端な【一級射手】や【狙撃手】に成ってしまって泣くユーザーが多いのです。
彼らは、不本意な職種で渋々生きて行くか、新しいアカウントを作りキャラメイクからやり直すか、はたまた高いコストを払って【職種変更】する事となる訳ですね。
非効率です。
誤解のないように言っておきますが、【一級射手】や【狙撃手】は、けして悪い職種ではありません。
その道を突き詰めて来た【一級射手】や【狙撃手】は、非常に強力です。
ただし、【魔法弓士】の育成に失敗した成れの果てである【一級射手】や【狙撃手】は、色々と中途半端。
魔法も弓も、どっちつかずで器用貧乏的な、強い敵の前では、ほとんど役に立たない職種と成ってしまいます。
何故、育成に失敗するかというと、武器戦闘職と魔法戦闘職は、育成の道のりが、まるで違うからでした。
育成失敗の原因は、幾つかありますが、まず最初にやりがちなミスは、キャラメイク。
弓の扱いに関わる初期ステータスを絶対に上げてはいけません。
これをすると、【一級射手】や【狙撃手】の道真っしぐらです。
初期ステータスは、純粋な魔法職としてキャラメイクをした上で、後天的に弓の扱いを極めなくてはいけません。
しかし、これが困難極まりないのです。
基本的に、魔法職は、弓の扱いが上手く育たないからでした。
魔法職は、武器……特に熟練値を要する弓矢の扱いは、超下手くそ。
端的に言えば、射てども射てども、ちっとも矢が当たりません。
かと言って、敵に矢が当たる至近距離に近付くと、魔法職は、防御力や肉体強度が低いので、すぐに死にます。
そして、矢が当たっても、弓のステータスが低いので威力は激弱。
威力を上げる為にアイテムの力を借りてブーストしようとしても、強力な弓は、ほとんどが超激レアなので、超高額で買えません。
自力で入手しようとしても、メチャクチャ弱いので、遺跡深層部などに潜れば、呆気ないほど簡単に死にます。
このように【魔法弓士】の育成は超絶困難で、ユーザーからは、苦行、と云われていました。
しかし、私がファミリアーレ同様に手塩にかけて育成すれば、サブリナを憧れの【魔法弓士】に育て上げる事が出来ます。
夢が膨らみますね。
「【副武装】は、どうしましょう?」
「弓を持ちながら近接で戦うなら、これはどうでしょうか?両手がふさがっていても戦えますので」
トリニティが、触手が生えた肩当てを持って来ました。
「悪くはないのですが、コレは案外、使い勝手が悪いんですよ。【ロケット・パンチ】や【パイルバンカー】や【連接剣】や【ドリル・カー】と並んで、ロマン枠ですね」
「なるほど」
【パイルバンカー】は、仕込まれた杭が勢い良く飛び出すギミック。
大抵は拳にハメる形状が多く、派生型で【ドリル・ナックル】というモノもありました。
【連接剣】は刀身が数珠繋ぎに分かれるギミックがあり、鞭のようにも扱える剣。
他にもパンジャンドラム、多砲塔戦車、散弾式大砲など、誰しも一度は想像はするけれど実在しない武器・兵器類は、大抵、先人が試して何らかの不具合があったり、効率が悪かったりしたから、現代に残っていないのです。
結局、サブリナには、近接用武器として【フランベルジュ】を装備させる事にしました。
【フランベルジュ】は波打った刀身の【ロング・ソード】です。
サブリナは【ラミア】ですので、元来の膂力は、【人】や【エルフ】より強いので、【ロング・ソード】も扱えるでしょう。
この他、サブリナにはレジョーネとファミリアーレの標準装備である【認識阻害】の指輪、【宝物庫】を5個、【ビーコン】、スマホが貸与されました。
それから、【自動人形】・シグニチャー・エディションを1体、大急ぎで造り、サブリナの護衛、兼、保護者役として渡します。
これで良し。
私はサブリナを買い出しをしているファミリアーレの方に合流させました。
さてと、そろそろ午後の予定消化に向かわなければいけません。
つまり、グレモリー・グリモワールが庇護する【サンタ・グレモリア】での地下鉄建設です。
グレモリー・グリモワールは、現在、ファヴに連れられて、王都【アトランティーデ】と、首都【パラディーゾ】と、【ムームー】王都【ラニブラ】に転移座標を設置しに向かいました。
この後、サウス大陸の関係者にチュートリアルを受けさせてもらう為です。
グレモリー・グリモワールの2人の養子であるフェリシアとレイニールは、ディーテ・エクセルシオールと一緒に【ワールド・コア】ルームや【ドラゴニーア】の竜都などで買い物や観光をしてから、【サンタ・グレモリア】に帰るのだ、とか。
また明日、竜城に集合してもらいます。
「さあ、行きましょう」
「「おーーっ!」」
私、ソフィア、オラクル、トリニティ、ウルスラ、ヴィクトーリアは、【サンタ・グレモリア】に向かって【転移】しました。
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