第289話。コンパーニア首脳陣などのチュートリアル。
本日、2話目の投稿です。
竜都【ドラゴニーア】中心街。
マリオネッタ工房本社オフィス。
私、ソフィア、ウルスラ、オラクル、ヴィクトーリアは、マリオネッタ工房本社オフィスにやって来ました。
ハロルド、イヴェット、イアン、ヴァレンティーナさん、サブリナ……そして、5人のコンパーニアの孤児院出身管理職は、1人を除いて全員集合しています。
残りの1人は、【ラウレンティア・スクエア】の支配人であるウィノナでした。
ウィノナとは現地で合流します。
「では、冒険者ギルドに向かいましょう」
「「おーーっ!」」
ソフィアとウルスラが手を挙げました。
・・・
私達は、ゾロゾロと冒険者ギルドを目指します。
「ノヒトよ。どこへ行くのじゃ?」
ソフィアに呼び止められました。
「どこ、って冒険者ギルドですが……。ああ、引っ越ししているのでしたね」
元の冒険者ギルド【ドラゴニーア】支部のあった建物は、ソフィア・フード・コンツェルンが購入し本社ビルになっているのです
新しい世界冒険者ギルド本部は、セントラル・サークルの向かい側。
支部時代の建物より、巨大で豪壮な建物に引っ越していたのですよね。
いやいや、つい今までの習慣で体が動いてしまっていました。
ウッカリです。
私達は、紅葉に色付く樹木が植えられた、広大な公園であるセントラル・サークルを【飛行】で横断して、新・世界冒険者ギルド本部に到着しました。
・・・
世界冒険者ギルド本部。
私達が、1階の広いエントランスに入ると、長大なカウンターに大勢の受付職員が、ズラズラズラーーッ、と座っていました。
壮観ですね。
まだ、引越しの途中で、本部機能は、【アトランティーデ海洋国】の方にあるとはいえ、ここは、王都【アトランティーデ】の冒険者ギルド本部より広くて豪華。
正に、世界の主要ギルドの本部に相応しい施設ですね。
また、ここは、私の記憶にある900年前の世界冒険者ギルド本部です。
懐かしい感じがしますね。
私達が、キョロキョロと中を見回していると、エミリアーノさんと、ドナテッロさんが、奥から、やって来ました。
「おはようございます、ソフィア様、ノヒト様、皆々様」
エミリアーノさんが挨拶をします。
「おはようございます。本日は、素晴らしい機会を与えて下さり、ありがとうございます」
ドナテッロさんは言いました。
「おはようございます」
「おはよう、なのじゃ」
ソフィアが手を挙げて言います。
「おはよ〜」
ウルスラは、エミリアーノさんとドナテッロさんの前をピュンピュンと、移動しながら言いました。
「エミリアーノさんは、この度、昇進なさるのだとか?おめでとうございます」
「ありがとうございます。現職より責任が重い立場となりますので、身が引き締まる思いです」
エミリアーノさんは、笑います。
「ドナテッロさん。奥様には、お世話になっていますよ」
「いえいえ。妻は……ノヒト様や、ソフィア様のように職人の技を理解して下さる方々に、寿司を握れる事は幸せだ……と、常々申しております。また、商売的にも、大変に有難いと」
ドナテッロさんは、言いました。
「早速ですが、事前に、お願いしていた、転移座標を置ける場所を、お借りできませんか?」
「はい。お部屋は、ご用意してあります。グランド・マスターからは……ノヒト様に永代使用して頂いて構わない……という許可をもらってあります」
エミリアーノさんは、言います。
元の冒険者ギルド支部は、マリオネッタ工房本社や、銀行ギルド本店や、宿屋パデッラなどがある方角だったので、転移座標は設置していませんでした。
新しい冒険者ギルド本部は、広大なセントラル・サークルを挟んだ反対側なので、転移座標があった方が便利です。
私達は、冒険者ギルドの奥からエレベーターで上階に昇りました。
・・・
冒険者ギルド本部の転移座標部屋。
私達に充てがわれた部屋は、大きな貴賓室でした。
私、ソフィア、オラクルは、早速、転移座標を設置します。
「豪華な家具や調度類は、移動して下さいますか?転移座標部屋ですから必要がありませんので」
「そうですか。では後で運び出させます」
エミリアーノさんは、内線で、職員に指示を与えました。
「では、行きますよ」
「「おーーっ!」」
ソフィアとウルスラは、気勢を上げます。
私達は、【ラウレンティア】に向かって【転移】しました。
・・・
【ラウレンティア】。
中央神殿の礼拝堂。
私達が到着すると、【ラウレンティア】の神殿長であるゾーラさんと、部下の【修道女】の皆さんが整列して迎えてくれました。
ウィノナもいます。
私達は、挨拶を交わしました。
「ゾーラさん。いつも礼拝堂を使わせて頂いて申し訳ありません」
「いいえ。ソフィア様や、ノヒト様の、お役に立てれば本望でございます。いつでも、お好きなように、お使い下さいませ」
ゾーラさんは言います。
ゾーラさんと、【修道女】の皆さんは、礼拝堂から退出して行きました。
さてと、早速、やっつけてしまいましょう。
私は、プリンシプルの【契約】を全員に結ばせました。
【契約】が済んだら、ガイダンスです。
「チュートリアルでは、私と同じ姿をした者が、案内をしてくれますので、その者の言う通りに進んで行けば迷わずに最終目的地の妖精の泉に辿り着けます。案内人は、姿が私と同じですが、私ではありません。幻影の類だと考えて下さい。チュートリアルの中の時間は、1日が、外の世界の1秒に相当しますので、ゆっくり時間をかけても、外の世界では一瞬の出来事です。なので、慌てず、じっくり落ち着いてチュートリアルに挑んで下さい。途中3度の戦闘があります。第1の敵は【ボール】、第2の敵は【クレイ・ゴーレム】、第3の敵は皆さんの能力を完全にコピーした自分自身です。いずれも、戦闘人工知能は、稚拙ですから、こちらが頭を使って戦えば問題なく倒せます。何度も負ける場合は、私の姿をした案内人が勝つ為のヒントを出してくれますので、クリア出来ないという心配はありません。どうしても、クリアが不可能だと思ったら、リタイアを宣言する事も出来ます。その場合、チュートリアル未達として、何度もクリアするまで挑戦出来ますので、心配しなくても大丈夫です。気楽にチャレンジして下さい。チュートリアル参加中に傷を負っても完全に治りますし、死亡しても何度でも生き返ります。【闘技場】のギミックと同じです。装備品の類が壊れても、完全に【修復】されます。3度の戦闘に勝つと、最終目的地である泉に到達し、泉の妖精から【贈物】を受け取れます。【贈物】は、鋼鉄製などの弱い武器と、金貨1枚と、何らかの【才能】です。【才能】は1個から最大3個まで貰えます。泉の妖精は味方です。攻撃しないように。説明すべきは、そんなところです。何か質問は?」
「僕らは、武器を持っていません。どうやって戦えば良いのですか?」
イアンが訊ねました。
「チュートリアルのスタート地点には、武器置場があります。なので装備なしでチュートリアルに挑んでも、大丈夫です。武器置場にある武器や防具を、自由に装備して下さい。私の姿をした案内人に質問すれば、ある程度能力に見合った武器を教えてくれます。チュートリアルが終わると、それらの武器や防具は、自動的に回収されます」
「なるほど」
イアンは納得します。
「チュートリアルの中で、傷を負ったり、死んだりしたら……その、やはり痛いのでしょうか?」
イヴェットが心配そうに訊ねました。
孤児院出身の面々も、一様に不安げに頷きます。
「激しい痛みではありませんが、多少の痛みは感じます。ただし平手で軽く叩かれる程度です。痛みは緩和されている仕様なので大丈夫です。また、チュートリアル中は、出血したり、傷口を見たりしても、ショックを受けたりしないように精神耐性が最大限に働いています。そういった面での心配もありませんよ」
皆、ホッ、と息を吐きました。
「さあ、案ずるより産むが易いのじゃ。1番手は、誰じゃ?」
ソフィアが言います。
「では、私が……」
エミリアーノさんが歩み出ました。
私は、エミリアーノさんを転移魔法陣の上に立たせて、【神竜】を模った彫像をクルクルと回転させます。
すると、エミリアーノさんの姿が、かき消えました。
・・・
1秒後。
エミリアーノさんは帰還しました。
エミリアーノさんの手には【鋼のロングソード】と、金貨1枚が握られています。
【贈物】は……。
名前…エミリアーノ
種族…【人】
性別…男性
年齢…43歳
職種…【剣士】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…調整】、【交渉】
レベル…33
エミリアーノさんが、もらったのは【才能…調整】ですか……。
エミリアーノさんは、もはや【剣士】を辞めて、外交官や交渉人などになった方が良いのではないでしょうか?
完全に戦闘職ではなくて、デスクワーカーのステータスですよ。
まあ、レベル・クオリティがユーザーと同等になっていますので、基礎戦闘力は2倍に強化されていますが……。
「次は、誰じゃ」
ソフィアが次を急かしました。
こうして、次々にチュートリアルに参加して行きます。
・・・
全員がチュートリアルを終えました。
「では、皆さんが、もらった【贈物】について簡単に説明します。この場所を長々と、お借りしたままでは迷惑になるので、竜城に向かいます」
皆、頷きました。
私達は、ゾーラさんに、お礼と挨拶をして、【ドラゴニーア】の竜城に向かって【転移】します。
・・・
竜城の私室。
「お疲れ様です。これから、皆さんが得た、【贈物】について説明します。まずは、【収納】、【鑑定】、【マッピング】は、皆さん共通で持っています。【収納】については、皆さんは、日常的に、【収納】系のアイテムを取り扱っているので、説明は不要でしょう。容量は100kg20品目です。装備品などは、【フルプレート・メイル】などというように、鎧の各パーツが別々に分かれたとしても、一式で1アイテムと見做されます。【鑑定】は、色々な物品や人物を見てみれば一目瞭然ですね。ユーザーが持つ【鑑定】と同等の高い性能があります。【マッピング】は地図機能です。緑色の光点反応は自分、青色の光点反応は味方、白色は中立、赤色は敵性個体です。地図上に目印としてピンを打つと黄色い光点となります。地図は縮尺が変えられます。ただし【マッピング】能力を身につけた以降、実際に訪れた場所以外は真っ黒で何も表示されません。色々な場所を歩き回る内に、段々と地図が埋まっていく仕様です」
皆、頷きました。
さてと、個人のステータスを確認して行きましょう。
エミリアーノさんは、戦闘職らしからぬデスクワーカー仕様になっていましたね。
本人も苦笑いしていました。
他の皆は……。
名前…ドナテッロ
種族…【人】
性別…男性
年齢…56歳
職種…【戦士】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…献身】
レベル…25
なるほど、ドナテッロさんは、【才能…献身】を【贈物】で貰ったのですね。
新人冒険者達の世話役として、ほとんど無報酬のボランティアで働いているドナテッロさんらしい【才能】と言えるのではないでしょうか。
名前…ハロルド
種族…【人】
性別…男性
年齢…44歳
職種…【社長】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…経営】
レベル…15
名前…イヴェット
種族…【人】
性別…女性
年齢…40歳
職種…【副社長】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…経理】
レベル…17
名前…イアン・ファブリツィアーニ
種族…【ドワーフ】
性別…男性
年齢…36
職種…【技師長】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…加工】
レベル…16
名前…ウィノナ
種族…【人とドラゴニュートの混血】
性別…女性
年齢…15歳
職種…【役員】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…経営】
レベル…9
名前…ウエイン
種族…【人】
性別…男性
年齢…15歳
職種…【役員】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…商才】
レベル…7
名前…テオドーラ
種族…【ブラウニー】
性別…女性
年齢…15歳
職種…【役員】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…業務処理】
レベル…6
名前…ウーラ
種族…【ドワーフ】
性別…女性
年齢…15歳
職種…【技師】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…器用】
レベル…7
名前…クリスト
種族…【人とドワーフの混血】
性別…男性
年齢…15歳
職種…【設計士】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…設計】
レベル…6
名前…ヨリック
種族…【エルフ】
性別…男性
年齢…15歳
職種…【研究員】
魔法…【風魔法】(未習得)、【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…風魔法】
レベル…7
名前…ヴァレンティーナ・ベルルーティ
種族…【エルダー・ホビット】
性別…女性
年齢…56歳
職種…【社長】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…業務処理】、【商才】
レベル…30
名前…サブリナ
種族…【ラミア】
性別…女性
年齢…14歳
職種…【魔女】
魔法…【空間魔法】(未習得)、【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…空間魔法】
レベル…5
一言で言えば、妥当ですね。
チュートリアルで得られる【贈物】は、参加者のキャラメイクに相応しい能力、熟練値などに基づいた能力、参加者の希望する能力になります。
NPCにはキャラメイクは関係ありませんので、現状の職業に応じた能力が発現したり【贈物】が与えられるのが当然でした。
私は、その後、各自の【才能】の説明をしたり、質問に答えたりします。
やがて、昼食の時間となったので、チュートリアル説明会は終了。
私は、ウィノナを【ラウレンティア】に……ハロルド達コンパーニアの首脳陣を【ドラゴニーア】のマリオネッタ工房本社オフィスに……ヴァレンティーナさんをソフィア・フード・コンツェルンに……エミリアーノさんとドナテッロさんを冒険者ギルドに、それぞれ送り届けます。
その後、私、ソフィア、ウルスラ、オラクル、ヴィクトーリア……そしてサブリナは、昼食を食べる為に、【ワールド・コア】ルームに向かって【転移】しました。
お読み頂き、ありがとうございます。
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・・・
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