第287話。ヘリコプター・マネー。
名前…ローリー・タンクレーディ
種族…【人】
性別…女性
年齢…27歳
職種…【貴人】
魔法…【回復・治癒】
特性…なし
レベル…15
【アトランティーデ海洋国】王太子妃。
【ドラゴニーア】出身。
・・・
【お詫び】
12月25日クリスマスに10話連続投稿をする、お約束でしたが、作者はインフルをもらってしまいまして、完全にダウンしており滞っております。
誠に申し訳ありません。
不足分は、後日必ず埋め合わせます。
最低でも毎日投稿は継続するつもりですが、万が一投稿が途切れた時は、作者が死んだとお考え下さい。
竜都【ドラゴニーア】竜城。
夕食後。
私達は、お茶を飲みながら、しばしの歓談。
「ノヒトよ。明後日からのファミリアーレの遺跡攻略なのじゃが、具体的な予定は、どうなっておるのじゃ?」
ソフィアが訊ねました。
「【静かの森】のブートキャンプと基本的には同じですが、今回は、ファミリアーレだけで挑ませます」
「ん?我らも当然、一緒に行くモノだと思っていたのじゃが?」
「ファヴは、サウス大陸……リントとティファニーは、【サントゥアリーオ】の方が忙しいので、今回は不参加ですよ。【コンティニュー・ストーン】は大量にありますし、カティサークと神の軍団の緑師団も投入するので、ファミリアーレの安全マージンは十分です。30階層の遺跡なのでレジョーネのメンバーが帯同しても、全くやる事がありませんよ。引率する意味は、ほとんどありません」
「確かに、30階層までは戦いにもならなかった故な。つまらぬのじゃ」
「なので、【オピオン遺跡】と【アペプ遺跡】はファミリアーレ主体で挑ませます。レジョーネは、その間に、サウス大陸の北東【ラドーン遺跡】と北西【ピュトン遺跡】を攻略してしまいますよ。こちらは99階層のフル遺跡なので、それなりに面白味があるでしょう」
「おーーっ!それは、腕がなるのじゃ。ん?ファミリアーレ主体?つまり、ファミリアーレの方には他にも誰かが加わるのか?」
「はい。グレモリー・グリモワールと彼女の2人の養子であるフェリシアとレイニール、そしてディーテ・エクセルシオールがゲストとして加わりますよ。グレモリー・グリモワールは、遺跡の完全攻略を10周以上、トータル300回以上の遺跡の攻略実績があります。この世界では、私、トリニティに次ぐ、遺跡のエキスパートですからね。ファミリアーレを引率させるのに不足はありません。グレモリー・グリモワールは、養子達に遺跡での経験値稼ぎをさせたかったらしく、ちょうど良い機会だから、とファミリアーレの引率を引き受けてくれました。私達は、そのおかげで、99階層のフル遺跡2つを攻略しに行けます」
「そうか。ならばグレモリーには、何か礼をしてやらねばの」
「本人は……もう、もらい過ぎているくらいだから、見返りはいらない……と言っていましたが、私達が【遺跡】で手に入れた【神の遺物】を幾つか譲渡すれば良いのでは?」
「そうじゃな。うむ、そうしよう」
その後、私達は、サウス大陸関連や、ウエスト大陸関連の情報共有をして、それぞれ就寝前の夜のルーティンに移りました。
しかし、私は、【ラニブラ】に建築をしに行かなくてはいけません。
「ノヒトよ。ご苦労様じゃの」
ソフィアは、言いました。
「ノヒト。サウス大陸の為にありがとうございます」
ファヴが言います。
「いえいえ、コンパーニアにも利益になる事ですので、礼には及びませんよ」
今の労働が、先々、莫大な不労所得を生むと思えば、苦労などとは思いません。
「ノヒト様。やはり、私も、ご一緒します」
トリニティは言いました。
「トリニティ。これは役割分担です。能力とは使い所があるのです。トリニティの力が必要ならば、睡眠中でも叩き起こして招集しますよ。なので、眠れる時には眠り、コンディションを常に万全に整えておくのも、トリニティの使命です。なので、今晩は体を休めて下さい」
「仰せのままに致します」
トリニティは言います。
私は、レジョーネの皆と別れて、サウス大陸の南方国家【ムームー】に【転移】しました。
・・・
【ムームー】王都【ラニブラ】。
私が礼拝堂に着くと、夜番の聖職者が数人いました。
「こんばんは」
私は、聖職者達に挨拶して、その場を後にします。
【ラニブラ】の王城を兼ねる中央塔から、【飛行】で離陸し、市街地にある【ラニブラ・スクエア】建築予定地に降り立ちました。
さてと、どれどれ。
私は、設計図面を開きました。
【ラニブラ】のコンパーニア支社と、ソフィア・フード・コンツェルン支社は、初期構造オブジェクトである3階建でロの字型の回廊状建屋に全て入ります。
【スクエア】は、回廊状建屋に囲まれた広大な中庭に建てるのですが、今回は地下が設計の肝。
地下1階は、ソフィア・フード・コンツェルンが運営するデパ地下。
その、さらに地下に例の【魔力子反応炉】施設を造る事としたのです。
【ウトピーア法皇国】が使っていたような不細工で人権蹂躙的な【魔力子反応炉】ではありません。
私がプロトタイプを製造し、ミネルヴァがそれを改良・最適化した……いわば完成版【魔力子反応炉】とも言うべき機構。
つまり、魔力買取施設です。
利用者は、【ラニブラ・スクエア】の地下に降りて、ケースに入り、最大9割(魔力量が少ない個体は、最大5割)までの魔力を【魔力子反応炉】に供出。
すると、買取してもらった自分の魔力量に応じて、買取料金が受け取れるというシステム。
安全装置が働くので、魔力を吸い尽くされて死んでしまう、などという事故は、物理的に起こり得ません。
お手軽なバイト感覚です。
また、完成版【魔力子反応炉】は、内部に入ると、自動的に体内サーチが行われ、健康診断が行える、という付加機能を追加しました。
さらに、魔力を売って、料金を得た人達は、その、お金で【スクエア】で買い物をしたり、レストラン街で、ご馳走を食べたり出来る訳ですね。
年齢制限を設けたので、親が子供を無理やり【魔力子反応炉】に入れて料金を搾取する、というような使い方は出来なくしてあります。
集められた魔力は、【魔法石】に充填されてバッテリーやプロパン・ガスのように販売。
【ウトピーア法皇国】が運営していた【魔力子反応炉】のように、日毎10億単位などというデタラメな出力の魔力は集められませんが、おそらく日毎数万単位くらいは集まるでしょう。
最も重要なポイントは、この買取は、強制ではなく、自主的に行われるという事です。
また、魔物などを【魔力子反応炉】に閉じ込めて、魔力を搾り取るというような、私やミネルヴァからしたら、多少、気分的に引っかかりを感じそうな方式でもありません。
私やミネルヴァは、一応、この世界の運営者側の立ち位置で、人種の味方でも、魔物の味方でもないのです。
まあ、目の前で、人種が魔物に襲われていたら、魔物を躊躇なく殺すと思いますが……。
ともかく、私やミネルヴァは、立場上、人種を奴隷化して魔力を搾取するのがダメで、魔物を隷属化して魔力を搾取するのはOKだ、とは、言い難いのです。
まあ、人種の奴隷化は、世界の理的にアウトですが……魔物の隷属化はセーフなのですが……。
ともかく、魔力買取施設は、人権上も動物(魔物)愛護上も安全上も、完全にクリーンなモノなのです。
おそらく、【魔力子反応炉】技術が世界に広く普及した後には、この方式を採用する国は多いのではないでしょうか?
魔物を閉じ込める方式を採用しても、私は別に取り締まったりはしませんが……。
奴隷方式は、許しませんよ。
因みに、私とミネルヴァが開発した完成版【魔力子反応炉】は、異世界的には未知の新技術が使われている上に、基幹部は、ブラックボックス化してあるので、模倣は不可能です。
私とミネルヴァの独占技術。
ミネルヴァが軽く、各国政府や各ギルドに販売の広報をしたところ、世界各国から、とんでもない受注が入って来ています。
これは、ゲームマスター本部の運営費の一部に充てられる予定。
ゲームマスター本部は、資金には困っていません。
オリハルコンだろうがヒヒイロカネだろうがアダマンタイトだろうがミスリルだろうが、私が無限複製出来ました。
また、【ストッカー】や【神の遺物】製造ラインでは、無限に【神の遺物】が生み出されます。
それらを売却すれば、無尽蔵に資金が得られました。
ぶっちゃけ……この世界唯一の国際決済通貨である【ドラゴニーア】金貨も無限に複製可能です。
通貨偽造?
いやいや、そもそも私達、運営が創る【ドラゴニーア】通貨がオリジナルで……【ドラゴニーア】政府の造幣局が造る【ドラゴニーア】通貨の方が、レプリカなのです。
【ドラゴニーア】政府造幣局が持つ貨幣鋳造のプロトコルは、【創造主】が創った初期構造オブジェクト。
【ワールド・コア】ルームにある、【神の遺物】製造ラインの、貨幣鋳造のみしか出来ない劣化版が、【ドラゴニーア】造幣局にある貨幣鋳造プロトコルなのです。
【創造主の魔法】によって生み出された通貨であるので、【ドラゴニーア】通貨は偽造が不可能であり、また、世界で一番信用が高い通貨でした。
つまり、私達が【ドラゴニーア】通貨を発行する事は、完全に合法。
まあ……世界の経済に混乱を生じさせない……というゲームマスターの遵守条項があるので、大っぴらにはやらない、というだけで、別に【ドラゴニーア】通貨を、私やミネルヴァが創って使用しても違法行為ではないのです。
違法行為ではありませんが、暗黙の了解として、それはやりません。
【ドラゴニーア】は歴史上一貫して良心的な国家でしたからね。
良心的な国に、運営が経済的負荷をかけるのは本意ではありませんので。
逆に言えば、【ドラゴニーア】が無法国家に変われば、私やミネルヴァは、すぐに、あり得ないほど膨大な【ドラゴニーア】通貨を無制限に発行して、世界中に空からバラ撒き【ドラゴニーア】にハイパー・インフレを起こさせ経済システムを完膚なきまでに破壊する事が出来ますよ。
文字通りのヘリコプター・マネー。
まあ、経済用語で云うところのヘリコプター・マネーは、実際に空から、お金をバラ撒いたりはしませんが……。
【ドラゴニーア】政府は、それに気が付いているので、世界の理を守る良心的な国家であり続けている訳です。
・・・
深夜。
【ラニブラ】で必要な施設は全て完成しました。
本来なら施設の管理と警備に【自動人形】・シグニチャー・エディションを投入するところですが、あいにくとストックが空っぽ。
仕方がないので、神の軍団緑師団の一個部隊を施設の警備に当たらせ、睨みを利かせてもらう事にしました。
「では、よろしく」
私は、緑師団の神兵達に声をかけます。
緑師団の神兵達は、揃って頷きました。
パスを通じて、特別な任務を与えられた喜びが伝わって来ます。
うん、頑張って下さいね。
私は、【ラニブラ】から【転移】しました。
・・・
【ワールド・コア】ルーム。
さてと、朝ご飯までに、造れるだけ【自動人形】・シグニチャー・エディションを造ってしまいましょう。
もはや大量の【自動人形】・シグニチャー・エディションを投入しての人海戦術に慣れてしまっている為に、私1人では、あらゆるオペレーションが捗りません。
内職。
20体分の構造部材を【収納】から取り出して、一気に20体の【自動人形】・シグニチャー・エディションを完成させます。
これで、ストックしてあった【自動人形】・シグニチャー・エディション用の部材は使い切ってしまいました。
完成したばかりの【自動人形】・シグニチャー・エディション20体に、新しい【自動人形】・シグニチャー・エディションの構造部材を素材から造らせながら、私は、【自動人形】・シグニチャー・エディションの【メイン・コア】となる【超位魔法石】に【積層型魔法陣】を組んでいきます。
私の手が余ると、今度は構造部材造りの方に参加しました。
ミネルヴァが、フルスピードで【自動人形】・シグニチャー・エディションを造る私を面白がって軽快なBGMを流してくれています。
アラームが鳴りました。
「ふ〜……5時間あまりで、完成品30体と構造部材のストック20体分ですか……また、時間あたりの製造数の新記録を更新してしまいましたね」
私は、呟きました。
「チーフ。凄かったです」
ミネルヴァが手放しで称賛してくれます。
「ありがとう」
途中、私は、また新たな作業工程の効率化を編み出しました。
通常、【自動人形】・シグニチャー・エディションを造る工程は、骨格を組み、回路を組み、構造部材を組み、外装を被せ、最後にメイン・コアを装填するのですが、私は、その工程を組み替えてみたのです。
つまり、メイン・コア……コア・ボックス……回路……骨格……構造部材……外装……という具合に。
【神位】の【理力魔法】で、各部材を空中に浮かべたまま、【神位】の【工学魔法】で一気に組み上げて行くので、おそらく私にしか出来ないやり方でしょうね。
これで、また、さらに作業がスピード・アップしました。
私は、完成した30体の【自動人形】・シグニチャー・エディションを、すぐ、【転送機】を使って【ラニブラ】に送りました。
そして、臨時警備に置いていた緑師団一個部隊を原隊に復帰させます。
これで良し、と。
私は、店開きしていた内職の後を、【収納】に回収。
「ミネルヴァ。では、出かけますね」
「はい。いってらっしゃい」
私は、【ワールド・コア】ルームからエントランスに出て、朝ご飯を食べる為に【ドラゴニーア】の竜城に【転移】しました。
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