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第283話。有能なCEO。

名前…クリスティン・オルコット

種族…【(ヒューマン)

性別…女性

年齢…47歳

職種…【貴人(アリストクラット)

魔法…なし

特性…【才能(タレント)慈悲(マーシー)

レベル…10


ゴトフリード王の妻。【アトランティーデ海洋国】王妃。

 朝食後。


 竜城に、ソフィア・フード・コンツェルンCEOのヴァレンティーナ・ベルルーティさんが、部下である複数の【自動人形(オートマタ)】達を引き連れて登城して来ました。

 ヴァレンティーナさんは、午前中、【タナカ・ビレッジ】でソフィア達とクイーンを交えて会議をして……午後はソフィア達と一緒に、コンツェルンの関係各所を見て回り、現地で指示を出すそうです。


 ソフィアは、早速、ヴァレンティーナさんに……ソフィア・フード・アカデミアの生徒さんには、高額な授業料を設定する代わりに、全員に奨学金を与え、ソフィア・フード・コンツェルンに入社して10年勤続した場合は、奨学金の返済は全額免除され、実質的に無償でアカデミアで学べる……という人材囲い込み方式を提案していました。

 ヴァレンティーナさんは、即断即決で、その案を採用。

 どうやら、問題は解決したようです。


 私とレジョーネの面々は、各自のやるべき事を行う為に、それぞれ目的地に向けて【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


【タナカ・ビレッジ】。


 私は、【タナカ・ビレッジ】にやって来ました。

 ソフィア、ウルスラ、オラクル、ヴィクトーリア、ヴァレンティーナさんも一緒。


 既に【タナカ・ビレッジ】の城門入口に、クイーンが待っています。

 いつものように護衛の【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションのジョーカーと、【アダマンタイト・ガーゴイル】達も一緒でした。


「クイーン。おはよう」


「おはよう、なのじゃ」

 ソフィアは片手を上げて挨拶します。


「おっはよ〜」

 すっかり目が覚めたウルスラも元気に飛び回って言いました。


「おはようございます。ソフィア様、ノヒト様、ウルスラ様、オラクル、ヴィクトーリア、ヴァレンティーナさん。お待ち申し上げておりました」

 クイーンが挨拶をします。


「「おはようございます」」

 オラクルとヴィクトーリアは、完璧なシンクロ率で挨拶しました。


「おはようございます。クイーン共同オーナー」

 ヴァレンティーナさんは微笑んで言います。


「皆様、屋敷へ、どうぞ」

 クイーンは、促しました。


 私達は、ゾロゾロと、クイーンの屋敷(エンペラー・タナカ氏の屋敷)に向かいます。


 ・・・


 クイーン(エンペラー・タナカ氏)屋敷のリビング。


「クイーンよ。今日、ノヒトが【タナカ・ビレッジ・スクエア】を建ててくれるぞ」

 ソフィアが言いました。


「ありがとうこざいます」

 クイーンは、私に頭を下げます。


「クイーン。相談があります。【スクエア】は、フォーマットが出来上がっていますので、問題はありませんが、ワインの醸造所(カンティーナ)の仕様を、どうしますか?要望があれば教えて下さい」


醸造所(カンティーナ)は、施設全体を冷却減湿して頂けますか?それから、ワインの保管と熟成用にも、冷却減湿された蔵も必要です。何分と、サウス大陸は、高温多湿ですから、ブドウを仕込む際に腐敗が起きてしまいます。それから、醸造所(カンティーナ)の中は、なるべく広くして下さいませ。通路を【ゴーレム】が余裕を持ってすれ違えるくらいの広さがあれば、ありがたいのです」

 クイーンは、自分で考えた懸案事項を書いたメモを取り出して言いました。


「問題ありませんよ。わかりました」


「良かったです。ワインに適したブドウの品種は、あるのですが、この辺りは赤道近くで、醸造には適さない気候なのがネックでしたので」

 クイーンは、言います。


 ブドウだけを作って、収穫した全量をワイン醸造に適した気候の地域に運んで仕込む、という方法もありますが、それでは、【タナカ・ビレッジ】に雇用を生み出す事が出来ません。

 この場合、クイーンの申し出がベストでしょう。

【タナカ・ビレッジ】には、【転送(トランスファー)装置(・デバイス)】がありますので、製品の出荷コストの問題は無視出来ますしね。


「と、言う事は、少しアルコール度数の高い蒸留酒などを醸造出来る施設も建造しますか?蒸留酒ならば、気温の問題も比較的影響が少ないですからね。サウス大陸にも【タナカ・ビレッジ】産の、お酒を流通させるなら、蒸留酒も必要ではありませんか?サウス大陸の一般家庭で冷蔵庫などが普及するのは、まだ時間がかかるでしょうし」


「確かにそうですね。では、お願い出来ますか?」

 クイーンは、申し訳なさそうに言いました。


「もちろん。では、早速、建築を始めますね」


「よろしくお願い致します」

 クイーンは頭を下げます。


 私は、クイーンに指定された醸造所(カンティーナ)の建築予定地に向かいました。


 ソフィア達は、クイーンの屋敷に残って、ソフィア・フード・コンツェルンの最高経営会議をするそうです。


 ・・・


 ワイン醸造所(カンティーナ)の建築。


 随分と、広いですね。

 ここに醸造所(カンティーナ)を建築するとなると、相当、巨大になります。


 こんなに必要なのでしょうか?


 ああ、なるほど。

 【カタナカ・ビレッジ】がある緯度帯は、熱帯気候。

 植物の成育が早く、年間を通して農繁期なのです。

 そして、この世界(ゲーム)の【地上界(テッラ)】側は、農業がイージーモード。

 つまり、クイーン農場で育てられる農作物は、8期作〜12期作などというデタラメな収穫が見込めるのです。


 とんでもないですね。


 つまり、このくらい巨大な施設でなければ、ワインが仕込みきれないのでしょう。

 どうしても地球の感覚で考えてしまいがちです。


 さてと、やりますよ〜っ!


 私は、魔法建築フルパワーで醸造所(カンティーナ)を造り始めました。

収納(ストレージ)】にしまっている【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションに加えて、イーヴァルディ(アンド)サンズの造船所からも【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションを動員してガンガン建築して行きます。


 基礎、土台、柱・梁・筋交いなどを纏めた構造材、壁、屋根と造ったところで、内装は、【自動人形(オートマタ)】軍団に任せました。

 私は、その間に醸造所(カンティーナ)の設備関係を造っておきます。

【プロトコル】、タンク、ボイラー、冷却減湿装置、空調、コンベア、無菌化装置……などなど。

 圧搾機の代わりとなる【掘削車(マイニング・ビークル)】も忘れずに【収納(ストレージ)】から取り出して、と。

 それらを、醸造所(カンティーナ)内に設置。

 細かな設定や養生や清掃は、【自動人形(オートマタ)】軍団に丸投げします。


 さてと、お次は、蒸溜所の建築。

 こちらも建屋を造った後に、必要な設備を設置して行きました。

 細かなところは、【自動人形(オートマタ)】軍団に、お任せ。


 その他、熟成蔵、冷蔵倉庫、事務所、従業員の使用する各種施設や設備なども建築。


 よし、ワインの醸造所(カンティーナ)関係は、完成です。

 マイナーチェンジが必要ならば、クイーンの配下の【自動人形(オートマタ)】達で出来るでしょう。


 私は、次に【タナカ・ビレッジ・スクエア】の建築に取り掛かりました。

 クイーンは、【タナカ・ビレッジ・スクエア】の建築予定地を、随分と良い立地に確保してくれましたね。

 まあ、【タナカ・ビレッジ・スクエア】に主要テナントとして入る、レストラン街、フードコート、デパ地下は、クイーンも共同出資者に名を連ねるソフィア・フード・コンツェルンが運営する訳ですから、当然かもしれませんが……。


 良し出来た。

【スクエア】は、もう同じモノを2つ建てていますので、慣れたものですし、必要な建築部材は一時加工を施した状態で大量にストックしてありますので、楽々建築ですよ。


 私は、内装などが終わった段階で【自動人形(オートマタ)】達を、イーヴァルディ(アンド)サンズの造船ドックの方に向かわせました。


 ・・・


 イーヴァルディ(アンド)サンズの造船ドック。


 私は、ミネルヴァから預かった【追尾誘導(ホーミング・)光子砲(フォトニック・カノン)】を建造途中の【超級飛空航空母艦(スーパー・キャリアー)】に設置して行きます。

 それから、船体の構造を仕上げてしまいました。

 そして、艦船の心臓部である機関部の組み立て、こちらは事前にパーケージングしたブラックボックスを用意しておいたので、設置すればOK。

 後は、後日、細かな内装や設備関係を造って……【メイン・コア】となる【ダンジョン・コア】を装填すれば、ソフィア艦隊の1番艦となる【超級飛空航空母艦(スーパー・キャリアー)】が完成します。


 ふ〜。

 相当、速く出来ましたね。

 私の方は作業が終わりましたが、ソフィア達の会議が、まだ続いています。


 ソフィアの脳に共生する知性体フロネシスを通じて、ソフィア達の会議の様子を見てみると。


「ソフィア・フード・コンツェルンのレストランで使う農畜産物の規格を、ある程度統一する為に、ソフィア農場と、クイーン農場で、栽培・育成する農畜産物を、同一品種で季節を変えて出荷出来ないか、という事を考えています」

 ヴァレンティーナさんが言いました。


「苗を頂いたモノに関しては、試験栽培を始めています。気候がかなり違いますので、生育に問題がなければ良いのですが……。仮に生育したとしても、ソフィア様の農場と、私の農場では、同じ苗でも、出来上がった作物の味は変わって来ますよ?農畜産物の規格統一は難しいのでは?」

 クイーンは、疑問を呈します。


「そこは、栽培法などを調整して、同じ品質を目指せませんか?」

 ヴァレンティーナさんは訊ねました。


「ソフィア様の農場と、私の農場で、それぞれの品質を下げれば、低いレベルで同じ品質には揃えられると思います」

 クイーンは、やや不本意そうに答えます。


 それは、そうですよね。

 規格を統一する為に、ワザワザ農畜産物の品質を下げるなどという事は、生産者の立場からは受け入れ難いでしょう。

 しかし、ヴァレンティーナさんの言い分にも一理はあるのです。

 ソフィア・フード・コンツェルンが運営する世界中の系列店で、年間を通して規格が統一された農畜産物を使用すれば、レストランなどのレシピを完全に統一出来ますので調理の効率化は図れますからね。

 場合によっては、調理行程を丸っと機械化出来るかもしれません。

 それから、世界中の、どの店舗でも同じ味のメニューを、いつでも食べられる、という事も、ある意味では信頼感としての利点はあるのでしょう。


「では、その方向で……」

 ヴァレンティーナさんは、キッパリと言いました。


 うーん。

 やはり、私は材料となる農畜産物の品質を下げてまで、統一規格に拘るのは何だか腑に落ちませんね。


「ならぬっ!ヴァレンティーナ、我やクイーンが目指すソフィア・フード・コンツェルンの方向性を間違えるでない。我とクイーンは、世界中に、美味しくて、安全で、食の素晴らしさを感じてもらえるような食材や料理を提供するビジネスモデルを望んでおるのじゃ。農作物の品質を下げて統一規格化するなどは、論外じゃ」


「しかし、そうしますと、季節ごと、あるいは材料の産地によって、料理の味が異なる、という事が起こり得るのでは?」


「世界中で提供する料理を通年画一化する必要があるのか?料理人の腕を規格化するのは意味がある。基本的なレシピをグループ全体で共有する訳じゃからな。しかし、材料となる農畜産物を、産地の特色を無視して、あえて規格化するのには、反対じゃ。季節が変わったら、農畜産物の味も変わる。それが当たり前なのじゃ。それを無理やり画一化すれば、歪みが生じるのじゃ。ましてや、品質を下げて、低いレベルで規格を揃えるなど、食文化の冒涜じゃ」

 ソフィアが、ヴァレンティーナさんに言いました。


 私も、ソフィアの意見は理解出来ます。

 しかし、ビジネスの合理化案となると、ヴァレンティーナさんの言い分も、わからないではありません。

 さて、どうなるのでしょうか?


「ある程度の統一感は、あった方が良いと思いますが?夏に食べた、あの料理を、冬も食べたい……と考える顧客はいるのでは?」

 ヴァレンティーナさんは、言います。


「そういう事もあり得るじゃろうが、我らのレストランは季節感や()という概念を大切にするのじゃ。季節が変われば、当然メニューも変わる。冬に夏限定のメニューを食べたい顧客には、夏まで待ってもらうか、冬おすすめのメニューを注文してもらうしかないのじゃ」


「ですが、名物料理となる、幾つかのレシピは世界全店で統一すると、聞いておりますが?」


「うむ。あくまでも基本となるレシピは同じモノじゃ。しかし、季節が変わったり、その土地ごとの農畜産物を取り入れるなどすれば、自ずから味は変わる。レシピ自体も季節ごとに変えるべきじゃ。しかし、それを当然の事として、顧客には理解してもらう他はないのじゃ。季節ごと、土地柄ごとに、工夫をして最高の料理を提供する事が重要なのじゃ。レベルを下げて低い水準で画一化された世界共通レシピなどは、ファストフード店にでも任せておけば良いのじゃ。ある程度、需要に対応し、顧客の期待に応える必要はあるにせよ、合理主義に迎合はしてはならぬ。我らのストロング・ポイントである最高の農畜産物の品質を、ワザワザ下げるような施策は、逆にソフィア・フード・コンツェルンの価値を毀損する恐れがあるのじゃ。却下じゃ」


「そうですか。グループ全体の利益を計算しやすくしたり、販売計画を立てたりする場合には、規格化は役に立つのですが……。わかりました、時期や産地によって、農畜産物の味などが変わるとしても、その時々に応じて最高品質のモノを提供する、として逆に()()としましょう」


「うむ。そうせよ」

 ソフィアは、頷きました。


 なるほど。

 ソフィアのやりたい方向性がわかりました。

 ソフィア・フード・コンツェルンが統括するレストラン・グループは、ゼネラル・クオリティのチェーン店ではなく、基本的なレシピは共有しながら各地で特色を出す……いわば暖簾分け方式を採用する訳ですね。


 確かに、あれだけ素晴らしい、ソフィア農場とクイーン農場の農畜産物を、通年品質を安定させるだけの目的で、ワザワザ劣化させるのは、冒涜と感じます。

 私も、ソフィアとクイーンの意見に賛成ですね。


 そして、ヴァレンティーナさんが、ソフィアに対しても物怖じせずに、ビジネスの見地に立った意見を堂々と主張していた事にも感心しました。

 上司に自分の意見を投げかけられない部下は組織の害悪ですからね。

 ヴァレンティーナさんは、CEOとして頼りになります。


 ・・・


 ソフィア達がドックにやって来ました。


「会議は、終わったの?」


「うむ。有意義な会議であったのじゃ」


「あ、そう。お昼ご飯を食べに行こうか?」


「ヴァレンティーナも連れて行っても良いか?イタリアン・リストランテか、フレンチ・レストランで食事をさせれば、我が目指す方向性を、ヴァレンティーナもイメージしやすいと思うのじゃ」


 私は、ミネルヴァに、お伺いを立てます。


「わかりました。プリンシプルを【契約(コントラクト)】してもらった上で、ソフィアが同伴している場合に限り、ヴァレンティーナさんの【ワールド・コア】ルームへの入場を許可します」


「ありがとう、なのじゃ」


 私達は、【シエーロ】に向かって【転移(テレポート)】しました。

お読み頂き、ありがとうございます。

ご感想、ご評価、レビュー、ブックマークを、お願い致します。

活動報告、登場人物紹介&設定集も、ご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告には、訂正箇所以外の、ご説明ご意見などは書き込まないよう、お願い致します。

ご意見などは、ご感想の方に、お寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

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