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第265話。威圧外交。

本日4話目の投稿です。

 竜城。


 寿司パーティーが終わり、ファミリアーレとコンパーニアのメンバーは、それぞれの家に帰って行きました。

 実は、竜都【ドラゴニーア】で勤務するコンパーニアの従業員数が増え、宿屋パデッラだけでは住居が足りなくなっています。

 なので、コンパーニアは、竜都の中心街にある幾つかのホテルも従業員の住居代わりに利用していました。


 4月以降は、今日、寿司パーティーを開催したホテルの一般宿泊客がいなくなるので改装工事をした上で、寮として利用出来るようになるので、従業員の住宅事情は余裕が出ますが、それまでは何とか住居不足を凌がなくてはいけません。

 業績は順風満帆なのですが、急激な成長による弊害が、多少、出て来ています。

 現在は、イヴェットがフルスイングして何とか回してくれていますが、今後は、私が何か手を打たなければならないかもしれませんね。


 コンパーニアの方だけでなく、ソフィア・フード・コンツェルンの方も色々と大変だと思います。

 ソフィア・フード・コンツェルンは、これから社員が増えるでしょうからね。

 ソフィアは……コンツェルンの運営は、ノヒトの手を借りずにやる……と言っていますが、大丈夫でしょうか?

 まあ、ソフィアは外見や行動から誤解してしまいますが、中身は立派な神様ですから、私が心配する事でもありませんが……。


 現在、ソフィア・フード・コンツェルンは、ヴァレンティーナ・ベルルーティCEOが、ほとんど1人で切り盛りしていました。

 ヴァレンティーナさんの仕事ぶりは、異常です。

 あんな膨大な決済と取引と営業と契約と事務処理を1人で抱え込み、涼しい顔で、それらを完璧にこなしていました。

 それを本人に言ったら……ノヒト様には、とても敵いませんよ。ノヒト様を見習って、もっと頑張らなくては……などと言われてしまいましたね。


 いや、私は、睡眠も休息も必要としないチート体質です。

 普通のNPCであるヴァレンティーナさんが、私を比較対象にして仕事をする事自体が異常でした。


 オラクルが造った【自動人形(オートマタ)】・オラクル・エディションがヴァレンティーナさんの直属の部下として働き、マリオネッタ工房から大量購入した【自動人形(オートマタ)】・オーセンティック・エディション達が事務員をしています。


自動人形(オートマタ)】・オラクル・エディションは、私が造った【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションには性能的に及びませんが、市販最高性能の【自動人形(オートマタ)】・オーセンティック・エディションよりは高性能でした。


 さらに来年1月の頭から、ソフィア・フード・コンツェルンでは、本格的に人種も働き始めます。

 この人達は、セントラル大陸の貧困層……主に、父子家庭や母子家庭……あるいは世帯収入の少ない子供がいる家庭の大人達でした。

 現在、その従業員の皆さんは、各所で研修中。

 一部は、コンパーニアでも研修していました。


 ソフィアは、孤児の次は、親がいても生活が苦しい子供がいる世帯を支援し始めたのです。

 ソフィアは、子供を守る事が第一優先。

 なのでソフィア・フード・コンツェルンは、全オフィス、全事業所に託児所を併設していました。

 異世界的には託児所付きの職場は、画期的な事業形態です。

 私も、コンパーニアの従業員達が結婚や出産・育児をするようになるでしょうから、ソフィアのやり方を真似させてもらうつもりでした。


 ソフィア・フード・コンツェルンは、食品専門商社として営業が開始され、開業と同時に世界有数の大企業となるのです。

 何しろ、資本金5千万金貨(5兆円相当)の会社ですからね。


「ノヒト。我らは休むが、気を付けて行ってらっしゃい、なのじゃ」

 ソフィアは、言いました。


「はい。おやすみ、ソフィア」


 レジョーネは、各自の部屋に向かいます。

 トリニティは、私について来たがりましたが……トリニティの活躍場所は別にあるので、今晩はしっかり身体を休めるように……と伝えました。


 私は、これから所用を片付けます。

 大した事ではありません。

 グリモワール艦隊を【サンタ・グレモリア】に運ぶだけの事です。


 私は、【ウトピーア】王都【トゥーレ】に向かって【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


 グリモワール艦隊旗艦【スキーズブラズニル】。


 私は、グレモリー・グリモワールの座乗艦【スキーズブラズニル】の艦橋(ブリッジ)に到着しました。


 グレモリー……着きました……どこにいますか?


 私は、グレモリー・グリモワールに【念話(テレパシー)】で伝えます。


 上級士官用食堂にいるよ。


 グレモリー・グリモワールは【念話(テレパシー)】で答えました。


 では、向かいます。


 私は、グレモリー・グリモワールに【念話(テレパシー)】で伝えます。


 はいよ〜。


 グレモリー・グリモワールは【念話(テレパシー)】で答えました。


 私は勝手知ったる艦内を歩いて、上級士官用食堂に向かいます。


 ・・・


【スキーズブラズニル】上級士官用食堂。


 私が、食堂に入ると、グレモリー・グリモワールとディーテ・エクセルシオールとピオさん……そして、対面に、イゾルデ・ゴルトベルグさん、ツェツィーリア・ハンマーシュミットさん……そして中年の男性が座っていました。


 私を見て、慌ててグレモリー・グリモワール以外の人達が、起立して挨拶をします。

 見慣れない中年の男性は、マリウス・モルゲンシュテルン参謀総長と名乗りました。

 マリウスさんは、旧【ウトピーア法皇国】の戦術部門の中将で、現【ウトピーア】の参謀総長。

 新生【ウトピーア】軍の制服組最高位の人物です。


【ウトピーア法皇国】軍の上層部は、元帥以下の大半が邪教信仰や、【(ヒューマン)】至上主義や、対外覇権主義を捨てられず、リントからポイッと排除されて纏めて【魔界(ネーラ)】行き。

 幹部がゴッソリといなくなった為、中将だったマリウスさんが玉突きのように最高位に昇りつめたのだ、とか。


 このマリウスさんは、例の注射器(シリンジ)戦術の考案者で、武人というより、テクノクラート。

 非常に理知的で合理主義者でもあり、また将兵達からも支持が厚いそうです。

 リントが気に入ったくらいですから、人格、見識共に優れた人材なのでしょう。


「こんばんは。これは、公式の会合ですか?」

 私は、一同に訊ねました。


「いいや。非公式な夕食会への招待という名目の、威圧外交だよ」

 グレモリー・グリモワールは言います。


 ディーテ・エクセルシオールとピオさんが、笑いました。

 イゾルデさんと、ツェツィーリアさんと、マリウスさんは、苦笑い。


 まあ、ご招待されて、【スキーズブラズニル】に乗れば、この艦がどれほど強力かわかるでしょうからね。

【ウトピーア】軍の現幹部達も、グリモワール艦隊の各艦船に招かれているそうです。

 つまりは、威圧外交。

 グレモリー・グリモワールは正直です。


 因みに、もう1人いた【高位司祭(ハイ・プリーステス)】のアンネリーセ・キースリングさんは、エクストリアの側仕えとして【ドラゴニーア】に帯同していました。


「公式の会合でないのなら、儀礼は略式で行きましょう」


「そだね〜。私も、その方が良いよ」

 グレモリー・グリモワールが同意します。


「あ、あのう。お2人は、お知り合いなのですか?」

 イゾルデさんが怖ず怖ずと訊ねました。


「そだよ。知り合いってか、もはや身内?」

 グレモリー・グリモワールが答えます。


「そうですね。肉親に近い感覚でしょうかね」


 私達は、元は同一自我。

 一心同体だったのです。


「では、お2人の来訪は、申し合わせての共同作戦だったのですか?」

 マリウスさんが訊ねました。


「違うよ。たまたま、でしょ?私は、あなた達が攻めて来たから、迎撃しただけだしね。申し合わせるもなにも、あなた達の意思なんかコントロール出来ないし」

 グレモリー・グリモワールが言います。


「はい。偶然です。私が【ウトピーア法皇国】に査察に入る事は、9月の初頭には決定していました。サウス大陸での業務が優先でしたので、【ウトピーア法皇国】の案件は今の時期にズレ込んだだけですね」


「そ、そうですか……」

「はあ〜、偶然でしたか……」

「武運に見放されていましたね……」

 イゾルデさんとツェツィーリアさんとマリウスさんは溜息を吐きました。


「「ん?」」

 私とグレモリー・グリモワールの頭には同時に、?、が浮かびます。


「お三方は、自国の不運を嘆いていらっしゃるのですよ。攻め込んだ【ブリリア】王国には、()()、稀代の英雄でいらっしゃるグレモリー様がいらっしゃり、時を同じくして、()()【調停者】のノヒト様が査察に入られた。【ウトピーア法皇国】は、どうやっても滅亡を免れ得なかった、と」

 ピオさんが【ウトピーア】側3人の心情を解説してくれました。


 イゾルデさんとツェツィーリアさんとマリウスさんは、頷きます。


 なるほど。


「まあ、それは、私やグレモリーの問題ではありませんね。【ウトピーア法皇国】が滅びたのは、【ウトピーア法皇国】にはグレモリーに勝てる力がなく、また、世界(ゲーム)(ことわり)に違反していたからです。取り返しのつかない事を嘆くのは時間の無駄です。今後、どうするか、お考えになる方が、よほど有意義ですよ」


「そだね」

 グレモリー・グリモワールは、同意しました。


「「「はい……」」」

 イゾルデさんとツェツィーリアさんとマリウスさんは力なく頷きます。


 まあ、【ウトピーア法皇国】の問題は、自己責任、自業自得、因果応報、天網恢々(てんもうかいかい)()にして漏らさず……ですけれどね。


「ところで、ノヒト。夕飯食べた?私達は、これからなんだけれど?」

 グレモリー・グリモワールは訊ねました。


「はい。さっきまで寿司パーティーでしたので」


【ドラゴニーア】と【トゥーレ】は、かなりの時差がある為に、グレモリー・グリモワール達は、これからディナーなのだ、とか。


「お寿司!良いなあ〜。【ワールド・コア】ルームの、あの高級寿司屋?私、あそこ行ってみたいんだよね〜」


「グレモリーなら、いつでも、どうぞ。でも、今回は竜都の、お寿司屋さんでした。これは、そこの、お土産です」

 私は、折り詰めの握り寿司をグレモリー・グリモワールに渡しました。


「やった〜、お寿司だ〜」

 グレモリー・グリモワールは、歓喜します。


「ほほう。乙姫寿司ですね」

 ピオさんが、杉箱に焼きコテで押された、乙姫、の屋号を見て感嘆しました。


「何?有名な、お店?」

 ディーテ・エクセルシオールが訊ねます。


「はい。【ドラゴニーア】にある【タカマガハラ皇国】料理の中では、1、2を争う名店です。ここの主人は、まだ若いですが、天才と異名される名人です。乙姫寿司は、3年先まで予約がいっぱいですよ」

 ピオさんが説明しました。


「へえ〜。あ、そう言えば、中央卸売市場(メルカート)の脇にあった竜宮寿司って、もうないの?」

 グレモリー・グリモワールが訊ねます。


 竜宮寿司は、900年前のゲームの時代からありましたからね。


「ありますよ。この乙姫寿司の主人は、竜宮寿司で修行した職人です」

 ピオさんが解説しました。


「竜宮寿司、まだあるんだ。900年以上続く老舗って凄いね。ああ、もしかして竜宮寿司の、お弟子さんの店だから乙姫寿司?」

 グレモリー・グリモワールは訊ねました。


 ピオさんは……それは、わからない……と答えます。


 多分、ピオさんは、浦島太郎を知らなかったのでしょう。


「おそらく、グレモリーの推測で間違いないと思いますよ」


「そっか。うわー、本物の、お寿司だ〜。これが、食べたかったんだよ〜」

 グレモリー・グリモワールは、折り詰めを開きながら言います。


「乙姫寿司の主人は、ベアトリーチェさんと言って、女性なのですよ」


「へえ、珍しいね。あ、女性だから乙姫様か。なるほど。ハムっ……う、美味いよ〜。これこれ、恋い焦がれた、お寿司の味だよ」

 グレモリー・グリモワールは、感動して言いました。


「ねえ、私も一つ頂戴」

 ディーテ・エクセルシオールが言います。


「皆さんの分もありますよ」

 私は、人数分の折り詰めを【収納(ストレージ)】から取り出しました。


 ついでに、今日ストックしておいた寿司と本マグロのサクを【宝物庫(トレジャー・ハウス)】ごと、グレモリー・グリモワールに渡します。


「【サンタ・グレモリア】の皆さんで召し上がって下さい」


 私は、いつでも食べられますからね。


「マジで!あんがと、ノヒト」

 グレモリー・グリモワールは、喜びました。


 それから、しばらくは寿司をメインにした夕食会。


 イゾルデさんとツェツィーリアさんとマリウスさんは、酢飯と生魚とワサビに食べなれない様子でしたが、他の3人は美味しそうに寿司を食べていました。


「ディーテとピオさんは、何でも食べるよね?」

 グレモリー・グリモワールが言います。


「まあ、人生の半分は、冒険していたからね。あれこれ好みを言っていたら、餓死していたわよ」

 ディーテ・エクセルシオールは言いました。


 ディーテ・エクセルシオールの人生の半分とは、700年。

 年季が入っています。


「私も、同じです。毒でなければ、問題ありません」

 ピオさんも事もなげに言いました。


「えっ?じゃあ、お寿司は美味しくない?もしかして無理やり食べさせた感じになった?」

 グレモリー・グリモワールは訊ねます。


「大丈夫。とても美味しいわ。【エルフ】は魚は食べないって思われているけれど、あれは誤解。【エルフ】は感覚器官が鋭敏だから、魚が新鮮でないと、わずかな腐敗臭でも強く感じてしまうのよ。この、お寿司は、鮮度も良いし、キチンとした処理がされているから、【エルフ】の口にも合うわ」

 ディーテ・エクセルシオールは言いました。


「私も、寿司は好物です。私の祖国【スヴェティア】の北には【ミズガルズ】海があります。あそこは、世界有数の漁場。マグロ、サーモン、タラ、カニ、ホタテ、カキ……美味しい魚介類の宝庫ですからね」

 ピオさんが言います。


「ところで、皆さんは、アドム・イラル・シャムル・オックなる魔物を知っていますか?【ガレリア】海の深海で発見されたそうです。クジラに似た外見で50mから100mの体長。100頭の群を作り、人語を話すそうです」


「聞いたことがないね。群を作るクジラの魔物?【レヴィアタン】は固有種だしね」


「噂は知っておりますわ。本国からの情報で」


「はい。私もギルドからの情報で、ノヒト様が仰られた内容までは存じております」


「何?今度はゲームマスターとして海の魔物退治に行く訳?ご苦労様だね〜」

 グレモリー・グリモワールは、言いました。


「いいえ。とりあえず静観します。地上に危険が及ぶようなら、出動するかもしれません」


「アドム・イラル・シャムル・オック……何だか聞いた事があるような……」

 グレモリー・グリモワールは首をひねります。


 やはり……。


「グレモリー。私も全く同じ印象を受けました。ログやアーカイブを当たってもヒットしませんが、確かに聞き覚えがあるような気がします」


「うーむ。アドム・イラル・シャムル・オック……ダメだ、わかんない」

 グレモリー・グリモワールは言いました。


「何か、思い出したら、知らせて下さい」


「OK」


 食事会は、終了。

 イゾルデさんとツェツィーリアさんとマリウスさん……それから【ウトピーア】軍幹部達は、下船しました。

 新生【ウトピーア】の暫定政府を率いるイゾルデさんとツェツィーリアさん、そしてマリウスさんを始めとする【ウトピーア】軍幹部に、グリモワール艦隊の武威を、嫌というほど見せつけたので、来年初頭には【ブリリア王国】と【ウトピーア】の平和条約は、無事締結されるでしょう。


 私は、グレモリー・グリモワールとディーテ・エクセルシオールとピオさんごと、グリモワール艦隊を【サンタ・グレモリア】まで【転移(テレポート)】で運びました。


 これも示威の一環。

 何故なら、【ウトピーア】の人達は、グリモワール艦隊を丸ごと運べるのが、私だけだとは知りません。

 つまり、グリモワール艦隊が昨日【トゥーレ】上空に突如現れて、また、忽然と消えたのを見れば、きっとグリモワール艦隊には【転移(テレポート)】機能が備わっている、と思い込むでしょう。

 有事の際には、強力なグリモワール艦隊が【転移(テレポート)】で、【トゥーレ】上空に現れる。

 これ以上の軍事的プレゼンスはないはずですからね。

お読み頂き、ありがとうございます。


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活動報告、登場人物紹介&設定集も、ご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる読者様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告では訂正箇所以外の、ご説明ご意見は書き込まないよう、お願い致します。

ご意見などは、ご感想の方にお寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

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