表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/1238

第250話。いつの間にやら、サウス大陸奪還作戦完了。

「アブラメイリン・アルケミー」

薬品の開発・製薬・販売。


主力製品。

【ハイ・エリクサー】


関連施設。

【ドラゴニーア】製薬工場・研究所。

【タナカ・ビレッジ】製薬工場・【魔法草(マジック・グラス)】契約農場。

【アトランティーデ海洋国】。

 冒険者ギルド千年要塞支部。


 私は、フランクさんと情報交換を行っていました。


「サウス大陸奪還作戦は終了と考えて差し支えありません。今後は、ノーマンズ・ランドへの冒険者の流入を段階的に許可しても構いませんよ。まあ、神の軍団が派手に狩り尽くしていますから、しばらくの間は、冒険者の皆さんが獲物とする魔物は薄いでしょうけれどね」


 ノーマンズ・ランドとは、サウス大陸で900年間、魔物に支配されていた領域です。

 具体的には、【アトランティーデ海洋国】と、【ティオピーア】の都市城壁内と、【オフィール】の都市城壁内……以外のサウス大陸の全領域でした。


 現在、それらの領域にいた脅威となり得る魔物は、神の軍団が掃討してしまったので、完全な制圧下にあります。


 神の軍団が狩り尽くした魔物の素材は、【宝物庫(トレジャー・ハウス)】の交換で受け渡され、【タナカ・ビレッジ】に輸送・集積されて、日夜【掘削車(マイニング・ビークル)】による解体が行われています。

 解体された各素材は、【転送(トランスファー)装置(・デバイス)】で、適宜、私の管理下の施設や、関係先に輸送されていました。


【超位コア】は【ドラゴニーア】港の転移座標経由で竜城に輸送され、竜城の亜空間倉庫に私の名義で保管されています。

 それを、私が定期的に【収納(ストレージ)】に回収していました。


【高位コア】はマリオネッタ工房の各工場に出荷されています。


古代(エンシェント)(・ドラゴン)】の血液はオリハルコン・タンクに詰められて【ドラゴニーア】のアブラメイリン・アルケミーの【ハイ・エリクサー】工場に出荷されていました。

 また、【タナカ・ビレッジ】の【ハイ・エリクサー】工場でも必要量が確保されています。


 これに加えて、【サンタ・グレモリア】にコンパーニアの工場などが出来上がれば、そちらにも出荷する事になりますが……。

【サンタ・グレモリア】の施設建築は、まだ途中なのです。

 あれを、完成させにも行かなくてはいけません。

 はあ、忙しいですね。


 魔物の肉類は、食材として価値が高いモノは、ソフィア・フード・コンツェルンに売却。

 食材として価値が低いモノは、神の軍団の神兵達の食糧とするか、余ったら【ドラゴニーア】の騎竜繁用施設に無償譲渡して送ってあげています。


 その他の素材は、【アトランティーデ海洋国】の冒険者ギルドや商業ギルドで売却。

 収益は、私以外のレジョーネのメンバーで分配してもらっています。


 もはや、私が関与しなくても、サウス大陸方面は勝手に回る体制になっているのですよ。

 にも関わらず、私の忙しさが一向に解消されないどころか、益々、忙殺度合いに拍車がかかっているのは、これ如何(いか)に?

 解せません。


 兎にも角にも、サウス大陸奪還作戦は、完了していました。


「えっ?!」

 フランクさんが、私の言葉に鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして見せました。


「え?」

 フランクさんのリアクションが不思議だった為に、私も思わず驚いてしまいます。


「そそそ、それは本当ですか?」

 フランクさんは確認しました。


「はい。サウス大陸奪還作戦は、無事完了。もう、私がやるべき事はない、と考えます」


「なななな……」

 フランクさんは、音飛びするCDのようになってしまいます。


 CD……私の世代がバレますね。


「フランクさん、どうしました?」


「あ、いえ、そのような重大な発表を何の事前告知もなくなさるので……。奪還作戦完遂は、公式の式典の場で、もっと盛大に宣言なさるモノだとばかり……」


 式典……そんな面倒そうな事は断固拒否します。

 嫌ですよ。


 冒険者ギルドには、後どのくらいの期間で奪還作戦が完了する見込みかを逐一報告して情報共有してあげても構わなかったのですが……サウス大陸は安全になりました……というだけの宣言なので、情報共有がないからと言って別に危険な訳でも緊急性がある事でもありません。

 いきなり通達しても、何ら問題はないでしょう。


 事前の準備や根回しが必要?


 いやいや、ならば、今から準備や根回しをして、ノーマンズ・ランドの解放を後日にズラせば良いだけです。

 もう安全になって、今後も安全なのですから、別に日程の問題だけなら状況は何も変わりません。

 後は、冒険者ギルドとサウス大陸各国政府の問題。

 私が、いちいち手取り足取り面倒を看てあげる必要もありません。


 第一、事前に……いつ奪還作戦が終了する見込みだ……などと伝えていたら、私やソフィアは式典やら何やら、と引きずり回されるに決まっているのです。

 私もソフィアも、それが嫌でした。

 これが、事前に関係各所への情報共有をしなかった最大の理由なのです。


 当該のサウス大陸の守護竜であるファヴだけは……ソフィアお姉様とノヒトに感謝を伝える為に、式典を開きたい……と言っていましたが、サウス大陸奪還作戦は、そもそも私とソフィアの2人だけで始めた事。

 途中参加のファヴには発言権は認めません。


 これは、私とソフィアの決定事項なのです。


 横暴?


 そうですが何か?


「公式の宣言は、各国に通達を出して終わりです。式典などは一切しません。いや、やりたければ、サウス大陸の皆さんで、お好きなようにやれば良いのですよ。私やソフィアは、参加しませんけれどね」


 サウス大陸奪還作戦終了宣言は、日付変わって明日の午前0時に、ミネルヴァから各国政府と各ギルドの魔力通信機に向かって、ゲームマスター名義で通達文を一斉送信して終わりにする予定です。

 それ以外の事は、何もするつもりもありませんし、する必要もない、と私もソフィアも考えていました。


「そうですか……少し失礼致します」

 フランクさんが千年要塞支部の職員に、サウス大陸奪還作戦の終了を伝えて、関係各所に連絡をし始めました。


 これは、もう私は退去しても大丈夫なのでしょうか?

 私も、冒険者ギルドの皆さんも忙しいですから、きっと大丈夫ですよね。


 さてと、行きましょうか。


「ノヒト様、お待ち下さい」

 フランクさんに呼び止められました。


 やはり、挨拶はして行った方が良かったですね。


「フランクさん、では失礼しますね」


「ノヒト様。どうか、グランド・ギルド・マスターに、ご連絡をして下さいませんか?」

 フランクさんは、申し訳なさそうに言いました。


 冒険者ギルドのグランド・ギルド・マスターとは、つまり剣聖です。


 ん?

 何か、これは奪還作戦終了を急に告知したせいで、苦情を言われる的な流れなのでしょうか?


「サウス大陸奪還作戦の完了はフランクさんから、伝えて下さい。正式な通達は、今晩、日付変わって午前0時に送信されますよ」

 私は、危険な雰囲気を察知して、面倒事を華麗に(かわ)します。


「あ、いや、その件もそうですが……グランド・マスターは……チュートリアルは、いつか、まだか……と随分気を揉んでいるようです」

 フランクさんは、言いました。


 何だ、そっちか?


 私は、スマホで剣聖に連絡しました。


「もしもし……チュートリアルは、今日、1人受けさせたい者がいるので、ついでにクインシー達も受けますか?」

 私は、相手の説教が始まる前に、機先を制して本題を言います。


「えっ!今日?それは急だな?」


「都合が悪いなら後日でも構いませんよ。私も忙しいので、いつになるのかは、約束出来ませんがね。3年後くらいになるかもしれません。何分、忙しいのですよ」

 私は、話題の主導権をガッチリと握りました。


 下手に相手に配慮した言質を与えてしまうと、サウス大陸奪還作戦の完了通達が、いきなりだった件について文句を言われるかもしれませんので。


「わ、わかった。すぐ準備をする。悪いんだが、俺は今、王都【アトランティーデ】の冒険者ギルド本部にいる。迎えに来てはくれないだろうか?」

 剣聖は、申し訳なさそうに頼んで来ました。


「仕方ありませんね。1つ貸しですよ。私も忙しいのですからね」


「す、すまんな……」

 剣聖は、言います。


 はい。

 叱られ案件は、これで封殺しましたね。

 私の……話すり替え能力(スキル)……は完璧です。

 ゲームの設定に、そんな能力(スキル)はありませんが……。


 私は、3時間後に冒険者ギルド本部に、剣聖達を迎えに行く約束をして、通話を終えました。


「フランクさん、では失礼します」


「はい。また、いつでもお越し下さい」


「次に会うのは、【ドラゴニーア】かもしれませんね?」


「そうかもしれませんね」


 私は、フランクさんと別れて、冒険者ギルド千年要塞支部を後にします。

 さてと、まだまだリマインダーを消化しなくてはいけません。


 私は、次の目的地に向かって【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


【ティオピーア】。


 私は、【ティオピーア】にいる赤師団と合流しました。


 現在、【ティオピーア】は、国際法上【ムームー】の属国になっています。

 例の陰謀事件で、ファヴを激怒させた為に、【ティオピーア】は国体が維持できなくなり、侵略を仕掛けようとした【ムームー】に降伏して、その支配下に自ら進んで入りました。

 国家としての【ティオピーア】は【ムームー】から総督を迎えて、向こう100年、【ムームー】の支配下に甘んじるのです。

 陰謀事件の首謀者達は、既に投降し、国際戦争犯罪人規定により裁判が行われ判決が出ていました。

 判決は……死刑相当ながら【ムームー】に対して無条件降伏した為に罪一等を減じ、【ムームー】の開拓農地において100年の強制労働に処す……というモノ。

 既に、陰謀事件の首謀者達は、大人しく刑に服しています。

 刑期100年の強制労働ですから、もはや終身刑と同じですが、おそらくチェレステ女王が即位戴冠したら、恩赦が与えられ、刑期は大幅に短縮されるのでしょう。


【ムームー】の新女王は、良識あるチェレステさんですから、真摯に属国の立場を全うするのなら、【ティオピーア】の国家も国民も、そう悪い扱いにはならないはずです。


 とはいえ、【ムームー】も建国の準備などで忙しく、【ティオピーア】の事にまで手が回りきらない様子。

【ティオピーア】の統治は後回しになります。

 まあ、自業自得ですね。


【ティオピーア】の防衛などは、【ムームー】の体制が整い安全保障上の措置が講じられるまでは、【ティオピーア】の自警団だけで賄わなければなりません。

 しかし、ノーマンズ・ランドの魔物の脅威は、神の軍団が排除し終わっていますので、【ティオピーア】の国民で力を合わせて対応すれば何とかなるでしょう。


 最悪、【ティオピーア】が滅亡しそうになったら、少しくらいなら、私が助けてあげても良いですよ。

【ティオピーア】は、【ムームー】の属国ですからね。

 私は、【ムームー】を支援する立場ですので。


 私は、赤師団を連れて、【ドラゴニーア】に【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


 竜都【ドラゴニーア】都市城壁外の騎竜繁用施設。


 私は、赤師団の当面の駐留地として、【ドラゴニーア】軍が管理する広大な騎竜繁用施設の敷地内にある森を間借りする事にしました。

 赤師団と青師団の計800頭がここを拠点にして、しばらく生活します。

 餌は、【ドラゴニーア】の繁用施設から供出してもらう予定。

 まあ、今まで、膨大な量の魔物肉を寄付していますから、そのくらいの便宜を図ってもらっても問題はないでしょう。


 私は、次の目的地に向かって【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


【オフィール】。


 私は、【オフィール】にいる青師団と合流しました。


「ノヒト様……準備は……出来ています」

 青師団長のアッズーロが言いました。


「アッズーロ、ご苦労様。では、行きますよ」


 アッズーロは、白師団長のビアンキに続いて、人種の言語を話し始めています。

 ビアンキと比べると、まだ少し言葉がたどたどしいですが、【古代(エンシェント)(・ドラゴン)】の知性は、人種より、はるかに高いので、すぐに流暢に言葉を話し始めるでしょう。


【オフィール】の都市の様子は、生気が完全に失せていました。


【オフィール】も【ティオピーア】と同様に【ムームー】へ侵略しようという陰謀に加担していた国です。

 旧政権は国民により倒され、陰謀を主導した王族や貴族達は、現在【オフィール】の暫定政府により廃され捕縛され、全員監獄に収監されています。

【ムームー】のチェレステ女王が即位戴冠した後に、チェレステ女王から刑罰が科される予定ですが、どうやら死刑判決が出された後に、女王の即位戴冠による恩赦が与えられ、死刑執行は免れる事になりそうですね。

 しかし、全員、【ムームー】の開拓農地に送られて死ぬまで強制労働となるようです。

【オフィール】の王族や貴族は、【ムームー】に降伏した訳ではないので、終身強制労働は刑期短縮はされないでしょう。

 まあ、自業自得ですね。


【オフィール】の都市に生気がない理由は、経済制裁が行われているからです。


【オフィール】は、【ドラゴニーア】を中心とする同盟諸国により、経済封鎖と国交断絶が行われ、ほとんど死に体のような状態になりました。

 旧政権の王族達をクーデターによって倒した、現【オフィール】政府は、【ムームー】から請求された莫大な賠償金を……旧政権がやった事で、現政権には関係ない……として拒否し踏み倒したのです。


 残念ながら、その理屈は通りませんね。

 王族が国家を率いて仕出かした罪は、即ち、国民にも責任がある訳です。

【オフィール】の女王を信任していたのは国民なのですから。


 この世界(ゲーム)の……正確に言うと、守護竜が存在する【地上界(テッラ)】の、王や皇帝や民主政府は、全て守護竜から王権神授、または、政権承認されていました。

 王や皇帝の権威や、民主政府の正当性は、守護竜が後盾となって担保しているのです。


 国民が民主政府に不満がある場合、選挙で民意を示せば良い訳ですからシンプルでした。

 問題は、国民が、王や皇帝に不満がある場合です。


 国民の大多数が、自分達の王や皇帝を支持しない場合、管轄領域の守護竜に申し立てれば、国民が望まない王や皇帝を廃位する事は可能でした。


 なので、もしも【オフィール】の国民が、自分達の女王がする事に反対なら、国民は声を上げて、ファヴを頼り、女王を王権から引きずり降ろされなければならなかったのです。

 女王のやる事を放置していた時点で国民も同罪。

 責任転嫁は許されません。


 厳しいようですが、それが異世界の、世界(ゲーム)(ことわり)、なのです。


【オフィール】の現政権の掟破りの開き直りで、ファヴと【ムームー】の同盟諸国は激怒し、【オフィール】は経済制裁を受けるに至りました。


 国民の内、外国に親類縁者がいる者達は、【オフィール】を見限り、次々に出国・亡命してしまっているようです。

 ファヴも激怒していて……絶対に許さない……と宣言していますので、国家としての【オフィール】は、もはや終わり。

 やがては、【ティオピーア】のように【ムームー】の属国になるか、国家を解体して他国の一部になるしかないのではないか、と思います。

 政治の話は、私には全く関係ありませんが……。


 私は、青師団を連れて【ドラゴニーア】に【転移(テレポート)】しました。

お読み頂き、ありがとうございます。


ご感想、ご評価、レビュー、ブックマークを、お願い致します。


活動報告、登場人物紹介&設定集も、ご確認下さると幸いでございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ