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第245話。神位結界の通行方法。

名前…ヴァレンティーナ・ベルルーティ

種族…【エルダー・ホビット】

性別…女性

年齢…56歳

職種…【(ヴァイス)会頭(・プレジデント)

魔法…【鑑定(アプライザル)NPC版(チーパー・バージョン))】など。

特性…【商才(ビジネス・アビリティ)

レベル…30


元世界商業ギルド副会頭。

ソフィア・フード・コンツェルンCEO。

【ワールド・コア】ルームの洋食屋。


 注文した料理が運ばれて来ました。


 とりあえず、シーザーサラダから食べましょう……モシャモシャ……うん、美味い。


 異世界の食材は本当に美味しいのですよね。

 生のレタスでさえ、何だか地球のモノより、瑞々しくて、甘みが強いように感じられます。


 今、私が食べたレタスは、【シエーロ】のハウス栽培だ、という事ですが……【ドラゴニーア】のソフィア農場や、【タナカ・ビレッジ】の露地モノのレタスは、ドレッシングで和えなくても生のままや、塩を振っただけで美味しく食べられますからね。

 両方とも、守護竜の加護がある地域ですから、その関係なのかもしれません。


 次は、舌平目のムニエル。

 デカイ。

 舌平目のはずなのに、一尾丸ごとではなく、切り身です。

 このサイズから推測するに、1m以上の大きさではないのでしょうか?

 何たる肉厚。

 ホックホクのムッチムチで、ソースを絡めて頬張ると、ジュワ〜ッ、と旨味が口いっぱいに広がります。

 臭みなどは皆無。

 美味い。


 次はチキンピラフ。

 このピラフ。

 油で炒めたご飯モノにあって異彩を放ちます。

 チャーハンやパエリアなどとも違う、完成された奥深さがありますよね。

 私は、白飯派ですが、炒めたご飯モノでは、ピラフがチャンピオンだと思います。

 あくまでも私の個人的な比較ですが……。

 美味い。


 ピラフはフランス料理らしいのですが、元はトルコなど中央アジア系のピラウが源流のようです。

 フランス料理の有名な料理って、イタリアやトルコなどの諸外国から輸入された料理をカスタムしたモノが大半。

 ゲームのフランス料理を監修してくれたフランス人のシェフ曰く、フランス生まれの伝統的なフランス料理は、ドイツなどのヨーロッパの大陸料理と変わらず、肉を煮込んだだけ、みたいな素朴なモノばかりなのだそうです。

 そのシェフは……現代フランス人が、フランス料理が世界一だ、などと威張って排外的な姿勢を示し、他国の料理を下に見るような今の風潮が続けば、50年後にはフランス料理は簡単に廃れる……と力説していました。

 そのシェフ曰く……日本人は良いモノは世界中から取り入れて、アレンジして、本家より優れたモノにしてしまう。その姿勢は、自国料理の発展には必要な事だ。伝統を守るには、常に変わり続けなければならない……のだとか。

 同感です。

 飛行魔法でも一定位置にホバリングし続けるのは難しいですし、存外、魔力を食いますからね。


 因みに、このゲームの料理監修をしてくれているシェフ達や料理人の皆さん達は、全員、世界中から招聘された、ミシ〇ラン・ガイドで星を3つ取るような一流の人達ばかりです。

 プロデューサーのフジサカさんの(こだわ)りなのですよ。


 メイン・ディッシュのタン・シチューが湯気を立てて運ばれてきました。


 いや、もう、これは見るだけで美味しいですね。

 アチアチ、ハフハフ……堪りません。

 煮込まれたタンが一噛み目には特有の食感を残しながら、続けて咀嚼すると解けてトロけるようになくなります。

 シチューのベースとなるデミグラスソースの塩梅も最高。

 単に長時間煮込んだだけ、というデミグラスだと、重かったり雑味があったりしますが、このデミグラスは、濃厚でいて、しかし後味は華やか。


「すみません。ライスを少し下さい」

 私は、たまらず白飯を追加しました。


「何じゃ、ノヒト。其方は、ピラフを食べたではないか?」

 既に、注文した品々を完食し、さらに追加料理を頼もうと、【コンシェルジュ】から裏メニューを聞き出していたソフィアが言います。


「ふふふ、即席ハヤシライスですよ」


「なぬーーっ!即席ハヤシライスとな。ならば、我は、オムライスにビーフシチューをかけたモノを追加するのじゃ。5人前じゃ。あと、さっき聞いた、ほうれん草と【地竜(アース・ドラゴン)】の挽肉を入れたオムレツも5人前じゃ」

 ソフィアも追加注文をしました。


 すぐに、私のライスが届きます。

 オン・ザ・ライスなどという、まだるっこい事はしません。

 タンシチューの中にライスをドバッと全投入です。

 お行儀が悪いのは承知の上ですよ。

 私は、食においては、自分の欲求を通すタイプなのです。


 かー、これこれ。

 洋食とは、白飯に合うように味付けをしてある、と誰かが言っていました。

 最高です。


「ごちそうさまでした〜」

 私は、満足の嘆息を吐きました。


 ソフィア、ファヴ、ウルスラも満足気。

 リントは、料理の美味しさに驚愕していました。


 ・・・


【ワールド・コア】ルーム。

 ゲームマスター本部のナカノヒト・オフィス。


 食後のコーヒーを飲みながら、【サントゥアリーオ】問題をどうするか、について話し合います。

 懸案事項は早く片付けておかないと、もうすぐソフィアが睡魔に負けて起きていられなくなりますからね。


 ソフィアとウルスラとリントは、食後のデザートを食べながらの会議。

 女子にとってスウィーツは別腹……という鉄の掟は、異世界でも健在のようです。


 ウルスラが、ホールのイチゴのムースにダイブして静かになったので覗いて見たら、イチゴのムースの穴の中で寝落ちしていました。

 やわらかくて眠気を誘ったのでしょうか?

 ヴィクトーリアが眠ったウルスラを優しく摘み出して、ムース塗れの体をお湯で洗い流しました。

 今は、ウルスラ専用のミニチュア布団に移されています。


「【神位結界(バリア)】を、すぐには開放しないのじゃとしても、どうする?人種を【サントゥアリーオ】に少しずつ受け入れるのは構わないのじゃが、その方法が極めて困難なのじゃ。【結界(バリア)】を開放して一時的にでも全面通行可能にすれば、招かざる者も一緒に入り込む可能性は排除出来ぬ。言っておくが【結界(バリア)】を部分的に無効化するなどというデタラメな芸当は、ノヒトにしか出来ぬのじゃ。移民を受け入れる度に、ノヒトが【結界(バリア)】を一部切るのか?それは、あまりにも面倒じゃ」

 ソフィアが言いました。


 ソフィアは食後のデザートと言って、巨大なプリンを食べています。

 それ……バケツ・プリンですね。

 どうやら、満足の行くバケツ・プリンの開発に成功したようです。

 試行錯誤をしたのは、ソフィアではなく、【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションのディエチですが……。


 ソフィアは、ウルスラ、オラクル、ヴィクトーリア、クイーンと共同出資して、ソフィア・フード・コンツェルンなる巨大食品グループを立ち上げようとしていました。

 孤児院出身者に加え、セントラル大陸中の比較的貧しい世帯(母子家庭や父子家庭など)を雇用する受け皿にするのだそうです。

 飲食店業はもちろん、農業、畜産、漁業、食品加工、食品流通、食品販売、食品商社……などなどを手広く手がけるのだ、とか。

 何だか、最近、ソフィア達がコソコソやっていると思ったら、これだったのです。

 全て、ソフィアの脳に共生する知性体のフロネシスを通じて見ていましたけれどね。


 ソフィアは、既に、ソフィア・フード・コンツェルンの本社とする為に、【ドラゴニーア】の旧冒険者ギルドのビルを一棟丸ごと購入していました。

 あそこは、移設が決まっていたので、私もコンパーニアの新本社ビルにしようと密かに狙っていたのです。

 しかし、ソフィアの野望と、彼女達の資金力に買い負けました。


 冒険者ギルドは、現在、サウス大陸の【アトランティーデ海洋国】の王都【アトランティーデ】に本部を置いていますが、来年初頭から竜都【ドラゴニーア】に本部を移転。

 正確には、数百年振りに元の本部に復帰するのです。

 これは、私達がサウス大陸奪還作戦を成功させ、サウス大陸の魔物の脅威が劇的に減少した事に伴う措置でした。

 サウス大陸が魔物の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する領域でなくなれば、冒険者ギルドの本部を置いておく理由はありません。

 注力拠点を置く必要がないのなら、世界の中心である【ドラゴニーア】に本部がある方が便利ですからね。

 世界冒険者ギルド本部は、現在の冒険者ギルド【ドラゴニーア】支部では手狭な為、数百年前に利用していたビルに戻す事にしたようです。

 そのビルは、現在、【ドラゴニーア】政府が中央銀行として使っていました。

 アルフォンシーナさんが、冒険者ギルドの為に返してあげるように便宜を図ったのだそうです。

 もちろん、相応の金額は支払わせますが……。

【ドラゴニーア】の政府中央銀行は、竜城の中に入るのだ、とか。

 竜城は、スペース的に、まだまだ余裕があるので、問題ないそうです。


 ソフィア・フード・コンツェルンの雇われCEOへの就任が決まったのは、私も知っている人でした。

 世界商業ギルド副会頭のヴァレンティーナ・ベルルーティさんです。

 以前、マリオネッタ工房を立ち上げる際に商業ギルドには、お世話になって、その関係で彼女とも面識がありました。


 しかし、大胆不敵にも世界商業ギルドのNo.2をヘッドハンティングするとか……。

 会頭のニルスさんは、商業ギルドからの人材流出に泣いていましたよ。

 まあ、ソフィアが強引に話を持って行った訳ではなく、ソフィア・フード・コンツェルンの設立に際して、ソフィアの代理としてディエチが商業ギルドに申請などをしに行っていたら、ヴァレンティーナさんの方から……是非にも働かせて欲しい……と懇願されたそうです。

 なので、商業ギルドから恨まれるような案件ではありません。

 会頭のニルスさんも、仕方がない、と苦笑いしていました。

 ヴァレンティーナさんが円満退職で、ソフィアも公私混同をしている訳でないのなら、私としては問題ありませんよ。


 ソフィア・フード・コンツェルンは、おそらく近い内に世界最大の食品グループとなるでしょう。


 ソフィアは、広大なソフィア農場を保有する他、クイーンを共同出資者にして、早くも【タナカ・ビレッジ】も抱き込んでしまっています。

 クイーンは、ソフィアの大ファンですから、とても乗り気なのだ、とか。

 ソフィア農場と、クイーン農場の農畜産物は、世界最高水準。


 また、ソフィアは、グレモリー・グリモワールやディーテ・エクセルシオールなどとも私を仲介せずに話し合って事業協力を取り付けていました。

 ファヴやリントは、当然、ソフィアに協力するでしょう。

 これは、ビジネスの成功が目に見えていますね。


 ソフィア農場には、過去に税金も投入されていましたが、あれは国有地ではありません。

 ソフィアの個人農場であり、ソフィアの私有地なのです。

 それを、【ドラゴニーア】の納税者たる国民が望んで税金を納めて、ソフィアの為に渡した格好。

 なので、ソフィアが個人の裁量で、どうにでも使えるのだ、とか。

 一応、ソフィアは、投入された税金は債務処理をして利息を付けて毎年少しずつ【ドラゴニーア】の国庫に返納するそうですし、また元老院にも事業化の伺いを立てたようですが、全会一致で承認されたようです。


 ソフィアは、チンチクリンの幼稚園児にしか見えないのですが、案外、抜け目ないやり手なのですよね。


 ソフィア・フード・コンツェルンは、ヴァレンティーナさんを経営者として来年初頭から営業を開始します。


 それは、ともかく今は【サントゥアリーオ】の問題ですよ。

【サントゥアリーオ】の【神位結界(バリア)】を、どうするか、という話。


「確かに、部分的に、かつ、一時的に【神位結界(バリア)】の組成変更をする事は出来ませんね。僕達は、【創造主(クリエイター)】が組んだオリジナルの【魔法(マジック・)公式(フォーミュラ)】を知らされていません。あくまでも守護竜の【常時発動能力(パッシブスキル)】として原理がわからないまま運用しているだけなので……」

 ファヴが腕組みしながら言いました。


 私もミネルヴァも、【神位結果(バリア)】の仕組みは理解出来ません。

 あれは、【創造主(クリエイター)】の魔法。

 理論や法則を全て無視した、【創造主(クリエイター)】にしか創れない何でもありギミックなのです。


「そうですわ。あの動物の進入を防ぐギミックに変えた【神位結界(バリア)】は、亜空間を通じた通行手段であっても透過出来ません。なので、【転移(テレポート)】も【神位結界(バリア)】で弾かれてしまいます。やはり、短時間だけ【神位結界(バリア)】を全開放して必要な人種を受け入れる方法しかないのかしら……」

 リントが言いました。


 その方法では、あらゆる場所から敵や犯罪者なども同時に侵入してしまう可能性がありますね。


「ノヒトよ。何か名案はないか?」

 ソフィアが訊ねます。


「関所を設けましょう。【神位結界(バリア)】の境界……東西南北に関所を作り、その場所だけは通行可能にします。ここを堅く守り税関とする訳です」


「そんな技術があるのか?」

 ソフィアが訊ねました。


「はい、あります。ソフィアも知っていますよ。【超神位(運営者権限)魔法】の強制転移魔法陣ですよ」


「おー、あの強制転移トラップか!」


 私達がサウス大陸のオピオン遺跡(ダンジョン)とアペプ遺跡(ダンジョン)を攻略している時に遺跡(ダンジョン)から魔物が出て来ないように、入り口に構築したのがトラップ式の強制転移魔法陣。

 あれは、遺跡(ダンジョン)から出て来た魔物を、強制的に遺跡(ダンジョン)の中に【転移(テレポート)】させて戻すというモノです。

 遺跡(ダンジョン)は、階段を降りて地下に奥深く潜って行く構造なので、実体がある地下構造物だと思われがちですが、実は、遺跡(ダンジョン)の地下には何もありません。

 遺跡(ダンジョン)は、丸っと全てが亜空間フィールドなのです。


超神位(運営者権限)魔法】による強制転移魔法陣ならば、位階差によって、【神位結界(バリア)】すらも透過可能。

 お安い御用です。


「私が、【神位結界(バリア)】の外に【超神位(運営者権限)魔法】の強制転移魔法陣を構築して、その強制転移魔法陣を守る堅牢な施設と強力な衛兵を配置すれば事足りるでしょう。神の軍団に守らせます」


「うむ。それならば万全じゃ」


「あのう〜。関係のない事を訊いても構いませんか?」

 ファヴが訊ねました。


「何ですか?」


「以前、ソフィアお姉様とノヒトの会社で物資のやり取りをする為に、【転送(トランスファー)】の【魔法装置(マジック・デバイス)】を設置して回りましたよね?あれは、生体は送れず、物体しか送れませんでした。あの【転送(トランスファー)】の【魔法装置(マジック・デバイス)】を、全て強制転移魔法陣に換装すれば、人種も物も送れて、より便利なのでは?」

 ファヴが訊ねます。


 それが出来れば、確かに交通と流通に大革命が起こせますよね。

 強制転移魔法陣ならば、【転移能力者(テレポーター)】でなくとも、魔法陣のある場所ならば、どこにでも瞬時に【転移(テレポート)】する事が可能。

 誰でも考える事です。

 しかし、それは出来ません。


「それは、ゲームマスターの遵守条項に反するので出来ないのです。原則として、【超神位(運営者権限)魔法】は、ゲームマスターの業務以外では行使出来ない事になっています。コンパーニアの事業は、私事。ゲームマスター権限は使えません」


「なるほど」

 ファヴは納得しました。


 つまり、【サントゥアリーオ】の税関対策は、ゲームマスターの業務の一環と見做せるのです。

 ミネルヴァの許可も、もらっていました。


「うむ。公私の区別はつけねばならぬのじゃ」

 ソフィアは言います。


 まあ、私は過去、私事に【超神位(運営者権限)魔法】を何度か使ってしまって、ミネルヴァにやんわりと叱られましたけれどね。

 とはいえ悪気はなかったのですよ

 あれらは無意識だったのです。


 兎にも角にも、リントの【神位結果(バリア)】は現在のギミックを維持しながら、東西南北の【サントゥアリーオ】国境には厳重な関所を設けて強制転移魔法陣によって、許可を得た者だけに通行を認めて行く方針が決定されました。


 もう、ソフィアが眠そうで限界です。

 今夜は、ここらで、お開きにしましょう。

 私達は、全員で【ドラゴニーア】の竜城に帰還しました。

お読み頂き、ありがとうございます。


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