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第225話。【シエーロ】観光。

本日、4話目の投稿です。

【マジック・カースル】。


 私が、グレモリー・グリモワールの邸宅【マジック・カースル】に戻ると、一同は、3時のオヤツを食べていました。


「ノヒト。ありがとう。お疲れ様」

 グレモリー・グリモワールが立ち上がって、私に紅茶を準備してくれます。


「グレモリー。艦隊は自立運用出来るようにしておきました。高度な作戦行動は難しいですが、とりあえず敵を撃滅する、とか、街を守る、という程度の事は、あなたが直接指揮しなくても出来ますよ」


「何をしたの?」

 グレモリー・グリモワールは言いました。


「少しだけ、【メイン・コア】を(いじ)らせてもらいました。性能が格段に上がったはずですよ」


「あ、そう。ありがとね」

 グレモリー・グリモワールは驚きもせずに言います。


 予想の範囲内の出来事という訳なのでしょう。

 何だか、便利に使われたみたいです。

 まあ、私も承知の上ですがね。


「それから、139体の【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションを艦隊クルーとして投入しました。【宝物庫(トレジャー・ハウス)】と同じく半永久貸与です」


「えっ?それは、ありがとう」

 グレモリー・グリモワールは、今度は意外そうな様子。


「【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションは、私のハンド・メイドですからね。労力も、お金も私の持ち出しですよ」


「ありがとう。お礼は考えてあるから」


 感謝が軽い……。

 頼まれもせずに勝手にやった事ですから、別に、お礼を言って欲しい訳ではありませんが……。

 まあ、良いでしょう。


「お礼って何ですか?」


「今回の事の、お礼は【願いの石版】と私の【神の遺物(アーティファクト)】コレクションから、色々とあげようと思っていたんだけれど、逆に、私の方が【宝物庫(トレジャー・ハウス)】を大量にもらっちゃった。そもそも、あんな【無限ストッカー】を持つノヒトに【神の遺物(アーティファクト)】のアイテムなんて渡したところで、別に有難くもないだろうからね。対価が払いきれない。だから、お礼は金品ではなくて、私にしかあげられないモノにするよ」


「グレモリーにしか……それは何ですか?」


 そんなモノはないと思うのですが……。


「ノヒトは、【ドラゴニーア】の大神官さんや、【女神官(プリーステス)】さん達や、【竜騎士(ドラゴン・ライダー)】さん達や、【ドラゴニーア】軍の人達を、強化したいと考えているよね?」


「はい。彼らは、私が標榜する【ドラゴニーア】(パクス・)による平和(ドラゴニーア)構想の中核を担う人達ですからね」


「本来ならば……全員にチュートリアルを受けさせたい……って、思っているんじゃない?」


「はい……しかし、それは無理です」


「そだよね〜。ゲームマスターは中立。一党一派一国には、(くみ)しない。だから、私が代わりにやったげるよ。ゲームマスターではない一般人の私が勝手にやる分には、ノヒトはゲームマスターの禁止事項に抵触しない」


「ゲームマスターの遵守条項です」


 ゲームマスターには、禁止事項などはありません。

 ゲームマスターは、この世界(ゲーム)の中で何でも出来ますし、どんな事をしても、この世界(ゲーム)の法規などでは裁かれません。

 ゲームマスターには、遵守するべき事があるだけなのです。

 しかし、それすらも世界(ゲーム)(ことわり)を守る為に、必要があれば無視する事が許可されていました。

 単に、機械的にルールを守り、あるいは、守らせるだけの存在が必要ならば、ゲームマスターではなく、【知の回廊】のような人工知能(AI)にでも取り締まりをやらせておけば良いのですからね。

 つまり、ゲームマスターがプレイヤー・キャラである必要があるのは、必要があれば超法規的判断によって臨機応変にトラブルに対応する事が望まれているからです。

 時には、ルールを逸脱したり破棄したりしても、最善の結果を得る為に柔軟に対応を変えられる事。

 これが、ゲームマスターが人工知能(AI)でない理由なのです。


「私が【ドラゴニーア】の神竜神殿や軍や竜騎士団の人達を対象にして、勝手にチュートリアルを受けさせたとしても、ノヒトは、ゲームマスターの遵守条項には違反しない。結果的に、ノヒトの望みに適うとしても、()()()()()、私が、勝手にやっただけなんだから。とりあえず、【ウトピーア法皇国】を蹴散らして、暇になったら、アルフォンシーナさんから順番にチュートリアルを受けてもらうよ」


 なるほど……それは、確かにグレモリー・グリモワールにしか出来ませんね。


「ありがとう」

 私は、礼を言いました。


「グレモリーよ。それは、我からも礼を言わなければならぬ。ありがとうなのじゃ」

 ソフィアも礼を言います。


「ルールのグレーゾーンを突くのは、私、得意なんだよ」

 グレモリー・グリモワールは、エッヘン、とばかりにドヤ顔をして言いました。


「なぬっ、グレーゾーンは、ノヒトも大得意なのじゃぞ」


「知ってる。ぷっ、あははは〜」

 グレモリー・グリモワールは笑います。


「ふふふ……」

 私も、笑いました。


 私と、グレモリー・グリモワールは、元は同一自我。

 性格が似ているのは当然の事です。


「何じゃ?其方ら、何が可笑しいのじゃ?」

 ソフィアは、小首を傾げます。


 私は、【ドラゴニーア】の関係者だけではなく、チェレステ女王など【ムームー】の関係者も、チュートリアルに参加させて欲しいと依頼しました。


「なら、後で該当者の名簿を作ってちょうだい」

 グレモリー・グリモワールは言います。


「わかりました」


 ・・・


【知の回廊】飲食店街。


 レジョーネは、ソフィアを先頭に【知の回廊】内の飲食店街を闊歩していました。

 ソフィアの要望による食べ歩きツアーです。


 グレモリー・グリモワールとディーテ・エクセルシオールは、グレモリー・グリモワールの別荘……ラピュータ宮殿の様子を見に向かうようです。

 もう一軒の別荘は、少し遠くにあるので今日は行けません。

 グレモリー・グリモワールは、そちらの様子を見に行くのは後日にしたようです。


 グレモリー・グリモワールとディーテ・エクセルシオールとは、後で合流して、フェリシアとレイニールとグレースさんも連れて、ゲームマスター本部内の、いずれかのレストランでディナーを食べる事になりました。


 何を食べるかは、フェリシアとレイニールの希望を聞いてから決めるつもりです。

 ゲームマスター本部のレストランを利用する客は、私達以外には誰もいないので、予約などを取る必要はありません。

 役得です。

 ゲームマスター本部の飲食店の味のレベルで、街中に店舗を構えていれば、まず間違いなく、予約がいっぱいで何ヶ月待ち、という事になるはずですので。


 グレモリー・グリモワールの養子であるフェリシアとレイニールは、ゲームマスター本部への立ち入りを許可しました。

 グレースさんも、ついでに許可。

 1人だけ置いて行くのは、いくら何でも気の毒ですからね。


 閑話休題。

 私達の食べ歩きツアーの方は……。

天使(アンゲロス)】が営業するレストランを6軒ほどを回っていますが、素晴らしく美味しい、と感動するような店はありません。

 基本的に異世界の食材は、地球の同じ物と比べて、どれも美味しいので、食べられないほど不味い料理はありませんが、何でも食べるソフィアでさえ、明らかに、不満気な様子。

 ソフィア以外は、3軒目から飲み物しか頼みません。


 私の……【天使(アンゲロス)】は、全員が魔法戦闘職である為に、料理ステータスが高い者が少ないのでは……という予測が的中した形です。


 7軒目のレストランで食事を終えて……。


「今日は、もう良いのじゃ」

 ソフィアは、とうとう言いました。


 ソフィアが自分から……食べ歩きを止める……と言い出したのは初めてです。


「本部の、まだ食べてない、お店に行きましょう。パスタ専門店は行ってみましたか?」

 私は、何だかガッカリしているソフィアが不憫になったので、思わず、ご機嫌を伺いました。


 世界最高クラスの調理技術を持つ【コンシェルジュ】達が作る料理を食べれば、口直しになるでしょう。


「んー?行ったのじゃ、スパゲッティ・アッラ・カルボナーラという卵料理が美味しかったのじゃ」


 ソフィアにとっては、カルボナーラは卵料理の範疇に入るのですね。


 ゲームマスター本部のパスタ屋さんは、本物のレシピに拘っていますので、カルボナーラにクリームなどは一切使いません。


 コショウ、卵、チーズにグァンチャーレ(豚頬肉の塩漬け)が基本。


 グァンチャーレをパンチェッタ(豚バラ肉の塩漬け)に変えてもらい、玉ねぎ、マッシュルームなどを加えてもらうアレンジは、依頼すればしてもらえます。

 しかし、クリームは入れません。

 それは、もはやスパゲティ・アッラ・カルボナーラではない、何か別の料理という扱いになりますので。

 まあ、味の好みは人それぞれですが……少なくとも、ローマの伝統的レシピではありません。


 ゲーム内の料理監修をしてもらった料理人チームの1人であるイタリア人シェフ曰く……カルボナーラにクリームを入れるのは、元々はパスタをソースとあえる時に卵が熱で凝固してしまうのを防ぐ為だった……のだそうです。

 つまり……自分は卵を凝固させてしまう程度の未熟な調理技術しかない……と、お客に宣伝しているようなモノなので、料理人としてはカルボナーラにクリームを入れるのは格好の良い事ではないのだ、とか。


 閑話休題。

 ソフィアは、パスタ屋さんに既に行っていましたか……。


「ソフィア。本部にある店で、まだ食べてない所は、ありますか?」


「1階にあった店は、全制覇したのじゃ。その後は、ファミリーレストラン、パスタ、ウナギ、天ぷら、豚カツ、焼き鳥、串揚げ、焼肉、お好み焼き……で、蕎麦を食べていたら、ノヒト達がやって来たのじゃ……」

 ソフィアは、指折り数えて行きます。


「ソフィア様、串揚げの後にチョコパを食べたよ〜」

 ウルスラが言いました。


「そうじゃ、カフェに行って、チョコレート・パフェとプリンアラモードなる夢のデザート食べたのじゃ」


 午前中だけで、そんなに回りましたか……。

 1階にある食べ物屋さんだけでも、カフェ、イタリアン・バール、ピッツェリア、ハンバーガー・ショップ、フライドチキン屋、牛丼屋、ラーメン屋、回転寿司、カレー屋、定食屋、パン屋、フードコート……などなど。

 これだけでも、制覇するのは凄いです。

 それに加えて、ソフィアは、建物の上階に入っている飲食店もかなりの数を侵食していましたね。


 おそるべき亜空間胃袋。


 しかし、今回は、全メニュー制覇などというデタラメな事はしないで、データ収集をして店の傾向を見定める事が主だったのだ、とか。

 ソフィアも成長しているのです。


 ソフィア達がパフェを食べたのは、建物の1階にあるカフェではなく、別の建物の2階に入っている喫茶店の方だと思います。

 カフェのメニューにパフェやプリン・ア・ラ・モードはありませんので。


「寿司、割烹、懐石、洋食屋、すき焼き、しゃぶしゃぶ、イタリアン、フレンチ、中華料理は食べましたか?」


「ん?寿司は食べたのじゃ。他は、どれも記憶にないようじゃ」

 ソフィアは言いました。


「お寿司は食べたよ、回って来るヤツね。後のは、知らない」

 ウルスラは言います。


 なるほど。

 つまり、ソフィアとウルスラは、わかりやすい建物の1階や飲食店ビルに入っている店には行ったけれど、建物の最上階に入っている高級店の方には行っていない、という訳です。


 ならば、夕食は、その高級店の、どれかにすればダブらないですね。


 私達は、口直しを求めて、ゲームマスター本部に【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


 ゲームマスター本部。

 ケーキバイキング。


「きゃ〜っ!この世の中に、こんな天国があったんだね〜。最っ高〜っ!」

 ウルスラは、ケーキの数々に大興奮です。


「うむ。いくら、食べても同じ値段とは、もはや、タダみたいなモノじゃな。持ち帰りは別料金なのが難点じゃが……あーむっ、モッシャ、モッシャ……」

 ソフィアは、ホールケーキを一口でパクパクと食べながら言いました。


 本来、このケーキバイキングは、時間無制限で、無料です。

 ゲームマスター本部内の施設利用は、ゲームマスターは無料ですので。

 しかし、無料でソフィアを相手にしては、破産するのが目に見えていますので、2時間の時間制限と、妖精は銅貨50枚(5千円相当)……人種は銀貨1枚(1万円相当)……守護竜は金貨1枚(10万円相当)というルールを新しく設定させてもらいました。

 これでも、ソフィアが本気で食べまくれば大赤字は間違いないのですが、赤字分は、私が補填しておきましょう。


「今日、1日で、色々な料理の形態や、様々な料理店の趣向を経験出来ました。これを生かして、サウス大陸の食文化の発展や、観光産業の興隆に繋げたいものです」

 真面目なファヴが言いました。


「ファヴ、通って来ても良いのですよ。エントランスに【転移(テレポート)】して、ミネルヴァにさえ許可を取れば、本部に入るのに私の許可は必要ありませんからね」


「そうですね。夜に書き物をしていて行き詰まったら、こちらに来て気分転換をするのも良いですね」

 ファヴは言います。


「うむ。喫茶店なる店は、静かで落ち着く場所だったのじゃ。蕎麦屋の座敷の畳という物もリラックス出来るのじゃ。ああいう店で、書き物仕事をすれば、(はかど)りそうじゃ。少し小腹が空いたら、すぐ料理も食べられる。このゲームマスター本部の中ならば……勝手に1人で街中に出かけてはならぬ……と叱られる事もない。我は、今ほどノヒトと出会って良かったと思った事はないのじゃ」

 ソフィアは、ホールケーキをパクパク食べながら、言いました。


 勝手に1人で街中に出かけないように……と、ソフィアに厳しく言っているのは、私ではありません。

 アルフォンシーナさんです。


 私は、ソフィアのやりたいようにさせていました……もちろん、程度の問題はありますが……。

 私も、ソフィアに単独行動はさせません。

 必ず、オラクルとヴィクトーリアを付けています。

 しかし、それ以外は、なるべくソフィアの要望に沿うようにしてあげたいと考えていました。


 ただし、アルフォンシーナさんの気持ちも理解出来ます。

 ソフィアは神様なので、フラフラ気軽に街中を出歩くのは、さすがに不味いのでしょう。


 その時、ディーテ・エクセルシオールから、【念話(テレパシー)】が飛んで来ました。


 ノヒト様、助けて……グレモリーが……。


 私は、直ちに、グレモリー・グリモワールが持つ【ビーコン】に向かって【転移(テレポート)】しました。

お読み頂き、ありがとうございます。


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