第213話。自由街サンタ・グレモリア。
名前…ジャンピエトロ
種族…【人】
性別…男性
年齢…59歳
職種…【執政】
魔法…なし
特性…【才能…先導】
レベル…21
【ドラゴニーア】執政官。
【サンタ・グレモリア】。
【サンタ・グレモリア】神殿。
私達は、全員で【サンタ・グレモリア】に【転移】しました。
神の軍団の神兵100頭は、【ラウレンティア】に一旦、置いて来ましたが……。
「ようこそ、【サンタ・グレモリア】へ」
グレモリー・グリモワールは、言います。
神殿の聖職者らしき者達が、何事か、と集まって来ました。
グレモリー・グリモワールは、聖職者達に事情を説明します。
その後、グレモリー・グリモワールは、スマホでチャット通話を開き、矢継ぎ早に指示を飛ばしました。
なかなか、どうして、グレモリー・グリモワールの庇護者ぶりは、大したモノですね。
感心します。
私達レジョーネは、現在地……つまり【サンタ・グレモリア】神殿最上階の礼拝堂に転移座標を設置しました。
「ほお〜、この街は、なかなか良いの〜。それに、何やら既視感があるのじゃ」
ソフィアが神殿の窓から【サンタ・グレモリア】を見降ろして言います。
「【タナカ・ビレッジ】と、どこか似たような雰囲気がありますね」
ファヴが言いました。
「それじゃ!城壁や堀の規模や建築様式がソックリじゃ。あの鋸壁の狭間が細く、U字型に揃えられておる所などは、全く同じじゃ。尖塔の型も同じじゃ。ノヒトとグレモリーは、同じ建築学派のようじゃな?」
ソフィアが言います。
確かに、【サンタ・グレモリア】は私が再開発した現在の【タナカ・ビレッジ】に、よく似ていました。
私とグレモリー・グリモワールは元は同一自我なので、当然と言えば、当然です。
私とグレモリーの建築様式は、さしずめ豆腐様式でしょうか。
さてと、やるべき事が目白押しですよ。
とりあえず、順番にこなして行きましょう。
【サンタ・グレモリア】の首脳だという人物達が、やって来ました。
ピオさんもいますね。
「よ、ようこそ、おいで下さいました。【神竜】様、【ファヴニール】様、【調停者】ノヒト・ナカ様。自由街【サンタ・グレモリア】の辺境伯を拝命しておりますアリス・アップルツリーでございます」
アリス・アップルツリー辺境伯は恭しく礼を執ります。
アリス辺境伯は、かなり戸惑っている様子。
まあ、突然、アポイントもなく【神格者】が3柱も訪問して来れば、そういう反応になるのでしょう。
彼女が、グレモリー・グリモワールの庇護下にある【サンタ・グレモリア】の統治実務代表という訳ですね。
随分若いですが、グレモリー・グリモワールが信頼する人物だという事。
優秀な人材なのでしょう。
因みに、自由街とは、国家や領主に対して納税義務を負わない街の事。
街は、自治体区分で言う所の都市の下、町や村の上の区分です。
「ソフィアじゃ」
ソフィアが手を上げて言いました。
「【ファヴニール】です。僕の事は、ファヴ、と呼んで下さい」
ファヴは言います。
「よろしくお願いします。私も、ノヒト、と呼んで下さいね」
「か、畏まりました」
アリス辺境伯は、多少、顔を引きつらせながら言いました。
「ソフィア様、ノヒト様、お久しぶりでございます。ファヴ様、お初に、お目にかかります。世界銀行ギルド副頭取のピオでございます」
ピオさんが頭を下げます。
「うむ、久しいの」
「お久しぶりです」
「初めまして、ファヴです」
それぞれ、略式儀礼で簡単な自己紹介をして、と。
「グレモリー様。あのう……艦隊は?」
アリス辺境伯が、怖ず怖ずと訊ねました。
「今日の夜までには持って来れる事になったから、安心して良いよ。こっちの様子は、どう?」
グレモリー・グリモワールは、訊ねます。
「あ、はい。マクシミリアン王陛下の方は、ノラリクラリと上手く時間稼ぎをしているようです。朝便の駅馬車でやって来た治療を希望する患者さんは、ご指示の通り、入院してもらっています」
「あ、そう。マクシミリアンの優柔不断さは、こういう時には役に立つね。患者さんは、私が後で診るよ」
「お願い致します」
「じゃあさ、ノヒトは、私がチュートリアルをやっている間に、こっちの事は、適当にやっちゃって良いからね」
グレモリー・グリモワールが私達に向かって言いました。
「わかりました」
「アリスは、ノヒト達のサポートと、村人……あ、街人さん達に広報と周知。グレースさんは、チュートリアルに参加するメンバーを集めて説明する。じゃあ、よろしく」
グレモリー・グリモワールは差配します。
「ノヒト様のサポートとは?何をすれば良いのでしょうか?」
アリス辺境伯が訊ねました。
「ノヒトは、今から【サンタ・グレモリア】の防衛力強化をしてくれる。必要な物事があれば、ノヒトから依頼があるだろうから、アリスにその対応を任せるよ。ノヒトの指示は、私の指示だと思うように、良いね?」
グレモリー・グリモワールは、言いました。
「畏まりました」
では、私も行動を開始しましょう。
「ソフィアとファヴは、【タナカ・ビレッジ】にいるファミリアーレを【ドラゴニーア】に帰還させて下さい。トリニティは、【サンタ・グレモリア】の防衛警戒を」
「わかったのじゃ」
「わかりました」
「仰せのままに」
ソフィア、ファヴ、オラクル、ウルスラ、ヴィクトーリアは、【タナカ・ビレッジ】に【転移】しました。
トリニティは、神殿から上空に舞い上がります。
「グレモリーちゃん、私は、病院の患者さんを治療して来るわね」
「ありがとう、ディーテ。なら、そっちは頼むよ」
ディーテ・エクセルシオールは、病院に向かいました。
私は、【サンタ・グレモリア】の外に出て、原野フィールドに転移座標を設置した後、【転移】で【ラウレンティア】に取って返します。
・・・
【ラウレンティア】。
私は、【ラウレンティア】の神竜神殿から飛んで、神の軍団100頭と上空で合流しました。
すぐに、神兵100頭を連れて、【サンタ・グレモリア】に【転移】します。
・・・
【サンタ・グレモリア】。
私は、トリニティを呼び、神の軍団100頭の指揮を任せました。
さて、グレモリー・グリモワールは、と。
私は【マッピング】でグレモリー・グリモワールを探しました。
グレモリー・グリモワールは、【サンタ・グレモリア】の役所だという建物にいます。
確か、アリス・タワーと呼んでいましたね。
私は、高速飛行で、アリス・タワーに向かいました。
・・・
アリス・タワー。
1階ホール。
「グレモリー。神の軍団1個小隊の移動を完了しましたよ」
「ありがとう、ノヒト」
グレモリー・グリモワールから、【サンタ・グレモリア】の職員を紹介されました。
チュートリアルに参加するメンバーも揃っているそうです。
皆さんに、ご挨拶。
「グレモリー。では、防衛体制の構築をしてしまいますね」
「うん、頼むよ。じゃあ、私は、チュートリアルに行くから。諸々、よろしく」
「はい。こちらが終わったら、【ラウレンティア】に迎えに行きます。午後3時に神殿の礼拝堂で」
「午後3時、【ラウレンティア】神殿礼拝堂……了解」
グレモリー・グリモワールは復唱しました。
「ふふ……」
私は、思わず笑みが溢れます。
「何?」
「いや、そのスケジュールを復唱して確認する癖。私も同じです」
「あ、そう。ま、当然でしょう?」
「はい」
グレモリー・グリモワールは、チュートリアルをする為に【サンタ・グレモリア】に【転移】して行きました。
残ったのは、アリス辺境伯、サイプレス子爵、ピオさん。
彼らも、後ほど交代でチュートリアルに参加しに行くようです。
【サンタ・グレモリア】の統治責任者が全員いっぺんに街を留守にするのは、具合が悪いですからね。
さてと、私は、【サンタ・グレモリア】の防衛体制を構築しなくてはいけません。
まずは神の軍団の厩舎を建築します。
グレモリー・グリモワールから、指定された場所は、【サンタ・グレモリア】の東側……【竜の湖】の湖畔でした。
【サンタ・グレモリア】の最大脅威である【湖竜】の周期スポーン・エリアと【サンタ・グレモリア】市街との間に、神の軍団の駐屯地を置き防衛ラインとする、という意図。
合理的判断ですね。
私は、フルパワーで魔法建築を行いました。
巨大な格納庫のような建物を湖畔にズラズラと林立させて行きました。
これらの厩舎が【サンタ・グレモリア】にとって2枚目の城壁の役割も担います。
厩舎の上には、回廊を通して都市城壁と橋で繋ぎました。
厩舎から、湖の上に桟橋状の構造物を伸ばします。
この桟橋から神兵達が出入りする訳ですね。
【ヴイーヴル】が近くにやって来ました。
【マッピング】の光点反応は、青。
「やあ、お前がキブリかい?」
【ヴイーヴル】のキブリは、翼をビシッと上げて挨拶してくれました。
グレモリー・グリモワールの従魔キブリです。
ワザワザ挨拶に来るとは、なかなか律儀モノですね。
何だか、クネクネと飛び回りながら、厩舎の中を確認している様子。
「キブリも、ここに住みたいのかい?」
キブリは、頷きました。
グレモリー、湖畔の厩舎をキブリの分も建てるけれど良いかい?
私は、【ラウレンティア】にいるグレモリー・グリモワールに【念話】で、お伺いを立てます。
ノヒト、許可するよ。
グレモリー・グリモワールが【念話】で、伝えて来ました。
あ、そう。
神の軍団の神兵と、キブリ用の厩舎は完成。
造作もありません。
次にやるべき事は、【サンタ・グレモリア】の全ての建造物に【神位バフ】を上かけして補強します。
完了。
問題ありません。
「ノヒトぉ〜。ファミリアーレは、竜城に送り届けたのじゃ。クイーンから、ノヒトによろしく、と言われたのじゃ」
ソフィアがやって来ました。
「ありがとう。ご苦労様。ソフィアとファヴは、休憩していてよ」
「わかったのじゃ」
「わかりました」
さてと、とりあえず、グレモリーから頼まれていた仕事は完了しましたが、時間的余裕がありますね。
好きにして構わない、との事でしたが、どうしましょう。
ざっと見回して、私なら、この【サンタ・グレモリア】を、どう発展させるかを考えてみました。
私が考え、良いプランだ、と見做すモノは、即ち、グレモリー・グリモワールも同じように考えると思いますので。
【サンタ・グレモリア】の都市開発。
住宅地の拡張整備。
【サンタ・グレモリア】内の公共交通の整備。
近郊の都市【イースタリア】までの自動運転地下鉄。
サンタ・グレモリア・スクエアの建設。
【サンタ・グレモリア】の産業開発。
農場拡張整備。
稲作の水田化。
クイーンの農業指導。
ウオヴォ・マエストロの養鶏指導。
水産事業の一元集約化。
干物工場拡張整備。
練り物工場拡張整備。
急速冷凍施設整備。
缶詰工場建設。
マリオネッタ工房。
【自動人形】工場建設。
スマホ工場建設。
浮遊移動機の工場建設。
アブラメイリン・アルケミー。
【ハイ・エリクサー】の製造ライン整備。
イーヴァルディ&サンズ。
造船所建設。
【砲艇】の製造ラインの開設。
【対地対空自走砲】の製造ラインの開設。
……くらいでしょうか?……どう思いますか?
私は【念話】でグレモリー・グリモワールに訊ねました。
よく、わからないモノもあるけれど、丸っと任せるから、思いっきりフルスイングしてくれて構わないよ……でも、それ全部一気に出来ちゃうの?
グレモリー・グリモワールが【念話】で訊ねました。
一気には、無理ですね……今日の3時まで、それに加えて1日ほどあれば出来るでしょう。
私は【念話】で言いました。
それにしても1日半で、それ全部出来るのか……ゲームマスターって、チート過ぎない?
グレモリー・グリモワールが【念話】で言います。
そうですね。
私は【念話】で言いました。
あはは……なら、全部お願い……優先順位は、任せるよ。
グレモリー・グリモワールが【念話】で言います。
では、農地の拡張と、住宅地の拡張辺りから着手します……それで、まだ余裕があれば私の会社の工場を造ります。
私は【念話】で言いました。
うーん、工場の従業員の確保がね……魔法が使えるのが私だけだし、こっちの労働者の識字率は、クッソ低いんだよ……とても、そんな高度な製品を扱うラインの作業には従事出来ないと思う。
もちろん、プロトコルと【自動人形】・シグニチャー・エディションを投入しますよ……シグニチャー・エディションならラインの管理だけでなく、人材の指導と育成も出来ますので。
私は【念話】でグレモリー・グリモワールに伝えました。
本当!シグニチャー・エディションって、あのクワランタと同じモデルでしょう?……凄いね……ありがとう。
グレモリー・グリモワールは【念話】で伝えて来ます。
あと、港の位置を少しずらしても構いませんか?
私は【念話】でグレモリー・グリモワールに訊ねました。
あー、造船所を造るんだったね?
グレモリー・グリモワールは、【念話】で言います。
はい、スペースが足りません。
私は【念話】でグレモリー・グリモワールに伝えました。
なら……領軍の訓練場を潰して、港とターミナルとドックと造船所のエリアにしちゃって良いよ……で、訓練場は新しく造っておいてくれない?
グレモリー・グリモワールは【念話】で伝えて来ます。
了解です……街区は、一辺1kmの正方形、城壁は高さ20m、堀は幅50mに規格統一すれば良いのですね?
私は【念話】でグレモリー・グリモワールに訊ねました。
そだよ……出来れば、回廊……つまり街道に面して西側に等間隔で新街区を造って行って欲しいんだけれど、出来る?
グレモリー・グリモワールが【念話】で訊ねます。
なるほど、輸送効率を考慮してですね……時間的にはギリギリですが、やりましょう。
私は【念話】でグレモリー・グリモワールに言いました。
よろしく。
グレモリー・グリモワールは【念話】で伝えて来ます。
グレモリー・グリモワールは、駅馬車流通を核として沿線開発方式を想定しているのでしょう。
合理的判断ですね。
街区を駅馬車流通にたいして垂直方向に深く拡張してしまうと、垂直方向にも大規模輸送の手立てを講じなくては流通に不便が生じます。
なかなか、考えられていますね。
将来的には、グレモリー・グリモワールが回廊と呼んでいた街道の地下に鉄道を通せば良いでしょう。
さてと。
オラクル、手伝って下さい。
私は【念話】でオラクルを助っ人に呼びました。
【超位】の【工学魔法】持ちのオラクルに手伝ってもらえば、やれるでしょう。
畏まりました。
オラクルは、【念話】で応えます。
数秒後……。
我もやってやるのじゃ。
ソフィアが【念話】で言いました。
僕も手伝います。
ファヴも【念話】で言います。
2人は、オラクルから事情を聞いたのでしょう。
ファヴは、ともかく、ソフィアは、単調で集中力を要する土木・建築の作業に、すぐ飽きてしまいそうな気がしますが……。
まあ、良いでしょう。
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