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第183話。グレモリー・グリモワールの日常…46…対【ウトピーア法皇国】迎撃作戦計画。

本日5話目の投稿です。

 夕食。


 ディナーのメニュー。


 前菜は、湖魚のカルパッチョと、湖魚の蒸し物、を選べるようにしてある。


 第2皿は、【パイア】の薄切りと野菜を、熱したスープにくぐらせた物に、キノコのソースをかけた料理。

 つまり、豚しゃぶ、と温野菜サラダみたいな物だ。


 メインは、【地竜(アース・ドラゴン)】ハンバーグのトマト煮込みと、【コカトリス】のジュレから選べるようにしてある。

 昨日は、色々あって、ハンバーグは回避したけれど、もう、ペッシャンコでグッチャグチャの()()を見ちゃったショックからは立ち直ったからね。


 予想通りというか、【ブリリア王国】側は、湖魚のカルパッチョと、ハンバーグに忌避感を見せた。

 ウエスト大陸に生魚を食べる習慣はないし、挽き肉を使った料理というのは【ブリリア王国】的には、クズ肉や傷みかけの古い肉を使ったのを誤魔化す為の工夫で、貧民が食べる下賎な食べ物であって、間違っても、王や貴族が口にするような物ではない、という認識があるらしい。


 ま、オマイらは、その貧しい生活を強いられている民が支払ってくれる税で贅沢が出来ているんだけれどね。


【ブリリア王国】側は、全員、湖魚の蒸し物と【コカトリス】のジュレを選んだ。


 別に、構わない。

 その為に選択肢を準備したのだから。


 私は、迷わずカルパッチョとハンバーグを選ぶ。

 この一択しかない。

 刺身もハンバーグも、食べたくて食べたくて仕方がなかったのだ。


【サンタ・グレモリア】側、ディーテ達、そしてフェリシアとレイニールは、私に倣って、カルパッチョとハンバーグを選択。

 ディーテ達は鮮度がよければ挽き肉に忌避感はない。

 生の魚も大丈夫らしい。

【エルフ】は、肉の種類や鮮度によっては、日常的に生肉を食べているそうだ。

 また、私がしたように魔法的に、加工して魚介類を生でも食べる。


 生肉……牛肉のタタキとか、タルタルとか、レバ刺し……それも美味しそうだね。


 そもそも、地球のイタリア料理で云う、カルパッチョ、は、牛肉を使うのが伝統的レシピ。

 それを基に、とある日本人シェフが生魚を使ったカルパッチョを発明したのだ。

 生魚に忌避感がある西欧人の抵抗を和らげる為の工夫だったのだ、とか。

 それが現代地球では、世界中に広がっている。

 さすが日本人……魔改造は、お手の物だ。


 湖魚は、私が魔法で寄生虫、細菌、ウイルスなどを完全除去してあるので、安全。

 また、【サンタ・グレモリア】では、鮮度の高い肉しか、生の挽き肉として売ってはならない、という条令を定めてある。


 カルパッチョもハンバーグも最高。

 白ご飯が欲しいよ。


 ・・・


 夕食後。


 マクシミリアンと、もう一つの懸案に向き合う。


 対【ウトピーア法皇国】問題。


 既に、私が【眷属化】したナディアから取った情報は、マクシミリアンにも伝えてある。

 つまり、マクシミリアンは、【ウトピーア法皇国】の【ブリリア王国】侵攻計画を知ったのだ。


 どうする?


 マクシミリアンは、【ノースタリア】に軍を増強する命令を出したらしい。

 ただし、彼我の戦力差は明らか、【ウトピーア法皇国】が攻めて来れば、【ノースタリア】は簡単に陥ちる。

 ()()()で迎え撃とうとすれば、【アヴァロン】も持ち堪えられないだろう。


 この後に及んで、マクシミリアンは……【ウトピーア法皇国】との外交を続けて問題解決を図るつもりだ……などと言っている。


 お気楽だ。


 相手は侵略しようとしているのに、交渉?

 全く、徹頭徹尾、マクシミリアンといい、リーンハルトといい、【ブリリア王国】の為政者はヌルい。

 育ちの良いボンボン上がりの、頭が悪い、お山の大将ばっかりだ。


「敵の戦術が縦深突破だとわかっているのだから、こちらも縦深防御をすれば良い。敵軍を自国領深くまで攻め入らせて、焦土戦術を取り、補給線を寸断して干上がらせ、ゲリラ戦術を仕掛けるのだ」

【エルフヘイム】の元女王ヨサフィーナさんが言う。


【エルフ】はゲリラ戦術の大家(エキスパート)

 ヨサフィーナさんは、いわば世界最高のゲリラ組織の親分だったのだ。

 説得力があるよね。


「自国の領土を焦土化するなど、民が冬を越せません……」

 マクシミリアンは難色を示した。


「戦時国債を発行して、他国から食料を輸入すれば良いのでは?」

【エルフヘイム】の元祭司長イーリスさんが言う。


「国債を買ってくれる者がいるでしょうか?」


「世界銀行ギルドが引き受けます。当座は【ドラゴニーア通貨】で100万金貨。足りなければ、その10倍を上限に引き受けましょう。満期は10年、利率は7%でいかがでしょうか?」

 ピオさんが言った。


「私も100万金貨分、買ったげるよ」

 私は、手を挙げる。


 乗りかかった船だからね。


「私も100万金貨分、購入するわ」

 ディーテも言う。


「け、検討致します」

 マクシミリアンは言った。


「マクシミリアン王。【ウトピーア法皇国】は【(ヒューマン)】至上主義の国、また、【ウトピーア法皇国】は、彼らが異教徒と見做す者達に対しては、奴隷とする事を認めている。そんな国に負ければ、【ブリリア王国】の民は奴隷にされ、【(ヒューマン)】以外の種族は皆殺しにされるぞ。それと、比較して、焦土化は、随分、割りの良い戦術だと思うが?」

 ヨサフィーナさんは言う。


「しかし、焦土戦術を取れば、仮に敵を撃退出来たとしても、国土の復興に莫大な労力と費用が必要となり……」


「マクシミリアン王。私は、ディーテ様とグレモリー様に頼まれたから、知恵を出しているが、あなたの煮え切らない優柔不断な態度には、正直、辟易としている。【ウトピーア法皇国】は、今夜にも攻めて来るかもしれないというのに、あなたは何も決められない。機を逸した熟慮は、拙速な短慮に劣るのだぞ」

 ヨサフィーナさんが苦言を呈した。


 ヨサフィーナさんも、マクシミリアンの頭の回転の鈍さ、と、決断力のなさに、かなり呆れている様子が伺えるね。


 うん、同感だよ。


「あのさ、私、忙しいんだよね。だから、どうするか方針が決まったら呼びに来て。じゃ、そゆことで」

 私は、無意味な時間の浪費にしかならない会議の席を立って、その場を立ち去った。


 ・・・


 私は、商業区の空き地に幾つもの工場を建築する。


 パスを通じて確認すると、フェリシアとレイニールは、もう寝ている。

 早寝早起き。

 感心感心。

 寝る子は育つからね。


 商業区は、東側の区画の中央を南北に大通りが走り、そこに面して商店、工房、ホテル、レストラン、ギルドの建物が並ぶだけで、裏通りは、ほとんど更地のままだ。

 西側の区画も、北に港とターミナル、南に団地があるけれど、中央部は広大な空き地。

 西側区画の中央には卸売市場を造る計画だ。


 商業区は、一部、音が出たりする鍛治工房などは、裏通りに集めてあるし、冒険者を対象とした安宿も裏通りにあるけれど、それ以外は空き地だらけ。

 ここを埋めるまでは、街区整備は終わらない。


 大小の工場を複数建てた。

 大きな工場の2つを、私がもらう。


 1つは新型馬車など大型の製品を製造するライン。

 もう1つは、魔法IHコンロ、給水給湯器、浄水器、空気清浄器など、村に導入してある【魔法装置(マジック・デバイス)】を造るライン。


【超位】のコアを手に入れたら、プロトコルを製造し、大量生産体制を確立するつもりだ。


 ディーテが建築の手伝いに来てくれる。

 どうやら、マクシミリアンは腹をくくって、【ウトピーア法皇国】と戦う覚悟を決めたようだ。

 外交だなんて甘っちょろい事を言わずに、全面戦争。

 戦略は【エルフ】流。

 補給線を断ち、【ウトピーア法皇国】軍を飢えさせる。


 あ、そう。


 ・・・


 深夜。


 工場群は完成した。

 空き工場がいっぱいだね。

 とりあえず大型物件の一つは、製材工場とするが決まっている。

 ディーテのチームの、前軍司令官のクラーラさんと、前近衛隊長のロヴィーサさんに森で木を伐採して来てもらい、村人さん達に製材作業をしてもらうつもりだ。

 私がやれば、早いけれど、私は他にもやる事がある。

 暇な村人さん達の手を遊ばせておくのも問題だ。


 私は、私にしか出来ない事をするべきだからね。


 私のスマホが鳴る。

 アリスからだ。


「はいはい?あ、そう。わかった戻るよ」


 どうやら、対【ウトピーア法皇国】戦の方針が決定したらしい。


 ・・・


 アリス・タワー。

 会議室。


 マクシミリアンは、私に跪いていた。


「どうか、グレモリー様のお力をお貸し下さいませ」

 マクシミリアンは、頭を床につけて懇願する。


 ん?

 どゆこと?


「戦争に勝つにはグレモリー様のお力にすがる他、方法がないという結論に至ったのですよ」

 ピオさんが教えてくれた。


「で、私に、どうして欲しい訳?」


「【イースタリア】、及び、【ノースタリア】の防衛に、ご助力願いたく……」


「具体的には?」


「グレモリー様には、【イースタリア】を守って頂き。ディーテ様に【ノースタリア】を守って頂きたい、と。我らの軍は、遊撃戦を行い、敵の補給線に打撃を与えます」


 どうやら、これが、ヨサフィーナさんと、クラーラさんと、ロヴィーサさんが導き出した最高の戦術。

 ヨサフィーナさん達の計算の前提となっている私の戦闘力は、ディーテが教えたらしい。

 ディーテが話す、私の過去の戦歴を聴いて、マクシミリアン以下【ブリリア王国】側は、戦慄していたようだ。


 マクシミリアンが私に、1戦もせず降伏した事を不満に思っていた、【ブリリア王国】軍司令官も、マクシミリアンの降伏の判断に感謝したらしい。


 ま、そうなるわな。


 閑話休題。

 私とディーテが【イースタリア】と【ノースタリア】の籠城戦を指揮して、マクシミリアンが敵後方補給線を寸断する。


 確かに、私の戦闘力が、ディーテが知るモノが全てだったら、それが最適解だったと思う。

 ディーテが知る、私の()()戦闘力は、ほぼ正確だ。

 追加贈物(ギフト)で【超位】に完全覚醒した、とはいえ、攻撃力は以前と変わらない。


 でも……。


「却下。打って出るよ」


「へ?」

 マクシミリアンは変な声を出した。


「「「「「え?」」」」」

 ディーテ達【ハイ・エルフ】の古老達も驚く。


「敵が国境を侵犯した瞬間に殲滅する。私はそのまま、【トゥーレ】に飛び、【ウトピーア法皇国】の法皇を捕らえて来る。これが、最も効率的な戦術だよ。それで莫大な賠償金と【ウトピーア法皇国】の南西部の領土を割譲させて、法皇の身柄と交換する」


「そんな事が出来るのですか?」

 マクシミリアンが訊ねた。


 他の皆も疑っている。


「出来るよ。で、マクシミリアンに頼みがあるんだけれどさ」


「何でしょうか?」


「1週間、時間を稼いで。どんなに卑怯で汚ない手を使っても構わないから、1週間、【ウトピーア法皇国】が攻めて来ないように時間を先伸ばしにして欲しい。そうすれば、()()()


「何をするのですか?」


「簡単だよ。2日後の10月1日に【ドラゴニーア】から交易飛空船が来る。私は、その帰りに乗って行って【ドラゴニーア】に向かう。2日で【ドラゴニーア】の竜都に到着。で、竜都の中央神殿……つまり竜城から【(ゲート)】を通って、【シエーロ】の、私の、お家に帰る。1日準備して、【サンタ・グレモリア】に取って返す。2日で【サンタ・グレモリア】に到着。計7日間」


 今は、ディーテがいる。

 私は、【サンタ・グレモリア】を1週間くらいなら留守に出来るからね。

 ま、交易飛空船を待たずに、【砲艦(ガン・シップ)】で今晩にも出発すれば、2日は、スケジュールを巻けるけれど、【砲艦(ガン・シップ)】は、長距離飛行を想定していないから、居住設備がない。

 快適ではないのだ。


「あのう、グレモリー様の、ご自宅に戻られて何をするのですか?戦局を劇的に優位にする方策があるのでしょうか?確か、【ブリリア王国】と全面戦争を企図していた時に伺った限りでは、【ブリリア王国】より、はるかに強大な【ウトピーア法皇国】に対して、攻勢に出て、そのように簡単に敵の国家元首を虜囚にするような戦力はなかったように思うのですが?」

 ピオさんが訊ねた。


「あの時は、ディーテがいなかった。私が【サンタ・グレモリア】を離れて【シエーロ】に帰ると、その間、無防備になった【サンタ・グレモリア】が危なくなるから帰れなかったんだよ。今なら、【サンタ・グレモリア】の防衛にディーテを残しておけば、1週間くらい留守に出来るからね。私の、お家の格納庫(ガレージ)には、グリモワール艦隊(フリート)がある。アレを投入すれば、【ドラゴニーア】とだって1週間やそこいらなら戦えるよ。【ドラゴニーア】より弱い【ウトピーア法皇国】が相手なら勝つね」


 グリモワール艦隊(フリート)は、ディーテが私のパーティから抜けた後に建造したから、ディーテは、その存在を知らない。

 それに、【シエーロ】の自宅には、私の、()()()()もある。


 その頃、ディーテは、【エルフヘイム】の【大祭司(グランド・ドルイダス)】として、【ユグドラシル連邦】を纏めたり、【ヨトゥンヘイム】と戦争をしたり、結構忙しかったからね。

 ノース大陸も当時は、生臭い話が色々あったんだよ。


「【シエーロ】のグレモリーちゃんの家って、無事なのかしら?900年前よ。【シエーロ】の【天使(アンゲロス)】の国家に接収されているんじゃないの?ウチの【ユグドラシル連邦】でも、大消失以後100年後から順次英雄(ユーザー)の不動産資産は対価を英雄(ユーザー)の口座に支払って接収してしまっているわよ」


「たぶん無事だと思う。別荘の方はわからないけれど、自宅には、接収が不可能な理由があるんだよ。もし仮に【シエーロ】の国家が、私の自宅を接収に動けば、アレが暴れ出す。ディーテ、この900年間で、【シエーロ】で、国家崩壊クラスの大災厄が起きたって情報はある?」


「ないわね。【天使(アンゲロス)】族と、【巨人(ジャイアント)】族との戦争は度々あるようだけれども、国家崩壊と、まではいかないわね」


「なら、たぶん平気だよ。私の自宅を接収しようだなんてすれば、自宅に仕掛けてある防衛機構が働く。防衛機構が突破されたら、アレが目を覚ます。ゲームマスターも、英雄(ユーザー)もいなくなった状況なら、アレは止められない。たぶん【シエーロ】は滅びるんじゃないかな?だから、私の、お家の格納庫(ガレージ)と、最終兵器は保全されている筈だね」


「何だかわからないけれど、グレモリーちゃんが、そこまで言うなら信じるわ」

 ディーテは言った。

お読み頂き、ありがとうございます。


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