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第175話。グレモリー・グリモワールの日常…38…主席国家魔道士ティモシー・ウィングフィールド。

本日10話目の投稿です。


本日10話連続投稿を致しました。

 アリス・タワー。


 朝ご飯会議。


「王都【アヴァロン】からの船団は、既に【イースタリア】に寄港している、との報告がありました」

 アリスが言った。


「あ、そう。なら、到着時間は予定通りで良いんだね」


「はい。それで、本当に儀仗は必要ないのですか?」

 アリスが心配そうに言う。


「装備の類が間に合わなかったからね〜。ごめんね。ま、見てくれなんかどうでも良いでしょう?歓迎する気持ちが伝わればさ。ね、ピオさん」


(あなど)られたと腹を立てる者がいるかもしれませんが、そういう手合いは、概して中身がないのです。表面的な物に惑わされて【サンタ・グレモリア】の力を正確に推し量れない者など、無視すればよろしいのですよ」


 私がフルスピードで造った鎧と盾と剣は、5セットしかない。

 一応、アダマンタイト製の【フルプレート・メイル】で、強力な【超位バフ】が複数かけてある。

 性能は一級品だ。


 装備品は、総隊長のスペンサー爺さんと、衛士長のナイジェル爺さん、パーシヴァルさん、副守備隊長さん、副衛士長さんに配給しただけ。

 とても儀仗なんか出来るような状態じゃない。


 単に、鎧を着用して武器を持って立っていれば良いのであれば、駅馬車隊を並べておいても良いけれど、それは何だか違う気がした。


 駅馬車隊の鎧はトリスタンが買い揃えた物だから、不揃いで、少し薄汚いからね。

 いや、使い古しが恥だなんて思わない。

 むしろ、駅馬車隊は、【サンタ・グレモリア】の誇りだと思っている。


 そうでなくて。

 本来の用途と違う人達に儀仗隊の真似事をさせるような了見が、違う、と思うのだ。


 私は、虚礼の類が好きじゃない。

 自分が嫌いな事を相手にするっていうのも、どうかと思う。

 なので、今回は、少数精鋭でビシッと迎えれば良い。


 そもそも、相手は、人質として来るんだしね。


「【サンタ・グレモリア】には、3隻が入港致します。残りの船団は、【イースタリア】に泊め置かれるそうです。こちらに来る船の内訳は、第3王子が座乗する【キャラック】1隻……ピオさんを【アヴァロン】に送る【スクーナー】1隻……護衛の【砲艦(ガン・シップ)】が1隻、だそうです」


「【砲艦(ガン・シップ)】を入港させるのはいかがなものかと。未だ、和睦は正式にはなっておりません」

 スペンサー爺さんが疑義を唱えた。


「問題ないっしょ。【砲艦(ガン・シップ)】は、強力だけれど、1隻なら余裕で撃ち落とせるから、大丈夫だよ」


砲艦(ガン・シップ)】は、【ブリリア王国】が900年前の強国だった時代の遺産。

 100隻ほどはあるらしい。

 1隻欲しいね。


 第3王子を迎える式次第が話し合われて、朝ご飯会議は終了した。


 ・・・


 朝食後。


 駅馬車隊が到着。

 私は、患者さんを治療。

 駅馬車隊の出発を見送った。


 ・・・


 私は、病院に向かう。

 フロレンシアの様子を診る。

 母子ともに順調そのもの。

 問題なしだね。


 そうこうしているとスマホが鳴った。


「はいはい……あ、そう。今行く」


 どうやら、そろそろ、お客が到着するみたい。


 私は急いで港に向かった。


 ・・・


 港。


 私が、港に着くと、西の空に3隻の船影が見えて来た。


【ブリリア王国】王家の紋章旗をはためかせた、白銀色に輝く【キャラック】1隻。

 これに、第3王子が載っているのだろう。


 細身の【スクーナー】1隻。

 これは、ピオさんを【アヴァロン】まで送迎してくれる高速飛空舟だ。


 そして、艦首に【魔導(カノン)】を据え付けた【ガン・シップ】1隻。


「ちっ……ナロ〜……」

 私は少しイラっとした。


砲艦(ガン・シップ)】は、【魔導(カノン)】の砲身をこちらに向けて進んで来る。

 異世界的には、こういう場合、砲にカバーを被せるか、砲身を上空に向けて入港して来るのがマナーだ。

 儀礼格式に疎い私だって、そのくらいは知っているよ。

 こいつら礼儀も知らねーのか?


 ストライク。


 3隻は、一旦、村の北側に回り込んで港に進入して来る。

 安全の為に、村の上空は飛ばせない。

 墜落したり、何かしら船上から物が落ちて来たりしたら危険だからね。


砲艦(ガン・シップ)】を先頭に、順番に降りて来た。

砲艦(ガン・シップ)】は、こちらに砲身を向けたまま……。


 3隻は滑るようにして、港に着陸した。


 ・・・


【キャラック】から、衛兵の一団が降りて来て、左右に整列。

 その間を若い青年と、長い白ヒゲを生やした【ローブ】姿の老人が歩いて来た。

 その後ろにリーンハルトもいる。


 この若い青年が人質の第3王子だろうけれど……白ヒゲの爺さんは、誰だろうね?


「【ブリリア王国】主席国家魔道士のティモシー・ウィングフィールド老師殿です……」

 ピオさんがコソッと教えてくれた。


 ふーん、第3王子の護衛かな?

 ま、どうでも良いけれど。


「開拓村と聞いていたが……それにしては随分と巨大な港だな?城壁も豪壮な造りだ」

 第3王子らしき青年が、隣を歩くティモシー・ウィングフィールドさんに言った。


 ティモシー・ウィングフィールド……。

 名前が長いから、脳内では、白ヒゲ爺さんと呼ぼう。


「所詮は田舎臭い辺境の村でございます。住んでいるのは元は家すらも持たない乞食どもばかりだったとか。さしずめ、卑しい乞食村ですな」

 白ヒゲ爺さんが失礼な事を言った。


 ピキッ……。


 今、私の村人さん達に、凄く失礼な事を言ったね?


 魔法で音を拾っている私の耳には、ヒソヒソ話も丸っと聴こえているんだよ。


 ストライク、(ツー)


 第3王子と、白ヒゲ爺さんと、リーンハルトは、衛兵の列を抜けて、私達が待つターミナルの方に歩いて来た。


 その時、白ヒゲ爺さんが、わずかな段差につまづいてヨロけた。

 白ヒゲ爺さんは、杖を突いて、転倒を防ぐ。


 ふーっ、ビビったね。

 転けなくて良かった。


 あのくらいの年齢だと、転んで、怪我して、入院して、寝たきりになって、そのまま、ご臨終……って、パターンがよくある。

 ま、私がいれば、即死を免れれば、治療して完治するけれどね。


 あそこのデコボコは、直そうかどうか気になっていたんだよね〜……やっぱり養生しておけば良かった。

 ごめんなさい。


 白ヒゲ爺さんは、まだ少しフラフラしていた。

 すかさず、衛士長のナイジェル爺さんが近付いて、手を差し出して、白ヒゲ爺さんの身体を支える。


「えーい、儂に軽々しく触れるでない」

 白ヒゲ爺さんが声を荒らげた。


 そして、白ヒゲ爺さんは、腹立ち紛れに杖を振り上げる……。


 ガツッ!


 白ヒゲの爺さんが衛士長のナイジェル爺さんを、手に持つ杖で殴り付けた。

 ナイジェル爺さんの額がパックリ割れて赤い液体が一条流れる。


 あっ……。


【超位バフ】の効いた鎧を着ているのに、ダメージが通った。

 あれは、【神の遺物(アーティファクト)】級の【魔法杖】という事だね。


 ……って、今、ナイジェル爺さんを殴ったのか?

 殴ったんだよね?

 私の身内を……殴って……怪我をさせた……だと?


 ピキッ……。


 ストライク、(スリー)……アウト。


 ヒュンッ……ドカッ!


 私は、脊髄反射的に【飛行(フライ)】で高速近接し、白ヒゲ爺さん……もとい白ヒゲジジイをドロップキックで蹴り飛ばしていた。


 いやぁ〜、無意識だったよ。


 ジジイは、吹き飛んで、気絶した。


 老人虐待?

 関係ねーんだよ。


 先に手を出したのは、この白ヒゲジジイだ。

 百歩譲って、ナイジェル爺さんに非があったなら、仕方がない。

 でも、ヨロけた老人に手を差し出したのは、善意から発露した良心的な振る舞いだ。


 それに礼を言うならまだしも、鈍器で殴りつけて、出血させるとか……許せん。

 さらに、ナイジェル爺さんは、私の大切な身内だ。

 絶対に許さんぞ。


 ま、私が工事を失敗して、港とターミナルの境目に小さな段差が出来ちゃったのが原因かもしれないけれど……何も殴る事はない。

 しかも、杖で……。


 あの杖は、ゴツい。

 鈍器だ。

神の遺物(アーティファクト)】のアイテムで殴られたら、軽く打たれただけでも、死ぬ事もある。

 実際、あの【魔法杖】は、私の【超位バフ】を貫通してダメージを通した。


 殺す気か?


「おい、オマイ、何してくれとるんじゃ?」

 私は、気絶した白ヒゲジジイを怒鳴りつけた。


 意識がないから聞こえないんだけれどね。


「なっ、何だ、貴様っ!」

 第3王子らしき青年は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で言った。


 衛兵が武器を構えたので、私は【旋風(ワールウィンド)】で全員を瞬時に吹き飛ばした。

 加減したから死人は出ていない。

 ナイジェル爺さんとリーンハルトも巻き込んじゃったけれど……それは、ごめん……。


 私は、【エルダー・リッチ】をナイジェル爺さんとリーンハルトの治療に向かわせた。

 同時に、【ゾンビ】達に、【ブリリア王国】兵を拘束させる。


 私の隣に立つ第3王子らしき青年は、茫然としていた。

 こいつは、人畜無害っぽいから、とりあえず放置で良いか。


 邪魔がいなくなったので、再び、白ヒゲジジイに向き合う。

 私が魔法で覚醒させると、白ヒゲジジイは、意識を取り戻した。


「くっ……こ、この小娘がっ!主席国家魔道士たる、この儂に、よくも……」

 白ヒゲジジイは激昂して言う。


 ガスッ!


 私は、白ヒゲジジイを踏み付けていた。

 長〇力ばりのストンピング。


 あ、ごめん。

 また、無意識だったわ。


「貴様、し、死にたいのかっ?」

 白ヒゲジジイは、叫んだ。


 ガスッ、ドスッ、ドスッ……。


 私は、尻もちをついたままの白ヒゲジジイを何度も踏み付けた。

 無意識って、怖いね〜、本当に。


「おげっ、やめっ、あがっ……」


「私の身内に手を出したんだ。死ぬ覚悟は出来てるんだろうなぁ〜?この、クソ雑魚がっ!」


「ぐあ……貴様ぁ。(いかづち)よ、(とどろ)け……轟ら(サンダー・スト)……」

 白ヒゲの爺さんは、おそらく【轟雷(サンダー・ストーム)】を詠唱しようとした。


 はい、殺意認定。

 こっから先は殺しても正当防衛だからね。


「【魔法中断(マジック・キャンセル)】、【昏睡(コーマ)】、【排出(ドレーン)】」

 私は瞬時に白ヒゲの爺さんの【轟雷(サンダー・ストーム)】を無効にし、昏睡させ、魔力を強制排出させる。


 私は、【宝物庫(トレジャー・ハウス)】からアダマンタイトの鋼材を取り出し、それを【加工(プロセッシング)】して手枷・足枷を作り、白ヒゲ爺さんの手足にハメ、永久に魔力を練れなくする【複合魔法陣】を白ヒゲ爺さんの額に刻み付けた。


 ギュイーーン。


砲艦(ガン・シップ)】の魔導エンジンが起動する。


砲艦(ガン・シップ)】が、私に砲を向け臨戦態勢をとったので、【超重力(スーパー・グラビトン)】で撃墜した。


「ナイジェル爺さん。この死に損ないを、牢屋に、ぶち込んでおいて。それから【ブリリア王国】勢を全員捕縛しなさい。捕虜として適切に扱うように」

 私は、命じる。


「よろしいのですか?」

 ナイジェル爺さんは困惑気味に訊ねた。


「私の村の中で、私の身内に手を出したんだ、生かすも殺すも、私次第だよ。ナイジェル爺さん、もう一度言うよ。この死に損ないを、牢屋に、ぶち込んでおいて。それから、【ブリリア王国】勢を全員捕縛しなさい。捕虜として適切に扱うように」

 私は、再度命じる。


 これで、動かなければ、ナイジェル爺さんを解任する必要があるね。


「はっ!」

 ナイジェル爺さんは、部下に手伝わせて、衛兵を始め【ブリリア王国】勢全員に手錠をハメ、白ヒゲの爺さんを牢屋に引きずって行った。


 私は、【アヴァロン】に魔法通信をする。


「あーー、グレモリー・グリモワールだ。すぐマクシミリアンを通信に出せ」


 ・・・


 ほどなくして、マクシミリアン王が通信に出た。


「グレモリー殿、息子は今しがた【イースタリア】を出発したとの報告があったので、もう、間もなく……」


「おい、お前のところの、三流【魔法使い(マジック・キャスター)】崩れが、私の大切な身内に害意を持って攻撃をして怪我をさせたぞ。その後、私に向かっても攻撃魔法を詠唱した、【砲艦(ガン・シップ)】も私に砲を撃とうとした。これは、【ブリリア王国】からの明確な侵略行為と解釈して良いな?和睦はなしだ。よくも私を騙して約束を破りやがったな。絶対に許さない。近い内に、【アヴァロン】を燃やしに行く。首を洗って待ってろよ。この嘘つきのチ〇カス野郎がっ!」

 私は、魔法通信をガチャ切りした。


【ブリリア王国】の【キャラック】と【スクーナー】は、バラバラに破壊しておいた。

 この2隻は、ガラクタの類だから、いらん。

砲艦(ガン・シップ)】は鹵獲(ろかく)しておく。

 戦時下の鹵獲(ろかく)品は、もらっても泥棒にはならない。

 良い物を手に入れたね。

 ラッキーだよ。


 それにしても、マクシミリアンの野郎……。

 これが、和睦か?

 まったく、くだらない。


「リーンハルト。この第3王子を、あんたに預ける。リーンハルトの責任で【アヴァロン】に無事送り返しておいて」


「グレモリー様、ウィングフィールド老師殿にも非があったとはいえ、これは、やり過ぎでは?」

 リーンハルトは、唖然として言った。


 知っているよ。

 私は、いつも、ワザと、やり過ぎているんだから。


「リーンハルト。想像してみてくれないかな?オマイは、【イースタリア】の街中で暴漢が人を殴るのを目の前で見たらどうする?」


「突然、何ですか?」


「リーンハルト。これは大事な質問なんだよ。オマイは、【イースタリア】で暴漢が人を殴るのを目の前で見たらどうする?殴られた者には非がなくて、さらに怪我までさせられた。オマイは、それを目の前で見たらどうする?答えろ」


「もちろん、衛士に逮捕を命じます」


「殴られて血を流したのが、アリスだったら、どうする?」


「何ですか?」


「答えろ。お前の目の前で、アリスが暴漢に殴られて血を流した。お前は、どうするんだ?」


「その不埒(ふらち)な輩を、即座に斬り捨てるでしょう」


「では、殴られているのが、【イースタリア】で保護されている孤児で、殴っているのがマクシミリアン王だったら、どうだ?」


「それは……」


「それが答えだ。あの白ヒゲが【ブリリア王国】で、どんな立場や身分かなんて知らねーし、興味もねー。でも、あの白ヒゲに、ナイジェル爺さんを殴る権利なんかはない。少なくとも、私の村の中では、絶対に認めない。私の身内を不当に扱う人間は許さない。正当な理由なく、私の身内に怪我を負わせたら、相手が国家魔道士だろうが、守護竜だろうが、ブチのめす。リーンハルト、お前は、アリスが怪我をさせられた時には犯人を斬り捨てるのに、【イースタリア】の民が傷付けられても、平然として衛士に逮捕を命ずる、などと言う。そして、殴っているのがマクシミリアン王だったら見逃すんだろう?お前は、人を見て対応を変えるのか?お前の、その二重規範(ダブルスタンダード)は、為政者としては致命的だ。悪い事は言わない、オマイには領主なんか向いていないから、すぐに辞めてしまえ」


 私は、踵を返して、リーンハルトの前から去った。


 偉そうな事を言ってしまったけれど、私だって、聖人君子なんかじゃない。

 むしろ悪逆非道が、私のスタイルだ。。

 でも、身内に手を出す奴は、どうしても許せないんだよ。

 堪え性のないダメな性格だってわかっているけれど、身内が攻撃されたら、心の中のタ〇ガー・ジェ〇ト・〇ンが暴れ出すんだ……。


 さてと、次は、マクシミリアンを、ぶっ飛ばしに行くよ。

お読み頂き、ありがとうございます。


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