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第171話。グレモリー・グリモワールの日常…34…宣戦布告。

本日6話目の投稿です。

 昼過ぎ。


 色々バタバタして、私が【サンタ・グレモリア】に戻ったのは正午だった。

 で、フェリシアとレイニールを伴ってアリス・タワーに向かい、かっ込むようにして、お昼ご飯を食べた後、村の首脳陣と会議。


 防衛体制をどうするか?

 村には、まともに武器がない。


 鍬や斧や鎌で戦う?

 バカを言うんじゃないよ。

 農民一揆じゃあるまいしさ。


 ま、兵士分の武器を造るくらいは、資材的には何とでもなる。

 直近にいる【イースタリア】領軍はともかく、【ブリリア王国】軍本隊が【サンタ・グレモリア】に来るまでには、まだ時間的猶予がある。

 その間に武器を私が造る事は出来ると思うけれど……。


 とりあえず、私とキブリ警備隊以外は、戦闘には加わらない、という方針が会議で決定……というより、私が命令した。


 村人さんや結成間もない守備隊が戦闘に加わるような事態になったら、この戦争は私の負け。

 キブリ隊が守る堀を抜かれて、敵が城壁に取り付いた時点で、ほとんど勝ち目がない、と考えた方が良い。


 万が一、私が死んだら、村人さん達には降伏するように厳しく言っておく。

 あくまでも、悪い魔女のグレモリー・グリモワールに脅されていただけで、【ブリリア王国】に逆らうつもりなどなかった、と言ってもらうのだ。


 冷静に考えたら、どうしてこうなった、という状況なんだよね……。

 ま、良いか。


 ヘザーさんが、困惑顔で冒険者ギルドの職員と解体職人さん達を連れて来た。

 私に紹介したいらしい。


 あー、そう言えば、挨拶がまだだったね。

 昨日も今日もバタバタして、会う予定が延び延びとなってしまっていた。


 自己紹介。


 冒険者ギルドは戦争には関与しないし、ギルドは中立組織だから、最悪【サンタ・グレモリア】が陥落しても、冒険者ギルドの皆さんに何らかのペナルティーが科される事もない。


 流れ矢に当たって死なないように、戦闘が始まったら銀行ギルドの地下金庫室にでも隠れていておくれよ。


 銀行ギルドの地下金庫室は、【サンタ・グレモリア】の地下施設の中でも最も堅牢な場所の一つ。

 ちょっとした掩蔽壕(えんぺいごう)と言っても差し支えない防御力がある。

 人種相手の戦闘なら、あそこに逃げ込んでいれば、まず安全だろう。


 いや、毒を使われたら、そうとも言えないか……。

 毒……使うか?

 私なら、非戦闘員に対して毒は用いないけれど、相手の品位は計りかねるね。


 私が生きていれば、あらゆる毒を解毒出来るけれど、もし万が一、私が戦死した後に、敵が降伏を受け入れず虐殺(ジェノサイド)が行われたら、酷い事になるかもしれないね。


 ま、なるようにしかならない。

 勝つ為には、私は絶対に死なない事だね。


 冒険者ギルドの職員さん達と解体職人さん達は、退室して行った。

 でも、冒険者ギルド【サンタ・グレモリア】出張所の所長ヘザーさんは避難せずに司令部があるアリス・タワーに残る、などと言う。


 いやいや、ヘザーさんも避難していなさいよ。


 ヘザーさんは、頑として受け入れなかった。

 当該地区担当責任者として、全てを見届ける、などと言って譲らない。


 あ、そう。

 なら、好きにしたら良い。

 その代わり、死んでも知らないからね。


 ・・・


 夕刻。


 関係者の家族は全員【サンタ・グレモリア】に保護が完了した。

 トリスタン率いる駅馬車隊と共に、フロレンシアのお腹の子の父親ルパートも到着。

 これで、心置きなく戦える。


 トリスタンと駅馬車隊長ケネスさんと情報共有。

 トリスタンは、【サンタ・グレモリア】の様子に驚いていた。

 まるで街だ、と。

 そう言えば、トリスタンは、【サンタ・グレモリア】は、初めてだったね。

 観光名所は、ローマ風呂式の大浴場と、城壁の角の尖塔から見る景色だよ。

 特に湖側の尖塔に昇って見る、朝日は綺麗だからね。


 ルパートとも少し話せた。

 (まさ)に牧童を絵に描いたような純朴な青年で、実直そうな人柄が窺える。

 彼は、親類らとたくさんの牛を飼い、【イースタリア】周辺の放牧地を巡って暮らしているのだ、とか。


 都市城壁の外を放牧して廻っているの?

 魔物に襲われるでしょうに。


 大丈夫?

【避魔のランタン】という不思議なアイテムを一族代々で伝えて、使用しているから、と。


 なるほど。

【避魔のランタン】は【神の遺物(アーティファクト)】のアイテムだ。

 野良の魔物を寄せ付けない効果がある。

 ただし、魔物のヘイトが高い場合、効果はない。

 つまり、特定スポーン・エリア、遺跡(ダンジョン)、スタンピードの魔物……などの場合。


 ルパートは、自分の牛を親類に引き渡し、単身やって来た。

 このまま、フロレンシアと一緒に【サンタ・グレモリア】に移住してもらう。

 身柄を保護する為だ。


 ルパートの生存は、私の絶対勝利条件。

 彼が【イースタリア】の周辺をウロウロしていて敵に捕獲されました、では、冗談にもならないからね。

 そもそも、ルパートとフロレンシアが引き起こした騒動なのだから、ルパートに拒否権はない。


「戦争が終わったら、新しく造る農業区で始める、畜産の責任者でもしてもらおうかな?」


「牛や羊の扱いなら任せて下さい」

 ルパートは、ハキハキとした口調で言った。


「うん、頼むよ。もう、行って良いよ。フロレンシアの側に付いていてあげなさい」


 フロレンシアは、病院の地下に移してある。

 避難場所だ。

 地下を新たに深く掘り下げて、壁を魔法で補強してある。

 銀行ギルドの地下金庫室と同等の安全性を確保した。

 アリス・タワーの地下も同じようにシェルター化してある。

 急場は(しの)げるだろう。


 私が死んで、敵が毒を使ったら、ヤラれるだろうけれどね。


「はい、わかりました……あのう、以前、牛の治療をして下さってありがとうございました。乳の出が悪かった牛を治療してくれたおかげで、本当に助かりました」

 ルパートは、頭を下げて退室して行った。


 あー、そう言えば、【イースタリア】で、家畜の治療をした事もあったね〜。

 あの時にルパートも、いたのか。


 ・・・


 私達は、食事を摂った。

 戦時下では炊き出しで、皆、同じ物を食べる。

 ジェレマイアさんの料理だ。

 村人さん達は、とても感動している。


 と、病院スタッフから、緊急呼び出し。


「産気づいた?すぐ行く」

 私は、病院の地下に向かう。


 破水してしまって、そのまま入院となっていた臨月の妊婦さんの陣痛が始まっていた。


 産まれた。

 完璧な安産。

 産後の処置も完璧。

 分娩が始まって出産が完了するまでの時間わずか3分。

医療魔法(メディカル・マジック)】は、便利だ。

 母子共に健康。


「ありがとうございます」

 赤ちゃんを抱いたお母さんと、家族の皆さんに、お礼を言われた。


「あのさ、知っていると思うけれど、今、この村は、【ブリリア王国】と戦争中なんだよね。本来なら、赤ちゃんの状態を経過観察しながら、しばらく入院してもらいたいんだけれど、どうする?【イースタリア】に帰りたいなら、便宜を図ってあげるよ」


「いいえ、俺は、妻と赤ん坊と残ります。俺は、長弓手です。戦争なら役に立ちますよ」

 赤ちゃんの、お父さんが言う。


 ああ、この、お父さんは、【イースタリア】の兵士さんだって話だったね。


 良いのか?

 本人が良い、と言うのだから、良いんだよね。

 なら、好きなだけ、いてもらおう。


 という事で、この一家は一族揃って【サンタ・グレモリア】に移住する事になった。

 赤ちゃんの、お父さんの両親は理髪業。

 赤ちゃんの、お母さんの両親は野菜農家。

 うん、有難い人材だね。


 私は、アリス・タワーに戻った。


 ・・・


 アリス・タワーの大会議室。

 ここが、対【ブリリア王国】戦争の本陣だ。


 私と、フェリシアと、レイニール。

【サンタ・グレモリア】首脳陣のアリスと、グレースさんと、スペンサー爺さん。

 衛士長ナイジェル爺さんと、副守備隊長さんと、副衛士長さん。

 駅馬車隊長ケネスさん。

 銀行ギルドのピオさんとエリアーナさん。

 冒険者ギルドのヘザーさん。


 村の中には、現在、総勢、約2000人がいる。

 ただし、駅馬車隊を除いて武器・装備はない。


 村人さんの男衆80人。

 兵士・衛士500人。

 駅馬車隊50人。

 トリスタンの部下50人。

 コンラード子爵家の使用人20人。

 聖堂の聖職者50人。


 ここまでを、一応、防衛戦力に数えている。

 相当、力量が怪しいけれどね。


 非戦闘員。

 村人さんの女子供とお年寄り320人。

 トリスタンの部下の家族200人。

 コンラード子爵家の家族80人

 孤児500人。


 この他にも、実は【イースタリア】から、私の陣営に加わろうとする民衆がゾロゾロと歩いてやって来たけれど、全員、【イースタリア】に、お帰り頂いた。

 やって来たのは、その数5000人以上。

 私を慕ってくれるのは有難いけれど、受け入れられないよ。

 兵糧がなくなるからね。


【サンタ・グレモリア】にやって来た住人達の【マップ】の光点(マーカー)反応は、全員、青かった。

 つまり、私の味方。

 でも、リーンハルト側の誰かが……湖畔の聖女様を助ける為に【サンタ・グレモリア】に行って、聖女様と一緒に戦おう……などと煽動したのかもしれない。

【サンタ・グレモリア】の食料備蓄を食い減らす為にだ。

 リーンハルトの策略かもしれない。

 だとすると、リーンハルトは策士だね。


 私は……私の為に戦ってくれる気があるなら、【イースタリア】で食べ物を食べて欲しい……と頼んだ。

 彼らが食料を食べれば、それだけ、敵の食料が減る。

 それが、私の役に立つ、と言い含めた。


 さてと、私達の敵は、【ブリリア王国】軍50万人。

【サンタ・グレモリア】に遠征してくるのは、15万人ほどだろう。

 これに、【イースタリア】の領軍10万が加わる。

 総数25万人。


 でも、【イースタリア】領軍の内3万人ほどが、私達に内通している。

 そして内通者は、どんどん増えていた。


 楽勝だね。


「食料は、どのくらい保つ?」


「備蓄は3か月分ですが、水門を防衛維持出来れば、魚はキブリ隊から幾らでも補給出来ます」

 スペンサー爺さんが言った。


 なるほど、ならば水門の防衛が最優先だね。


「あと2週間すれば、お米も収穫出来ますので、そうすれば、食料は年単位で保ちますよ」

 アリスが補足説明した。


 うん、私が死ななければ、イケるね。


「先ほど、【ブリリア通貨】は、国際的に換金出来なくなりました。【ブリリア王国】の輸出入は、もう間もなく途絶します。同時に世界銀行ギルドとして、借款の償還、及び、融資の引き上げを開始致しましたので、【ブリリア王国】は、戦争どころではなくなるでしょう」

 ピオさんが言った。


 あ、そう。


「【イースタリア】の領軍が【サンタ・グレモリア】を包囲するのは、明日の朝かな?斥候も先行偵察も来ていないんだけれど」


「包囲するでしょうか?リーンハルト侯爵は、グレモリー様の戦い方を聴いておられました。みすみす、兵を死なせるような真似はなさらないのでは?」

 グレースさんは、言った。


「それでも、マクシミリアン王からの命令があれば、父は従わざるを得ないでしょう」

 アリスが言う。


【イースタリア】領軍10万だけで、包囲に来たら、30分以内に全滅だね。

 そして私の方は無傷。

【イースタリア】には、魔法職が1人もいないのだから、戦争にもならない。

 敵影が見えたら、矢の届かない高度から【超位魔法】の雨を降らせるだけで勝てる。

 その死体は、私の【ゾンビ】として再利用されるだけ。

 つまり、リーンハルトが【イースタリア】の領軍を出撃させれば、それは、敵に塩を送る、事になる。


 幾らリーンハルトでも、そこまで馬鹿じゃないと思う。

 リーンハルトは、あれでも戦上手として名前が知られているんだからね


 さてと、とりあえず方向性は見えた。


「アリス。【アヴァロン】に魔法通信を送って。グレモリー・グリモワールの名において宣戦布告するよ」


「はい、畏まりました」


 アリスは、スマホで、【アヴァロン】に宣戦布告を伝えた。


「さあ、皆、頑張るよ〜」


「「「「「おーーっ!」」」」」

 一同は、(とき)の声を上げる。


「えっ?何ですって?聞こえません。はい?」

 アリスがスマホを手に大きな声で喋っていた。


「しーっ!静かに」


「はあ?あのう、【イースタリア】からは、何と?はい。あ、そうですか?はい、宣戦布告です。いえ、こちらからは攻めません。ただし、【サンタ・グレモリア】に攻めて来た【ブリリア王国】軍は殲滅します。は?それは、どういう意味でしょうか?はい、わかりました。そのように、お伝えします」

 アリスは、スマホを保留する。


「何て?」


「戦線布告は受理しない。【ブリリア王国】は【サンタ・グレモリア】を攻撃しない。【サンタ・グレモリア】が独立したければ【ブリリア王国】は【サンタ・グレモリア】を国家承認する、と」

 アリスは、言った。


 どゆこと?


「ちょっと貸してごらん」

 私は、アリスからスマホを受け取った。


 驚いたね……。


 通話の相手は、何と【ブリリア王国】国王、マクシミリアン・ブリリア本人だったよ。


「どゆこと?戦線布告は一方的通告で、受理・不受理は、そっちに選択権はないんだよ」


「グレモリー殿、戦は困る。あなたの武威は冒険者ギルドから資料を取り寄せて拝見した。とても勝ち目がない。経済封鎖も勘弁して欲しい。そちらの要求を言ってくれ。和睦したい」

 マクシミリアン国王は、言った。


 和睦?

 戦う前に?

 意味がわからないんだけれど……。


 どうやら、【イースタリア】に帰還したリーンハルトが、すぐ魔法通信でマクシミリアン王に顛末を伝えたらしい。

 で、マクシミリアン王は、リーンハルトの言う通り、冒険者ギルドに私の個人情報をリクエストした。

 私の記録を読んだマクシミリアン王は、マジでヤバイ、と思い、リーンハルトと相談。

 リーンハルトは、正直に全てを話したそうだ。

 一部【契約(コントラクト)】されていて、リーンハルトが話せない事を除いて、マクシミリアン王は、概ね正確に事態を把握。


 私が決めた条件を、丸っと飲み込む事を決めたらしい。

 それが、最も被害が少ない、との判断だ。


 つまり……。


 マクシミリアン王は、クァエストル・エインズリー伯爵とフロレンシア・コンラードとの婚約破棄を命ずる。


 マクシミリアン王は、フロレンシア・コンラードと、グレモリー・グリモワールの家来ルパートの結婚を認める。


 マクシミリアン王は、上記2点の決定を【契約(コントラクト)】し、又、上記2点の決定にともない、誰にも、いかなるペナルティーも科されない事を【契約(コントラクト)】した上で保証する。


「私の条件を全て飲むなら、それで構わない……あ、やっぱり、和睦条件はある。要求その1……【サンタ・グレモリア】と【イースタリア】と【ブリリア王国】間の定期運行飛空船の費用負担が不公平だから、3都市で応分の負担を分け合う事」


「待ってくれ、定期運行飛空船の経費負担は3都市で等分にすると聞いているが?既に予算も承認している」


 あー、なるほど。


「商務大臣クァエストル・エインズリー伯爵からは、定期運行飛空船の経費は、【イースタリア】と【サンタ・グレモリア】()()で負担しろ、と言われているよ。にも関わらず、【アヴァロン】からも経費が予算計上されている。つまり、余剰分の予算は、誰かがポッケにナイナイしちゃうって事だよね。横領して着服するのは一体誰なのかな?」


 もちろん、クァエストル伯爵だ。


「うむ、厳しく取り調べよう」


「要求その2……妖精教会を【ブリリア王国】として廃教しなさい。あんなモノは邪教。妖精信仰なんかしているから、【リントヴルム】からウエスト大陸は守ってもらえないんだよ。素直に守護竜を信仰しなさい」


「既得権者との対決は、政治的に、なかなか難しいのだ。【ブリリア王国】は、医療全般を妖精教会に依存している。これを、全て切り捨てると民にシワ寄せが行く」


「私が協力するよ。妖精教会とは別に、王主導で【医療(メディカル)魔法士(・マジシャン)】を育成すれば良い。【サンタ・グレモリア】に留学させるなら、私は無料で医学の知識と【回復(リカバリー)】と【治癒(ヒール)】の技術を指導してあげる。それで、妖精教会なんかに頼らなくても良くなるでしょう?もしも、妖精教会がグダグダ言ってくるようなら、私が【アヴァロン】に乗り込んで、妖精教会中央聖堂をぶっ潰してあげるよ」


「妖精教会を潰すのはともかく、【医療(メディカル)魔法士(・マジシャン)】の育成と留学の件は、前向きに検討させて頂こう」


「今すぐでなくとも……そうだね、5年以内に妖精教会を廃教すると約束しなさい。でなければ、この和睦はなし」


「5年か……良かろう。約束する。もちろん、この事は、妖精教会側には内密に願う」


「了解。要求その3……孤児院の運営を妖精教会から切り離し、王の直轄事業として孤児の保護と自立を支援しなさい。親がいないだけでハンデキャップなんだ。親がいる子供より優遇するくらいで丁度良いんだよ」


「しかし、我が国は貧しいのだ。そんな事をすれば、安易に子供を捨てる親が増えるかもしれない」


「戸籍管理しなよ。まず、全国民にギルド・カードを作らせる。次に定期的に戸籍を調べ、子供を捨てているような親は、私財没収の上、とっ捕まえて強制労働させれば良い。その強制労働の収益を孤児院の予算に充当しなさい」


「いや、しかし……」


「そもそも、国が貧しいのは、為政者の責任だ。国民のせいにするんじゃねーっ!このタコ助がっ!」


「た、タコ助……。わ、わかった、全力を尽くそう」


「要求その4」


「まだ、あるのか?」


「これで最後だよ。要求その4……【ブリリア王国】は、【サンタ・グレモリア】を庇護する事」


「【サンタ・グレモリア】は、独立したいのではなかったのか?」


「安全保障を全部、独力で賄うのは面倒臭いんだよ。要求を飲むのか、飲まないのか、どっち?」


「デタラメだな……。わかった、飲もう。そちらの要求は全て飲む」


 ならば、良し。


「全ての和睦条件と要求の履行が【契約(コントラクト)】で保証された時点で、【サンタ・グレモリア】は、臨戦態勢を解く。こちらから、私の代理人を送り、マクシミアン王が【ブリリア王国】が続く限り、それを守ると【契約(コントラクト)】してもらうよ。良い?」


「わかった。グレモリー殿の代理人殿の前で【契約(コントラクト)】すれば良いのだな」


「私の代理人のエスコートに速い飛空船を寄越してくれない?」


「わかった。王家専用の高速飛空舟を送ろう」


「じゃあ、よろしく」


「わかった」


 私は通話を終わらせた。


「ピオさん、私の代理人として【アヴァロン】に行ってもらえる?」


「喜んで」

 ピオさんは快諾してくれた。


 ピオさんを送る理由は3つ。

 1つ、魔法の知識と能力が高いピオさんなら、マクシミアン王が【契約(コントラクト)】で小細工をしようとしても見破れる。

 2つ、世界銀行ギルドの副頭取であるピオさんなら、人質になったり殺されたりする可能性が低い。

 3つ、私がピオさんを信用している。


 以上。


 まだ、【契約(コントラクト)】が交わされるまでは、正式な終戦ではないけれど、とりあえずは、停戦と考えて良いだろう。


「みんな、とりあえず、お疲れ様だね。たぶん敵は攻めて来ないだろうけれど、一応、いつでも避難出来るようにしておいてね」


 私は、解散を宣言した。


 何だか、ドッと疲れが襲って来たね。


 あー、メチャクチャ長い1日だった。

お読み頂き、ありがとうございます。


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