第17話。ソフィアは、お金を稼ぎたい。
この世界の地理。
中央、東、西、南、北に大陸。
セントラル大陸
イースト大陸
ウエスト大陸
サウス大陸
ノース大陸
大陸には守護竜がいる。
北東、北西、南東、南西に大きな島。
北東島エル・ドラード
北西島ティル・ナ・ノーグ
南東島エリュシオン
南西島マグメール
島には守護獣がいる。
親善試合の勝敗予想の賭けで私は全ての予想的中させ、1金貨と4銀貨の儲けとなりました。
大した金額にはなりませんでしたね。
いや、【竜都】の街に出歩いた経緯で現代でも金貨は十分に高額貨幣である事がわかりましたが、ついゲーム時代の感覚で考えてしまいます。
1金貨は日本円換算で約10万円ほど……。
私はゲームマスター業務の傍らプライベートでも、このゲームで遊んでいました。
所謂……廃人ゲーマー……と認定されるレベルでやり込んでいます。
その時に私は金貨なんか毎日100枚単位で稼いでいました。
その感覚で考えてしまうと、どうしても1枚2枚の金貨は……端た金……などという先入観を持ってしまいます。
とんでもない事ですね。
金貨1枚あれば物価が高い【竜都】でも豪遊出来る金額ですよ。
私は異世界転移してしまい現状では日本に帰れる算段が付かない以上、なるべく此方らの世界の常識的な金銭感覚に合わせなければいけません。
話を戻しましょう。
賭けの話でした。
今回の親善試合イベントは急遽だった為、賭け自体も急遽となり、賭け率変動のオッズが運営出来ず簡易的なモノになったそうです。
つまり全7戦の結果を、どちらか一方の勝ち、または引き分けの3パターンで予測。
賭けへの参加者は、1試合の上限1銀貨までを賭けられる。
賭け率に関係なく、予測的中者は賭け金の3倍……即ち1試合上限3銀貨を受け取る。
予想を外した者は、もちろん賭け金を失う。
この賭けを成立させる為に、大神官のアルフォンシーナさんが全ての賭けを引き受けた、と。
アルフォンシーナさんが1人胴元?
親善試合を見学していた聖職者や公職者の福利厚生の一環ですか?
まあ、大神官は信用がありますからね?
違う?
親善試合の賭けに先立ち【誓約】で……イカサマをしない……と宣言したのですか?
大神官といえども試合の参加者とグルになってイカサマをする可能性はあり得るから、と。
なるほど、セントラル大陸の人種最高権威者であっても金銭が絡むときはキチンとするのですね?
結果アルフォンシーナさんは今回のイベントで莫大な収益を上げたそうです。
つまり、私の負けに張った者が比率として多かったのですね?
もしかして、私は舐められているのでしょうか?
【調停者】の武威を……尾鰭が付いた神話の作り話……と考えていた者が多かった、と。
なるほど、舐められていましたか……。
これは今後ゲームマスターの業務を行う上での権威上、あまり宜しくない状況です。
これからは私の戦闘力を積極的に誇示して行かなければいけません。
因みに【女神官】達は皆私に賭けて儲けたそうです。
ソフィアが神託を出して……私の6勝1敗……を予測していたのですか?
なるほどインサイダー情報ですね?
1敗はソフィア自身は私に勝つ気でいたからでしょう。
結果は私の6勝1引き分けでしたので、ソフィアの神託通りに賭ければ7試合中6試合で買つ訳です。
大儲けですね。
まあ、今回のイベントは余興のような物。
咎め立てするつもりは、ありませんよ。
因みに、ソフィアは自分の財布がない為に今回のイベントでは賭けに参加していません。
悔しがっていました。
・・・
夕食の時間。
「ソフィア。先程の試合で、あなたは【魔力探知】を【認識阻害】する指輪を壊してしまったでしょう」
私はソフィアに新しい指輪を渡します。
「うむ。すまんのじゃ」
ソフィアは魔道具の指輪をはめました。
「それから、この腕輪もあげます」
「何じゃこれは?格好良いのじゃ」
ソフィアは、私の手から引ったくるようにして腕輪を受け取ると、それを左手首に装着してアルフォンシーナさん達に見せびらかしています。
「【収納】が使えます」
「【収納】なら我も使えるぞ」
「あなたの【収納】は、容量が100kg。この腕輪は【神の遺物】の【宝物庫】と云います。容量は、おそらく1万tやそこいらは入る筈ですよ」
【宝物庫】は、ゲーム発売10周年を記念して実装された超絶レア・アイテム。
既存の【収納】系アイテムとは桁違いの容量がある為、日常的に資材・商材の保管に腐心している生産職系や商人系のユーザーはもちろん、ユーザー・サークルなどからも需要が大きく、オークションなどに出れば超高額が付いていました。
「凄いのじゃ。実は我の【収納】は、もう満杯で困っておったのじゃ」
「ソフィア様の【収納】は食べ物や、お菓子や、ジュースで満杯ですからね」
アルフォンシーナさんが言います。
「うむ。これで、もっと食べ物を溜め込めるのじゃ」
ソフィアは満面の笑みで言いました。
アルフォンシーナさんは、多少嫌味を込めて言ったのですが、ソフィアには通じなかったようです。
「ソフィア。食材庫ではありませんよ。今後【アイアン・ゴーレム】などの保管に必要だと思って渡します。なので食べ物で満杯にしたらダメですよ」
ソフィアにプレゼントする予定の50mの【アイアン・ゴーレム】は、推定重量2400t超。
もしも持ち歩くつもりならば【宝物庫】でなければ収容出来ません。
私の【収納】は容量無限ですが、私が常に一緒にいる訳でないので必要でしょう。
「なるほどの。わかったのじゃ」
「さて、お食事にいたしましょう」
アルフォンシーナさんが言いました。
・・・
夕食のメニューは、もちろん今朝私とソフィアが市場で仕入れた海鮮尽くしです。
調理担当の【女神官】達は、皆高い調理技術を持っていますが、さすがに1tの本マグロは容易には下せないと言うので、私が代わりに五枚おろしにしてあげました。
私は調理技術のステータスも限界値までカンストしています。
あっという間に刺身が出来上がりました。
美味い!
こちらの世界の本マグロは地球の最上級のモノと同等でした。
今は本マグロの旬を外れた時期だというのにです。
つまり、旬の真冬になれば、これ以上に美味しくなるという事。
更に大きさは地球のモノより巨大。
これはマグロ好きには堪らないですね。
ソフィアも本マグロは大好物なようです。
「刺身は生卵を絡ませると格別なのじゃ。ほれ、ノヒトもやってみるのじゃ」
「え……刺身に生卵ですか?」
どれどれ……。
おっ、存外に悪くありません。
これはユッケみたいな感覚でしょうか?
でも、やはり私はマグロにはワサビ醤油がベストですね。
私は買い付けた新鮮な魚介類の一部を【ドラゴニーア】の孤児院に寄付しようと思いソフィアに相談したのですが……。
ソフィアは、それを手放しでは喜んでくれませんでした。
【神竜神殿】は【竜都】以外でも、【ドラゴニーア】国内は元よりセントラル大陸全土で孤児院を運営しています。
【竜都】にある孤児院だけに寄付をするのは、公平の観点からソフィアの立場では……あまり望ましくない……との事。
「セントラル大陸中の孤児院に等しく配るのならば、それは有難いのじゃがの……」
ソフィアは言いました。
「ならば、現物の差し入れは、もっと大量に確保した時に、また改めてですね……」
因みに世界最富国の【ドラゴニーア】の孤児院は【竜都】の1施設だけですが、セントラル大陸の他の4か国は経済水準が【ドラゴニーア】より一段下がる為に孤児院の数も相応に多いのだとか。
さすがに、それら全てにマグロをプレゼントするのは今回買い付けた量では無理でした。
「もちろん、ノヒトは【ドラゴニーア】の公人ではない。個人の裁量でする寄付を止める権利は、我にも誰にもないのじゃ。我もノヒトの気持ちは素朴に嬉しく思うのじゃが、諸手を挙げて歓迎出来る提案という訳でもないのじゃ」
ソフィアは言います。
こういうところは、さすがセントラル大陸に暮らす万民の為の守護竜。
私はソフィアの考え方は公正だと率直に感心しました。
そう言われてしまっては能天気な思いつきで寄付など出来ませんね。
私は、ソフィアから浅慮を諭されたようで少し恥ずかしい気持ちになりました。
「心配せんでも各地の孤児院の予算は潤沢じゃ。公務員達は全員汚職が出来ないように【誓約】や【契約】で行動が縛られておる故、孤児院予算をピンハネして私腹を肥やすような馬鹿はおらん。孤児院の子らは毎日栄養のある食事をお腹いっぱい食べて、清潔な衣服を着て、暖かいベッドで眠っておる。我は子供が好きじゃし、孤児に限らずセントラル大陸中の子供達の味方を自負しておる。子供らは国の未来じゃからして我は孤児院の運営には特段に心を配っておるのじゃ」
「では、私の資産から現金で孤児院予算に寄付をしますよ。それをセントラル大陸の孤児院運営費の足しにして下さい」
「ありがたい。遠慮なく貰うのじゃ」
ソフィアは今度は屈託なく言います。
・・・
夕食後。
私は私室に戻り今日購入した【自動人形】を修理……というか調べました。
指の欠損、眼球の欠失、【メイン・コア】が取り出されてしまっている他にも、あちこちに傷みがあります。
しかし、この【自動人形】は【神の遺物】。
それも【アルタキアラ】などの最高装備(私が持つ未実装の【神の装備】シリーズなどは除く)に匹敵する超絶レアの逸品です。
正しい【積層型魔法陣】を刻んだ【メイン・コア】さえ再装填すれば、自動的に【修復】され完全な状態に復元されるでしょう。
惜しむらくは、新しい【メイン・コア】に換装すると、元の【メイン・コア】に記録されていた固有のデータが初期化され失われてしまう事ですが……。
いや、元の持主が変質的な人形性愛者だったりした可能性もあります。
記憶は消去された方が良かったのかもしれません。
【自動人形】は非生物なので、【収納】に仕舞って持ち運ぶ事も出来ますが知性と自我と感情を持ったNPCです。
マスター権限を持つ所有者の命令には絶対服従をしますが、感情があるので嫌なモノは嫌な筈ですからね。
この【自由人形】には【ダンジョン・ボス】の【コア】クラス……つまり、【超位級超絶級】の【魔法石】が必要です。
早く【コア】となる【魔法石】を入手して再起動させたいですね。
私は【自由人形】を【収納】に仕舞います。
その時、ソフィアが【念話】で呼び掛けて来ました。
ノヒトよ……少し話があるのじゃ……部屋に入れて欲しいのじゃ。
改まって何でしょうか?
私は礼拝堂にまでソフィアを迎えに出て、私室に招き入れました。
「実はの……【女神官】達の手前、さっきは、ああ言ったのじゃが、我も孤児院の子らに何かしてやりたい気持ちは山々なのじゃ」
「わかっていますよ。万民の守護竜として、等しく、普く、恩恵を与えるって立場を大切にしたいのでしょう?それは立派な姿勢だと思います」
「うむ。理解してくれて嬉しいのじゃ。じゃが、我は現在の孤児院の在りように満足しておらん」
「予算は潤沢なのでしょう?ソフィアは十分に心を砕いていると思いますよ」
実際セントラル大陸での孤児達への公的支援は、現代日本を上回るレベルです。
「予算は潤沢じゃ。じゃが、それは……安全と健康を維持し最低限の教育を受けられる……という範囲の事なのじゃ。我は気の毒な境遇にある子らには、より手厚く支援したいのじゃ。これは守護竜としてではなく、我の個体としての感情から来る欲求じゃ」
ソフィアは自分の想いを語り出しました。
孤児院はセントラル大陸各国の税金と【神竜神殿】の資産運用益で運営されています。
【ドラゴニーア】の国民は教育水準が高いので孤児や生活困難者を放置しておくよりも、保護して支援し自活して生活出来るレベルにする方が、経済学と社会学上ずっと良い事を理解していました。
孤児や生活困難者を放置する事で起こり得る問題は、治安や公衆衛生の悪化などがあります。
この対策に掛かる労力と費用は少なくありません。
ならば生活困難者を国家が支援して自活させ、彼ら社会的弱者に納税などの国民としての役割を果たさせた方が結果的に社会全体としての負担が減り、むしろ経済合理性が高くなるのです。
これは地球の場合でも同じ事。
しかし、それは、あくまでも公共の利益を追求する社会的理論の話。
国民1人1人の個人的感情とは別問題でした。
ソフィアは、かつて孤児院への支援を高めようと神託によってアルフォンシーナさんに下知したそうです。
それは現行の孤児の保護年齢である15歳を18歳にまで引き上げるという内容。
アルフォンシーナさんは、それを元老院議会に法案として提出しました。
結果は否決。
元老院議会は国民の代表。
つまり【ドラゴニーア】の国民は……孤児達の公的保護は15歳までで十分……だと結論付けたのです。
何故か?
孤児院の子供達は、皆その境遇から向学心が旺盛です。
手に職をつけたり学問を修めたりしなければ、孤児院を出て社会に出た時に飢えてしまいますからね。
生き死が掛かっていれば、誰でも懸命に学びます。
こうした背景から孤児院の子供達は、一般家庭の子供達より総じて優秀な傾向がありました。
ここで一般の国民は考えます。
自分の子供は学校で勉強をしている。
しかし勉強は、あまり好きではない様子。
一方孤児院の子供達は勤勉で意欲的で優秀だ。
大学などの高等教育機関への入学や、企業への入社などで競争となれば、自分の子供は孤児院の子供に負けてしまうのではないか?
孤児達の養育費は自分達が支払う税金。
もしかしたら自分達は自分の子供のライバルを育てているのではないか?
ならば、孤児院の子供の支援は最低限に留めよう。
公共の利益を追求する立場から言えば矛盾しますが、親にとって自分の子供が一番可愛いのは当然の事。
国民が自分の子供に恩恵が大きい政策を選択しても、自由主義と民主主義の観点から言って責められません。
ソフィアにとっては良識ある国民も利己的な国民も……普く庇護の対象。
法律、公序良俗、倫理に反しない限り国民は自分の欲望を追求する権利があります。
ソフィアは、それを、とやかく言うつもりは全くありませんでした。
こうした経緯でセントラル大陸の孤児の支援は、原則として15歳までとの規定に変更はなし。
原則があれば例外もあります。
15歳を過ぎても特に優秀な孤児は税金で高等部や大学など、より高度な教育を受けられました。
この子達は孤児院の予算とは別に、特別会計が組まれているそうです。
国家的エリートとして明確に国益に資する人材ならば、国民も負担を惜しまないという事なのでしょう。
「守護竜の立場を離れれば、我は孤児院の子供を、もっと優遇したいのじゃ。おそらく元老院も……我が意である……と強く命じれば、誰も否とは言わんじゃろう。じゃが、それをすれば我は支配者になる。我は支配者ではなく庇護者でありたいのじゃ」
ソフィアの言には二重の意味がありました。
1つは神たるソフィアへの信仰。
もう1つはソフィアへの畏怖です。
畏怖とは?
【ドラゴニーア】は【神竜】に庇護されています。
もしもソフィアが、こう言ったとします……要求を飲まなければ【ドラゴニーア】への庇護を止める……と。
【神竜】の庇護を失えば【神竜】が張る強大な【結界】は消えます。
【結界】の効果は強力な防御力、災害・疾病の抑制、土地の豊穣……などなど。
【神竜】の胸先三寸で、これらが失われます。
ソフィアが【恩寵】の停止をチラつかせて命令すれば、それは即ち脅迫。
確かに庇護者ではなく支配者の政治手法です。
なるほど……。
幼稚園児のような外見の所為で私はソフィアを子供扱いしてしまう事がありますが、ソフィアは紛れもなく神様。
私なんかより遥かに社会正義や政治哲学を理解しています。
「それでじゃが……ノヒトよ。我は、お金が稼ぎたいのじゃ」
ん?
今まで高尚な話をしてくれていたのに、突然俗っぽい話に変わりましたね。
「話があるというのは、それですか?」
「そうじゃ。我はお金を稼いで大資本家となって、孤児院の子供に仕事を与えるのじゃ。これは守護竜としての立場ではなく、ただ我の個体としてのワガママを通す為じゃ。その為には当然じゃが税金は使えん。つまり我の個体としてのプライベートな収入が必要なのじゃ」
【ドラゴニーア】では現在移民が制限されています。
【ドラゴニーア】の国籍は原則在地主義。
【ドラゴニーア】以外で生まれた者は、特別な功績が認められたりしなければ【ドラゴニーア】国籍は取得出来ません。
しかし国籍がなくても在留資格という制度があります。
在留資格者は外国籍の就労者に与えられました。
地球のアメリカ合衆国におけるグリーン・カードに類するモノです。
在留資格は定住・就労ビザで選挙権・被選挙権がない以外は国民と同じ待遇。
やがて、在留資格者に【ドラゴニーア】で子供が生まれれば、その子供は無条件で【ドラゴニーア】の国籍を得られます。
ここで問題となるのは孤児の存在。
孤児院の子供達には原則として【ドラゴニーア】の国籍も在留資格も与えられません。
彼らは15歳になって【ドラゴニーア】で就職出来なければ【ドラゴニーア】から出国しなければならないのです。
基本的に孤児院の子供は優秀で真面目に働くので就職に失敗する例は少ないのですが……。
中には就職出来ない子供もいます。
例えば過去に違法行為を行なってしまった場合など。
重大犯罪を行なった場合、【ドラゴニーア】の国民や在留資格者であっても国外追放となる場合があるので、これは当然の問題として、いちいち言及しません。
孤児達の場合は、軽微な違法行為や不法行為が在留資格の取得を阻む問題となります。
子供なら喧嘩などをする事はあり得ました。
その時に相手に怪我をさせてしまう場合もあるでしょう。
【ドラゴニーア】では刑法が適応される最低年齢は13歳。
つまり13歳を過ぎて喧嘩などで相手に怪我を負わせてせしまえば、喧嘩の原因などは考慮されるとしても最悪の場合は傷害罪。
違法行為を行なってしまった孤児院の子供は15歳になっても就職出来ない可能性が高いのです。
もちろん、そういう子供を雇用してくれる理解ある経営者もいますが、その子供がまた犯罪などを起こしてしまった場合、孤児院出身者を雇った経営者は社会から批判される事になります。
お前が違法行為の履歴がある孤児を雇ったから【ドラゴニーア】の国民が犯罪の被害にあったのだ、と。
これは移民を制限している【ドラゴニーア】固有の問題でした。
こうして【ドラゴニーア】の孤児院の出身者から、毎年複数例が在留資格を得られず国外追放となるのです。
その時に冒険者登録をすれば、世界冒険者ギルド条約によって【ドラゴニーア】に留まる事は出来ました。
世界冒険者ギルド条約とは冒険者の身分や扱いを定めた国際条約です。
冒険者は犯罪者でない限り国籍を問わず何処の国でも出入国と就業が可能でした。
【ドラゴニーア】を離れたくない孤児院出身者は冒険者登録をします。
しかし国籍や在留資格のない者は【ドラゴニーア】で住居を購入したり借りたり出来ない法律がありました。
更に【ドラゴニーア】には基本的に低料金の宿泊施設というモノがありません。
冒険者として高収入を稼ぎ続けなければ、やがて国外退去を余儀なくされました。
「我は、その子らの処遇をどうにかしたいのじゃ」
ソフィアは真摯な表情で言います。
「あ、そう。ならゲームマスターの遵守条項に反しない限り協力しますよ」
「そう言ってくれると思ったのじゃ。宜しくお願いするのじゃ」
ソフィアは深く頭を下げました。
お読み頂き、ありがとうございます。
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