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第153話。グレモリー・グリモワールの日常…16…魔法のホウキ。

【サンタ・グレモリア】商業集落。


銀行ギルド支店。

冒険者ギルド出張所。


ホテル3棟。

安宿3棟。


大浴場。


パン屋。

煮込み専門店。

串焼き肉専門店。

塩漬け野菜専門店。


肉屋。

青果物屋。

穀物屋。

調味料店。

洋品店。

雑貨店。

鍜治屋。

など。

他、空き家多数。

 9月18日。


 いつものようにレイニールが、私を起こしに来た。

 私は、【漆黒のトンガリ帽子】を被り、【魔女のトンガリ靴】を履く。

 自宅の【避難小屋(パニック・ルーム)】を出て、伸びを一つ。


 今日は、曇っているね。

 もしかしたら、一雨来るかもしれない。


魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】に座って、朝の見回りに行こう。

 あ、そうだ。


「レイニール、ちょっと待ってて……」


「はーい」


 私は【避難小屋(パニック・ルーム)】に戻り、クローゼットを、ガサゴソ……。


 あった。

 これをレイニールにあげよう。

 安物だけれどね。


「レイニール、これは【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】を元に、私が作った【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)・レプリカ】だよ。遅いし、最大荷重は100kgしかないけれど、一応、使えるよ。レイニールにあげる。その代わり、気を付けて操縦するんだよ。木とか岩とか建物とかにぶつかったり、高い所から落ちたら死んじゃうからね」


 この【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)・レプリカ】は、私の【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】とは違って、大した性能ではない。


 私の【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】は、【神の遺物(アーティファクト)】。

 遺跡(ダンジョン)の最下層で出た激レア・アイテムだ。

 乗員防御も慣性制御も自動でやってくれる優れ物。

 魔力効率を高め、魔力を貯めておけて、魔力回復を助ける効果もある。


 レプリカの方は、飛ぶだけだ。

 昨日、フェリシアとレイニールは、【飛行(フライ)】を行使しながら、無意識に体内器官を魔力で保護していた。

 あれが出来るなら、アイテムの方に防御機能や慣性制御機能がなくても、ゆっくり飛ぶだけなら、危険な事はないと思う。

 ウチの子達は、本当に天才だよ。


 フェリシアとレイニールに、お風呂に入る時も肌身離さず持っているように指示してある【神の遺物(アーティファクト)】のペンダントの【効果付与(エンチャント)】で、落下速度低減ていう効果もあるから、落ちても死なないとは思うし。


「わーい、わーい」

 レイニールは、大喜びだ。


「レイニール。飛び方は【飛行(フライ)】と同じだよ。ホウキを自分の身体の一部だと思って魔力を流すの。そうそう、上手い。じゃあ、高度を上げるよ」


「はーい」

 レイニールは、ギュイーーンッ、と加速する。


 魔法触媒を使うと、魔力効率が良くなるから、余剰魔力が速度に置き換わる訳だ。

 私みたいに【超位】級の魔法詠唱者になると、触媒がなくても魔力効率は、変わらなくなるんだけれどね。

 ま、【神の遺物(アーティファクト)】の【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】は特別だから、【超位】の魔法詠唱者でも魔力消費が少なくて済むけれど。


 レイニールは、結構な速度で飛んで行く。


 おーーっ!

 さすが【エルフ】の子だね。

 無意識に【風魔法】を使って気流を割って空気抵抗を小さくしている。

 まだ、【低位風魔法】とも言えないような、茫漠とした風の操作だけれど、魔力の使い方は正しい。

 本能でやっているのかな?


 天才……いや、超天才だね。


 レイニールを先に飛ばして、私は少し後ろから付いて行く。

 万が一の時には、私が助けられるように。


 ・・・


 村の見回りは、終わり。

 レイニールは、まだ飛び足りなさそうだったけれど、私が一緒でなければダメだ、と釘を刺しておいた。

 フェリシアとレイニールが、自分の判断で魔法を使うのを許可するのは、【低位魔法】を一通り覚えて、魔法を使った基本的な身の守り方を教えてからにしよう。


 キブリ達への餌やり。

 レイニールは、興奮気味に空を飛べるようになった事を、キブリ達に話して聞かせていた。


 キブリは……坊ちゃん、なかなかやるじゃねえか……って感心している。


 もちろんだよ。

 ウチの子なんだからね。

 親バカとでも何とでも言ったら良いさ。


 ・・・


 朝食。


 フェリシアが、珍しく、レイニールを羨ましがった。

魔法のホウキ(ブルーム・スティック)・レプリカ】をレイニールだけがもらったから。


 あれは、一個しかない。


 私は……すぐ作れるから、後でフェリシアにもあげる……と言ってなだめて、学校に送り出した。


 雨が降って来たね。


 うーむ、この村は湖畔にあるから、水不足とは無縁。

 よし、強制的に雨を降らせて、雲を消しますか。


 私は、【気象魔法】を操って、雨雲の水分を一瞬で森と原野に降らせて空を快晴に変えた。


 ・・・


 朝の駅馬車が到着。

 荷降ろし積み出しの時間で、私は患者さんの治療。

 はい、お大事に。


 駅馬車隊の隊長さんから、相談。

【イースタリア】の反対側……つまり西にある王都【アヴァロン】まで、駅馬車を延伸したい、という要望が【イースタリア】の官僚達からあるらしい。


 却下。


 それは、領主のリーンハルトからも打診されたけれど、私は許可していない。

【イースタリア】が、街道整備も駅馬車の運営も、全部、自前でやるなら良い。

 それは、インフラ行政で、私が、つべこべ言うべき話じゃないからね。

 でも、私が出資している運営体制や、私が改造してあげた馬車を流用するのは、ダメだ。

【イースタリア】側の荷降ろし・積み出し、運行管理と、貨客スケジュールは、全てトリスタンがダイヤグラムを組んで差配している。

 リーンハルトに任せたら、たぶん回らない。

 公共交通機関の運営というのは、頭が悪い人には出来ないのだ……私も含めて……。


 リーンハルトは、新たな駅馬車区間の工事費用と運営資金を折半しても良い、なんて言う。

 私は、キレた。

 馬鹿言ってんじゃないよ。


 私が造った回廊は、【サンタ・グレモリア】までの行き止まりだから、私が、資金を出している。

 この回廊は、いわば私の村への専用道路だからだ。


 反対側にも延伸?

 それは、私の村の専用道路じゃないよね?

 私が資金を出す必要ある?


 そもそも交通インフラは、政治が、やるべき仕事だ。

 私は、一民間人。

 本来、【サンタ・グレモリア】と【イースタリア】間だって、領主と王様がやるべき事でしょう?

 それを、私にやらせておいて、さらに、反対側への延伸に半分資金を出せ、と?


 リーンハルトは、本当に、いっぺんシメた方が良いかもしんない。


 リーンハルトは……この話は、私にも利益がある話だから断られないだろう……なんて本気で思っていたらしい。


 そりゃあ、王都【アヴァロン】までの流通が改善すれば、私の村にも幾ばくかの利益はあるでしょうよ。

 でも、費用対効果って言葉を知らないかな?

 収入より支出が多い場合、それは、利益ではなく損失って言うんだよ、リーンハルト。


 で、ピオさんが……【イースタリア】の街を担保に設定して有利子で借款を与えれば良い……って、言った。

 もし、払えなければ、【イースタリア】を丸ごともらうって。


 リーンハルトは、その時点で、ようやく、どれだけ都合の良い事を言っているのか、気が付いたみたい。

 スマホの向こう側で、急に物凄く謝り始めた。


 大丈夫か、あの領主?

 リーンハルトは、そこそこ戦争に強くて善政を敷く領主として民から人気があるらしいけれど、政治家としては凡庸。

 会計に関してはボンクラ。


 まだ、娘のアリスの方が、そろばん勘定がしっかりしているよ。

 アリスは、財務と会計の事をピオさんに指導してもらっているから、近い将来、私が口出ししなくても、村を運営出来るようになるだろう。


 それに比べてリーンハルト……。

 この計画をリーンハルトが考えた訳じゃない事はわかっている。

 小狡い知恵が働く、リーンハルトの部下の誰かが、私に金を出させようとして、リーンハルトに意見具申したのだろう。

 その悪知恵が、私の怒りを買うって事に気付かない辺りが、リーンハルトの問題。


 駅馬車隊の給料は私が全額払っている。

【イースタリア】の兵士や衛士より、ずっと高給取りだ。

 だから、駅馬車隊は、全員、私の味方。

 情報を、私にガンガン流してくれる。

 今回、駅馬車隊の隊長さんから、このデタラメな計画を推進しようとしている官僚達の名前を聞いたからね。

 見逃すのは今回だけだよ。

 次、何か仕掛けて来たら、酷いからね。


 あー、ムカつく。


 駅馬車は帰って行った。


 ・・・


 午後。


 私は、森に出かけた。

 フェリシアにも【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)・レプリカ】を作ってあげる約束だ。


 魔力溜まりを探して、近くに生えている木を見繕う。

 樫の木。

 うん、魔力をタップリ吸って育った良い木だね。

 これにしよう。


 本来なら、【世界樹(ユグドラシル)】の枝とかなら、相当に高性能な物が作れるんだけれど、そんなレア素材は、おいそれとは手に入らない。


 私は【死神の(サイス・オブ・)大鎌(グリムリーパー)】で樫の木を切り倒し、皮を剥いで、魔法で乾燥させ、魔力を馴染ませる。

 丁度良いサイズの材木に切り出し、形を整えた。


 うーむ。


 ホウキの先っぽのシャカシャカした部分が面倒臭いな。

 別にホウキの形にこだわる必要はないんだよね。

 よし、デッカいスプーンにしよう。

 このスプーンの先に座ればお尻が痛くならないしね。

 私ってば、頭が良いよね〜。


 貴重な【高位】の【魔法石】に魔法陣を刻んで、埋め込む。


 仕上げに各種【バフ】をかけて、完成。


空飛ぶスプーン(フライング・スプーン)】だね。

 試乗してみた。


 うーん……。


 何だか旋回時に癖があるね。

 先の方が重たい感じで、なかなか曲がっていかない。

 身体を傾けて、かなり頭を突っ込まないと、急旋回は難しい。

 何故?

 やっぱり、ホウキ型じゃないとダメなのかな?


 まあ、高速急旋回でもしなければ、そこまで不具合が生じる訳でもないけれど……。


 私は、同じようにデッカいフォーク型の【空飛ぶのフォーク(フライング・フォーク)】も作ってみた。

【魔法石】は勿体ないから、スプーン型から取り外して流用。


 何だか、こっちも違和感があるね。

 フォーク型は、加速が悪い。

 加速しようとすると、推進力が空吹かしになるみたいな感じだ。


 うーん、フォーク型は、ない。

 どちらかと言えばスプーンの方が、まだマシかな。


 いや、やり直しだ。

 素直にホウキを作れば良かったんだよ。


 私は、再び失敗作から【魔法石】を外して、新しい材木をホウキ型に成型して、作り直した。


 試乗。

 うん、キビキビ動くし、旋回、加速にも違和感がない。

 やっぱり、このホウキ型の形状には意味があるみたいだ。


 少し不格好だけれど、性能には問題ないし、頑丈に出来たから、とりあえず、これで良いかな。

 シャカシャカの部分の毛足が硬いから、お掃除には使えないだろうけれど……。


 私は、出来上がった【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)・レプリカ】を、すぐフェリシアに渡しに行きたい衝動を我慢して、【収納(ストレージ)】にしまった。

 今は、学校の時間。

 授業の邪魔はしちゃいけない。


 さてと、工事と建築をやっつけてしまおう。


 ・・・


 商業集落の裏道に、地上3階地下1階の宿を3棟建てる。

 1階は、フロントと事務所と食堂と厨房。

 地下は、倉庫。

 2階、3階が客室。


 六畳一間、風呂なし、トイレ共同。

 昔のアパートみたいな感じだ。

 ヘザーさんに意見を聞いたら……これで十分、むしろ個室なだけ贅沢……だと言う。


 でも、これでは、ちょっと。

 冒険者に集まってもらうなら、もう少し、何とかしてあげたい。

【サンタ・グレモリア】は居心地が良い、と思ってもらえるような何か……。


 そうだ、大浴場を造ろう。


 ホテルの各部屋には部屋風呂があるけれど、安宿の小さな個室に、それぞれ浴室を作るのは無理がある。


 商業集落の住人は、農業集落の公衆浴場に毎日通って来る。

 外は危ないから、農業集落と商業集落の間には、地下道を通した。

 みんな、それで、夕食の前後に、お風呂に入りに来る訳。

 スペンサー爺さんとか、パン屋の頑固親父とか、年寄りには、朝風呂が人気だ。

 ジジイの朝風呂事情は、どうでも良いけれど。


 アリスの家にだけ、自家用風呂を作ってあげた。

 アリスは、一応、貴族令嬢だからね。

 私の【避難小屋(パニック・ルーム)】には、シャワー室があるけれど、湯船に浸かりたい時は、私もアリスの家に、お風呂を借りに行く。


 お風呂は良い。

 やっぱり、私って日本人なんだね〜。


 そうでなくて。

 冒険者用の大浴場だよ。

 巨大空間を造るのは、構造強度的に、結構大変。

 農業集落の公衆浴場は、巨大な屋根をたくさんの構造材で支えてあるから、かなり苦労した。


 どうしようかな〜。

 面倒だから、お風呂場の中にも太い柱を何本も立てちゃえ。


 完成したら、何か、ローマ風呂っぽくなった。

 あくまでも、ぽい、感じ。

 私、ローマ風呂の本物なんか見た事ないしね。


 巨大な浴槽は、当然、源泉掛け流し。

 作り貯めてある、給水・給湯の【魔法装置(マジック・デバイス)】をあちこちに付けて、と。

 ローマ風呂っぽく、ライオンの口から、お湯が出るようにしてみた。

 これ、ローマ風呂のお約束でしょう?

 私のステレオタイプ、間違っている?

 ま、良いか。


 よし、出来た。


 こっちの大浴場は、【サンタ・グレモリア】に訪れた人は、無料で入浴可。

 ただし、【イースタリア】の聖堂で作っている、石鹸と清潔なタオルを販売してみたりして……。

 石鹸は、まだ、ちょっと高いから、小さく切ったサイズで良いよね。


 最後に、お風呂の利用ルールを、男湯と女湯の脱衣場の壁に大きくに書いて、と。


 下着のまま入浴不可。

 専用入浴着の着用可(有料)。

 汚いボロ布みたいな物は、持ち込み禁止。

 全身を石鹸で洗って、綺麗に流してから湯船に入る事。

 お風呂場での洗濯は禁止。

 お風呂場は、おトイレじゃないよ。

 周りの人に迷惑にならないようにしてね。


 うん、清潔は大事だからね。


 読み書きが出来ない人も結構いるみたいだから、男湯と女湯で、番台さんを置いて、入浴のルールを説明してもらおう。

 番台さんは、聖堂の聖職者に、お願いしよう。

 聖堂の収入源である石鹸の売り上げが期待出来るし、やってくれるだろう。

 こういうマナー系の啓蒙は、聖堂の聖職者に言ってもらった方が、言う事を聞いてもらいやすいからね。


 私が言うと、魔法の力を背景にした脅迫っぽくなる。


 ヘザーさんに出来上がりを見てもらった。

 何だか、とても感動しているみたい。


「素敵です。私、こちらに入浴しても構いませんか?」

 ヘザーさんが言った。


「もちろん、農業集落の公衆浴場は、【サンタ・グレモリア】の住人専用だけれど、商業集落の大浴場は、誰でも利用可だから、ヘザーさんは、お好きな方にどうぞ」


 私は、農業集落の方の、銭湯風の設えの方が落ち着くんだけれど……。

 まあ、好みは人それぞれだからね。


 ヘザーさんには、農業集落に家を建ててあげた。

 その代わり、村の運営に手を貸してもらう。

 ピオさんも同様の待遇。

 読み書き計算が、この【ブリリア王国】では、普通の庶民は出来ない。

 昔は、そんな事なかったんだけれど……。

 とにかく、報告書が作成出来たり会計処理が出来たり労務管理が出来たりするヘザーさんは、【ブリリア王国】では、エリート。


 経済学の知識があって、外交交渉まで出来るピオさんのレベルになると、国家の頭脳レベルという事になる。


 せっかく、有能な人材が暇を持て余しているなら、手伝わせなければ損だ。


 2人の給料は、悪いけれど支払えない。

 ギルドは、独立組織。

 自治体や個人から報酬はもらえない決まり。

 ただし、2人の家と、銀行ギルドと冒険者ギルドの建物や設備は、全て、私が造ってあげた。

 これで、行って来い、だよね。


 よし、冒険者用の宿屋関係は、これでOK。

 次は、港か……。


 ・・・


 商業集落の隣。


 どうすっかなぁ……?


 現在、商業集落は、一辺1kmの正方形。

 これを回廊沿いに西側へ区画を造って東西方向に2倍にするか……南北方向に2倍とするか、で悩んでいる。

 いっそ農業集落と同様に北と西と北西に3つの区画を造って4倍に拡げるかな?

 それなら回廊を挟んで街区がシンメトリーになるから、何となく収まりが良い。


 農業集落には4つの区画があった。

 農業集落西側の2区画は中身が空っぽだけれど、来春には畑を広げるつもりだからスペースを確保しておく必要はある。


 商業集落の方は現状4倍はいらないんだよね……。

 だって、商業集落には畑がある訳ではないしスペースは余っている。


 ピオさんが、やって来た。


「ピオさん、壁の外を出歩くなら魔物に襲われても自己責任だからね」


「危ない魔物が出たら、すぐ逃げますよ。私、逃げ足の速さには自信があるのです。それに、グレモリー様の近くが実質一番安全なのでは?」


「万が一は、あり得るよ」


「承知しておりますとも。ところで、腕組みなどされて、何か悩まれていますか?」


「商業集落を、どのくらい拡げるか、考え中」


「なるほど。大事なポイントですね。壁を築くと、必然的に、その中が街の()()()として既定される事になりますからね」


「港を造るから、とりあえず、2倍にはするでしょう。で、この際、農業集落側と同じ4倍にしようかなって」


「商業地、港と卸売市場、住宅地、工業地で、4倍ですね。問題ないのでは?」


「でも、この村は、そんなに発展するのかな?」


 実際、商業集落は、開店休業状態の店ばかりで、私が収益補填をしている状態だ。

 ホテルは、空っぽ。

 店舗と工房も空きが多い。

 これは、転居希望者がいない訳じゃないんだよね。

 希望者は、それなりにはいた。

 私が、調子に乗って建物を造り過ぎただけなんだよ。

 人口10万人の【イースタリア】と同じ規模の商店街を、人口300人の【サンタ・グレモリア】に造ったのが、そもそもの間違い。


「既に、銀行ギルドは、そう想定して動いておりますよ。商業ギルドも支店を出すつもりだそうです」


「あ、そう。なら、やるか。とりあえず、今日は、基礎工事。明日、城壁と堀を拡張して、明後日から何日かかけて建築だね」


「もはや、村ではなく、町……いや街ですね?」


「人口は、まだ300人だけれどね」


「とりあえず、10万人都市を目指しましょう。私は、それまでは、こちらにおりますよ」


「ピオさん、副頭取の仕事は良いの?」


「はい。副頭取といっても、以前から頭取の使いっ走りをやらされておりましたので。それに、現在、銀行ギルドの最重要案件は、この【サンタ・グレモリア】です。これは、【調停者】であるノヒト・ナカ様より、直々に、頼まれた案件でございます。頭取からも、万事抜かりなくやるように、と厳命されておりますので」


「ふーん」


調停者(ゲームマスター)】が、こんな辺境の村に、何で興味を持ったのかは知らないけれど、世界に隠然たる影響力を持つ銀行ギルドが味方になってくれている状況は、正直、有難いね。


 さて、もう少し工事をするか。

お読み頂き、ありがとうございます。


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