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第151話。グレモリー・グリモワールの日常…14…常設軍構想。

西←【ウエスタリア】←王都【アヴァロン】←【イースタリア】←【サンタ・グレモリア】→【竜の湖】→【サントゥアリーオ】→東


【サンタ・グレモリア】

北…商業集落

真ん中…回廊

南…農業集落

 9月17日。


 深夜に起き出して、【湖竜(レイク・ドラゴン)】の解体なんかやったから、ちょっと眠い。


 私の1日は、朝のルーティンから始まる。

 私の養子にした【エルフ】姉弟。

 その弟のレイニールと【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】に2人乗りして、私の開拓村の見回りをするのだ。


【サンタ・グレモリア】。

 それが、この村の名前。

 私の名前が由来になっている。

 それも冠詞は聖女を意味するんだ、とか。

 どんだけ、自己顕示欲が高いんだ、って突っ込みは、よくわかるよ。

 でも、これ、私が決めた名前じゃないからね。


 見回りは、今まで問題が見つかった事はない。

 私は、超絶最高な魔法の天才だから、村の建築物には、強力な【バフ】と【自動修復(オート・リペア)】がかけてあるからね。

 でも、毎日の日課だから、何となくやっている。

 見回りを止めた途端に、どっかが壊れた、なんてフラグは立てたくない。


 城壁や堀や建物に壊れた箇所はないか?

 畑や村人さん達に異常はないか?

 うん、今朝も問題ナッスィング。


 見回りの最後は、堀に生息する【竜魚(ドレイク・フィッシュ)】の群……キブリをボスとするキブリ警備隊への餌やり。

 村の頼もしい防衛戦力だ。


 キブリは、私が【調伏(テイム)】した従魔。

 後の100頭以上は、全部キブリの手下達だ。

 キブリの手下……どんどん、増えていくね。

 レイニールと2人で手分けして、【古代(エンシェント)(・ドラゴン)】の内臓を投げてやる。


竜魚(ドレイク・フィッシュ)】達は、上手に空中ジャンプでキャッチ。

 最近は、回転したり、捻りを加えて来たりする。

 教えてもいないに、何か芸を覚えていた。

 面白がって、月面宙返り(ムーンサルト)を教えてみたら、すぐ覚えたよ。


 美味しいかい?

 よしよし、味わってお食べ。


 見回りが終わると朝食。


 代官屋敷(ただの大きめの民家)に【サンタ・グレモリア】の首脳が集まって、食卓を囲む。

 この朝食の時間で、色々と村の事が決められていた。

 案外、重要案件が目白押しだったりする。


 私は、面倒なので、政治絡みは、村長、兼、代官のアリスに丸投げ。

 アリスは、この村のある領地【イースタリア】領主であるリーンハルトの娘さん。


 本来なら、村長と代官を兼ねるのは、特段の事情がなければ出来ないらしい。

 執行責任者と監査役だもん。

 自分で予算執行して、その使途に不正がないかを、自分で監査役出来るとしたら、何でも出来ちゃうからね。


 だけれど、そこはそれ。

 私は、役職とか面倒だからやりたくない。


 私の村は、特殊だから、特例として認めてもらった。

 村の最高意思決定者であり、村の収益の源泉は私。

 アリスは、【イースタリア】の領主の娘。

 つまり、私とアリスで、執行と監査を役割分担しているとも言える。

 ピオさんが、そう言って、この村の上位監督権を持つ、領主のリーンハルトに強引にねじ込んだ。

 ピオさんは、結構その手の政治取引は、得意みたい。

 時々、そんな感じで、黒ピオさんが出る時がある。

 ま、私の村に利益があって、後から面倒が起こらないのなら、どんどんブラック・パワーを使っておくれ。


 封建制の場合、領主って、その土地の王様みたいな役割だから、結構無理が通るらしい。

 もちろん、最高権限者の【ブリリア王国】の王様に逆らわなければ、だけれど。


 村の財務関係は、ピオさんに助けてもらっている。

 ピオさんは、世界銀行ギルドの副頭取で、メチャメチャ偉いらしい。

 村の財政状況は、今、私のポケットマネーで回している。

 ピオさんには、村の財政を独立採算ベースに乗せる事を頼んだ。

 お安い御用です、って言うピオさんは、やっぱり笑顔が、ちょっと黒かったよ。


 で、今日からヘザーさんも朝食会議のメンバーに加わった。

 ヘザーさんは、冒険者ギルド【サンタ・グレモリア】出張所の所長。

 彼女って、キャリア・ウーマンにありがちな、家事が致命的な女性なんだよね。

 朝ご飯に真っ黒な物体を食べようとしていたから、オニギリかな、って思ったら……ジャガイモだった。

 だから見かねて、食事は、こっちで一緒に食べてもらう事にしたよ。

 あんなコゲの塊を食べていたら、絶対に病気になる。


 ま、私も家事とか、あんまり出来ないけれどね。

 それでも、一応、私は料理ステータスは、そこそこ高い。

 私、この世界(ゲーム)の開始当初から、しばらくは、ボッチが長かったから……。

 レストランとかに入るのは断わられていたし、下手をすると街に入るのさえ断わられていたから、自炊しなければ、食べる物がなかった。

 私の職種【(グランド)死霊術(・ネクロマンシー・)(マスター)】は、みんなから嫌われていたからね。


「【ポーション】ですが、一次利益を追求するだけならば、やはり王都【アヴァロン】に卸すのが一番よろしいかと思いますが、あえて、この村から出さず、王都【アヴァロン】から商人に仕入れに来させ、商業集落の方にお金を落としてもらう方が、総額としては、村が潤うという結論に達しました。トリスタンとピオさんも同様の見解です」

 アリスが言った。


「任せるよ」


「畏まりました」


「商業集落には、ホテルが3軒ありますが、冒険者が宿泊するには、もう少し安価な宿屋があれば、と思います。食費と入浴料別で、素泊り銅貨20枚以下とかです」

 ヘザーさんが言う。


 私の村では、通貨単位は【ドラゴニーア通貨】でしてもらっていた。

 私が、こんがらがるし、村の給与関係も【ドラゴニーア通貨】での支払い。


「なるほどね。わかった商業集落の裏通りはスペースが余っているから、安宿を幾つか建てておくよ」


「お願いします」


「港を造って頂けませんか?」

 ピオさんが言った。


「港?いる?【イースタリア】にもあるのに?」


「いります。【イースタリア】の港は手狭ですし、第一、【イースタリア】に【サンタ・グレモリア】の輸出入の窓口を担わせるのは効率が悪いです。貨客共用の飛空船の乗り場が、最低4レーンとドックが20。貨物専用の船着場が最低4レーンとドックが20。ターミナルや倉庫や税関施設も必要でしょう。それから、卸売市場も併設しませんと」


「デカ過ぎでしょう。主要都市級じゃん。それに税関って、国際港にするつもり?」


「ええ、もちろんです。私は、【サンタ・グレモリア】をウエスト大陸の経済の中心、かつ、金融センターにするつもりですので」


「うーん、とりあえず用地は村のはずれに確保しておくよ。今は、建築資材待ちだからね」


「はい。お願い致します」


「衛士の屯所を作らなくてはいけません」

 アリスの侍女で副村長のグレースさんが言う。


 グレースさんは、【暗殺者(アサシン)】。

 元は、私への刺客として送り込まれていた。


「それは必要なんだろうから建物は造るけれど、衛士は、私の信任がない者はイヤだよ。出来れば、面談をして採用したいんだけれど」


「ならば、【サンタ・グレモリア】で雇う衛士の給与は、こちらで負担するとして、父と交渉してみます」

 アリスが言う。


「【サンタ・グレモリア】の兵も必要かと」

 アリスの御者で副村長代理のスペンサー爺さんが言った。


 スペンサー爺さんは、【剣豪(ソード・エキスパート)】。

 彼も、元は、私への刺客として送り込まれていた。


「兵士も要面談。傭兵はヤダし、可能なら村人さんが自発的に村を守る形が望ましいね」


「なるほど、志願民兵ですね。訓練すれば、それなりにはなるでしょうが、人数が……」


「村人さんに有事の際の予備役として戦ってもらう事は必須として、他にもアリスの命令一つで動く練度と忠誠心の高い常設兵力が一個中隊くらい欲しいね」


「ほほう、【サンタ・グレモリア】騎士団ですね?」

 ピオさんが、さも愉快そうに笑う。


 現在、村の防衛は、私だけでやっていた。

 だけれど、私は、いずれ、養子にしたフェリシアとレイニールを連れて、この村を去るつもり。

 私の自宅は【シエーロ】って所にある。

転移(テレポート)】が使えれば、往き来が出来るから、【サンタ・グレモリア】にも拠点を残しておいて、何かあれば、私がスクランブル発進する事も出来るけれど……私は【転移(テレポート)】を持っていない。

転移(テレポート)】が使えないのに、2拠点防衛は、出来ないからね。

【サンタ・グレモリア】の自衛戦力は、絶対に必要だ。


「中隊規模となると、歩兵だけで200人ほどになりますね。後方を支える人員も含めると250人は必要でしょうか?」

 スペンサー爺さんが言う。


「スペンサー爺さん、村の指揮官ね」


「私が、ですか?」


「そだよ。これは、決定事項。それとも、誰か村人さんから選ばれた雇われ指揮官にアリスの生命を預けられる?」


「わかりました。全力で務めます」

 スペンサー爺さんが言った。


「常備兵250人ですか……。だとするなら、人口を増やす必要がありますね」

 アリスは言った。


「ピオさん、何とか常備軍を賄えないかな?」


「賄えます。まず、商業集落の隣に住宅地を建築します。【イースタリア】の貧困層で、働ける年代の者達全世帯に家を与えます。次に彼らに仕事を与えます。若い男の大半は兵士に。その家族は、農地を拡げ、工場などを造って、雇えば良いでしょう」

 ピオさんが言う。


「工場って何を造るの?私は【魔法装置(マジック・デバイス)】は造れるけれど、それを私以外の人達に任せて生産させるような方法論は持たないよ」


 それは、プロトコル制御ライン・システム、って云う先端インフラで、工学魔法の究極に位置する技術だ。

 私は、工学魔法は、【高位】までしか使えない。

【高位】の工学魔法では、高性能のプロトコルを作れないからね。


「誘致致しましょう。この村の潜在力なら、興味を持つ企業があると思います」

 ピオさんは言った。


「うーん。とりあえず、お米が収穫出来てからの話だね。食い扶持がない状態で人口を増やすのは、ちょっと怖いかな。だから、お米の収穫まで、結論は保留だよ」


【サンタ・グレモリア】の税収は、農業集落は物納、商業集落は所得税方式。

 人頭税、入街税、地租、商業税……など、【ブリリア王国】で一般的な税方式は採用していない。


 農業集落では、村で育てている、お米の一部を税収としてもらう約束になっている。

 物納税は、私とフェリシアとレイニールが食べる分より多いくらい。

 残りの収穫は、農業集落の各世帯で分配してもらっている。

 食べきれない分は、トリスタンが売って、農業集落の村人さん達の現金収入となる訳。

 トリスタンていうのは、【イースタリア】にいる私の部下。

 トリスタンは、優秀だから、村の産品をなるべく高く売ってくれる。


 でも、農作物と違って、工業製品は食べられない。

 事業に失敗したら、みんな飢え死ぬかもしれないんだよね。


 たぶん、こういう時に、イケると踏んで、どんどんリスクを取れる人が起業家として成功するんだと思う。

 私は、安全マージンは、あるだけ欲しいタイプだ。

 起業家としては成功しないだろうね。


 私の村では、こんな感じで、毎朝、色々と決められて行く。


 ・・・


 朝食後。


 午前中、フェリシアとレイニールは、学校に行く。

 学校といっても、今はまだ、寺子屋みたいな物だ。


 アリスは、ピオさんや、ヘザーさんと、事務仕事。

 グレースさんは、学校の先生をする。

 スペンサー爺さんは、手隙の村人さんを連れて、駅馬車の荷降ろしやら、積み出しやら、なんやら。


 村と【イースタリア】間では、朝昼夕と3往復の駅馬車が運行されている。

 これの運営費も、全部、私の持ち出しだ。


 駅馬車には、【イースタリア】から、怪我人・病人が乗って来る。

 私は、駅馬車を回って治療して、リハビリや栄養学の知識に基づいたアドバイスなんかをする訳。

 治療が終わった人達は、乗って来た駅馬車で、そのまま帰って行く。


 ・・・


 駅馬車が出発すると、私とスペンサー爺さんは、農業集落にあるプールの横に新しく造った作業小屋に向かった。

 小屋の中では、村の奥さん達が作業をしている。


 ここは、魚の調理小屋。

 干物を作っている。

 村の大事な産業だ。


 この技術は、漁師の家に生まれ育ったスペンサー爺さんが指導した。

 この干物が凄く美味しい。


 堀とプールは水門を隔てて繋がっていて、堀は【竜の湖】に繋がっている。

【竜の湖】は、魔力が豊富で魚影が濃い。

 また、村から出る浄化された排水によって希釈された堀の水は、魚の稚魚にとって最高の生育環境になるみたいだ。

 また、キブリ隊が堀を泳いでいるので、稚魚を食べる天敵もいない。

 堀が魚の揺りかごの役目を果たす訳だ。

 魚は、ほとんど無尽蔵に獲れる。

 キブリ達に聞くと、私が村を作って以来、魚影は、以前より濃くなっているらしい。


 毎朝、キブリ隊が湖で大量の魚を獲って、プールサイドに水揚げしておいてくれるから、それを村の奥さん達が、捌いて塩水処理をして、干す。

 この作業小屋には、私が【魔法装置(マジック・デバイス)】で、製氷機を造ってあるし、小屋の中は無菌化してある。

 魚の干場も無菌化して、私が造った乾燥機を設置した。

【サンタ・グレモリア】の干物は美味しいから、【イースタリア】では、凄い勢いで売れているらしい。


 以前に街で買った魚の干物は、塩辛くてカッチカチで、焼いただけでは、とても食べられなかった。

 一晩水で戻してから、長時間煮込むらしい。


 その点、【サンタ・グレモリア】の干物は、焼けばすぐ食べられて、ホックホクでジューシー。

 日保ちはしないから、保存食品ではなく、生鮮食品として売ってもらっている。

 それでも生魚は1日だけれど、干物は1週間くらいは保つ。

 十分、商品価値がある。


 トリスタンは、【イースタリア】に干物の直販店を作るつもりみたいだ。


「ボチボチ、夏魚はお終いですが、次は冬魚のシーズンです、仕事は通年続けられますよ」

 スペンサー爺さんは、朗らかに言う。


 ふと見ると、魚を捌いて出た内臓を、奥さん達が、プールから顔を出した【竜魚(ドレイク・フィッシュ)】にポイポイ投げていた。

 複数の【竜魚(ドレイク・フィッシュ)】は、嬉しそうにパクパク食べている。

 少し身体が小さいから、この【竜魚(ドレイク・フィッシュ)】は子供かな?

 うん、丁度良いオヤツだね。


 アリスから魔法通信機で呼び出し。

 昼食の時間らしい。


 さて、今日の、お昼は何だろな〜。

お読み頂き、ありがとうございます。


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