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第149話。人質の王女。

サウス大陸の詳細…その1


中央国家【パラディーゾ】

東の都市【コットニア】

西の都市【ゴールディニア】

南の都市【ダイアモンドブルク】

北の都市【ベルベトリア】


スポーン・エリア


【コットニア】の東、【大草原】

エリア・ボス…【バジリスク】


【ゴールディニア】の西、【卓状山脈(テーブルマウンテンズ)

エリア・ボス…【スフィンクス】


【ダイアモンドブルク】の南、【大鉱脈】

エリア・ボス…【鉱石竜(オーア・ドラゴン)


【ベルベトリア】の北、【人食い沼】

エリア・ボス…【ジャバウォック】

 午後。


 私達は、正装に着替えて、謁見の間に隣設された控室に入りました。


「ソフィア様、ノヒト様、お時間ですが、よろしいですか?」

 エズメラルダさんが、私達を待ち構えていたように声をかけて来ました。


 私達は、了解します。

 ソフィアは、【神竜(ディバイン・ドラゴン)】形態に現身(げんしん)し、ファヴも守護竜形態に現身(げんしん)しました。

 竜騎士団長レオナルドさんの呼び込みが発せられ、謁見の間に通じる巨大な扉が開きます。


 オラクル、トリニティ、ウルスラ、ヴィクトーリア、ディエチは控室で待機。

 私とソフィアとファヴは、謁見の間に移動します。


 厳かな雰囲気。


 高台から見下ろすと、1人の少女が跪いていました。


 既に立太式も済ませた、【アルカディーア】王位継承順位第一位、次期女王。

 ドローレス・アルカディーア皇太王女殿下です。


 ソフィアが最上段中央に座り、ファヴはソフィアの隣に座りました。


 私の席は?

 ソフィアの背後?

 ああ、これ?


 私は、アルフォンシーナさんから【念話(テレパシー)】で教えてもらいながら、着席しました。


 私はオブザーバーという位置付けなので、この席次です。


神竜(ソフィア)】の背中がデカ過ぎて何も見えん……。


 私は、ソフィアの第2の脳であるフロネシスとパスを繋げ、ソフィアの目を通して謁見の間を見下ろします。


 おー、視線が高くて、良く見えますね。


 高台から一段下がった位置に、アルフォンシーナさんが起立しています。

 もう一段低い位置に、【グリフォニーア】、【リーシア大公国】、【パダーナ】、【スヴェティア】のセントラル大陸同盟諸国の大使が起立。

 さらに低い位置に、【ムームー】のチェレステ新女王、【パラディーゾ】のローズマリー大巫女、【アトランティーデ海洋国】大使と、【ユグドラシル連邦】大使が起立。

 さらにさらに低い位置に【タカマガハラ皇国】大使と、【イスタール帝国】の大使が起立。

 最下段には、【ドラゴニーア】のフェルディナンド元老院議長、ジャンピエトロ執政官、ハインリク・ロベンクランツ大判事が起立。


 ひな祭りの、七段飾り、みたいな様子ですね。


 これは、同盟や安全保障協定における、【ドラゴニーア】から見た、国家の格を示しているそうです。


 つまり、【アルカディーア】の格は、安全保障協定上、最下位。

 まあ、元敵国ですから、この扱いは止むを得ません。


 本来、【ムームー】と【パラディーゾ】は、【タカマガハラ皇国】と【イスタール帝国】と同格ですが、代理の特命全権大使ではなく、国家元首とファヴの代理人である大巫女本人の列席である為、一段高い位置にいるのだ、とか。


 何だか、色々と面倒なルールがあるのですね。


「至高の叡智を持つ、天空の支配者にして、セントラル大陸の守護竜、【ドラゴニーア】の国家元首で()らせられる、【神竜(ソフィア)】様……本日は謁見の栄誉を賜わります事を心より感謝申し上げます。ヘルマヌス・アルカディーアが長子、ドローレスでございます。この度は、【ドラゴニーア】と【アルカディーア】の友好と協定履行の(あかし)としてまかり越しました。【神竜(ソフィア)】様におかれましては、【アルカディーア】の行末に、ご寛大なる御裁断を賜れますよう、何卒、御願(おんねが)(たてまつ)ります」

 ドローレス王女は、滑舌が良く澄んだ声で言いました。


 ドローレス王女は、16歳です。

 ハリエットと同い年でした。

 きっと相当練習したのだろうとは、思いますが、こんな七面倒臭い口上を淀みなく言えるものなのですね〜。


「役目大儀である」

 ソフィアは言いました。


 それだけ?


「ドローレス王女殿下、よく、いらっしゃいました。歓迎致します」

 アルフォンシーナさんが言います。


 私達は、促されて退席しました。

 呆気ないモノです。


 公式の謁見とは、こういうモノなのだ、とか。

 要するに、【ドラゴニーア】に対して、【アルカディーア】が下位にある事を公式に示して見せる事が目的なのだそうです。

 また、何らかの言質(げんち)を与えない為、ソフィアは余計な事は言わないのが、正確。


 まあ、非公式の場なら、もう少し砕けた会話も出来るそうです。


 ・・・


 ソフィアとファヴは、人化して、服を着ました。


「ソフィア様、この後は、ドローレス王女殿下に【契約(コントラクト)】を結ばせた上で、非公式の会談を行います。ファヴ様、ノヒト様は、どうなさいますか?」

 控室にいたエズメラルダさんが訊ねます。


 私はパス。

 面倒臭いですからね。


「ノヒトも、ファヴも、参加するのじゃ」

 ソフィアが言いました。


「嫌だよ。私は、関係ないでしょう?」


「そうとも言い切れないのじゃ。【アルカディーア】は、先の戦役の折、多数の魔導兵器を投入して攻めて来たのじゃ。【アルカディーア】は発展途上国で、そのような兵器類は、開発も保有もしておらなかったのじゃ。【アルカディーア】に兵器を売った国がある。我は、その国が、【アルカディーア】を焚き付けて、【グリフォニーア】を攻めさせた黒幕と見ておるのじゃ。証拠がない故、反撃はしなかったのじゃ。その国は、ノヒトが調べたいと思っておる国なのじゃ」

 ソフィアは言います。


「つまり、【ウトピーア法皇国】?」


「なのじゃ」

 ソフィアは肯定しました。


 なるほど。

【ウトピーア法皇国】は、私が、世界(ゲーム)(ことわり)を破っている事を、疑っている国です。

 魔法技術や科学技術の適切な使用について、管理・監督する権限を持つ、魔法ギルドを国内から追放し、また、【(ヒューマン)】至上主義という狂った思想を標榜してもいました。

【ウトピーア法皇国】は、おそらく、禁忌の大量破壊兵器を秘密裏に開発していると見て間違いないのです。

 また、【ウトピーア法皇国】があるウエスト大陸は、守護竜【リントヴルム】が【サントゥアリーオ】から人種を追放してしまっていました。

 その原因も、元を(ただ)せば、ウエスト大陸中央国家【サントゥアリーオ】と、北方の【ウトピーア】の戦争に端を発していました。


 この背景情報を【アルカディーア】が知り得るなら、私としても聞きたい事は、色々とあるのです。


「そういう事なら、同席するよ」


「ソフィアお姉様が言うのなら、僕も会いましょう」


 私達は、しばらく待たされてから、会議室に移動しました。


 ・・・


 会議室。


 アルフォンシーナさんと、ドローレス王女が起立して待っていました。

 アルフォンシーナさんの背後には、筆頭秘書官のゼッフィちゃん、ドローレス王女の背後には、侍女らしき女性が控えています。

 会議室の壁際には、竜騎士団が整列。


 私とソフィアとファヴは、並んで上座に立ちました。

 ソフィアが着席し、続いてファヴが腰掛けます。

 私もエズメラルダさんに促されて座りました。

 アルフォンシーナさんが着席して、エズメラルダさんは、アルフォンシーナさんの隣に着席します。


「ドローレス。着席を許す」

 ソフィアが言いました。


「はい」

 ドローレス王女は、許可を得て着席します。


「ドローレスよ。長旅ご苦労じゃった。この竜城を其方の家だと思って気楽に過ごせ」

 ソフィアは言いました。


「痛み入ります」

 ドローレス王女は、深く頭を下げます。


「アルフォンシーナよ。ドローレスは、遊学という扱いになると思うが、どうなっておる?」

 ソフィアは、アルフォンシーナさんに訊ねました。


「はい。午前中は、教師を付けて講義を受けて頂きます。午後は、ゼッフィの部下に付けて実地で経験をつませます」


「うむ。それで、良かろう。ところで、じゃが、ドローレス……」


「はい。何でございましょうか?ソフィア様」

 ドローレス王女は緊張した面持ちで応えます。


「其方の供回りに15歳以下の者は、どのくらいおる?」


「はい?」

 ドローレス王女は、想定外の事を訊ねられたのか、キョトンとした顔で言いました。


「【アルカディーア】では、どうか知らぬが、【ドラゴニーア】では、15歳までは、義務教育を受けねばならぬ。其方の供回りは、若い者が多い。15歳以下の者には、学校に行ってもらうか、家庭教師を付けねばならぬのじゃ」


「15歳以下の共は、3人でございます」


「家庭教師が良いかの?」


「ソフィア様。もし、よろしければ、学校に通わせたいと存じます。【ドラゴニーア】繁栄の(いしずえ)は、学校教育にあり、と伺っております。それを、経験させたく思います」


「うむ、良かろう。アルフォンシーナよ、そのように取り計らうのじゃ」


「畏まりました」


 諸々の会談が行われました。

 外交に関わるような話は、なし。

 ドローレス王女が、今後、【ドラゴニーア】でどのように過ごすか、という事が中心でした。


 会談の最後に、私から先の【グリフォニーア】と【アルカディーア】の戦争について訊ねましたが……。

 ドローレス王女は、当時まだ産まれておらず、また、後に、その時の事を詳しく教えられる事もなかった、と言います。

【ウトピーア法皇国】に関わる情報も、ドローレス王女には知らされていませんでした。


 これらは全て、会談に持ち込まれた【アンサリング・ストーン】によって、事実確定しています。


 まあ、情報は取れませんでしたが、仕方がありません。

 いや……一つだけ、ドローレス王女に帯同して来た年配の侍女から……。


 ()王(無謀な戦争を仕掛け、国を滅ぼした事から、【アルカディーア】では、そう呼ばれている)……つまり、先代の王で、ドローレス王女の祖父が存命中に、軍事顧問や政治顧問として、数人の外国人が城に出入りしていた、と。

 その顧問団の素性は知らされていませんでしたが、【アルカディーア】に暮らす【獣人(セリアンスロープ)】を心底毛嫌いするような素振りを見せていたそうです。

 その顧問団は、【ドラゴニーア】・【グリフォニーア】連合軍が【アルカディーア】王都を包囲する前に、王城から姿を消したのだ、とか。


 うん、状況証拠的には【ウトピーア法皇国】の者と考えて間違いないでしょう。


 私達は、会議室を後にしました。


 ・・・


 私達は、アルシエルさんの様子を見に行きます。


「体調は、どうですか?」


「もう、すっかり元通りです。ありがとうございました」

 アルシエルさんは、言いました。


「私達は、これから散歩に出掛けて、外食をするつもりですが、アルシエルさんは、どうしますか?」


「散歩?では、お供させて頂きます」

 アルシエルさんは、言いました。


 少し、陽が傾いて来ましたが、レジョーネとファミリアーレで、竜都の街歩きに出掛けます。


 ・・・


 私達は、中心街から東に向かってメインストリートを歩きました。

 商業地には、百貨店や、大型の専門店が建ち並びます。


 中心街が永田町や大手町や銀座のような雰囲気だとするなら、商業地は、新宿や池袋や渋谷のような雰囲気でしょうか。

 賑わっています。


 魔道具専門店がありました。

 外縁部北の魔道具屋街は、秋葉原の電気街や河童橋の道具屋街という様子ですが、商業地の魔道具専門店は、高級志向。

 ソフィアとロルフが覗きたがったので、ゾロゾロと中に入りました。


 ふむふむ、なるほど。

 私が欲しいレベルの魔道具は、ありませんね。

 ただし、売れ筋の商品はわかったので、それを私の技術で高品質にすればマリオネッタ工房の新商品に出来るのでは、というヒントには、なりました。


 それから、アルシエルさんが……これが、【地上界(テッラ)】の技術水準か、侮れん……などと呟いていましたね。


 うん、これが、病み上がりのアルシエルさんを連れ出した理由です。

 アルシエルさんは、やがて【天界(シエーロ)】に戻りますからね。

【ドラゴニーア】と敵対するのは得策ではない、と上層部に報告してもらう必要があります。

 つまり、アルシエルさんは、駐在武官。

 たくさんの物事を見聞きさせ、【天界(シエーロ)】が、【ドラゴニーア】と戦うという選択をしないように上手に誘導したいところです。

 また、いずれ私やソフィアの武力を教え、神の軍団の威容を示す必要もあるでしょう。


 それでも、攻めて来るつもりならば、止むを得ません。

 その時に【天使(アンゲロス)】の文明は終焉するかもしれませんね。

 全ては、相手の出方次第。

 私は、好戦的ではありませんが、いざ反撃する時は、過剰なほど敵をブチのめしていくスタイルなのです。


 しばらく、東に向かって、そぞろ歩きます。

 やがて、予約の時間となったので、【飛行(フライ)】で移動。

 外縁部東側の歓楽街にあるジャガイモ亭に向かいました。


 ・・・


 夕食。


 ジャガイモ亭。


 私達は、好きな物を好きなだけ注文し、誰に気兼ねする事もなく、夕食を楽しみました。

 ジャガイモ亭は、連日の盛況にも関わらず、味のレベルは、相変わらず私とソフィアの好みのまま。


 変わったのは、新しい従業員が雇われていた事。

 オーナー・シェフのベニートさんの調理助手に若い青年2人と、給仕係に若い女の子が3人雇われていました。


「忙しくてね。夫婦2人じゃ、とても回らなくなってしまって……」

 ベニートさんの奥さん、ダフネさんが苦笑します。


「うむ、味が変わらなくて安心したのじゃ。外的要因で、急に流行った料理店は味のレベルが下がって、結果、客離れを起こすという事があるのじゃ」


「あら、ソフィアちゃん、難しい事を知っているのね?」

 ダフネさんは言いました。


「当然なのじゃ。我は至高の叡智を持つのじゃ」

 ソフィアは、胸を張ります。


 ベニートさんとダフネさんには、ソフィアを私の実子として紹介しています。

 2人は、ソフィアが【神竜(ディバイン・ドラゴン)】だとは知りません。

 ソフィアは、私服で神官服を着ているので、竜城の【女神官(プリーステス)】だと思っているようです。


「お隣のバーのマスターが引退するからって、私達が、お店を買い取る事にしたのよ。ここ最近、ウチは観光で来た、お客さんで1日中いっぱいでしょう?地元の常連のお客さんは、ワザワザ予約するのは、大変だって。だから、以前みたいに、ふらっと入って、いつものやつって注文して、サッと帰るみたいな、お店を隣でするつもり、少し改装すれば、隣と厨房を行き来出来るように出来るし、こっちは観光の、お客さん向け、隣は地元の常連の、お客さん向け」

 ダフネさんは言いました。


 なるほど。

 味とサービスが変わらないのであれば、贔屓の店が事業拡大するのは、悪い事ではありませんが、予約が取れないと食事を出来ないのは、残念です。

 私も、少人数で来るなら隣が良いかもしれませんね。

お読み頂き、ありがとうございます。


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