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第138話。ロルフのクラス・アップ。

本日、9話目の投稿です。

 私達は、【ルガーニ】のメイン・ストリートを歩いていました。

 ソフィアが早く早くと急かします。


 はいはい、わかりましたよ。


 ソフィアは、先ほど神殿の【修道女(ナン)】の皆さんにリサーチした食べ物屋から、店内で食事をするタイプのお店を泣く泣く切り捨て、お土産とテイクアウトが出来るタイプのオススメのお店を全て回るつもりのようです。


「オラクルは、ここと、ここ。ヴィクトーリアは、ここと、ここ。手分けして当たらなければ、全部は回れないのじゃ」

 ソフィアは、言いました。


「「ソフィア様……」」

 オラクルとヴィクトーリアが完璧なシンクロ率で声を出します。


 ヴィクトーリアが黙礼して、オラクルに譲りました。


「ソフィア様、何を買えばよろしいのですか?」

 オラクルが訊ねます。


「食べ物全種類じゃ。店の者にオススメを訊ねて、それは多めに買い込むのじゃ。片端から買い占めじゃ」


「ソフィア。他の、お客さんに迷惑だから買い占めは、ダメだよ」


「むー、ならば2、3個残しておけば良いのじゃ」


「「畏まりました」」

 オラクルとヴィクトーリアは、早速、指示された店に向かいました。


「ノヒトは、ここと、ここじゃ」

 ソフィアは、言います。


「私もですか?」


「当然じゃ。我は、今日、ノヒトの用事に付き合ってやったのじゃ。じゃから、今度はノヒトの番なのじゃ」

 ソフィアは、さも当然、という口調で言いました。


 事実誤認があります。

 ソフィアは、今日、ソフィア財団の寄付者に対する、お礼状書きから逃げる為に、私に勝手に付いて来ただけでした。

 私は、ソフィア達を誘ってなどいません。


 まあ、良いですけれど。


「ソフィア、お金は?」


「後で払うのじゃ。立て替えておいて欲しいのじゃ」


 あ、そう。


「ソフィアお姉様、僕はどうしますか?」

 ファヴが訊ねました。


「ファヴは、ここと、ここじゃ。トリニティは、ここと、ここじゃ」

 ソフィアは、指示します。


「行ってきます」

 ファヴは、言いました。


「仰せのままに」

 トリニティもメモを受け取り、指定された、お店に向かいます。


「ノヒト。何をしておるのじゃ。早く行かねば売り切れてしまうかもしれぬ。ホレ、早く……」

 ソフィアは、私を、シッシ、と急き立てました。


 何だかなぁ……。


 私も、仕方なく指示された店舗に向かいました。


 ・・・


「大量なのじゃ」

 ソフィアは、目的の、お店全てを制覇して、ご満悦。


 休憩時間は、あと20分か……急げば何とかなるか?


「ソフィア、もう一軒寄ります。急ぐので飛びますよ」


 私達は、【飛行(フライ)】で、移動。

 目的地は、【ルガーニ】で一番と名高いホテル。


 ホテル・エトワール。


 私のプライベート・キャラのパーティ・メンバーだったエタニティー・エトワールさんの自宅は、現在、ホテル・エトワールとして営業していたのです。

 これは、買い物の時に、お店の方から聞いた話でした。


 私達は、エントランスを歩きフロントまで向かいました。


「いらっしゃいませ。ご予約の、お名前を、お伺い致します」

 ホテル・エトワールのフロント・クラークは言います。


「いえ、こちらのホテルの予約をしたいのです。直近で宿泊予約可能なのは、いつですか?」


「失礼致しました。お待ち下さいませ……えーと、何人様で、何泊の、ご宿泊を、ご希望でしょうか?」

 フロント・クラークは、分厚い台帳を開きました。


「16人。泊数は3泊。出来れば、スイートを4部屋取りたいですね」


「スイートが4部屋……3泊……直近では、11月の20日朝10時チェックインという事でしたら、ご予約をお受け出来ますが、いかがでしょうか?」


 うん、時期的にも丁度良いですね。


「11月20日朝10時チェックインで、3泊ですね。それで結構です。部屋の希望は出来ますか?」


「どちらの、お部屋を、ご希望されますか?」


「3階の東の角部屋を、お願いしたいのですが」


「3階の東の角……というと……。はい、大丈夫です。他の3部屋も隣接して、お取りできますよ」


「3階の東の角部屋を含む隣接した4部屋ですね。それで、お願いします」


「では、代表者の方のギルド・カードを、お願い致します」


 私は、ギルド・カードを提示しました。


「ドミニオン・クラス……失礼致しました。応接室に、ご案内致します」


「いえ、それには及びません。前金は、必要ですか?」


「ドミニオン・クラスの、お客様から前金など、とんでもない。こちらに、ご署名頂ければ結構でございます」


 私は、サインをします。


「ああ、そうだ。ペットを連れての宿泊は可能ですか?」


「可能ですが、ペットは専用のエリアで、お預かりさせて頂く事になります。庭付きの広い敷地に専門の世話係を常駐させております。客室内へ、お連れ頂く事は、残念ながら出来ません」


「そうですか、わかりました。今回は、ペットは留守番させる事にします」


「申し訳ありません」


「では、11月20日に、お伺いします」


「はい。従業員一同、お待ち申し上げております」


 私達は、慌てて集合場所の【ルガーニ】コンパーニア・ショップに向かいました。


 ・・・


【ルガーニ】コンパーニア・ショップ。


「全員集合していますね。では、戻りましょう」


 私達は、【ドラゴニーア】のコンパーニア本社オフィスに【転移(テレポート)】しました。


 ・・・


【ドラゴニーア】コンパーニア本社オフィス。


「お疲れ様でした。解散します」

 私は、宣言しました。


 ハロルド、イヴェット、イアン、それから6人の管理職とは、ここで、お別れ。

 彼らは、昼食後も、それぞれ仕事がありますからね。


 私とレジョーネとファミリアーレは、本社オフィスを後にします。


 私達は、徒歩で、すぐ近くにある宿屋パデッラに向かいました。


 ・・・


 宿屋パデッラ。


 昼食。


 今日は、色々な種類のキノコが入った具沢山スープと、スモークサーモン・サラダ、皮がパリパリのポークリブ、バターライス。

 全ての皿が丁寧に調理されており、完璧な栄養バランスです。


 このスモークサーモン、ユリシーズさんが自分で燻製にしたのですか?

 これは、良い塩梅の燻され加減ですね。


 さらに、私とソフィアは、ご飯派なので、特別にライスを付けてくれています。

 宿屋パデッラ……フライパンを意味する屋号を掲げるだけあって、料理が売りという事なのでしょう。


 美味い。


 どの皿も本当に美味しいのですが、バターライスが絶品です。

 アルデンティッシモのパスタやパエリアのように、わずかに、お米の中心に芯が残してありました。

 炊き方を失敗した芯の残り方とは違います。


 私は、日本人なので、ツヤツヤ、ふっくら、モチモチの白ご飯が好きですが、バターライスなら芯が残してある方が良いのかもしれません。


 日本では、時々、パラパラ・チャーハンなどと(うた)って、お米の水分が失われただけのパサパサ・チャーハンを堂々と出している店がありますが、私はアレが大嫌いです。

 美味しいと思った事が一度もありません。

 油で炒めた、ご飯物は誰でも作れますが、案外、奥が深く簡単ではないのです。

 宿屋パデッラの料理長は、ご主人のユリシーズさんですが、彼は腕がありますね〜。


 思わず唸らされる名人の技を食べたような気がします。


「ノヒト先生、サウス大陸の方は、どうですか?」

 グロリアが訊ねました。


「そうですね。今現在、魔物は、ほぼ制圧下にある、という感じでしょうか。長くても、2週間以内には片付くでしょう」


「そうですか。それは良かったです」

 グロリアは、心底嬉しそうに言います。


「ノヒト先生、剣聖から剣の手ほどきを受けられるのは、2週間先って事ですか?」

 ハリエットが訊ねました。


「そうだね。剣聖は、チュートリアルを受ける予定だから、以前の模範試合の時より、相当強くなっているはずだよ」


「へえ、それは楽しみだなぁ。あたしも強くなったから、剣聖から一本取りたいなぁ」

 ハリエットは剣聖に勝つ気でいるようです。


 それは、まだ当分は無理でしょうね。

 ハリエットが訓練で、【ドラゴニーア】の士官クラスを圧倒しているのは、チュートリアルで肉体の基本性能が上がっているからです。

 剣聖は、【聖格者】。

 肉体の基本性能は、現時点でもハリエットと遜色ありません。

 さらにチュートリアルを経れば、さらに倍の肉体の基本性能を身に付けてしまいます。

 元来、技術、経験、熟練値……などは、剣聖とハリエットでは、天地の開きがありました。

 剣聖の二つ名は伊達ではありません。

 チュートリアルを経た剣聖にハリエットが勝つ可能性は、皆無、でしょうね。

 まあ、何事も経験です。

 剣聖に、少し伸びたハリエットの鼻柱を叩き折ってもらうのも悪くないでしょう。


「ノヒト先生。実は、何だか能力が増えているのですが……」

 寡黙なアイリスが言いました。


 ん?

 どれどれ……。


 私はアイリスのステータスを確認しました。


「アイリス、【心眼】だね。死角からの攻撃も認識出来るようになったのでは?」


「はい。目を閉じても、少しなら戦えるようになりました」


「アイリスの【才能(タレント)】、【索敵(サーチエネミー)】が作用して【能力(スキル)】が生えたんだよ。アイリスは、私の与えた課題を真面目にこなしているのですね?感心です」


 アイリスは、一見無表情ながら、口角が上がっています。

 わかりにくいのですが、これは、アイリスが喜んでいる時の表情でした。


「ノヒト先生、ウルフィは、とっても大きくなりましたよ。このくらい……」

 ジェシカは、従魔のウルフィの成長を手を広げて示してくれます。


 もう、大型犬くらいにはなりましたか……。

 ウルフィの種族は【ガルム】です。

【ガルム】は、成長すると、体重1tを超えますからね。


「犬歯の大きさはどうですか?」


「うーん、このくらいかなぁ」

 ジェシカは、指で長さを示しました。


「まだ、離乳食には早いね。あと一月くらいたったら、ミルクの中に、すり潰して裏ごしした肉を混ぜてみようか」


「はい。あのう、【ガルム】の主食は【パイア】だって本に書いてあったんですが、混ぜる肉は【パイア】が良いのでしょうか?」


「与える肉の種類には、あまり、こだわらなくても大丈夫だよ。私の知り合いは、鶏肉を与え続けていたけれど、その【ガルム】は、健康で長生きだったからね」


「そうなんですね。わかりました」


 私は、ファミリアーレのメンバー1人1人と言葉を交わします。

 みんな、私が与えた課題を真面目にこなして、着実に成長していますね。

 熟練値の上昇幅を見れば、それが、わかります。

 キチンと指導の時間が取ってあげられないのが、心苦しいのですが、もうすぐサウス大陸は片付きますからね。

 次は、ウエスト大陸の懸案をやっつけましょう。

 それが終われば、また、修行を再開。

 ファミリアーレは、新兵訓練(ブートキャンプ)は、卒業です。

 次は、レベル上げ。

 ここから先は、どんどん強くなりますよ。

 楽しみです。


 そんな中でも、成長著しいのは、ロルフ。

 ステータスを確認すると……。


 名前…ロルフ

 種族…【ドワーフ】

 性別…男性

 年齢…15歳

 職種…【鍛治師(マスター・スミス)

 魔法…【闘気】、【収納(ストレージ)】、【鑑定(アプライザル)】、【マッピング】、【加工(プロセッシング)

 特性…【才能(タレント)加工(プロセッシング)

 レベル…20


 職種が、【鍛治師(マスター・スミス)】にクラス・アップしています。

 昨日の夜の時点では、まだ【鍛治士(ブラック・スミス)】でした。

 金属で作った人形を【加工(プロセッシング)】と【理力魔法(サイコキネシス)】を併用して二足歩行させる。

 この課題をクリアしたロルフに、昨晩、私は新たな課題集を与えました。

 ロルフは、その課題に昨晩、宿屋パデッラに戻ってから、早速手を付けたのでしょうね……。

 睡眠時間を削る事は感心しませんが、新しい課題に、すぐチャレンジしたかったのでしょう。

 そのおかげで、早くもクラス・アップです。


 原則、職種は、ある程度レベルとの相関関係がありますので、レベルが低い者は上位職には、クラス・アップ出来ません。

 しかし例外があります。

 それは、研究職や、生産職や、権能職……などなどの非戦闘職。


 ロルフの【鍛治士(ブラック・スミス)】は、生産系非戦闘職の代表のような存在でした。

鍛治士(ブラック・スミス)】は、レベルに依存せず、熟練値のみによって、クラス・アップが可能な職種なのです。

 ロルフは、チュートリアル後、毎日ひたすら【加工(プロセッシング)】を繰り返して来たのだ、とか。

 努力は嘘を付かないのです。


「ロルフ。昨日約束した通り、今晩、夕食後に魔法を指導します。私の私室でやりましょう。午後8時に竜城に来て下さい」


「わかりました」

 ロルフは、嬉しそうに言いました。


「いいなぁ〜。あたしも、ノヒト先生にマンツーマン指導してもらいたいよ」

 ハリエットは、言います。


「ハリエットも、私が与えた課題の最高難易度をクリアしたら、次のステップに進みます。そうなったら、個人指導をしますよ。どうですか?鋼鉄を切れるようになりましたか?」


「まだ、です……」

 ハリエットは、肩を落としました。


「ハリエット。其方は、鋼鉄くらいなら簡単に切れるではないか?」

 ソフィアが疑問を呈します。


「いやぁ〜、【鬼切(おにきり)】を使えば、鋼鉄だろうと、アダマンタイトだろうと、切れるんですけど……」


「武器の種類の問題か?今のハリエットならば、鋼鉄くらい、【鋼の剣】でも切れるじゃろう?」


「それが、コレなんです……アイタッ!」

 ハリエットは、自分の身体からモフモフの毛を一本プツリと引き抜きました。


「ほーう、体毛で鋼鉄を斬るのじゃな?鋼鉄の方は、持っておるか?どれ、やって見せてみよ……」


 ハリエットは、ソフィアに促されるまま、【収納(ストレージ)】から鋼鉄の板を出し、自分の毛に目一杯の魔力を込め始めます。


「やりますよ。えいっ!」

 ハリエットが鋼鉄の板に、勢い良く毛を打ちつけると、毛はペタリと鋼鉄の板に当たっただけで何も起きません。


 それではダメなのです。


「貸してみよ」

 ソフィアが言いました。


 ソフィアは、ハリエットの毛を一本受け取り、ジワっと魔力を込めて、鋼鉄の板に、ゆっくり、プスーーッ、と貫通させてしまいます。

 鋼鉄の板に貫通した毛を今度は水平にゆっくり、ジワーーッ、と動かして行き……。

 とうとう、切断してしまいました。


「凄い……」

 ハリエットは、言葉を失います。


 ソフィアがやって見せた事の凄さは、その場にいた全員が気付きました。

 何が凄いのか?

 ソフィアが毛に込めた魔力は、ごく微量だったのです。


「良いか、ハリエット。魔力の大きさは、問題ではないのじゃ。大切なのは、収束率と均質性、それから魔力の純度じゃ。其方、ノヒトの教えである、魔力の純度を高める訓練をサボっておるじゃろう?あの訓練は、地味じゃが、理にかなっておるのじゃ。基礎は大事じゃぞ」

 ソフィアは、言いました。


「はい。すみません。最近は、剣の稽古の方が楽しくて、単調で地味な魔力の純度を高める訓練はサボっていました」

 ハリエットは、【兎人(ピペッド・ラガモーフ)】特有の長い耳をペッタリと下げて言います。


「うむ。ノヒトの指導に従っておれば間違いないのじゃ。【剣宗(ソード・マスター)】を目指すならば、何事も修行じゃと思って腰を据えて当たらねばの」


「はい、わかりました、ソフィア様。ノヒト先生、真面目に頑張ります」

 ハリエットは、言いました。


 ソフィアは、大切な事を話してくれましたね。

 ソフィア財団の、お礼状書きを面倒臭さがって、逃げ回っているのでなければ、私も、ソフィアの事を、無条件で尊敬したでしょう。


 ・・・


 午後。


 竜都【ドラゴニーア】竜城。


 完全武装した、ソフィア、ファヴ、オラクル、トリニティ、ウルスラ、ヴィクトーリアが集結。

 私は普段着のまま……。


「レジョーネ、出撃なのじゃ!」

 ソフィアが宣言します。


 私達は、サウス大陸に向かって【転移(テレポート)】しました。

お読み頂き、ありがとうございます。


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