第131話。アペプ・ダンジョン攻略!
本日、2話目の投稿です。
アペプ遺跡最深部99階層。
私達が、99階層に足を踏み入れると、【超位】の魔物が待ち構えていたように襲いかかって来ました。
ウルスラが【誘引の角笛】を吹くまでもありません。
100頭の【超位】の魔物が隊列や飛行編隊を組み、同時に突撃して来たのです。
この数は99階層にいる魔物の全てなのでしょう。
ん?
何だかデジャブが……。
ああ、オピオン遺跡でも、99階層では、全魔物が突貫して来ましたよね。
遺跡を管理するダンジョン・コアには知性があるので、魔物を逐次投入しても簡単に各個撃破されると判断し、こういう戦術を選択した訳でしょうが……。
オピオン遺跡の時と、全く同じでした。
ダンジョン・コアは、いわば戦闘管制AIです。
いずれのダンジョン・コアもプログラムは同じ。
同じ状況設定を用意されれば、同じ結論に帰結するのは、自明の理。
しかし、全魔物による突貫攻撃は、私達にとって、まとめて片付くので、かえって好都合なのです。
私は、【神位光子砲】を連発……ソフィアは【神竜砲】を連発……ファヴは収束ブレス連発……オラクルは【電子砲】を連発……トリニティは【重力崩壊】を連発。
ウルスラは【テュルソス】を左右にフリフリしながら、応援……もとい、私達の魔法効果を増幅する支援魔法をかけています。
私とソフィアの攻撃力は、限界値までカンストしているので、増幅はされませんが……。
数十秒で殲滅終了。
私とオラクルは、手分けをして魔物の死体を回収します。
私達は、魔物がいなくなった99階層の荒野を移動し、ダンジョン・ボスの【アペプ】が待つダンジョン・コアの部屋に入りました。
・・・
ダンジョン・ボス……【アペプ】。
眷属は、色々な【超位】の魔物が20頭。
バトルフィールドが形成されると、【アペプ】は、瞬時に【超位】の【吸収】をバトルフィールド内全域に行使しました。
初手で、【吸収】ですか?
この【アペプ】……出来るな。
【オピオン】は、生後間もなかった為に咆哮を上げて私達を威圧する、などという時間の浪費を行いましたが、この【アペプ】は、単刀直入に有効な手段を講じました。
場数を踏んだ老獪な個体です。
ソフィアが【アペプ】に【神竜砲】を放ちました。
【アペプ】は、複数の眷属を肉の壁にして、防御。
「なぬーーっ!こやつ、自らの眷属を盾にしおった」
ソフィアが驚嘆します。
眷属が、すぐ補充されました。
非道なようですが、【アペプ】の戦術は、今のところ、最善手を打ち続けています。
攻撃を捨て、眷属達を肉の壁にしながら、徹底的に遅滞戦闘に徹し、【吸収】によって、私達を弱らせる……理にかなっていました。
が、それでも、悲しいかな、私達は規格外。
ソフィアは、【神竜の斬撃】を放ち、同時に【アペプ】の間合いに飛び込みました。
【アペプ】が複数の眷属を犠牲にして、【神竜の斬撃】をギリギリ紙一重で躱した、刹那!
超音速で近接していたソフィアは、【クワイタス】を横薙ぎに一閃……勝負あり、です。
ん?
いや、【アペプ】は生きていました。
【アペプ】は、攻撃終わりの無防備なソフィアに向けて、カウンターで反撃をします。
私は、ソフィアの救出をする為に【超神位魔法……短距離転移】を行使しようとしましたが、その時たまたま、複数の【アペプ】の眷属が【超位ブレス】を吐き……その射線上にファヴがいました。
私が動くと、【超位ブレス】がファヴに直撃します。
ファヴならば、複数の【超位ブレス】くらいで死にはしないと思いますが……。
「トリニティ!」
私の示唆で、トリニティは瞬時にやるべき事を理解しました。
私の従魔であるトリニティは、私の思考を読み取れるのです。
【アペプ】の開いた口に、強大な魔力が収束されていました。
【超位ブレス】。
その時、ソフィアの背後に【短距離転移】をしたトリニティが出現。
トリニティは、ソフィアを抱えて、再度【短距離転移】をして、離脱しました。
ソフィアは、安全な場所に退避。
よし。
しかし、何故、【アペプ】は生きているのでしょうか?
【アペプ】が【超位ブレス】を吐こうとした、その時。
ブレスが逆流し、【アペプ】の喉から放射線状に噴き出しました。
【アペプ】の首は、既に、ソフィアの斬撃によって切断されていたのです。
【アペプ】は、自らのブレスの逆流で、自らの頭部を爆散させ、絶命しました。
「ソフィア流戦闘術、奥義、【タイムラグ・オブ・ヘル】」
ソフィアは、クルクルと【クワイタス】を回し、鞘にカチリと納めて見得を切りました。
「ソフィア流戦闘術奥義【タイムラグ・オブ・ヘル】とは、あまりにも高速、かつ、鋭烈な斬撃によって、斬られた当人すら、それに気付かないという、究極の必殺技なのであ〜る」
何故か、ウルスラが、ソフィアの技の解説ナレーションを入れます。
あ、そう。
で、それ、誰得なの?
その、タイムラグなんちゃら、の効果で、既に致命傷を与えた敵が、魔力を収束させてブレスを吐こうとしていました。
実際、トリニティが救出しなければ、ソフィアは、頭部を爆散させた【アペプ】の巻き添えで、相当なダメージを負っていたでしょう。
これは、お説教案件ですね。
ともかく、先に、残りの眷属を始末してしまいましょう。
私達は、【アペプ】の眷属達を全滅させます。
そして、私とオラクルで、死体を回収しました。
・・・
「ソフィア。魔力を攻撃に全振りするから、撃ち終わりに魔力解放が起きて無防備になるんですよ。魔力の制御を工夫しなさい」
私は、今回は、きつめに、お説教をしています。
ソフィアは、【大密林】への侵攻初日に、3体のダンジョン・ボスと戦った時にも、ブレスをパンクさせて、【ラドーン】相手に、あわや死亡、という大怪我を負わされていました。
私は、失敗を咎めたりしませんが、同じ失敗を繰り返す者には、厳しく説諭します。
「わかったのじゃ」
ソフィアは、正座して反省タイム。
ウルスラもソフィアの頭の上で正座して反省しています。
あなたも連帯責任ですよ。
あんな解説ナレーションを入れていたのです。
ソフィアとウルスラは、事前に打ち合わせをしていたのでしょうからね。
とかく、ソフィアの魔力制御は、力任せというか、大雑把なのです。
圧倒的な戦闘力を持つが故の油断というか、慢心というか……。
これは、私がソフィアに対して唯一心配している点でした。
「ソフィア。ああいう時は、中枢神経を切断する時に、魔力を流して、相手の魔力制御に干渉させるんです。そうすれば、相手は魔力を制御出来なくなって、撃ち終わりに反撃を食らう心配はなくなります。格好良さを追求しても、実用に支障があるなら、そんな技は無意味ですからね。私は、そんな技を評価しませんよ。わかりましたか?」
「わかったのじゃ。気を付けるのじゃ」
ソフィアは、ションボリとなりながら、言いました。
ならば、よし。
「さあ、お説教は、お終いです。ソフィア、ウルスラ、【宝箱】を開けますよ。最後の、お宝を見てやりましょう」
私は、ソフィアとウルスラの頭を撫でて言います。
「わかったのじゃ」
ソフィアに笑顔が戻りました。
「楽しみ〜」
ウルスラは、ピュンピュン飛び回ります。
ダンジョン・ボスの【宝箱】は、通常のサイズの10倍。
さてと、どんな、お宝が入っているのでしょう。
・・・
ソフィアは、ダンジョン・ボスの【宝箱】を開き、よじ登って中身を取り出し、順番に私に手渡しました。
【宝物庫】1個……【エリクサー】が10本分入ったボトル……竜鋼のインゴット1t……【ドラゴニーア金貨】が10万枚……【コンティニュー・ストーン】が3個……ここまでは、オピオン遺跡と同じ。
「これで、最後じゃ。これは何じゃ?【願いの石板】に形が似ておるが、材質が違うのじゃ。エメラルドが使われておるようじゃ」
ソフィアが、無垢のエメラルドで創られた板を取り出して言いました。
おー、これは!
「【エメラルド・碑板】だね。錬金術の秘儀を全て記録した、【神の遺物】だよ。こうして使う」
私は、【エメラルド・碑板】を操作して見せました。
私が、魔力を流しながら【エメラルド・碑板】に触れると、【エメラルド・碑板】の表面に文字が浮かびます。
そうです。
【エメラルド・碑板】は、タッチパネル式のタブレット型端末。
端末なのですから、メイン・サーバーが存在します。
メイン・サーバーは、【天界】に存在する【知の回廊】。
【知の回廊】は、【創造主】によって建造された、宇宙最高の人工知能……と設定されているモノです。
【知の回廊】のデータベースとリンクした【エメラルド・碑板】は、錬金術に関する、ありとあらゆる知識が網羅されていました。
そればかりか、タッチパネルの操作で、錬金術を行使する事も出来てしまいます。
私のプライベート・キャラのパーティ・メンバーだったピットーレ・アブラメイリンさんも、この【エメラルド・碑板】を所有していました。
それを、遺跡で、獲って来たのは、私と、エタニティー・エトワールさんでしたが……。
とにかく、【錬金術士】にとって、【エメラルド・碑板】は、究極のアイテムなのです。
私は、【礫】を詠唱し、石ころを生み出し、それをソフィアの手に乗せました。
それから、【エメラルド・碑板】を使って、ソフィアの目の前で、石ころを純金に変えて見せます。
おっと、魔力消費量がハンパない。
まあ、私は魔力無限ですから、どうという事もないのですが……。
錬金術のデモンストレーションなので、わかりやすく、石ころから金を創り出しましたが、これだけ魔力を食うとなると、実質、私以外には石ころを金に変える錬金は不可能かもしれません。
「なぬーーっ!石が金に変わったじゃと?これは、凄いアイテムなのじゃ。お金儲けがし放題なのじゃ」
ソフィアは、驚愕しました。
「これは、リスベットに使わせたいな。ソフィアは、どう思う?」
「うーむ。お金儲けが……」
「リスベットは、薬学を極めて、世界の人々の役に立ちたい、って夢を持っているし、その素質もある。それに【化学者】のリスベットは、近い将来【錬金術士】にクラス・アップすると思うんだよね。【エメラルド・碑板】は、やっぱり【錬金術士】が使ってこそ、のアイテムだよ」
「うむ、そうじゃな。我は、【エメラルド・碑板】をリスベットに譲渡する事に同意するのじゃ」
他のメンバーも了承してくれます。
実は、私は【収納】に【エメラルド・碑板】を一つ持っていました。
しかし、ストックがなかったので、他者に貸与や譲渡をする事が出来なかったのです。
私は、ストックがない【神の遺物】は、自分で管理する、というルールを決めていました。
私が管理する【神の遺物】は、ゲームマスターの業務に必要だから、と持たされている物です。
その基本だけは、忘れてはいけません。
「さてと、では、ダンジョン・コアを確保しましょう」
「なのじゃ」
ソフィアは言いました。
・・・
私達は、ボス部屋の奥の部屋に入ります。
そこには、バスケットボール大の巨大なダンジョン・コアが【不滅の大理石】の台座に収まっていました。
「回収しますよ」
私は、ダンジョン・コアを【収納】に収めました。
すると。
私達の周りを光が包みました。
・・・
次の瞬間。
私達は、アペプ遺跡の入口に強制排出されていました。
私が設置した遺跡入口の強制転移魔法陣は、光を失い機能停止しています。
強制転移魔法陣は、スタンピードによって遺跡から溢れた魔物を60階層の転移座標へと強制的に【転移】させる目的で設置しておいたトラップでした。
私は、強制転移魔法陣の魔法物理学的解析を行います。
解析結果は……転移座標消滅により転移不能。
間違いなく、遺跡のリセットが確認されました。
リセットされた遺跡は、30階層までを残して、残り全ての空間を消滅させます。
30階層にリセットされた遺跡は、1年後から再び成長を始めますが、遺跡の成長速度は一定で正確なので、アペプ遺跡は、2年は、スタンピードは起こさない事が確定しました。
この2年の猶予の間に、冒険者などが遺跡に潜り、遺跡内部の魔物を適切に間引く体制を構築すれば、遺跡は管理された状態となりスタンピードを起こさないように出来るのです。
私は、強制転移魔法陣のトラップを消去し、代わりに新たな転移座標を設置しておきました。
これで、緊急時には、すぐ駆け付けらます。
他のメンバーも、全員、転移座標を設置しました。
「皆の者、我らは成し遂げた。たった今、アペプ遺跡を攻略したのじゃ。サウス大陸のスタンピードは、完全に停止したのじゃ」
ソフィアは、記録されている全てのアドレスに向けて、チャット通話をしています。
ああ、そうか……。
私達は、サウス大陸の人々にとって、大きな事を為したのですよね。
・・・
私達は、【ムームー】の首都【ラニブラ】に【転移】しました。
アペプ遺跡で得た戦利品の分配をする為です。
ダンジョン・コア。
オピオン遺跡で確保したダンジョン・コアと合わせて、2個となりました。
現在、ダビンチ・メッカニカで建造中の50mの【アイアン・ゴーレム】と、ニュートン・エンジニアリングで建造中の【飛空巡航艦】のメイン・コアに、それぞれ使います。
【宝物庫】。
私が管理。
【エリクサー】(10回分入り瓶)。
売却。
竜鋼インゴット1t。
私が管理。
【ドラゴニーア金貨】10万枚。
私以外で分配。
【エメラルド・碑板】。
リスベットに譲渡予定。
【アンサリング・ストーン】。
チェレステさんに譲渡予定。
【砲艦】。
クイーンに譲渡予定。
【アルテミスの弓】。
私が管理。
【テュルソス】
ウルスラに譲渡。
【アイドス・キュエネー】。
トリニティに譲渡。
【ダインスレイフ】。
私が管理。
【ヒヒイロカネの刀】
素材に戻して私が管理。
【衣装戸棚】(中身は、王の服シリーズ8着)。
ファヴに譲渡。
【神蜜】。
私が管理。
【宝箱】。
売却。
【アダマンタイトの戦斧】。
素材に戻して私が管理。
【不思議な鞄】。
売却。
【ミスリルの兜】。
素材に戻して私が管理。
【魔鋼の盾】。
素材に戻して私が管理。
【鋼の剣】。
素材に戻して私が管理。
【コンティニュー・ストーン】37個。
私が管理。
【アペプ】
コアは、ヴィクトーリアのバックアップ・コアに使用予定。
血液は、私が管理。
肉は、神の軍団の食糧とする。
【超位】の魔物……701頭。
コアと血液は、私が管理。
【氷竜】の肉は、調理してソフィアが管理。
その他の個体の肉は、【ドラゴニーア】竜騎士団に寄贈。
その他の部位は売却し、私以外で分配。
【高位】の魔物……2160頭。
コアは、マリオネッタ工房で使用。
肉は、【ドラゴニーア】竜騎士団に寄贈。
その他の部位は売却し、私以外で分配。
【ゴーレム】、【ガーゴイル】、【ボール】など。
素材に戻して私が管理。
このように決まりました。
今回は、60階層までが非生物系の遺跡だった為、鉱物素材が大量に確保出来て、ウハウハです。
ただし、それは、私が容量無限の【収納】と、大量の【宝物庫】を持っているからこそ。
普通は、【アイアン・ゴーレム】1体を遺跡から運び出すだけで、大変な労力を伴うものなのです。
私達は、千年要塞に【転移】しました。
・・・
夕刻。
千年要塞。
私達は、冒険者ギルド千年要塞支部に向かいました。
フランクさんと挨拶。
冒険者ギルドの職員が全員起立して、拍手で迎えてくれました。
私達が、900年続いたサウス大陸のスタンピードを止めた、という事を理解しているようです。
ソフィアが、さっきスマホで無差別に、遺跡攻略宣言を出していましたからね。
剣聖を通じて、冒険者ギルド千年要塞支部にも通知が来ているのでしょう。
何だか照れ臭いですね。
私は、買取査定を依頼します。
今回は、【超位】の魔物のコアと血液と肉以外の部位を預けました。
「ソフィア様、ファヴ様、ノヒト様。サウス大陸の為に、お働き頂き、ありがとうございます」
フランクさんは礼を執ります。
「うむ。我にかかれば、このくらい造作もないのじゃ」
ソフィアは、フンスッと胸を張りました。
「はい、良かったです」
ファヴは、微笑みます。
「【調停者】の職務ですから、礼には及びませんよ」
「ノヒト様。仮に職務だとしても、やはり、お礼を申し上げずにはいられませんよ」
「そうですか」
フランクさんは、私達のパーティ・メンバー全員に丁寧に礼を言ってくれました。
屈強な外見とは違って、とても律儀な人です。
「ヴィクトーリア様は、銅への昇格となります。また、ウルスラ様、ヴィクトーリア様、共にドラゴン・スレイヤーの称号が授与される運びとなりました。皆様は、まだ仮国籍という事でございますので、正式な叙勲は、【ドラゴニーア】で、国籍交付を受けてから、となります。ご了承下さいませ」
「わかりました。ありがとうございます」
ドラゴン・スレイヤーは、申請をしてから、審査があり、期間を経て、叙勲という流れなのですが、私達のパーティ・メンバーは、全員、無申請・無審査で、すぐにドラゴン・スレイヤーになってしまいました。
まあ、あれだけ大量の【古代竜】の素材を持ち込んで、買取査定を受けていますので、疑いようはありません。
また、私達のパーティ・メンバーは、【神格者】が3人もいます。
【神格者】は、嘘を吐かないと信じられていますからね。
とにかく、私達のパーティは、私、ソフィア、ファヴ以外の全員がドラゴン・スレイヤーになりました。
私とソフィアとファヴは、称号を与える側で、受ける側ではないので、称号も叙勲も関係ありません。
私達は、フランクさんに挨拶をして、冒険者ギルドを後にします。
・・・
商業ギルド。
ここでも、全職員が起立して、万雷の拍手で、お出迎え。
売却を決めたアイテム類の換金をします。
こちらは、数が少なかったので、その場で、すぐ買取してもらえました。
私達は、王都【アトランティーデ】の王城に【転移】しました。
お読み頂き、ありがとうございます。
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