表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1221/1238

1221話。アレステリア・デイパラ。

【ログレス】の【リントヴルム聖堂】のホール。


 私は、以前からカルネディアが彼女のレベルに対して能力が高過ぎる問題について不思議に思っていました。

 その理由は未だ不明なのですが、私とミネルヴァで分析・推定した結果、1つの可能性が高いという事で意見が一致しています。


 それは、ユニークNPCの可能性でした。


 ただし、カルネディア自身がユニークNPCなのではありません。

 ユニークNPCとは、ゲーム会社が配置した名持ち(ネームド)のNPCなので、約10年前に【誕生の(ナティヴィダス・)(ドムス)】の【赤ちゃんスポナー】で生まれ、私達に保護されるまで固有名を持っていなかったカルネディアが、ゲーム会社が配置した名持ち(ネームド)NPCである可能性は皆無です。


 この世界(ゲーム)の設定的に、NPCはモブNPCと名持ち(ネームド)NPCに分類されました。

 そして、名持ち(ネームド)NPCの下位分類に、ユニークNPCという特別なNPCが存在します。


 モブNPCとは、ゲーム時代に存在していた固有の名前が設定されていない……【冒険者ギルド】の受付……とか……酒場の店主……などの人種NPC、あるいは【魔人(ディアボロス)】や魔物や【知性体】など固有名を持たないNPC達の事を指しました。

 しかし、ゲームが現実化した現在の人種NPCは、基本的に固有名を持っていますけれどね。


 名持ち(ネームド)NPCとは、ゲーム会社が固有名を与えて【マップ】に配置したNPC達の事です。

遺跡(ダンジョン)】の【徘徊者(ストローラー)】の最上位に君臨する【エキドナ】(トリニティの種族)・【モルモー】・【エンプーサ】・【デルピュネー】の4大【魔人(ディアボロス)】、【遺跡(ダンジョン)・ボス】、【精霊王(エレメンタル・ロード)】や【悪魔主(デーモン・ロード)】……などなど。

 ただし、4大【魔人(ディアボロス)】と、【テュポーン】・【ウロボロス】・【ケツァルコアトル】など【遺跡(ダンジョン)・ボス】の固有名は種族名を兼ねています。


 この名持ち(ネームド)NPC達は、建前上世界(ゲーム)に1体ずつしかいないとされる固有キャラでありながら、実際にはトリニティのように【調伏(テイム)】されたり、【召喚(サモン)】されたり【盟約(コベナント)】されたりして同時複数体が存在していました。

 まあ、ゲームの世界観のお約束です。


 ユニークNPCは、【世界樹(ユグドラシル)】が枯れないように救う【イベント・秘跡(クエスト)】の【導き手(メンター)】であったディーテ・エクセルシオールや、【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】の1つ【ドゥーム・シナリオ】の【導き手(メンター)】で現在【神竜(ソフィア)海洋神殿】の神官長になっているメディア・ヘプタメロンなどが代表格でした。

 彼女達も、建前上この世界(ゲーム)に1個体ずつしか存在しない事になっている特別なNPC達です。


 とはいえ、複数のユーザー個人やユーザー・パーティが、別々に【世界樹(ユグドラシル)】のイベント・シナリオや、【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】の【ドゥーム・シナリオ】に挑んでいれば、メタ的にはディーテ・エクセルシオールやメディア・ヘプタメロンがサーバー内で複数同時に存在していた瞬間はあるのですけれどね。

 これも、ゲームの世界観のお約束でした。


 つまり、ユニークNPC達がユニークなのは、ディーテ・エクセルシオールやメディア・ヘプタメロンというように種族名とは別に固体名を、()()()()()()()()()設定されているという事なのです。


 ゲーム時代には、世界(ゲーム)に1人しか居ない筈のユニークNPCが鉢合わせする矛盾(パラドクス)によって起きる【複製(デュプリケーション)バグ(・グリッジ)】 という【矛盾(パラドクス)・バグ】が発生しないように、ゲームのお約束で複数同時に存在する場合があるユニークNPCを別々の【マップ】に強制誘導する【(アンチ)重複(・デュプリケート)原則(・プリンシプル)】というプログラムで対応していました。

 異世界転移以降、ディーテ・エクセルシオールやメディア・ヘプタメロンが同時に複数世界(ゲーム)に存在する矛盾(パラドクス)は発生しないので、現在【(アンチ)重複(・デュプリケート)原則(・プリンシプル)】が起動するケースはありませんけれどね。


 とにかく、ユニークNPCはゲームの世界観的に特別で重要な位置付けのキャラクター達なので、ディーテ・エクセルシオールやメディア・ヘプタメロンのようにステータスやスペックが傑出して高く設定されている場合があるのです。


 そして、カルネディアも、このユニークNPCが持つ通常ではあり得ない高スペックの影響を受けている可能性がありました。

 しかし、前述の通りカルネディア自身はユニークNPCではありません。


 ユニークNPCなのは、カルネディアの遺伝的親に相当する人物。

 つまり、私とミネルヴァは、カルネディアのステータスやスペックが通常ではあり得ない程に高い理由は、遺伝だと考えたのです。


 カルネディアは、【誕生の(ナティヴィダス・)(ドムス)】の【赤ちゃんスポナー】から【スポーン】しました。

七色星(イリディセント)・マップ】から実装された【赤ちゃんスポナー】という施設は、【ゴルゴーン】など繁殖が出来ないタイプの【魔人(ディアボロス)】が、自分の遺伝形質を受け継いだ子供を授かれる仕様です。


 当然、カルネディアを授かった【ゴルゴーン】が居ました。

誕生の(ナティヴィダス・)(ドムス)】で御葬式をした際に、荼毘(だび)に付した大人の【ゴルゴーン】が遺伝形質的にカルネディアの遺伝的母親の可能性が高いと思います。

 あの女性が、高スペックのユニークNPCであれば、その遺伝形質を受け継いだカルネディアが高スペックである事にも整合性が見出せました。


 実際、ユニークNPCのディーテ・エクセルシオールと、同じくユニークNPCである夫のマウリッツ・モルテンセンから遺伝形質を受け継いだ子や孫達は、皆高スペックですからね。

 カルネディアにも同じ事が起きた可能性が高いと推定されます。


 先日、私によって【七色星(イリディセント)・マップ】が【ストーリア・マップ】にエントリーされた結果、ミネルヴァには【七色星(イリディセント)・マップ】の膨大なデータがイン・ストールされました。

 その中には【七色星(イリディセント)】のユニークNPCについてのデータもあります。


七色星(イリディセント)】のデータ・ベースに存在していた【ゴルゴーン】のユニークNPCは1個体だけしか居ませんでした。


 その【ゴルゴーン】のユニークNPCの名前は、アレステリア・デイパラと云います。


 アレステリア・デイパラのステータスは、ディーテ・エクセルシオールやメディア・ヘプタメロンと比較しても全く遜色ない強力なモノでした。

 もしも彼女が、カルネディアの遺伝的母親だとするなら、カルネディアが破格のスペックを持つ理由が納得出来ます。


 しかし、カルネディアの遺伝的母親の可能性が高いと思われる亡くなっていた大人の【ゴルゴーン】が、アレステリア・デイパラの遺体であるか如何(どう)かは不明でした。

 亡くなった後の遺体は、ステータス画面が開けなくなるので、カルネディアの母親かもしれない【ゴルゴーン】の遺体からは名前などのプロフィールを調べようがないのです。

 遺伝子情報は採取しましたが、その遺伝子情報が個人のデータとして記録されていないので照合する事が出来ません。


 例えば、グレモリー・グリモワールが使役している【不死者(アンデッド)】達も、ステータス画面が開けないので生前の名前などの個人プロフィールは読めなくなくなっていました。


 まあ、【七色星(イリディセント)】のユニークNPCであるアレステリア・デイパラが、カルネディアの遺伝的母親でなくとも、遺伝的祖母など先祖である可能性も有り得ますが……。


 本来なら、ゲーム会社から重要な役割を与えられているユニークNPCは死なないようになっています。

 より正確に言うなら、死んでしまった場合にはゲーム会社が外部端末を操作して復活させていました。


 しかし、外部からのアクセスが途絶している現在は……不死身……という設定がゲーム会社によってプログラムされていないNPCは、ディーテ・エクセルシオールやメディア・ヘプタメロンのようなユニークNPCでも死亡してしまうと復活出来ません。

 なので、先日の御葬式で荼毘(だび)に付した、(くだん)の【ゴルゴーン】が、ユニークNPCのアレステリア・デイパラの可能性がある訳です。


 あの遺体は、アレステリア・デイパラなのでしょうか?


完全記憶媒体(アカシック・レコード)】の【世界樹(ユグドラシル)】であるユグドラならば、その辺りの詳しい経緯を見聞き出来た可能性が高いのですが、生憎(あいにく)カルネディアが【誕生の(ナティヴィダス・)(ドムス)】の【赤ちゃんスポナー】から生まれた当時は、私によって【七色星(イリディセント)・マップ】が【ストーリア・マップ】にエントリーされる前だったので、ユグドラは以前の【七色星(イリディセント)】の事は見聞きしていませんでした。


 まあ、カルネディアの遺伝的母親が誰であっても、今は私とトリニティがカルネディアの保護者なので関係はありませんけれどね。

 それに、考えてもわからない事は、考えるだけ時間の無駄です。


「カルネディア。トリニティのテレビ収録の様子を見学して楽しかったですか?」

 私は訊ねました。


 今日の午後トリニティは、彼女のイメージ戦略や広報活動の一環として来年から放映されるテレビの冠レギュラー番組の収録に向かいました。

 カルネディアも一緒にスタジオに付いて行ったのです。


「はい、楽しかったです。ジーナお姉さんとジアーナちゃんに仲良くしてもらいました」


「それは良かったですね」


 ジーナお姉さんとは、トリニティの共演者で番組レギュラーの世界的有名女優ジーナ・アットリーチェの事です。

 ジアーナちゃんとは、ジーナ・アットリーチェがトリニティに紹介する為、スタジオに連れて来ていた彼女の娘さんでした。


 偶然にもジアーナちゃんは、11月1日からカルネディアが通う事に決まっている【竜都】の第1国立学校の生徒さんなので、カルネディアと学校で会うかもしれません。

 ジアーナちゃんはカルネディアより歳下で学年が違うのでクラス・メートにはなりませんが、顔見知りの子が既に同じ学校に通学していると知れば、カルネディアも学校に通う不安が緩和するでしょう。


 まあ、【パス】を通じて伝わって来るカルネディアの感情から察するに、彼女は学校を全く不安には思っていませんけれどね。

 うちの娘は大物なのですよ。


「トリニティは、収録に参加して如何(どう)でしたか?」


「初めての経験で少し戸惑いましたが、ジーナに助けてもらい無事収録を熟せました」

 トリニティは言います。


 収録の様子は【共有アクセス権】を通じて私も見ていました。

 番組名は……トリニティ&ジーナ……ベタです。


 今日は、テレビ出演など全くした事がないトリニティに様々な説明をしながらの収録になったので余裕を持って2本撮りでした。

 今後は1回のスタジオ入りで(まと)めて4本撮りとかになるそうです。


 トリニティ&ジーナの記念すべき第1回ゲストは、ソフィアとウルスラ。

 トリニティのイメージ戦略と広報の目的から言って……トリニティが【神竜(ソフィア)】と親しい関係……だというアピールは役に立ちました。


 ああ見えて【神竜(ソフィア)】は、この世界の住人(NPC)達から現世最高神として崇敬されているので、【神竜(ソフィア)】と親しいトリニティも敬意を払われるだろうという打算ですけれどね。


 それは、ソフィアや【ドラゴニーア】やセントラル大陸にとっても同じ事でしょう。

 ゲームマスター代理のトリニティと、ソフィアが親しいというのは、ソフィアが権威上の国家元首を務める【ドラゴニーア】や、ソフィアが守護竜として君臨するセントラル大陸にとって、敵性国や非友好国に対する強力な示威(デモンストレーション)になりますからね。


 実際には、私やトリニティやゲームマスター本部が、ソフィアや【ドラゴニーア】やセントラル大陸に対して、常識の範囲を超えて過剰に便宜を図る事はありませんが、敵対国や非友好国が勝手に勘違いするのは、私達には関係ありません。


 つまり、この共演は両者にとってウィン・ウィンです。

 なので、ソフィアもウルスラも今回ノー・ギャラで出演してくれました。


 番組内容は、トリニティとジーナ・アットリーチェが、ソフィアとウルスラと一緒に有名パティスリーやカフェや食品メーカーなどのプリンを食べ比べて食レポをするというモノ。

 如何(どう)やらソフィアからの持ち込み企画だったようですね。


 ソフィアが……1個では味がわからない……と無茶苦茶な理屈を言って、食レポ無視で(ただ)ひたすらプリンを食べまくるという暴挙に出ましたが、私の個人的感想としては……あんな大食いチャレンジみたいな食レポは観た事がないので……逆に面白かったですよ。

 それに、ソフィアとウルスラは、トリニティのイメージ戦略と広報に協力する為、それなりに忙しい中スケジュールを空けてくれたのですから、番組の演出意図を無視してフリーダムに振る舞っても出演してくれただけで有難い事でした。


 ソフィアもウルスラも、トリニティ&ジーナがバラエティ番組初出演なので、新番組にとって最高の宣伝にもなる筈です。


 第2回ゲストは、大神官のアルフォンシーナさん。

 アルフォンシーナさんも喜んでノー・ギャラ出演してくれました。


 番組内容は、アルフォンシーナさんがトリニティとジーナ・アットリーチェに手料理を振る舞いながらトークをするという趣向です。

 トーク内容は、アルフォンシーナさんの大神官としての公務についてなどではなく、プライベートは何をしているのか?趣味は?普段着は?いつも使っている化粧品は?などの話題が中心でした。


 アルフォンシーナさんの趣味は料理で、お休みの日は大概料理を作っているそうです。

 そう言うだけあって、アルフォンシーナさんは本当に料理が上手でした。

 番組では別に手の込んだ料理などは作りませんでしたが、料理が上手か如何(どう)かは手際を見ればわかります。


 アルフォンシーナさんは短時間でパパッとパスタとミネストローネの2品を作りました。

 料理系の番組では、お約束の……出来上がったモノはこちらです……という完成品が出て来る演出はなしで、アルフォンシーナさんが収録中に最初から全て作ったのです。

 もちろん、冗長になりがちな調理時間は、適当に編集されて、放映時にはダイジェストになるのでしょうが……。


 その調理中アルフォンシーナさんは、トリニティとジーナ・アットリーチェとトークもしていていました。

 本当に普段から料理を作り慣れていないと、会話をしながら段取り良く調理は出来ません。


 ジーナ・アットリーチェは女優さんですが子育て中のママだけあって普通に料理も出来るので、番組進行を仕切りながらアルフォンシーナさんの調理アシスタントも熟していました。

 トリニティもお手伝いをしたのですが、料理経験0の彼女は完全に邪魔しているような状態になっていましたね。

 トマトを切ろうとしたら、まな板まで切れてしまう……などという失敗をしていました。


 まあ、あれはあれで笑いが取れましたし、トリニティの親しみ易さが絶妙に醸し出せたので、番組の構成的にはOKでしょう。


 トリニティ&ジーナの今後のゲストは、各ギルドのギルド・マスター、大企業の経営者、俳優・歌手・タレントなどの芸能人、作家や芸術家など文化人、スポーツ選手、学者、政治家、有名冒険者……などなど錚々(そうそう)たる顔ぶれの各界の著名人が予定されていました。

 取り敢えずブッキングが決定しているのは、【世界銀行ギルド】頭取のビルテ・エクセルシオール、【世界冒険者ギルド】グランド・ギルド・マスターの【剣聖】クインシー・クイン、【ドラゴニーア】首席国家魔導師の【研聖】ロザリア・ロンバルディア、勇者ピルエット・ルミナス、有名冒険者にして天才学者のペネロペさん……など。


 私が視聴者の立場だったら観たいと思うような大物ゲストばかりです。

お読み頂き、ありがとうございます。

もしも宜しければ、いいね、ご感想、ご評価、レビュー、ブックマークをお願い致します。

活動報告、登場人物紹介&設定集もご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告には、訂正箇所以外のご説明ご意見などは書き込まないようお願い致します。

ご意見ご質問などは、ご感想の方にお寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ