第122話。オピオン・ダンジョン攻略!
名前…オラクル
種族…【自動人形】
性別…女性型
年齢…なし
職種…なし
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】、【高位魔法】→【超位魔法】
特性…【自動修復】
レベル…99(固定)
非生物でありながら知性と自我と感情を持つ【神の遺物】の【自動人形】。
【ドラゴニーア】の魔道具屋街で、壊れたジャンク品として売られていた。
固定能力で【高位】までの全ての魔法が使えたが、遺跡のボス戦の報酬で出現した【宝箱】に入っていた【スクロール】で、【超位】までの全ての魔法を習得した。
ソフィアの保護者役。
オピオン遺跡最深部99階層。
私達が、99階層に足を踏み入れると、【超位】の魔物が待ち構えていたように襲いかかって来ました。
100頭の【超位】の魔物が隊列や飛行編隊を組み、同時に突撃して来たのです。
この数は99階層にいる魔物の全てなのでしょう。
遺跡を管理するダンジョン・コアには、知性がありました。
私達の強さを分析し、【超位】の魔物を逐次投入しても簡単に各個撃破されると判断し、こういう戦術を選択したのだと思います。
しかし、私達にとって敵の全軍突撃は好都合。
時間短縮になりますので。
私は、【神位光子砲】を連発……ソフィアは【神竜砲】を連発……ファヴは収束ブレス連発……トリニティは【重力崩壊】を連発。
何故か、ウルスラも激弱な攻撃魔法を撃っていました。
1分で殲滅終了。
私は、魔物の死体を回収します。
今までの階層では、結構、狩り残しが多かったですが、この99階層は、魔物を全て倒せました。
うん、実に楽な戦闘です。
私達は、魔物が出現しなくなった99階層を移動し、ダンジョン・ボスの【オピオン】が待つダンジョン・コアの部屋に入りました。
・・・
ダンジョン・ボス……【オピオン】。
眷属は、色々な【超位】の魔物が20頭。
【オピオン】は、魔力反応が弱い私達を見て、侮ったのでしょう。
凶悪なヘイトを撒き散らしながら、余裕の咆哮を上げます。
が、次の瞬間、ソフィアの【神竜砲】を喉元に受け、【オピオン】は首を切断されてしまいました。
楽勝です。
【オピオン】は、私達に魔力がない、とでも思ったのでしょうか?
ダンジョン・コアの部屋まで、到達した時点で、私達が弱いはずがないじゃないですか?
【オピオン】は、数日前にソフィアに殺されて、復活したばかり。
若い個体は、経験のなさから、このように相対的に判断が甘い傾向があるのです。
私達が【認識阻害】をしている事に思い至らない時点で、やられ役の雑魚キャラ決定ですよ。
こいつ、たぶん砂漠エリアのボス、【砂漠竜】より頭が悪いですね。
何だかガッカリです。
残りの眷属も秒殺して、私は死体を回収しました。
【オピオン】を倒した報酬の【宝箱】は、今までの物より10倍は大きいサイズです。
否が応にも、期待が膨らみますね。
さあ、お宝を見てやりましょう。
・・・
ソフィアが、ダンジョン・ボスの【宝箱】を開くと、何やら色々と入っていました。
ソフィアが【宝箱】に、よじ登って何かを取り出します。
「ノヒトよ……これは……」
ソフィアがプルプルと震えながら、【宝箱】から、見覚えのあるアイテムを1つ取り出しました。
どうやら、それがメインの宝らしいですね……。
「うん、【宝物庫】だね……」
持ってるし……クッソほど持ってるし……。
いや、確かに【宝物庫】は、みんなが欲しがる超便利で、なおかつ、超激レア・アイテムだけれども……。
私達は、いらないわ〜。
【宝物庫】の他は……【エリクサー】が10本分入ったボトル……竜鋼のインゴット1t……【ドラゴニーア金貨】が10万枚……【コンティニュー・ストーン】が3個。
まあ、竜鋼は、鉱山では採掘出来ない希少鉱物だから良いとしても、他は、正直いらないですね。
て、いうか、99階層のダンジョン・ボスの【宝箱】の中身としては期待外れですよ。
【オピオン】……あいつ【宝箱】の中身まで、雑魚だったか……。
「何か、まだ、底に、あったのじゃ」
ソフィアが何やら紙を1枚取り出しました。
おっ!
「これは、【スクロール】だね。内容は?」
【スクロール】とは、魔法を行使出来たり、魔法を覚えられたりする巻物の事。
「【超位魔法】習得……としか書いてないのじゃ」
えっ!
マジか?
「ソフィア。それは、実質、最高のスクロールだよ。凄い価値がある」
【オピオン】、雑魚とか言ってごめんよ。
凄いアイテムをありがとう。
やっぱり、私、ソフィア、ファヴが持つ【天運】は、効果絶大でした。
「どういう事じゃ?」
「この【スクロール】は、魔法適性がある者なら、誰でも【超位魔法】までの全ての魔法を瞬時に習得出来る。超絶激レアのアイテムだよ。チート過ぎるって、ユーザーから逆にクレームが来るくらいの価値があるね」
「ほおー、それは凄いのじゃ」
「これは、オラクルに使わせる選択しかないね。オラクル以外は、みんな【超位魔法】を使えるから」
トリニティは、戦闘系の魔法は【超位】までが使えますが、生産系などは全く使えません。
ただし、トリニティに、この【スクロール】を使わせると重複する魔法は無駄になってしまいます。
また、トリニティの場合、現在使えない魔法も、訓練次第で将来使えるようになる可能性もありました。
なので、トリニティに、この【スクロール】を使ってしまうのは、長期的な視点で考えると、些か勿体ないのです。
一方、オラクルは、非生物で、生まれつき強力な【高位魔法】を持っていますが、それは、普遍の能力で、どんなに訓練をしても成長はしません。
精々、魔法の運用方法を工夫して、効果を高める程度の事しか出来ないのです。
つまり、オラクルが、この【スクロール】を使って【超位魔法】を覚えるのが、最も合理的な判断でしょう。
私は、【収納】から、オラクルを出してあげました。
・・・
早速、オラクルに【スクロール】を使わせます。
オラクルが【スクロール】を持って魔力を流すと、【スクロール】の文字が浮かび上がり、魔力の奔流となって、オラクルの身体の中に流れ込みました。
【スクロール】は、光の粒子に変わって消えてしまいます。
オラクルは、何やら驚きの表情をしていました。
「どうじゃ?」
ソフィアがオラクルに心配そうに訊ねます。
「はい。【超位魔法】を習得致しました」
何だか呆気ない感想ですが、それしか言いようがないのでしょうね。
とにかく、この瞬間に、オラクルは、【超位】級の魔法詠唱者となりました。
非生物の【自動人形】であるオラクルには、職種は関係ありませんが、オラクルが人種なら、職種表示は、【大魔導師】となっているでしょう。
「オラクル、【転移】も使えるね?」
「はい。それから、【収納】、【鑑定】、【マッピング】も、同時に取得致しました。これらは魔法ではなく、【能力】なのでは?」
オラクルは、困惑気味に言いました。
「【転移】を使うには正確な転移座標の認識が不可欠ですから、付随スキルとして【マッピング】が生えるのは妥当です。【鑑定】も魔法の一部ですから、それも覚えるでしょう。【収納】は、あまり知られていませんが、実は【空間魔法】の一部なのです。ですから、【超位魔法】までを全て覚えれば、それらが使えるようになるのは、当然なんですよ」
「そうなのですね」
「良かったのじゃ。オラクル、我が、強力な【超位魔法】の使い方を指導してやるのじゃ」
「はい。ソフィア様、よろしく、お願い致します」
まあ、指導しなくても、あの【スクロール】を使用した時点で、【超位】までの全ての魔法が使えるのですが、運用という面では、ソフィアは魔法行使の大ベテランですから、学ぶ事もあるでしょう。
「さあ、そろそろ、ダンジョン・コアを確保して、スタンピードを止めてしまいましょうか」
「なのじゃ」
ソフィアは言いました。
「900年ぶりに、ですね」
ファヴが感慨深げに言います。
オラクルとトリニティが静かに頷きました。
「よーし、やっちまいましょう」
ウルスラが言います。
・・・
私達は、ボス部屋の奥の部屋に入りました。
そこには、バスケットボール大の巨大なダンジョン・コアが鎮座しています。
【不滅の大理石】の台座に収まっていました。
これが、サウス大陸の民に塗炭の苦しみを味わわせている元凶の片割れという訳です。
思わず、叩き割ってやりたい衝動に駆られましたが、我慢、我慢……。
これ、一個で、推定市場価格、50万金貨(500億円相当)です。
地球の感覚でなら、もっと高額な価格でもおかしくありません。
何故なら、世界最高性能の原子炉を超える出力を出せるエネルギー発生源であり、世界最高性能のスーパーコンピューターを凌駕する演算能力を誇るのですから。
加えて、燃料補給もエネルギー供給の必要もなく、永久に稼働し続けます。
恐るべき、汎用性……。
「では、回収しますね」
私は、ダンジョン・コアを【収納】に収めました。
すると。
私達の周りを光が包みました。
・・・
次の瞬間。
私達は、オピオン遺跡の入口に佇んでいました。
私が設置した遺跡入口の強制転移魔法陣は、光を失い機能を停止しています。
この強制転移魔法陣は、スタンピードによって溢れ出て来る魔物を60階層の転移座標へと強制的に【転移】させる、というモノ。
私は、自分が刻んだ転移魔法陣の解析を行いました。
解析結果は……転移座標消滅により転移不能……というもの。
どうやら、遺跡は、間違いなくリセットされているようですね。
リセットされた遺跡は、30階層までを残して、残りの空間を全て消滅させてしまいます。
30階層にリセットされた遺跡は、1年間小康状態を保ち、やがて再び成長を始め、1週間で1階層ずつ大きくなりながら、やがて99階層まで成長。
その状態で魔物が遺跡内部に飽和すると、スタンピードが発生する訳です。
つまり、このオピオン遺跡は、あと2年は、放置しても、スタンピードは起こしません。
その2年の猶予期間で、冒険者などが遺跡に潜り、適宜適切に遺跡内部の魔物を間引いていれば、遺跡は管理された状態となり、永続的にスタンピードを防げる訳です。
私は、一応、強制転移魔法陣のトラップを消去しました。
その上で、緊急時には、すぐに此処に来られるよう、転移座標を改めて設置します。
他のメンバーも、全員、転移座標を設置しました。
「うむ。たった今、オピオン遺跡をリセットしたのじゃ。スタンピードを、1つ、やっつけてやったのじゃ。我らの被害?我らを誰だと思っておるのじゃ。もちろん、味方に被害なしじゃ。明日からアペプ遺跡の攻略に取り掛かるのじゃ。もうすぐ、スタンピードを止めてやるのじゃ」
ソフィアは、スマホで誰かと話していました。
相手は、ゴトフリード王と剣聖の2人。
同時にチャット通話をしているそうです。
その隣では、ファヴが使徒達に神託を出し、オピオン遺跡のリセットを伝えていました。
ソフィアは、スマホを切り、今度は、セントラル大陸全土の使徒達に、オピオン遺跡攻略の神託を出しています。
私も、ファミリアーレ、マリオネッタ工房の面々、世界銀行ギルドのビルテさんとピオさん……などに一斉メールを送りました。
文面は、たった二行。
まずは1つ。
オピオン遺跡の攻略を完了。
まだ、道半ば。
未だ、スタンピードを継続するアペプ遺跡を攻略するまでは、喜ぶには早いのです。
・・・
私達は、【ムームー】の首都【ラニブラ】に【転移】しました。
獲得した、お宝の分配を決めなければいけません。
ファヴは遠慮し、オラクルとトリニティは辞退しようとします。
しかし、私とソフィアが許しません。
全てを公平に分配する……それが事前の取り決めですからね。
ウルスラは、何故か、もらう気満々でしたが、あなたは、ほとんど貢献がないので今回は除外ですよ。
ブーブー、クレームを言うので、【ドラゴニーア】の高級パティスリーのホールケーキ10個で、手を打ちました。
さてと、今回の戦利品を分配しましょう。
ダンジョン・コア。
現在建造中の50mの【アイアン・ゴーレム】、または、同じく建造中の【飛空巡航艦】の、どちらかのメイン・コアとして使用予定。
【宝物庫】。
私が管理。
【エリクサー】(10回分入り瓶)。
売却。
竜鋼インゴット1t。
私が管理。
【ドラゴニーア金貨】10万枚。
トリニティに贈与。
【スクロール】
オラクルが使用。
【願いの石板】。
次回のアペプ遺跡で使用予定。
【シャルウル】。
私が管理。
【ミストルティン】。
私が管理。
【召喚の祭壇】
ソフィアが使用。
【避魔のランタン】。
私が管理。
【誘引の角笛】。
私が管理。
【オリハルコンの槍】
素材に戻して私が管理。
宝石箱(中身は宝石で満タン)。
売却。
【神蜜】。
私が管理。
【バージ】。
私が管理。
【アダマンタイトの剣】。
素材に戻して私が管理。
【不思議なコップ】。
私が管理。
【ミスリルの槍】
素材に戻して私が管理。
【魔鋼の剣】
素材に戻して私が管理。
【鋼板の鎧】
素材に戻して私が管理。
【銅の盾】
素材に戻して私が管理。
【コンティニュー・ストーン】37個。
私が管理。
【オピオン】
コアは、クイーンのバックアップ・コアに使用予定。
血液は、私が管理。
肉は、神の軍団の食糧とする。
【超位】の魔物……500頭超。
コアと血液は、私が管理。
肉は、【ドラゴニーア】竜騎士団に寄贈。
その他の部位は売却し、私以外で分配。
【高位】の魔物……1400頭超。
コアは、マリオネッタ工房で使用。
肉は、【ドラゴニーア】竜騎士団に寄贈。
その他の部位は売却し、私以外で分配。
このように決まりました。
「ノヒトよ。皆で相談したのじゃが、我とオラクルとトリニティは、過去に得た【超位コア】の所有権を全て、ノヒトに譲渡するのじゃ。我らは、売って金貨に変える他に使い道がない故な。【超位コア】は、ノヒトが【自動人形】などのコアに加工して使用するのが一番価値のある使い道なのじゃ」
「それは、ありがたいけれど、良いの?」
「うむ。ノヒトは、そのくらいの働きはしておるのじゃ。今回も、換金収益の所有権を放棄して、我らに全て譲渡してしまった。欲がなさ過ぎるのじゃ」
「いや、全てのコアと、【神の遺物】の所有権を全部もらっているから、私が一番多くを得ていると思うよ」
「いや、これで良いのじゃ」
「あ、そう。なら、遠慮なく使わせてもらうよ」
「僕も、コアを、お譲りしたいのですが……」
「ダメじゃ。ファヴは、サウス大陸の守護竜じゃ。我らとは別財布なのじゃ。自分の取り分は、ガメツイほどに主張して、必要な時にサウス大陸の為に活用するのじゃ。それは、もう、結論が出ているのじゃ」
「わかりました……」
私は、運営者権限で、【掘削車】のプログラムをカスタマイズします。
【掘削者】の格納機能に付いている鉱物限定の選別・管理プログラムを弄り、魔物の解体を行えるようにしました。
早速、起動。
【ハイ・エリクサー】の原料とする、【古代竜】の血液を保管する為に、オリハルコン製の容器を、その場で造って準備しました。
問題なく解体作業は完了。
私は、コアと血液が満タンに入った無数のタンク、肉、その他の素材を【収納】にしまいます。
私達は、千年要塞に【転移】しました。
・・・
千年要塞。
辺りは、もう夜です。
私達は、冒険者ギルド千年要塞支部に向かい、買取依頼を、お願いしました。
冒険者ギルド側のキャパシティの問題で、全て一度には不可能なので、とりあえず今日のところは、【超位】の魔物のコアと血液と肉以外の部位だけにしておきます。
既に解体が終わっているので、商業ギルドに売却すれば、私達の儲けは増えますが、剣聖や冒険者ギルドには、サウス大陸奪還作戦で、色々と便宜を図ってもらっていました。
今回は、冒険者ギルドを儲けさせてあげましょう。
同時に、ウルスラの冒険者登録と、パーティ登録……。
「あ、あのう、【妖精】のパーティ登録は、過去に前例がなく……」
冒険者ギルド千年要塞支部のギルマスであるフランクさんは、困惑しながら言いました。
「なにさ!あたしは、チョー偉い【妖精女王】よ!登録出来ないってのは、どういう了見な訳?」
ウルスラは、激しく抗議します。
まあ、【妖精】、【精霊】、従魔の類を、冒険者登録したり、パーティ登録する者はいないでしょうからね……。
「クインシーよ。我の、盟約の妖精の冒険者登録と、パーティ登録をして欲しいのじゃが。うむ、【妖精女王】じゃ。特例という事で認めてはもらえぬか?うむ、そうか、しばし待て。フランクよ、クインシーから代われ、という事じゃ」
ソフィアは、スマホをフランクさんに手渡しました。
「そうですか。わかりました。そのように取り計らいます。では……」
フランクさんは、背筋を正して、スマホで通話しています。
剣聖の鶴の一声で、ウルスラのパーティ登録は、超法規的措置として特別に認められました。
冒険者ギルドを出た後は、商業ギルドで、売却を決めたアイテム類の換金をします。
こちらは、数が少なかったので、その場で、すぐ買取が出来ました。
商業ギルドを出た後は、銀行ギルド出張所で、ウルスラのパーティ積立金を払ってやります。
必要な事をやり終えた私達は、王都【アトランティーデ】の王城に【転移】しました。
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