第121話。ピクシー・クイーン(妖精女王)。
名前…【ファヴニール】、ファヴ
種族…守護竜
性別…雄
年齢…なし
職種…【領域守護者】、サウス大陸守護竜、【パラディーゾ】庇護者・国家元首
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…飛行(守護竜形態時)、ブレス、【神位回復・神位自然治癒】、人化、【才能…転移、天意、天運】など。
レベル…99(固定)
人化した姿は、幼稚園児の男の子。
性格は理知的。
姉のソフィアを尊敬している。
91階層〜98階層は、市街地エリアでした。
市街地といっても、人種はいません。
91階層からは、雑魚敵も【超位】の魔物になり、いよいよ負荷がかかって来ます。
しかし、遺跡の魔物は、1フロアに概ね100頭までの個体しか存在しません。
私達は、【ムームー】の戦いで、多過ぎて数が分からないほどの【超位】の魔物の大群とやり合いました。
このくらいの負荷なら、どうという事もありません。
「ちょいやーーっ!【神竜の斬撃】。でやーーっ!【神竜砲】」
ソフィアは、絶好調です。
ファヴは、収束ブレスによる砲撃と、【クルセイダー】による近接戦闘を織り交ぜながら、敵を粉砕。
トリニティは、【ダンジョン適応】と【攻撃力S】の【才能】によってブーストされた【超超位魔法】で、魔物を攻撃。
私も負けてはいられません。
私は、【神の武器】シリーズを駆使して敵を蹂躙。
私達は、遺跡深層でありながら、まるで食べ放題バイキングのようなノリで、狩をしながら進んで行きました。
遺跡の91階層からは、1階層ごとに階層ボスが現れます。
・・・
91階層のボスは、【マーナガルム】。
眷属は、【マーナガルム】が11頭。
【マーナガルム】は、【超位】の【魔狼】。
遺跡の階層ボスとして現れる魔物としては最弱クラス。
私達に、ゴリ押しの近接戦を仕掛けてくるなんて……雑魚キャラです。
【宝箱】の中身は、宝石箱と、【コンティニュー・ストーン】が3つ。
宝石箱自体も意匠を凝らした国宝級の逸品でしたが、中身は、宝石が満タン。
まあ、換金価値はともかく、私は、ただの宝石なんかいりませんけれどね。
・・・
92階層のボスは、【ジャバウォック】。
眷属は、【ジャバウォック】が12頭。
【ジャバウォック】は、最強の精神攻撃を使う有翼首長竜。
しかし、精神攻撃は射程が短いので、近付かなけれれば、どうという事はありません。
私、ソフィア、ファヴ、トリニティによる遠隔魔法で瞬殺でした。
【宝箱】の中身は、耐久力向上と攻撃力向上の【永続バフ】がかかった【オリハルコンの槍】と、【コンティニュー・ストーン】が3つ。
・・・
93階層のボスは、【鉱石竜】。
眷属は、【鉱石竜】が13頭。
全く問題なく討伐しました。
「ノヒトよ。硬くて手が痺れたのじゃ」
ソフィアが言います。
私は、ソフィアに【治癒】をかけてやりました。
【宝箱】の中身は、【神の遺物】の【誘引の角笛】。
【誘引の角笛】は、吹くと近くの魔物を引き寄せるというアイテム。
誰得?
いやいや、レベル上げなどでは、エンカウント数を上げる為に有用なアイテムなのです。
また、対魔物戦では、陽動や罠に誘き寄せたり、と活用の幅は広いですからね。
それに、私も【収納】に持っていないアイテムでした。
これは、アタリの部類のアイテムです。
どうやら、私、ソフィア、ファヴの【天運】の効果で、【宝箱】のアイテムは、アタリばかりが出ています。
今回も【コンティニュー・ストーン】を3つゲット。
【コンティニュー・ストーン】は、比較的深い階層の【宝箱】から最大3個が出る設定になっていますが、ほとんどは0個か1個という数が普通なのです。
遺跡を完全攻略する内に1個か2個出れば良いという程度でした。
【天運】が3人揃うと……チートですね。
・・・
94階層のボスは、【翠竜】
眷属は、【翠竜】が14頭。
サクサク倒します。
【宝箱】の中身は、【神の遺物】の【避魔のランタン】。
これも、私が【収納】に持っていないアイテムでした。
【避魔のランタン】は、【誘引の角笛】の反対の効果があります。
つまり、魔物を寄せ付けない、というアイテム。
しかし、遺跡の魔物や、スタンピードを起こしている魔物、周期スポーン、強制エンカウント、など、ヘイト値が高い魔物には効果はありません。
また、【避魔のランタン】の下位互換アイテムとして、【避魔のロウソク】という使い捨てアイテムも存在します。
今回もまた、【コンティニュー・ストーン】は3つでした。
・・・
95階層のボスは、【水晶竜】。
眷属は、【水晶竜】が15頭。
【水晶竜】は、外皮が硬く、また水晶質の鱗で、魔法効果を散乱させる為に、なかなか厄介な【古代竜】です。
しかし、私達には、関係ありません。
何割か散乱したとしても、私達の魔法やブレスは、強力無比です。
魔法効果が乱反射するので、自陣営に被害が出ないように気をつけさえすれば、【水晶竜】ごとき、私達の敵ではありません。
【宝箱】の中身は……。
おっ!
圧縮箱が入っていました。
圧縮箱は、飛空挺の【バージ】が入っていた例の箱です。
【宝箱】に入りきらないサイズのアイテムが入っているのでしょう。
ソフィアが、ワクワクしながら、圧縮箱を地面に置きました。
出て来たのは、祭壇です。
「何じゃ、これは?」
「これは、【神の遺物】の【召喚の祭壇】だよ。【精霊魔法使い】や【召喚士】に、一回限り、ランダムで精霊や妖精を降す【祭器】だね。召喚者のレベルに応じて、色々な精霊や妖精が降りるんだよ。ソフィアがやれば、相当、強力な精霊や妖精が降臨すると思う。やってみるかい?」
「やってみたいのじゃ」
たぶん、【神竜】なら、【精霊魔法使い】や【召喚士】の職種がなくても、精霊や妖精を降ろせるとは、思いますが……。
「まあ、ソフィアは精霊や妖精なんか使い道がないかもしれないけれどね。もしも、強力な精霊や妖精が降りても、ソフィアの戦闘力を底上げする力はないよ。ソフィアは、強過ぎるから」
「ペットにするのじゃ」
あ、そう。
ソフィアは、祭壇に登って、刻まれた魔法陣に魔力を流します。
すると……。
祭壇の魔法陣から、光が放たれ、小さな妖精が現れました。
実体はなく発光体です。
【鑑定】すると、【妖精女王】と表示されました。
また、トンデモナイのを、降臨させましたね。
【妖精女王】は、最高位の祝福を与えられる妖精で、普通、レベル・カンストしたユーザーでも降臨させる事は出来ません。
そもそも、【妖精女王】が、降臨させられる設定だった事を私は知りませんでした。
さすがは、ソフィアというところでしょうか。
「ソフィア、名付けを」
「うむ。ウルスラじゃ」
刹那。
妖精は、受肉して実体化し始めました。
「じゃじゃ〜ん!【妖精女王】、ここに見参!ご主人様、かっちょいい名前ありがとね〜」
何だ、このノリ……。
「うむ。ソフィアじゃ。よろしくの」
「ソフィアっちかぁ。あたしは、ウルスラだから、ウルって呼んでね〜」
ウルスラは、ソフィアの顔の周りを飛び回りながら言いました。
「煩わしいのじゃ。顔の周りを飛ぶでない」
ソフィアは、徐々にひたいに血管が浮いて行きます。
「ソフィアっちは、何歳?お子ちゃまなのに、あたしみたいなチョー偉い【妖精女王】を降臨させるんだから、かなりイケるクチなんでしょ?」
ウルスラは、ソフィアの言葉を無視して、喋り続けました。
パチンッ!
ソフィアが、まるで羽虫を潰すようにして、ウルスラを両手で叩きました。
ウルスラは、失神します。
「こやつは喧しいのじゃ。返品するのじゃ」
ソフィアは、グッタリしたウルスラを握り、私に差し出して言いました。
「ソフィア、一旦降ろした妖精は、返品出来ないよ。責任を持って管理してね」
「ならば、帰還させて、二度と召喚しなければ良いのじゃ」
ソフィアは、ウルスラを帰還させてしまいました。
今回出たのは、【召喚の祭壇】の他に、またまた【コンティニュー・ストーン】は3つでしたね。
降臨の儀式が終わった【召喚の祭壇】は私達が祭壇を降りると、光の粒子に変わって消滅しました。
さてと、気を取り直して、先に進みましょう……。
「ぐぬぬ……あーーっ?喧しくて仕方がないのじゃ」
ソフィアが叫びました。
「どうした?」
「あやつが、頭の中で、外に出せ、出せ、と喚いておるのじゃ」
「出してあげたら……」
「出しても、面倒臭いだけなのじゃ」
「妖精は、甘い物が好きだから、ケーキなんかを与えて取引きして、煩くしない、と約束させれば良いよ」
「あやつにケーキを分けてやるのは勿体ないが、この際、止むを得んのじゃ」
ソフィアは、ウルスラを召喚し、大人しくしているなら、定期的に甘い物を与えるという約定を取り交わしました。
「うっめーっ!何、このショートケーキって。こんなの食べた事ないよ〜」
ウルスラは、ホールのショートケーキにダイブして、頭を埋めて食べています。
私達も、休憩する事にして、飲み物などを摂っていました。
「うむ。我の言う事を守って、忠節を尽くすなら、ケーキの他にも、クッキーやチョコレートも与えてやるのじゃ」
「うんうん、するする〜。何でも言う事聞いちゃうよ〜。加護も与えちゃうよ。私の加護はね。有効範囲は限られているけれど、効果は【神竜】様の【神位結界】と同等だかんね〜。ねえ、凄いっしょ?」
「我じゃ」
「ん?何が?」
「我が【神竜】じゃ」
「またまた〜。ソフィアっちは、ジョークが上手いな〜」
ウルスラは、ソフィアの肩に乗って、ソフィアの頰ペタを、生クリーム塗れの手でペチペチ叩きながら言いました。
「ウルスラ。【鑑定】してごらんよ」
私は、ウルスラを促します。
「ジーー……」
ソフィアを【鑑定】するウルスラの顔色が、段々と青褪めて行きました。
やがて、ウルスラは、静かにソフィアの肩から降りると、地面に正座して土下座をします。
「知らぬ事とはいえ、数々の、ご無礼の段、平にご容赦下さいませ……」
ウルスラは、言いました。
この世界では、【妖精女王】は、【神格者】に準ずる高位の格式を持ちますが、【神竜】は、現世神の最高位に君臨する存在。
格式で云えば、【創造主】の下、【超越者】と【調停者】と同格でした。
腰に手を当てて見下ろすソフィアと、拝礼するウルスラ……この図式が、本来、正しいのです。
兎にも角にも、私達に、新しいメンバー……【妖精女王】のウルスラが加わりました。
・・・
ウルスラが装備を欲しがります。
必要ないですよ。
「あなたは、盟約の妖精です。ダメージを受けて消滅しても、一定時間経過後にソフィアが再召喚すれば、復活するでしょう?」
「ノヒト様ぁ〜。お願いしますよ〜。ソフィア様みたいな、カッチョイイ鎧とか、私も着たいんですよ。ね、一生のお願い」
ウルスラは、言います。
ああ、こいつは、一生のお願いを何度もするタイプですね。
まあ、良いですけれど。
私は、ウルスラに【ヴァルキリーの鎧】(兵士バージョン)と【宝物庫】を貸与しました。
【神の遺物】の装備は、使用者の体のサイズに自動的に合うというギミックがあるので、おそらく装着出来るはずです。
うん、問題なく着られましたね。
ついでに、【認識阻害】の指輪も与えておきましょう。
こちらは【神の遺物】ではありませんが、私の【収納】に入ったアイテムは、【神の遺物】と同様にサイズが使用者のサイズに合うギミックが付加されます。
しかし、【神の遺物】とは違い、サイズ変更の幅には限度があるので、ソフィアが【神竜】形態になるなど、あまりにも大きさが変わると、さすがに壊れてしまいますが……。
なので、ソフィアやファヴは、守護竜形態に現身する場合は、指輪を外します。
ウルスラが【認識阻害】の指輪を腕にはめると、ピッタリ腕輪サイズになりました。
まあ、目的を果たせれば、指輪でも腕輪でも、どちらでも良いですね。
さてと、先に進みましょう。
・・・
96階層のボスは、【闇竜】。
眷属は、【闇竜】が16頭。
サクサク倒しました。
【宝箱】の中身は、【神の遺物】の【ミストルティン】。
【ミストルティン】は、一見すると、青々とした葉を繁らせたヤドリギの枝にしか見えませんが列記とした【神の遺物】です。
「何じゃ、この木の枝は?」
「【ミストルティン】だよ。ソフィア、1枚葉っぱを千切ってごらん」
ソフィアが【ミストルティン】から葉を1枚むしり取ると、その葉が矢に変わりました。
「何じゃ?矢に変わった」
ソフィアがむしった後には、すぐに新しい葉が生えて来ます。
私は、矢に変わった【ミストルティン】をソフィアから、受け取り【収納】から取り出した、ごく普通の【弓】につがえて放ちました。
ドカーーンッ!
【ミストルティン】は、ボス部屋の壁にぶつかり、凄まじい閃光を発して爆発しました。
計測威力値は、【超位】。
つまり、【ミストルティン】は、無限の矢であり、魔力コストなしに、【超位】の威力の攻撃を何発でも放てる強力な武器なのです。
しかし、私の【収納】には【ミストルティン】がありますので、ダブりましたが……。
「【ミストルティン】は、実装されている矢では最強だよ」
「なるほど。よくわかったのじゃ」
因みに、私の【神弓】の矢は、【神力】を実体化させたモノで、矢数は無限。
威力は、この世に射抜けぬ物なし。
チート武器なのです。
今回も【コンティニュー・ストーン】は3つでした。
・・・
97階層のボスは、は、【マルコシアス】。
眷属は、同種の【マルコシアス】が17頭。
【マルコシアス】は、【マーナガルム】と同じ、【超位】の【魔狼】。
しかし、こちらは魔法が得意なので、難敵です。
しかし、【神格者】3人と、最強クラスの【超位魔人】の相手としては、力量不足。
問題なく圧倒しました。
【宝箱】の中身は、【神の遺物】の【シャルウル】。
【シャルウル】は、棍棒のような形状をした投射武器でした。
「何じゃ、この棒は?叩くだけか?芸がないのう」
「投げるんだよ」
「こうか?」
ソフィアは、ポイッと【シャルウル】を投げます。
ガキーーンッ!
【シャルウル】は、直線軌道でボス部屋の壁に激突し、凄まじい威力値を叩き出して、跳ね返り地面に転がりました。
「これが、どうしたのじゃ?我が投げれば、岩だろうが、金属塊だろうが、あのくらいの威力にはなるじゃろう。さして、面白味もない武器じゃな?」
「ソフィア、パスを繋げてごらん。【シャルウル】は、自動的に飛んで、遠隔操作出来る投射武器なんだ」
ソフィアは、【シャルウル】をビュンビュン飛ばして、ボス部屋の壁に何度も叩きつけます。
「ほおー、面白い。これは、なかなか強力な武器じゃ」
ソフィアは、【シャルウル】を私に渡しました。
結局、ワザワザ、ソフィアが使うほどの武器ではない、と判断したようです。
私は【シャルウル】も【収納】にストックがありました。
今回も当然のように【コンティニュー・ストーン】は3つ。
・・・
98階層のボスは、【青竜】。
眷属は、【青竜】が18頭。
問題なく討伐。
【宝箱】の中身は、【神の遺物】の【願いの石板】。
これは、また超激レアの凄いアイテムが出ましたね。
「これは、盾か?持ち手がないが」
ソフィアが【願いの石板】をひっくり返したり、小突いたりしながら言いました。
「【願いの石板】だよ。それは、遺跡の【宝箱】から、希望するアイテムを入手出来るというギミックがあるんだ」
「なぬっ、何でもか?オラクルのような【自動人形】でもか?」
「出来るね。この世界内のアイテムで、遺跡の【宝箱】から出る可能性があるアイテムなら、何でもだよ。【神竜】や守護竜の降臨イベントの恩寵とか、特殊クエストの景品とか、遺跡の【宝箱】から出ない部類のアイテムは無理だけれど」
「ならば、次の【オピオン】を倒したら、すぐに使うのじゃ。我は、【自動人形】が欲しいのじゃ。オラクルの仲間を増やしてやりたいのじゃ」
「わかった。そうしよう。でも、使うのは、次の遺跡で、だね。この【願いの石板】は、遺跡の、どの【宝箱】からでも、好きなアイテムを入手出来る。だから、99階層のダンジョン・ボスの【宝箱】で使ってしまったら勿体ない」
「なるほど、そうじゃな。ダンジョン・ボスの【宝箱】は、【神の遺物】が確定じゃからの。次の遺跡の10階層の【宝箱】で使うのが、一番得なのじゃ」
「そういうこと」
今回も【コンティニュー・ストーン】は3つ。
さあ、次は最深部99階層です。
いよいよ、オピオン遺跡のスタンピードを、900年ぶりに止める時が来ましたね。
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