第1181話。【ファミリアーレ】の【ガチャ】の景品。
【ワールド・コア・ルーム】の洋食屋。
「【ファミリアーレ】の【ガチャ】の景品は、イフォンネッタ以外、みんな【能力本】が出たのですか?」
私は、【ファミリアーレ】のステータス表示を見て既にわかっていた事を訊ねました。
この場にいる【ファミリアーレ】の女子チームは、イフォンネッタ以外、アイリスの【縮地】のように、新しい【能力】がステータス表示されています。
「イフォンネッタとロルフ以外はそうでした」
グロリアが答えました。
「イフォンネッタは【冒険の地図】で……ロルフは?」
「ロルフは【機械細胞】というモノが出ました」
あ、そう。
グロリアが言った補足情報からわかった事は、【ファミリアーレ】(の代理でソフィア)が回した【ガチャ・ベンダー】は、全員【アイテム・ガチャ】だという事。
【能力本】と【冒険の地図】と【機械細胞】は、全てアイテムのカテゴリーですので。
私に庇護されている【ファミリアーレ】のメンバーは、私がゲームマスター本部の【無限ストッカー】から幾らでも入手可能な武器や防具の【神の遺物】を貰っても、余り意味がありません。
せっかく【ガチャ】を引くなら、【無限ストッカー】のラインナップにないモノを貰うべきです。
なので、効率を勘案するなら、【ファミリアーレ】が【アイテム・ガチャ・ベンダー】を選択するのは合理的でした。
その上でわかった事は……。
通常【激レア確定ガチャ・チケット】では1%の確率でしか出ない筈の【超絶レア級】の景品か、【ファミリアーレ】のメンバー個人のステータス上【超絶レア級】と同等の価値がある景品が全員に出ています。
これは、ソフィアと彼女の脳に共生する【知性体】のフロネシスの【運】値が合算された事による通常ではあり得ない豪運によって、高付加価値のアイテムばかりが出ているのでしょうね。
その上で、確率論的に【能力本】が【ファミリアーレ】の11人中9人に出るなどという偶然はあり得ません。
明らかに偏りが不自然過ぎます。
それは別に……【能力本】が希少だから……という意味だけではなく、他のアイテムも【能力本】と同じ期待値で出る筈なのに、何故景品が【能力本】ばかりに偏ったのか?という事でした。
おそらく、ある程度【ファミリアーレ】のメンバーが欲しいモノか、あるいは【ファミリアーレ】の適正に合ったモノが出るように【世界の理】が自動処理している【ガチャ】のアルゴリズムが誘導される形で、ソフィアとフロネシスの豪運が作用しているのでしょう。
頭が痛くなって来ました……。
【ガチャ・チケット】の等級に拘らず常に【超絶レア】が確定して、尚且つ欲しいモノや必要なモノが選べてしまうとしたら、もはや【ガチャ】の意味がありません。
ゲーム・バランスが崩壊します。
まあ、これは私達運営の意図ではなく、ソフィアのデタラメな豪運の所為なので、致し方ありませんが……。
取り敢えず、この場に居ないメンバーも含めて【ファミリアーレが【ガチャ】で引いた景品を確認すると……。
グロリアは、【ディープ・インパクト】。
ハリエットは、【鋭刃】。
アイリスは、【縮地】。
ジェシカは、【調教】。
リスベットは、【正確性】。
モルガーナは、【貫通】。
サブリナは、【追尾誘導】。
サイラスは、【身替り】。
ティベリオは、【馬術】。
イフォンネッタは、【冒険の地図】。
ロルフは、【機械細胞】。
……です。
なるほど。
「みんなは、【能力】には【任意発動能力】と【常時発動能力】がある事は既に知っていますね?」
私は確認しました。
これは、私が以前【ファミリアーレ】に受けさせたペーパー・テストの問題にもなっています。
一同は頷きました。
【ファミリアーレ】で言えば……。
グロリアが獲得した【ディープ・インパクト】やハリエットが獲得した【鋭刃】は【任意発動能力】で、ジェシカが獲得した【調教】やリスベットが獲得した【正確性】は【常時発動能力】です。
「【常時発動能力】とは……個体性質……に分類されます。【常時発動能力】のメリットは、無意識に【上方補正】や【強化補正】が乗るという利便性と、基本的に【常時発動能力】は魔力コストが少なくて済むか、全く魔力コストが掛からない場合もあり、お得です。また、常時で発動しっ放しになるので、原則として【能力】の期間使用回数制限や【リキャスト・タイム】や【クーリング・タイム】もありませんし、複数の【能力】を重複して発動する事も出来ます。デメリットは、基本的に【常時発動能力】の効果は、【任意発動能力】より間接的で効果が弱い傾向があります。対して、【任意発動能力】とは……得意技……に分類されます。【任意発動能力】のメリットは、【常時発動能力】より直接的で強力です。デメリットは期間使用回数制限や【リキャスト・タイム】や【クーリング・タイム】があり、魔力コストが高いので必然的に同時に複数の【能力】を重ね掛けする事が難しくなります。強力な【任意発動能力】を幾つも持っていても魔力コストや【リキャスト・タイム】や【クーリング・タイム】の問題で同時に使える【能力】は限られる事になり、最大の効果を得る為には適切な【能力選択】が必要になります。今回【ファミリアーレ】の皆が獲得した【能力】は【超位級】の強力なモノばかりですので、【任意発動能力】を獲得したメンバーは、現在のレベルでは1日に最大2回の【任意発動能力】行使が限界でしょう。【ハイ・エリクサー】を飲めば、その限界数を無視して1日に何回でも【能力】を行使可能ですが、【リキャスト・タイム】や【クーリング・タイム】は、別途アイテムなどを使って短縮する必要があります」
私は、【ファミリアーレ】の獲得した【能力】について説明します。
一同は頷きました。
とはいえ、【ファミリアーレ】は、ソフィアが代理で【ガチャ】を回す前や、【ガチャ】の景品を【圧縮箱】から【解凍】した後に、色々とミネルヴァからアドバイスをもらっていたようですけれどね。
しかし、必要で大切な説明は重複したって構いません。
この世界には、【能力】と似た概念で、【才能】というモノがありました。
基本的に【能力】と【才能】は、意味あいとして違いはありません。
強いて違いを上げれば、【才能】は個々の個体に生まれ付き身に付いている、又は【チュートリアル】を経て身に付くモノであり、【能力】よりも強化されていて魔力コストなども低く済むなどの様々な恩恵がありました。
同じギミックを行使する場合、【能力】より【才能】の方が優れている訳です。
ただし、【能力】は生まれた後や、【チュートリアル】を経た以後も、レベル・アップや熟練値の向上やアビリティ・ビルドの結果で後天的に自然発現したり、【能力本】などで覚える事が出来ました。
【才能】の上限は3個までですが、【能力】は無制限に覚えられます。
しかし、【能力】の発動には都度魔力コストを支払わなければならないので、実質的に使用可能な【能力】の数には制限がありますので、無制限に【能力】を覚えた所でコレクション以上の意味を持たないのですけれどね。
また、【能力】の中には相互に効果を打ち消し合ったり、相殺してしまうモノもありますし、自分の種族やキャラ・メイクに合わない【能力】もあります。
種族などによっては、自分の【能力】によって自分自身にダメージが入るような場合もあるので、闇雲に【能力】を覚えるのは、お勧めしません。
大体は自分の種族やキャラ・メイクに応じた【能力】を覚えるように【世界の理】が自動的に取捨選択や調整を行ってくれますので余り不具合は起きませんが、プレイヤーが【能力本】で覚える【能力】には【世界の理】による調整作用が働かないので注意が必要です。
グロリアが獲得した【ディープ・インパクト】は【任意発動能力】。
【ディープ・インパクト】を発動しながら放った攻撃は反射や衝撃分散が起こらず、100%対象体内の致命部位に作用し、余す所なくダメージに換算されるので強力でした。
モフ太郎氏が率いるパーティの強力な攻撃職であるゴーゴー・ガールさんが、【ディープ・インパクト】を必殺技にしていましたね。
【ディープ・インパクト】は、既にグロリアが獲得している【クリティカル・ヒット】との相性も抜群で、グロリアが【ディープ・インパクト】と【クリティカル・ヒット】を重ね掛けして打ち込む一撃は必殺の威力になるでしょう。
当初グロリアは、【ファミリアーレ】のリーダーとしての責任感と、クラン・メンバー想いの優しい性格から、【看護】の【能力本】を欲しがったようですが、ミネルヴァのアドバイスで攻撃系の【能力】を望んだのだとか。
【看護】は位階が低い【能力】で、グロリアが【回復・治癒職】として治療行為を続けていれば、後天的に獲得し易い【能力】なので、ソフィアの豪運で【超位級】の【能力本】が期待出来る状況でワザワザ貰うには勿体ない……というミネルヴァの判断なのでしょう。
ミネルヴァ、グッジョブですよ。
ハリエットが獲得した【鋭刃】は【任意発動能力】。
【鋭刃】を行使しながら斬撃する事で、任意で攻撃の鋭さや速さを【強化補正】する事が出来ます。
ハリエットには、打って付けの【能力】ですね。
アイリスが獲得した【縮地】は【任意発動能力】。
【迅歩】のように超ダッシュにより加速して移動する事が可能です。
【縮地】は【迅歩】と異なり高速移動時に慣性が0になるギミックがあるので、高速での起動・制動や停止や方向転換の際に重力加速度の負荷が発生せず、機動性を妨げません。
ジェシカが獲得した【調教】は【常時発動能力】。
動物や従魔の扱いが上手くなります。
ウルフィという従魔を連れているジェシカにはピッタリの【能力】でしょうね。
当初はジェシカも、【狙撃手】としてのクランでの役割を強化しようと、【常時発動能力】の【伏兵】の【能力本】を、ソフィアにお願いしようと考えていたそうです。
しかし、それをミネルヴァが止めて、【調教】を勧めたのだとか。
これも、ミネルヴァのファイン・プレー。
隠密行動時の攻撃威力値が増す【伏兵】は、必ずしも悪い【能力】ではありません。
また、現在クランで【斥候】系の役割を熟すジェシカとも【伏兵】の相性は悪くないでしょう。
しかし、今のジェシカが、これ以上の隠密系【能力】を覚えるのは、要注意でした。
今のジェシカの【職種】は【盗賊】。
グロリア、ハリエット、アイリス、ジェシカの獣人娘4人が私に庇護される以前に冒険者活動をしていた際、ジェシカが負傷したハリエットとアイリスの為に薬を買いたいと思って出来心からスリをしてしまった事で生えた【コソ泥】の【職種】から上位職にクラス・アップしたのが、【盗賊】です。
この世界の世界観では、【盗賊】だからといって即ち犯罪者とは限りませんが、実際問題、犯罪者の【盗賊】が多いのも事実でした。
なので、冒険者活動をする際に一般大衆からのイメージが余り良くありませんし、都市への入街などの行政手続きや【冒険者ギルド】での各種手続きをする際に、いちいち疑って見られ、場合によっては監視の目が付く事もあり、実質的な不自由を被ったり嫌な思いをする可能性があります。
これ以上、隠密系の【能力】を増やすと、ジェシカはドンドン【盗賊】系の上位職にクラス・アップする可能性がありました。
従って、私はジェシカに【盗賊】系ではない【職種】系統に変わるような形で育成してあげたいと考えています。
なので、現在のジェシカには、【伏兵】より、【調教】の方が適切でした。
リスベットが獲得した【正確性】は【常時発動能力】。
【正確性】は、あらゆる作業技術の正確性や精密性が高まる【能力】です。
研究職のリスベットに相応しい【能力】でした。
リスベットにも、ミネルヴァがアドバイスをしています。
当初リスベットは、【研究】などの【能力本】を希望したそうですが、グロリアの場合と同じようにリスベットが研究を続けていれば、それらは自然に獲得出来る可能性が高いので、ワザワザ【能力本】で覚えるのは勿体ないというミネルヴァの判断でした。
【正確性】は、魔法制御能力が高まるなど、より汎用性が期待出来ますからね。
モルガーナが獲得した【貫通】は【任意発動能力】。
【貫通】は、刺突攻撃や投擲攻撃の際に貫通力が高まる【能力】です。
【神の遺物】の投擲槍である【グングニル】を主武装にするモルガーナに合っています。
サブリナが獲得した【追尾誘導】は【任意発動能力】。
【追尾誘導】は、射撃・投擲時の矢弾や投擲物の軌跡を、射撃・投擲後に、ある程度操作出来る能力でした。
相応に多くの魔力コストを支払って【追尾誘導】を行使すれば、単なる自由落下爆弾を、精密誘導ミサイルとして運用する事も可能になります。
弓を主武装にするサブリナに向いた【能力】でした。
サブリナの場合も、グロリアやジェシカやリスベットと同様に、ミネルヴァのアドバイスが効いています。
当初サブリナは、【偏差射撃】の【能力本】を欲しがりましたが、現在のサブリナのアビリティ・ビルドで弓【能力】を伸ばしてしまうと、彼女は【選抜射手】などにクラス・アップしてしまう可能性がありました。
【選抜射手】は【弓士】系の上位職で、優れた【職種】ではありますが、【選抜射手】になると【職種】の指向が【弓士】系に固定され、他系統への発展性が不可逆になってしまいます。
私は、サブリナを【レア・職種】の【魔法弓士】に育てたいと考えていました。
サブリナを【魔法弓士】にするには、【弓士】系アビリティと【魔法使い】系アビリティのバランスを取らなくてはいけません。
なので、現時点では、サブリナは【偏差射撃】を取らないのが正解でした。
まあ、いざとなれば【転職】で強制的に【魔法弓士】になる手もありますが、その場合には、レベル50分をコストとして支払わなければならないので育成効率が悪くなりますからね。
私が指示しなくても、ミネルヴァが【ファミリアーレ】のメンバーに適切なアドバイスをしてくれるので助かります。
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