第117話。オピオン・ダンジョン。
本日、10話目の投稿です。
本日、10話連続投稿を致しました。
サウス大陸・南東の遺跡。
私達は、1時間ほどの超音速飛行で、目的地に到着しました。
この遺跡の正式名称は、オピオン遺跡。
この世界では、ダンジョン・ボスの名前で、遺跡を区別するのです。
遺跡の入口は、巨大な列柱に支えられた建造物となっています。
建造物は、ギリシャ建築のパルテノン神殿を模していました。
入口から、ワラワラと魔物が出て来ていますね。
スタンピードは、相変わらず継続中。
これがサウス大陸の民に塗炭の苦しみを与えている諸悪の根源です。
上空から、ソフィアが【神竜の咆哮】を一吐き。
入口付近の魔物を跡形もなく消滅させました。
ソフィア航空はブレスで綺麗に清掃された地面に着陸。
私は、ソフィアの背中から、座席を取り外し、【収納】にしまいました。
さてと、軽くガイダンスでもしておきますか。
「トリニティは、遺跡のエキスパートですから、知っているでしょうが、ソフィアとオラクルは、初めてです。なので、簡単な説明をしておきます。この遺跡は、最大まで成長した99階層です。1階層から下に向かって降りて行く構造です。遺跡の内部構造は、【不滅の構造物】で、破壊は出来ません。10階層ごとにエリアボスが存在しますが、私達なら問題なく倒せます。エリアボスを倒すと【宝箱】が出現します。深層では地上で入手出来ないアイテムもランダムで出ます。91階層より深層の【宝箱】からは、【神の遺物】のアイテムも出る事がありますよ。30階層までは、洞窟状の迷宮。魔物は【低位】です。60階層までは、トンネル状の迷宮。魔物は【中位】です。90階層までは、亜空間フィールド。草原や雪原や砂漠など、地上と同じような地形や環境が広がっています。魔物は【高位】。そして、91階層から98階層も亜空間フィールドで、魔物は【超位】。99階層にダンジョン・コアがあり、ダンジョン・ボスもいます。ダンジョン・ボスを倒して出現する【宝箱】からは確定で【神の遺物】のアイテムが出ます。サウス大陸南東のダンジョン・ボスは、オピオン。ソフィアが瞬殺した【名持ち】の【古代竜】です。今日は、とりあえず60階層まで攻略しましょう。30階層、60階層、90階層には、転移魔法陣があり、地上に戻れますが、私達は、オラクル以外、【転移】が使えますので、関係ありませんね。31階層から60階層までは、トラップがありますが、私達にとっては子供騙し程度で、脅威はありません。無視して大丈夫です。後は、10階層ごとに安全地帯があり、そこには魔物が進入出来ないギミックがあります。遺跡内では【マッピング】が有効ですが、一度通った場所でないと、【地図】は表示されません。魔物素材の回収に関しては、60階層までは、レア・ドロップ以外は無視しましょう。進軍速度を優先します。だいたい、こんな感じですが……トリニティ、何か補足する事はありますか?」
「遺跡の魔物は、転移魔法陣、安全地帯、ボス部屋以外の場所には、どこにでも突然スポーンするので、注意が必要です。何もない空間に魔力の高まりを感じたらスポーンの前兆です。また、稀に、深層部には、私と同じような、【徘徊者】と呼ばれる、【魔人】が出現する事があります。遺跡を住処とする【魔人】は、強力な個体が多いので警戒が必要です。【徘徊者】は、ダンジョン・ボスと同様の戦闘力がありますので」
トリニティは、説明しました。
さすがは、遺跡の【魔人】。
説明に淀みがない。
「魔物のスポーンと、遺跡の【魔人】とのエンカウントは、魔力反応でわかるから、私とソフィアとトリニティは【魔力探知】を発動しっ放しにしておいたら良いね。では、行こうか」
一同頷きます。
私達は、遺跡に足を踏み入れました。
・・・
1階層〜9階層。
巨大な洞窟状の通路が迷路として、入り組んでいます。
とはいえ、ガチンコで迷わせては来ません。
この世界の遺跡は、迷路より、魔物との戦闘がメインのタイプなのです。
なので、洞窟内は広く創られていました。
「【光源】を使いますか?」
「トリニティは、暗視は利かない?」
「いえ、暗闇は良く見えます。わたくしは、遺跡の【魔人】でございますので」
ああ、それもそうか。
「私達は、全員、最大限の暗視能力があるから、光はいらないよ。ありがとうね」
「いいえ」
私達は、9階層まで、交代で【雷撃】を放ちっ放しにしながら、踏破しました。
【地】系や【水】系は後の始末が悪いですし、【火】系は、トリニティに酸欠の恐れがありますからね。
トリニティクラスの【魔人】なら、魔法で、いくらでも対策が講じられるでしょうが、必要がないなら、ワザワザやるのは、非効率です。
オラクルは、呼吸をしません。
私とソフィアは、酸欠になると、苦しさは感じますが、死ぬ事はありません……つまり、永久に息を止めている事が出来ます。
私もソフィアも、【神格者】。
窒息死する神様とか、どうなの、って感じですからね。
呼吸は、しなくても生きられます。
閑話休題。
消去法で、遺跡の迷宮階層では、【風】か【雷】が適切ですが、私達は、射程距離が伸びても威力が減衰しない【雷】を選択しました。
10階層のボスは、【大熊】。
一応、魔物という扱いですが、大きな熊、というだけです。
オラクルが【石化】で固め、ソフィアが小突いて粉々にしました。
【宝箱】の中身は【銅の盾】。
「これで、攻撃を防げるのかの?」
ソフィアが指先でブスブスと盾に穴を開けながら言いました。
11階層〜19階層。
交代で【雷撃】を放ちっ放しにしながら、踏破。
20階層のボスは、【大虎】。
こちらも大きいだけの虎。
オラクルが【石化】で固め、ソフィアが小突いて粉々にしました。
【宝箱】の中身は【鋼板の鎧】。
「これは、防御の上で何か意味があるのか?」
ソフィアは、指先でズボズボと穴を開けながら言いました。
21階層〜29階層。
交代で【雷撃】を放ちっ放しにしながら、踏破。
30階層のボスは、【牙鼠】が3頭。
ようやく、【中位】の魔物が現れました。
オラクルが【石化】で固めます。
もはや、ソフィアは飽きていて、オラクルが【宝物庫】から【聖槌】を取り出して、【牙鼠】の頭を順番に叩き割りました。
【宝箱】の中身は【魔鋼の剣】。
「つまらぬ」
ソフィアは、を【魔鋼の剣】をグシャリと捻り潰して言いました。
私は、【魔鋼の剣】の残骸を、一応、素材に戻して【収納】にしまいます。
31階層〜39階層。
31階層からは、遺跡内部の様相が変わります。
今までの、黒いゴツゴツした岩肌のような質感ではなく、つるりとした乳白色の壁。
内部形状もトンネルのよう。
天井は綺麗な円形で、床部分は平ら。
カマボコ型です。
31階層からは、雑魚魔物も全て【中位】になります。
交代で【雷撃】を放ちっ放しにしながら、進みました。
「おっ、耐えたのじゃ」
ソフィアが【中位】の【雷撃】で初めて即死しなかった【闇狼】に注意を向けました。
しかし、2発目で、あえなく死亡。
40階層のボスは、【パイア】。
オラクルが【石化】で固め、【聖槌】を取り出して頭を叩き割りました。
【パイア】は、肉が美味しいので、確保しましょう。
オラクルに【石化】を解いてもらい、【収納】に確保。
【宝箱】の中身は【ミスリルの槍】。
「ありきたりじゃ」
ソフィアは、ポイッと投げ捨てます。
一応、素材は無垢のミスリルなので、私が【加工】で鋼材に戻し【収納】にしまいました。
41階層〜49階層。
交代で【高位】の【轟雷】を放ちっ放しにしながら、踏破。
さすがに【中位魔法】では、殺傷効率が悪くなって来たのです。
50階層のボスは、【ホーラブル・ベア】。
オラクルが【石化】で固め、【聖槌】を取り出して頭を叩き割りました。
【宝箱】の中身は、【魔道具】の【不思議なコップ】。
魔力を流すとコップ一杯の水を出します。
遺跡の中では、魔法が使えないと水の補給が出来ません。
冒険者にとっては、それなりには有難いアイテムなのでしょう。
私達には、ガラクタですが……。
一応、回収。
51階層〜59階層。
交代で【轟雷】を放ちっ放しにしながら、踏破。
60階層のボスは、【翼竜】3頭。
初めて【高位】の魔物が出現しました。
オラクルが【石化】を放ちます。
2頭の【翼竜】が石化して、ゴトッ、ゴトッと床に落ち、粉々に砕けました。
ボス個体は、相当【抵抗】しましたが、40回ほど、連発した段階で、石化。
地面に落ちてバラバラになりました。
オラクルは、【石化】を解いて、コアだけ回収します。
【宝箱】の中身は、小さなネックレス。
おっ!
出ましたね。
「ノヒトよ。これは、何じゃ?魔力反応があるが、【魔法公式】が読み取れぬのじゃ」
ソフィアが私にネックレスを手渡します。
うん、手に入りましたか。
このアイテムは、今回の遺跡攻略の目的の一つとも言える、重要アイテムです。
「ネックレス自体には意味はありません。この中心にハマった小さなコアに価値があります。これは、【コンティニュー・ストーン】と言います。いわば、死に戻りアイテムです」
「死に戻り……つまり、死んでも復活する訳じゃな。何とも素晴らしいアイテムじゃな!」
ソフィアは、声を弾ませて言いました。
「それなりには、素晴らしいですね。この【コンティニュー・ストーン】が付いたアイテムは、死亡しても一度だけ、遺跡の入口で復活します。死に戻ると、【コンティニュー・ストーン】は砕け、使い捨てです。しかし、この【コンティニュー・ストーン】は、遺跡でしか効果はありません。地上では、普通に死んじゃいますから、気を付けて下さいね」
「なるほど。遺跡限定の復活アイテムなのじゃな?他の遺跡に持ち込んでも効果を発揮するのか?」
「はい、世界共通です。私は、これをファミリアーレの修行に役立てたいと考えています。これをたくさん集めて、ファミリアーレのメンバーに持たせ、遺跡に潜らせれば、レベル・アップの効率が上がり、なおかつ、死亡リスクを排除出来ますからね」
「うむ、それは、確かに有用なアイテムじゃな」
「という訳で、【コンティニュー・ストーン】を集めますよ」
「わかったのじゃ」
ソフィアは、手を挙げて言います。
ようやく、モチベーションが上がったようです。
もう、今日のノルマは、終了なのですが……。
私達は、60階層の転移魔法陣から、地上に戻りました。
・・・
夕方。
遺跡入口。
遺跡踏破が、あまりにも簡単に進捗した為に、ファヴとの合流予定には、時間があります。
なので、私は、遺跡の入口に【神位】の転移魔法陣を構築していました。
「ノヒト、その見慣れぬ転移魔法陣は、何じゃ?」
「ああ、これは、強制転移魔法陣と云って、この魔法陣の上を通過したモノは、強制的に任意の転移座標に送られるんだよ。まあ、罠だね」
「何で、そんな罠を仕掛けるのじゃ?」
「大して意味はないかもしれないけれど、スタンピード対策だよ。こうしておけば、このオピオン遺跡の魔物は地上には溢れない。私達が、遺跡から離れている間、スタンピードを止めておけるでしょう?」
「何処に飛ばすというのじゃ。どこの転移座標であろうとも、魔物を勝手に飛ばされたら、転移先の者達が困るじゃろう?」
「さっきまでいた。この遺跡の60階層の転移座標にだよ。ここを通る魔物は、全部、あのボス部屋の先にある転移魔法陣に飛ばされる。魔物を同じ遺跡で、堂々巡りさせる訳だよ」
「なるほどのう。この手の悪知恵を考えさせたら、ノヒトは誰にも負けぬの」
「それは、褒め言葉として受け取っておくよ」
「もちろん、褒めたのじゃ」
この強制転移魔法陣は、永続的に発動させておく訳ではありません。
明日、私達が遺跡を攻略したら、消してしまいます。
サウス大陸奪還作戦後には、オピオン遺跡は、再び、冒険者達が訪れるようになるはずですからね。
強制転移魔法陣なんかが入口にあったら、邪魔で仕方がありません。
私達は、【ムームー】の首都【ラニブラ】に【転移】しました。
・・・
【ラニブラ】。
私達が、休憩しながら、待っていると、時間ピッタリにファヴが帰って来ました。
「ファヴよ。大地の祝福は、どうじゃ?」
「ソフィアお姉様。順調です。問題ありません。遺跡の方はどうでしたか?」
「全く、手応えも何もあったモノではないの。まあ、あの【超位】の大群と戦った後じゃ。それも仕方あるまい」
ソフィアは、溜息を吐きながら言います。
現世世界最強の存在にして、戦闘狂のソフィアには、あのレベルではウォーミングアップにもならなかったでしょう。
「確かに。あのような戦場は、きっと、もう経験出来ませんよ」
「かもしれぬの。じゃが、それは幸いな事なのじゃ。あのような戦場を、頻繁に繰り返していたら、世界は滅びかねん。我ら守護竜は、人種の安寧にこそ、喜びを求めねばの」
「はい、そうですね」
私達は、夕闇に暮れる【ラニブラ】の塔から、【転移】しました。
お読み頂き、ありがとうございます。
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