第1164話。ソフィア対【神位ガーゴイル】。
本日2話目の投稿です。
【誕生の家】の庭園。
「そう言えば、みんなは【オープン・レイド・イベント】のクリア報酬で貰った【激レア確定ガチャ・チケット】で【ガチャ】を回してみましたか?まだなら、デタラメに高い【運】値を持つソフィアに代理【ガチャ】を回してもらうと良いですよ。この【誕生の家】は【公共領域】に設定されている【初期構造オブジェクト】ですので、【ガチャ・ベンダー】が何台か設置してあってもおかしくありません」
私は【ファミリアーレ】に訊ねました。
すると、【ファミリアーレ】のメンバーは苦笑いして顔を見合わせます。
ん?
「もう【ガチャ】を回してしまいましたか?」
ハリエットが、私の質問に頷いた後で……ヤバい……という表情をしました。
どうやら私とカリュプソ以外の全員が【ガチャ】を回したみたいですね。
しかし、この皆の決まりが悪そうな雰囲気は何でしょうか?
「あ〜、もしかして既に自分で【ガチャ】を回して外れを引いてしまったのですか?ソフィアに代理で回してもらえば確実に良い景品が出る筈です。それを言い忘れていましたね」
「あ、あのう、ソフィア様から口止めされました。ノヒト先生の前で【ガチャ】の話題は口に出すな……と」
グロリアが言いました。
ん?
「それは何故ですか?」
「ソフィア様は……ノヒト先生に【ガチャ・チケット】を寄越せと言われないように……だと言っていました」
ロルフが言います。
「他所様の【ガチャ・チケット】を取り上げたりしませんよ。ソフィアは私を何だと思っているのでしょうか?」
「私達もそう言ったのですけれど、ソフィア様は……ノヒト先生は【ラピス・マナリス】なるアイテムを欲しがっていて、それを入手する為には現在【ガチャ】しか入手するアテがないから、みんなから【ガチャ・チケット】を徴収しようとするかもしれない……と」
リスベットが事情を説明しました。
あ、そう。
まったく、ソフィアは……。
「徴収などしませんよ」
「皆さん本当ですよ。私も先程……【ラピス・マナリス】確保の為に……マイ・ロードに【ガチャ・チケット】をお渡ししようとしましたが、マイ・ロードは……正当な権利を放棄するのは良くない……と、受け取って下さいませんでしたので」
カリュプソが言います。
「私達もそう言ったのですが、ソフィア様が……とにかく、ノヒト先生の前では【ガチャ】の話題は厳禁だ……と仰いまして……」
グロリアが言いました。
一同は苦笑いしながら同意します。
ソフィアは現世最高神の癖に、存外にケチで意地汚い所がありますからね。
そもそもソフィアが口止めなどをしても、トリニティなど【共有アクセス権】のプラットフォームに接続しているメンバーの見聞きした事は、全てミネルヴァがサーベイランスしていますし、【誕生の家】には複数【スパイ・ドローン】の【キー・ホール】も配備されているのですから、隠し事など出来っこありません。
その辺り、ソフィアは大概へっぽこですからね。
「では、みんなはソフィアに代理【ガチャ】を回して貰ったのですね?」
一同は頷きました。
ならば良し。
「良いモノが出ましたか?」
「まだ【圧縮箱】から【解凍】していません」
ハリエットが言いました。
一同は【収納】から【圧縮箱】を取り出して見せます。
トリニティやカルネディアを始めゲームマスター本部チームも含めて、全員がソフィアに代理【ガチャ】を回して貰ったのだとか。
あ、そう。
なら、私も後でソフィアに代理【ガチャ】を回して貰いましょう。
私の場合は【激レア確定ガチャ】では0.1%の確率の【神の遺物】を出して、尚且つ【ラピス・マナリス】でなければいけません。
ソフィアのチートな豪運を、外れ景品を出す逆進性に発揮してもらわなければならない訳です。
ソフィアなら……神引き……で初回に【ラピス・マナリス】を出す可能性がありました。
また、みんなの【圧縮箱】から【ラピス・マナリス】が出れば、私が保有する【神の遺物】と交換してもらえば良いのです。
基本的に【遺跡】を成長させる以外に何の役にも立たない【ラピス・マナリス】を欲しがる者はいないので、【神の遺物】と交換してあげれば喜んで応じてくれるでしょうからね。
「で、そのソフィア達は?」
「ウルスラ様が……何か面白いモノを見付けた……とかで、地下に降りて行かれました」
トリニティが言いました。
チーフ……【レジョーネ】の皆さんは、【誕生の家】地下の【メイン・コア・ルーム】に居ます。
ミネルヴァが【念話】で報告します。
【メイン・コア・ルーム】に何か面白いモノがあるのですか?
私は【念話】で訊ねました。
【誕生の家】の警備目的で【神位】の【守衛・ガーゴイル】が設置してあります……ソフィアさんは、それを回収して持ち帰ろうとしているようです。
ミネルヴァが【念話】で言います。
あ〜、また、ソフィアが馬鹿な事を考えているようですね。
【公共領域】に配置してある【ガーゴイル】は、【竜城】などにある【守衛・ガーゴイル】と同じ【初期構造オブジェクト】です。
【初期構造オブジェクト】の【公共領域】に設置されている【守衛・ガーゴイル】は【神位級】のスペックを持ち、大概は【不滅の大理石】で出来た彫像などに擬態していますが、害意や敵意を持つ者が警備領域に侵入すると起動して対象を制圧・排除する役割をゲーム会社から与えられていました。
あの【守衛・ガーゴイル】を持ち去ろうなどと考えて実行に及べば、当然ながら敵対者と判定され立ち所に制圧・無力化されてしまいます。
【神位級】の【守衛・ガーゴイル】は不壊・不滅の【初期構造オブジェクト】なので、ほぼ無敵。
【ヒット・ポイント】が設定されていないので【耐久力】を下回る攻撃を何発当ててもダメージが全く蓄積されず、基本的に倒せません。
【神位】の【守衛・ガーゴイル】の【耐久力】は当然【神位級】ですので、守護竜12柱分のスペックがあるソフィアが本気を出せば1撃で破壊可能かもしれませんが、仮に破壊しても瞬時に【復活】するので無意味です。
【神位】の【守衛・ガーゴイル】の性能として特筆すべき事項は、不殺制圧能力。
つまり、制圧対象を殺さずに無力化して、司法機関などに逮捕させる機能が備わっていました。
逆に言えば、対象を殺さず制圧する必要から【神位級】などという圧倒的なスペックが与えられているのです。
従って、【神位】の【守衛・ガーゴイル】と戦闘になっても、基本的に死んでしまうような危険はありません。
ただし、制圧対象が強力な相手なら、【神位】の【守衛・ガーゴイル】も相応に強力な制圧手段を講じるので、ソフィア達【レジョーネ】であっても怪我をするかもしれません。
その余波に巻き込まれて、【神格】を持たないユニットのウルスラやオラクルが……という万が一の可能性は有り得ます。
しかし、守護竜と【世界樹】の【神格者】組は不死身ですし、ウルスラとキアラとトライアンフの【盟約の知性体】トリオは死亡判定が出ても24時間後に主人権限者が再度【召喚】すればコストなしで【復活】可能でした。
また、オラクル、ヴィクトーリア、ティファニー、ウィルヘルミナの【神の遺物】の【自動人形】達も、4人の主人である守護竜達が【バック・アップ・コア】を内部【収納】に保管しているので残機があります。
なので、【レジョーネ】のメンバーなら【神位】の【守衛・ガーゴイル】とガチンコで戦っても取り返しが付かなくなるようなリスクは殆どありません。
もしも、何らかの不測の事態が起きて万が一の危険があれば、【メイン・コア・ルーム】をサーベイランスしているミネルヴァから超速の【念話】が送られて来て、瞬時に私がソフィアの脳に強制するフロネシスを【目標】に【転移】して駆け付け、【レジョーネ】を守る事も出来ます。
うん、全く問題ありません。
とはいえ、【神位】の【守衛・ガーゴイル】もソフィア達【レジョーネ】も【神格者】なので、今頃ここの地下は【神格者】同士の修羅場になっている事でしょう。
「私が行って、ソフィア達を回収して来ます。みんなは危ないので地下には降りないように待機していて下さい」
一同は頷きました。
「私も御一緒します」
トリニティが言います。
「いいえ。トリニティも、みんなと此処にいて下さい。危険はありません」
「仰せのままに……」
私は【誕生の家】の建物に入り、地下に続く階段を降りて行きました。
・・・
【誕生の家】地下【メイン・コア・ルーム】。
私が【メイン・コア・ルーム】に入ると……。
ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!
ドゴンッ!ドゴンッ!ドゴンッ!
「神竜・パンチ、パンチ、パンチ……」
ソフィアが、【神位】の【守衛・ガーゴイル】の顔面に取り付いて、両側頭部を左右の拳骨で何度も殴り付けています。
そして、【神位】の【守衛・ガーゴイル】も頭にしがみ付くソフィアを振り払おうと、ソフィアの事を両手で強か殴り付けていました。
0距離で足を止めて、1対1正々堂々の殴り合い。
……って、そうでなくて。
「これは、一体何をやっているのですか?」
私は唖然とします。
「ノヒト様。ソフィア様が、あの【ガーゴイル】を台座から回収して持って帰ろうとしましたら、【ガーゴイル】の敵性反応感知が作動し、迎撃シークエンスが発動してしまいました。ソフィア様が抵抗したところ、どんどん【ガーゴイル】が脅威度判定を上げて行き、最終的にはあのような格好になりました。ソフィア様は、この【メイン・コア・ルーム】が狭いので魔法や【ブレス】では私達にも被害が出ると考えて近接の打撃で戦っているのだと思われます。また、【ガーゴイル】の頭部を拘束しているのは、【ガーゴイル】に強力な【ブレス】を吐かせない為だと思われます」
オラクルが、この珍妙な状況に似つかわしくない冷静な様子で説明しました。
なるほど。
ソフィアなりに一応様々な状況を考慮した結果、このような妙チクリンな殴り合いになっている……と。
そんな事は如何でも良いのですよ。
「で、何故ソフィアは【神位】の【守衛・ガーゴイル】を持って帰ろうとしたのですか?」
「【神位】の【守衛・ガーゴイル】?なるほど、なのでソフィア様が全力で殴り付けても破壊出来ないのですね?」
オラクルは納得しました。
「【公共領域】の【初期構造オブジェクト】である【誕生の家】の【メイン・コア・ルーム】に設置してある【ガーゴイル】が、【創造主】が置いた強力な警備ユニットだという事くらいわかりそうなモノですけれどね?同じモノが【竜城】にもあるのですから」
「【竜城】の【守衛・ガーゴイル】は人種の裸体などが模られておりますので、これが同じ【守衛・ガーゴイル】であるとは思い至りませんでした」
「はぁ〜……確かに、この【守衛・ガーゴイル】は【ゴルゴーン】の姿をしていますが、そこは【不滅の大理石】製の【ガーゴイル】という所で少し推理を働かせれば、わかりそうなモノですけれどね?何しろ【レジョーネ】は知性が高い者達が揃っているのですから……」
「申し訳ありません」
オラクルは謝罪します。
「いいえ、オラクルが謝る必要はありませんよ。取り敢えず、あの馬鹿娘を止めて来ます」
私は、肉薄距離で壮絶な殴り合いを続けているソフィアと【守衛・ガーゴイル】に近付きました。
「……あっ、ノヒト。此奴は我の宿敵じゃ。其方は手出し無用じゃっ!」
ソフィアが言います。
「喧しいっ!」
ゴツンッ!
私はソフィアに拳骨を落としました。
「ぬぉーーっ!」
ソフィアが頭を押さえて悶絶します。
私の拳骨はダメージ判定0ですが、滅茶苦茶痛いという教育的指導専用のゲームマスター固有【能力】でした。
ソフィアのコンビネーション・パンチが止まった所に、【神位】の【守衛・ガーゴイル】による左右のフックが襲います。
ワッシッ、ガッシッ……ギリ、ギギギギギ……。
私は【守衛・ガーゴイル】の打撃を捕えて制止しました。
「ゲームマスターとして命じる……迎撃シークエンスを中断して台座に戻り、通常の警備モードに移行しなさい」
「魔力照合……ゲームマスターと確認……命令を実行します」
【守衛・ガーゴイル】は速やかに台座に戻り、元の彫像に戻ります。
「ソフィア。何をしているんですか?」
「あの【ガーゴイル】を鹵獲しようとしているのじゃ」
ソフィアは頭を摩りながら言いました。
「そうでなくで、何故鹵獲しようとしているのですか?これは、【誕生の家】の備品ですよ。勝手に持ち出せば泥棒です」
「ウルスラがミネルヴァから貰った【オリハルコン・ガーゴイル】の……ガーゴ……が【ドゥーム】の冒険の際に破壊されてしまったのじゃ。じゃから、我は、この【ガーゴイル】を鹵獲して、ウルスラの……ガーゴ2号……にしてやるつもりだったのじゃ」
「これは、【創造主】が置いた【神位】の【守衛・ガーゴイル】ですので、鹵獲など出来ません。【竜城】の【守衛・ガーゴイル】と同じモノです」
「そうなのか?知らなかったのじゃ」
「はあ、もう仕方ありませんね。あなた、怪我をしているではありませんか?【完全治癒】」
「手強い相手じゃった」
すると、私の【マップ】にグレモリー・グリモワールとディーテ・エクセルシオールの光点反応が表示されます。
「ともかく、昼食の時間ですよ」
「うむ。思い切り殴り合ったから、お腹が空いたのじゃ」
私達は、【メイン・コア・ルーム】を後にしました。
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