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第1146話。ミネルヴァ・プロファイル。

 ゲームマスター本部。

 ノヒト・ナカ執務室(オフィス)


【ドゥーム】から異動して来た事務方文官のカーミラ達と、同じく参謀武官のニクスのプロファイルは、とりあえず良し。

 彼女達は、ミネルヴァ指揮の下、場合によっては現場に出動する事もあるかもしれませんが、基本的には【ワールド・コア・ルーム】のゲームマスター本部内の各自の執務室(オフィス)で勤務します。

 ゲームマスター本部の各執務室(オフィス)は、ユーザー消失以来ゲームマスター達が居なくなってしまったので空室だらけのスッカスカでしたが、多少は本部らしくなりました。


 今後ゲームマスター本部の内勤組は……ゲームマスター本部【幕僚団(ジェネラル・スタッフ)】……とでも呼称しましょうか。


 ゲームマスター本部の最終意思決定は、ゲームマスター本部の責任者であるチーフ・ゲームマスターの私の責任において行われます。

 しかし、私は、ミネルヴァとブリギットとカプタ(彼女の分離体)、それからトリニティには相当に大きな裁量権を与えていますので、実際には私がゲームマスター本部の業務内容をリアル・タイムで全て知っている訳ではありません。


 今後は更に様々な事務処理を、ミネルヴァの指揮の下【幕僚団(ジェネラル・スタッフ)】が行う事になるでしょう。

 もちろん……私に事前承認を受けた上で、事後報告をする……という事を義務付けた上でではありますが……。


幕僚団(ジェネラル・スタッフ)】の事務方文官長はアマンディーヌで、参謀武官長はニクスです。

 参謀武官は今のところニクス1個体しか居ません。

 ミネルヴァは、ニクスの部下となる参謀武官を今後も増やす意向なのだとか。


 まあ、ニクスだけではタスクを処理しきれないでしょうからね。

 またニクスだけに頼ると思考や判断が偏る可能性もあります。

 集合知や多様性の観点からも複数のスタッフで部署を回すのは悪い事ではありません。


 もちろん……船頭多くして、船山に登る……という(ことわざ)もありますが、その懸念はトップの私がシッカリと方向性や優先順位を明示しておけば良い訳です。


 ニクスの序列は、アマンディーヌと同格でした。


「ニクスは参謀武官の主席なので、場合によっては現場の前線指揮官であるゲームマスター代理代行のカリュプソやウィローやガブリエルを指揮する権限もあるのですか?」

 私はミネルヴァに確認しました。


「ニクスは前線における指揮権を持ちません。現時点で現場での指揮権を行使可能なのは、チーフが最上席で、私と私の分離体(ブリギットとカプタ)が次席、それ以下はゲームマスター代理のトリニティ、ゲームマスター代理代行のカリュプソとウィローとガブリエルだけです。ニクスの役割は純然たる参謀としてゲームマスターとゲームマスター代理とゲームマスター代理代行を補佐し、情報分析を行い、戦略・戦術・作戦において助言を行うだけです」

 ミネルヴァは説明します。


「あ、そう」


 まあ、参謀の役割は、本来そういうモノですよね。


 私はエスプレッソを飲みながら、ミネルヴァ・プロファイルの続きに目を通しました。


幕僚団(ジェネラル・スタッフ)】以外にも、【ドゥーム】から異動して来たメンバーがいます。

 人化能力を身に付けた9個体の魔物達でした。


 今回【オーバー・ワールド】に異動して来た人化個体の魔物達は、全個体が【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】です。

 現在【ドゥーム】には【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】と【古代(エンシェント)・グリフォン】以外にも人化個体の魔物が増えているそうですが、ミネルヴァは【オーバー・ワールド】に異動させる魔物に対して……高度な知性と強大な戦闘力を持ち、私とミネルヴァとトリニティに絶対の忠誠を誓う……という条件を付けているらしく、結果的に【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】ばかりが対象となっているみたいですね。


 また、先発組の人化個体の【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】であるガーランド姉妹達は全員(めす)でしたが、後発組の9個体には(おす)も含まれていました。


 クィエース。

剣歯竜(サーベル・ドラゴン)】。


 ルーミリア。

紅竜(クリムゾン・ドラゴン)】。


 ストレーニア。

羊角(シープ・ホーン・)(ドラゴン)】。


 テンペスタ。

嵐竜(ストーム・ドラゴン)】。


 ウルティア。

【ターコイズ・ドラゴン】。


 ヴリトラ。

魃竜(ドラウト・ドラゴン)】。


 この6頭は(めす)です。


 オプスクリタス。

夜行(ノクターナル・)(ドラゴン)】。


 パンタグリュエル。

【スタウト・ドラゴン】。


 クオ・ヴァディス。

呪竜(カース・ドラゴン)】。


 この3頭が(おす)ですね。


 基本的に【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】は(めす)の方が、身体が大きくて、知性が高く、魔力が強大になる傾向がありました。

 もちろん個体差はありますけれどね。


 従って、(めす)の方が人化能力を身に付けるのも早かったので、先発組の【フラテッリ】は(めす)だけで、後発組も(めす)が多い訳です。


 おや?


 ざっと見た限り、【フラテッリ】後発組の9個体は、安直な名付け(ネーミング)ではありません。

 先発組のフロン・フィグはグリフォンのアナグラムでしたし、ローガンドもドラゴンのアナグラムでした。

 ローガンド姉妹のファスト・ネームに至ってはイタリア語の序数だったのです。


 現在【ドゥーム】ではカプタ(ミネルヴァ)配下の【魔人(ディアボロス)】と魔物が増えたので、カプタ(ミネルヴァ)自身が各自の名前を考えている訳ではなく、カプタ(ミネルヴァ)陣営に新規加入した【魔人(ディアボロス)】や魔物への名付け(ネーミング)は、カプタ(ミネルヴァ)配下の文官達が名前を決めていて、それをカプタ(ミネルヴァ)が機械的に【名付け(ネーミング)】している、と?


 あ、そう。


 まあ、カプタ(ミネルヴァ)だけで何百、何千という陣営の者達の個体名を考えるなんて、面倒ですからね。

 実際に私が行った【神の軍団】の神兵である【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】達の【名付け(ネーミング)】は、片仮名の日本語の数字で……イチからニセン……という手抜きでしたので。


 なので【神の軍団】には、センキュウヒャクキュウジュウキュウなどという馬鹿みたいな名前の個体がいる訳です。


 本来この【名付け(ネーミング)】のルールは……シンプルでわかり易いだろう……というコンセプトだったのですが、片仮名の長ったらしい名前の所為(せい)(かえ)って個体識別がわかり(にく)くなってしまった為に、【神の軍団】の神兵達は正式名称の他に……体色が白いからイタリア語の白(ビアンキ)……や……体色が青いからイタリア語の青(アッズーロ)……などというコード・ネームを呼称として使っていました。


 とはいえ、私1人で2千頭の【名付け(ネーミング)】なんか、とてもではありませんが、やっていられませんよ。


「チーフ。後発組の【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】9個体は、速やかに北米サーバー(【魔界(ネーラ)】)に展開して、私の分離体(ブリギット)の指揮下に組み入れたいと考えています」

 ミネルヴァが言いました。


「つまり、フロン達のように【竜都】の国立学校には編入させないという事ですか?」


「はい。後発組はフロン達とは異なり、かなり成長した個体です。初等教育は必要がないと思います」


 なるほど。

 フロンとローガンド姉妹達【フラテッリ】の先発組は、20歳そこそこの年齢です。

 彼女達の種族である【古代(エンシェント)・グリフォン】と【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】は概ね1千年程の寿命を持ちました。

【スポーン】個体の魔物は成獣として出現するので、赤ん坊として生まれて来る人種など動物との比較は意味を成さないかもしれませんが、フロンとローガンド姉妹の情緒や精神年齢は人種換算なら、おそらく幼児くらいの感覚でしょう。


 一方で、後発組の【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】9個体は、【時間(タイム・)加速装置(アクセラレーター)】の【ドゥーム】で100年以上生きていました。

 後発組は【古代(エンシェント・)(ドラゴン)】生来の高い知性に加えて100年以上の経験を積んでいるので、様々な点で先発組のフロンとローガンド姉妹より成熟しています。


「後発組の9個体は【フラテッリ】には加わらないという事ですね?」


「そうです。フロン達先発組は、私の分離体(カプタ)が、ほぼ付ききりで厳しく教育を行ったので、脆弱な生命体との接触方法を完璧に身に付けています。従って、フロン達は人種相手でも力を加減して傷付ける事なく触れ合う事が可能ですが、後発組は私の分離体(カプタ)の仕事が多忙となった為、十分な(しつけ)が行えていません。後発組の9個体は(もっぱ)ら戦闘に特化していて人種など脆弱な生命体との触れ合いは苦手です。従って、後発組の9個体をフロン達と同様に人種の学校に通わせて、人種と触れ合わせると、人種の側の安全性の面で多少不安があり、そういう観点からも……後発組の9個体を人種の学校に通わせるのは如何(どう)か……という意味もあります」

 ミネルヴァが見解を示しました。


「わかりました。ならば後発組の9個体は、すぐ北米サーバー(【魔界(ネーラ)】)の任地に送りましょう」


「了解です」


「後発組のチーム名も新たに考えなければいけませんね?」


 また、面倒な名付け(ネーミング)案件発生です。


「そうですね」


「なら、後発組は【コントゥベルニウム】と呼びましょう」


 いつもながら安置ですが面倒なので致し方ありません。

 コントゥベルニウムとは、ローマ軍団編成上の最小単位ですので、今後更に【ドゥーム】からの追加メンバーが増えても……第1【コントゥベルニウム】、第2【コントゥベルニウム】……と機械的にナンバーを振ってしまえば識別が可能。

 また、10個【コントゥベルニウム】で1個【百人隊(ケントゥリア)】、2個【百人隊(ケントゥリア)】で1個【中隊(マニプルス)】、3個【中隊(マニプルス)】で1個【大隊(コホルス)】という具合にローマ軍団の編成を丸パクリする事も出来ます。


「了解です」


「それから、後発組の【チュートリアル】もしなければいけません」


「後発組の【チュートリアル】は北米サーバー(【魔界(ネーラ)】)で、私の分離体(ブリギット)にやらせます」


「あ、そう。ならば、お願いします」


「お任せ下さい」


 原則として、【知性体】は【チュートリアル】を受けられない()なので、後発組では【亡霊(ファントム)】の【雪女(スノー・ブライド)】であるニクスだけは対象外。

 例外として、ミネルヴァは【知性体】ですが、彼女の分離体であるブリギット(ミネルヴァ)とカプタ(ミネルヴァ)は私のボディを空アバターとして使用しているので、【チュートリアル】を起動出来ました。

 まあ、ブリギット(ミネルヴァ)とカプタ(ミネルヴァ)は、【チュートリアル】を受けてもステータスに変化がないので、【チュートリアル】を受ける意味はありませんけれどね。


 また、【神格】の【知性体】である【世界樹(ユグドラシル)】の分離体であるユグドラは、何故か【チュートリアル】が受けられました。

 これは、如何(どう)いう判定で【チュートリアル】を受けられたのか謎です。


 おそらく、ゲーム会社が……【世界樹(ユグドラシル)】の分離体が【チュートリアル】を受ける……という事を全く想定していなかったので、ゲーム・システムが物理演算上あり得る蓋然性に基づいて処理しているのだと思われました。


 さてと、ミネルヴァ・プロファイルには、もう1個体分のデータがあります。

 ブリギット(ミネルヴァ)が元の所有者であったルシフェルから取り上げて【ドゥーム】で研修を行い、トリニティの従者にする予定……だという【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】でした。


 ミネルヴァが、この【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】をトリニティの従者にしようと考えた理由は、トリニティに発給されている【始まりの秘跡(クエスト)】のレギュレーションに依ります。

 トリニティの【始まりの秘跡(クエスト)】は……【単身(ソロ)】でクリアしろ……という条件がありました。


 トリニティと不可分の存在である【使い(ファミリア・)(スピリット)】のウィローと、道具やアイテム扱いになる【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】など【ドロイド】を使役しても、【単身(ソロ)】というレギュレーションには抵触しないのです。

神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】と基本スペックが同じ【コンシェルジュ】もレギュレーション上は道具やアイテム扱いになりますが、【コンシェルジュ】達は全個体がミネルヴァの【管制(コントロール)】によって統合運用されているので、【コンシェルジュ】がトリニティを支援すると、それはミネルヴァがトリニティを支援する事に他ならず、トリニティが挑む【始まりの秘跡(クエスト)】を単独(ソロ)でクリアした事にはなりません。


 なのでミネルヴァは……新しく入手した【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】をトリニティの従者にして、トリニティの【始まりの秘跡(クエスト)】クリアをサポートさせよう……と配慮した訳です。


 おや?


「トリニティ付きの従者にする【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】の名前が記載されていませんね。ルシフェルが元の所有者なので何かしら名前があるのでは?」


「ルシフェルは()()に……機械仕掛け(メカニカ)……という名付け(ネーミング)をしていました。その名称を、そのまま使わせますか?」

 ミネルヴァは訊ねました。


 どうやら、ルシフェルも名付け(ネーミング)が適当みたいです。


「まあ、この【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】はトリニティの従者になるのですから、主人(ミストレス)を変更するついでにトリニティに【名付け(ネーミング)】させれば良いでしょう」


「了解です」


 さて、ミネルヴァが定めたゲームマスター本部職員と関係者の名簿を再確認しておきましょうか……。


 最上席が私で、ミネルヴァ、ブリギット(ミネルヴァ)、カプタ(ミネルヴァ)が次席で、トリニティが3席。

 カルネディア・ナカ。

 カリュプソ、ウィロー・マリー・エミール・サンクティティ、ガブリエル。

 アマンディーヌ・アポリネール、ニクス、デア・エクス・マキナ、フェリシテ、トリニティの従者になる名前未定の【神の遺物(アーティファクト)】の【自動人形(オートマタ)】。

 ユーリア、カーミラ・ダークブルー、スコルピア。

 ラーナ、マーレ・プロフォンド、オランピア、パンタシア、ジャンヌ・ラ・ピュセル、アープ・パッサカリア。

【フラテッリ】、【コントゥベルニウム】。

【コンシェルジュ】。


 ……異世界転移直後、私1人だった絶望的な状況と比べれば、随分と大所帯になりました。


 しかし、ゲーム時代のゲームマスター本部には1人1人が圧倒的なチート能力持ちのゲームマスターが常時100人程いて、その上で外部端末からデバッグやプログラムの修正を行うプログラミング・チームもあったのです。

 当時と比較すれば、現行のゲームマスター本部は比較にもならない程の零細ですね。

 何しろ、ゲームマスター本部の管轄範囲は全宇宙なのですから……。


 そう考えると頭がクラッとして来ます。


 今後も引き続きゲームマスター本部の体制を強化しなければいけません。

お読み頂き、ありがとうございます。

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・・・


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