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第1122話。【スクリメージ・スクアッド】。

 お土産コーナーの休憩スペース。


「さっきの話の続きなのだけれど、ノート陣営の【イスプリカ】方面進出部隊がやたらと精強なのよ。強いというより、狂気じみていると言った方が適切かしら?彼らは【ノート・エインヘリヤル・小競り合い(スクリメージ・)分隊(スクアッド)】を名乗っているけれど、彼らの戦いぶりは小競り合いなんて生易しいモノではないわ。【スクリメージ・スクアッド】は現在5個部隊100人足らずが個別に行動していて、【イスプリカ】勢力圏に潜伏・野営しながら日々遊撃戦を展開している。彼らの素性は【ガレリア共和国】と【イスプリカ】のギャングや街のチンピラやゴロツキだった者ばかり。強請(ゆすり)(たか)りを生業(なりわい)にしていたような卑怯で惰弱(だじゃく)な連中だから、元々は大して強くない。歴戦の戦士や魔法戦闘職なんかとは程遠い筈なのに、野盗や山賊や奴隷狩り程度は歯牙(しが)にも掛けない。【スクリメージ・スクアッド】は野盗や山賊や奴隷狩りを原則生きたままの無力化して土着農民にしているから殺害を目的としない。つまり、不殺制圧が可能なだけの力の差があるという事でしょう?更に【スクリメージ・スクアッド】は【イスプリカ】各領邦の領軍や騎士団、それから【(ドラゴン)】などの魔物とも【遭遇(エンカウント)】する事がある。彼らは、そういう兵力や戦闘力で上回る強敵にも果敢に立ち向かって戦果を挙げているわ。【堅聖】キューダス・ロイガーと彼の弟子達が、【スクリメージ・スクアッド】に盾を用いた戦闘技術を短期間特訓したらしいけれど、その程度であそこまで強くなるモノかしら?あの狂気じみた意味不明な戦意は異常よ」

 リントが呆れたように言いました。


「あ〜、ノートが持つ【経験値譲渡】の【能力(スキル)】で強化されてんだね。ベータ版の【付与術士(エンチャンター)】だけが持つ【経験値譲渡】の特殊【能力(スキル)】はブッ壊れ性能でゲーム・バランスを崩壊させるからって、運営から【除外(オミット)】されたくらいだから、ノートの【能力(スキル)】はチートなんだよ」

 グレモリー・グリモワールが説明します。


「【経験値譲渡】という【能力(スキル)】の異質さは以前話に聞いていたけれど、聞きしに勝るわね。という事はノートの【経験値譲渡】は、個々の人格にも影響を及ぼすのかしら?例えば、卑怯で惰弱(だじゃく)でクズみたいな連中が、勇敢になったり聖人に変わったりするとか?」


「いやいや、身体能力や魔力量や知能なんかは【経験値譲渡】でレベルが上がればブースト出来るけれど、レベルが上がっても、レベル・アップによって、その人の固有の人格までは変わらないね」


「そうなの?【スクリメージ・スクアッド】は、元は所詮(しょせん)ギャングやチンピラやゴロツキだから、弱い者にしか(いき)がれないクズみたいな連中よ。なのに、彼らは全く死を恐れずに戦っていて、実際ノートが従えたギャングやチンピラやゴロツキの総数は9個分隊200人規模だったのだけれど、今の残存数はその半分だから損耗率や戦死率は相当に高い。でも【スクリメージ・スクアッド】は、どんなに不利な状況でも決して逃げ出したりせず、士気と統制と規範意識を保って分隊の最後の1兵の生命が尽きるまで奮戦するみたいだわ。【イスプリカ】の地元住民達を魔物の【襲撃(サージ)】から守りきって分隊が全滅した事もあるそうよ。だから【スクリメージ・スクアッド】に助けられた【イスプリカ】の地元住民は、亡くなった彼らを(とむら)う祭壇を築いて……【聖戦士団(ゲレロス・サントス)】……なんて呼んで祈りを捧げているらしいわ」


「それは良くわかんないね。レベルが上がっても、基本的にクズはクズのままだよ。実際900年前にはレベル・カンストしたユーザーのクズが沢山いたしね」


「人格がすっかり変わったとするなら【精神支配】ではありませんか?レベル・カンストした【真祖】の【リリン】であるノートが使う【魅了(チャーム)】は強力です。より確実で永続的な効果を発揮させるなら【眷属化】という可能性もあるでしょうが、最大で9個分隊200人規模を、ノートが1人で全て【眷属】にするには数が多過ぎます。おそらく、分隊指揮官を1人ずつ【眷属】にして、兵士達は【精神支配】しているのではないでしょうか?ノートの従者である【アラクネ】の【ルナ・ピエーナ】も【眷属化】が行使可能なので、彼女の【眷属】も、その【スクリメージ・スクアッド】なる軍団に所属しているのかもしれませんけれどね」


「あ〜、たぶん、それが正解だね」

 グレモリー・グリモワールは同意しました。


「なるほど」

 リントは頷きます。


「元無法者達を集めて聖戦士団を作り、敵国で奴隷解放を行ったり、無辜の民を守る為に命懸けで働かせて、敵国民を懐柔するとは、ノート・エインヘリヤルとは存外に策士なのではござりませんか?」

 ニーズが訊ねました。


「あ〜、それは違うと思うよ。ノートって、そんなキャラじゃないから……」

 グレモリー・グリモワールは言います。


「そうですね。【スクリメージ・スクアッド】なる者達は、おそらくノート個人や彼女の陣営が【ガレリア共和国】や【イスプリカ】で奴隷解放工作や侵攻を行った際に、捕虜とした者達の中に含まれていたのでしょう。しかし、彼らは【ガレリア共和国】や【イスプリカ】からすると無法者だったので、正規兵や一般市民とは違い、捕虜の返還交渉で身柄引き取りを拒否されたのだと思います。ノートと彼女の陣営は、無法者達の扱いを持て余し、【眷属化】や【魅了(チャーム)】や多少の【経験値譲渡】を行い、使い潰しが可能な戦力として敵国勢力圏に放ったという事だと思います」


「持て余したから使い潰すとは、元は無法者だったとはいえ、何ともはや苛烈というか容赦がないというか……」

 ヨルムンは苦笑いしました。


「まあ、ノートも酷いとは思うけれど、【スクリメージ・スクアッド】の連中にも同情はしないわね。(わらわ)はウエスト大陸の守護竜として、ノート陣営のやっている事に賛成するわ。ウエスト大陸の巷間(こうかん)に……無法を働いている者は、ノート・エインヘリヤルや【クレオール王国】に拉致されて死兵として使い潰される……という噂が広まれば、ノート達を恐れて、ウエスト大陸のギャングやチンピラやゴロツキが足を洗って更生して数が減るかもしれないもの。むしろドンドンやって欲しいわ」

 リントは言います。


「てか、ノートは、そこまで深く考えてないと思うよ。スライマーナ女王の戦略かもね」

 グレモリー・グリモワールは言いました。


「まあ、少なくともノートのやっている事は、【世界の(ことわり)】には違反しませんので、私は関知しませんよ」


「後学の為に教えて欲しいのだけれど、【スクリメージ・スクアッド】は【イスプリカ】勢力圏で、野盗や山賊や奴隷狩りに対して不殺制圧を行う際に【わからせ棒】なる凄まじい性能の武器を使っているらしいわ。何でも、【わからせ棒】はメイスのような形状で恐るべき威力と防御を無効化する特殊なギミックを持ち、殴打された対象は昏倒したり怪我はしても即死はしないらしいの。何か特殊なギミックの【神の遺物(アーティファクト)】なのかしら?」

 リントは訊ねます。


「防御無効化?【防御(ディフェンス・)貫通(ペネトレーション)】のギミックがある武器なら、【神の遺物(アーティファクト)】の槍や刺突系の武器に幾つかありますが、メイスでとなると【装備破壊(アーマー・ブレイク)】ならともかく【防御(ディフェンス・)貫通(ペネトレーション)】の【神の遺物(アーティファクト)】はないですね。それから【調伏(テイム)】をし易くする目的で、ヒット・ポイント(HP)を一定値まで減らして対象を殺さない武器は【神の遺物(アーティファクト)】に幾つかあります。メイスなら【慈悲の槌(マーシフル・メイス)】という殴打武器があります。ただし、【わからせ棒】という名称の【神の遺物(アーティファクト)】は存在しません」


「【スクリメージ・スクアッド】の連中は使い潰し要員という推定だよね?使い潰すつもりの連中に【神の遺物(アーティファクト)】は持たせないっしょ?勿体ないし、敵に鹵獲(ろかく)されれば逆に味方の脅威になるかもしれない。そもそもノヒトみたいに【無限ストッカー】でもなけりゃ、100人とか200人とかの規模の軍団全員に同じ【神の遺物(アーティファクト)】を持たせて武装を揃えたりなんか余程資金と時間と労力を掛けなきゃ出来ない。だから、たぶん優秀な【鍛治士(ブラック・スミス)】が鍛えてスロット枠が複数付いた製造品のメイスに、ノートが【効果付与(エンチャント)】して【防御(ディフェンス・)貫通(ペネトレーション)】と、非殺傷ギミックと、鹵獲(ろかく)を防ぐ目的で魔力反応で個体識別を行うギミックを施しているんだと思うよ。ほら、【クレオール王国】には【ニダヴェリール】王家から【イスプリカ】の【アラゴニア】に嫁いだヴィヴィ・アムダールって、お姫様がいるでしょう?【ニダヴェリール】の王家は代々遺伝的に【鍛治能力(スキル)】が高いから、ヴィヴィさんもノートから【経験値譲渡】を受ければ優秀な【鍛治士(ブラック・スミス)】になるんじゃないかな?」

 グレモリー・グリモワールが推定します。


「ヴィヴィ・アムダール・アラゴニアとは【スライマリア】で会って話しましたが、確かに彼女は99レベルの【(グランド)鍛治師(・ミストレス・スミス)】でしたね。鍛治の熟練値はカンストしていませんでしたが、コンスタントに【高位】以上の武器を鍛え、100本に1本程度の割合で【超位級】の武器を鍛えられるでしょう。ある程度の確率でスロット枠も複数付く筈です」


「【神の遺物(アーティファクト)】でないとするなら、強力な非殺傷武器は衛士隊などが犯罪者逮捕や暴徒鎮圧を行う際に便利そうだから、その【わからせ棒】なるメイスを(わらわ)も欲しいわ。早速ノートとスライマーナに発注しなくちゃ」

 リントが言いました。


 ファヴとニーズとヨルムンも、管轄する大陸で衛士や警察に使用させる装備品として【わからせ棒】なるメイスに興味を持ったようです。

 今後【クレオール王国】の王立鍛治長であるヴィヴィ・アムダール・アラゴニアの所に、世界中から武器の注文が入るかもしれません。


 しかし、私とグレモリー・グリモワールは顔を見合わせて苦笑しました。


「みんな、その【わからせ棒】なるメイスを【クレオール王国】から購入出来ると期待しない方が良いよ」

 グレモリー・グリモワールが言います。


「何故かしら?」

 リントが訊ねました。


「スライマーナ女王や【クレオール王国】政府は自国生産物に対する他国からの大量注文に喜ぶだろうし、武器を鍛えるヴィヴィさんも職人として意気に感じると思う。でも、武器に非殺傷ギミックなどを【効果付与(エンチャント)】するのは、()()ノートだからね。ノート(あいつ)は生粋のセレブ・ニートなんだよ。私には、()()ノートが大量注文された武器にコツコツ地道に【効果付与(エンチャント)】を施すとは到底思えないんだよね。だから、たぶんリントちゃん達が武器を発注しても、ノートが面倒臭がって断られると思うよ」

 グレモリー・グリモワールは苦笑しながら言います。


「そうかしら?だって、ノートは既に【スクリメージ・スクアッド】が主武装(メイン・ウエポン)として持つ200本あまりの【わからせ棒】に【効果付与(エンチャント)】を施しているじゃない?」


「チッチッチ……甘いね。ノートが【スクリメージ・スクアッド】なる連中の為に【効果付与(エンチャント)】をしてやった理由は、きっと【スクリメージ・スクアッド】の扱いに困って使い潰し戦力として放り出す為に致し方なかったからだと思う。ノートって奴は、より大きな面倒事を放り出せるなら、その為に小さな面倒事は喜んでやるタイプの……勤勉なセレブ・ニート……っていう屈折したロール・プレイヤーなんだよ。だから、例え守護竜からの注文でも、ノート個人にとって何のメリットもない仕事はやらないと思う」

 グレモリー・グリモワールは人差し指を立てて左右に振って言いました。


「メリットはあるでしょう?有用なギミックの高性能な武器を生産してくれれば、こちらは、それに見合うだけの十分な対価を支払う用意があるんだし」


「ノートにとって、お金はメリットにならないんだよね〜。現状【クレオール王国】は戦費とか国のインフラ整備とかの大規模な予算は不足しているようだけれど、少なくともノート1人が研究室(ラボ)に引き篭もる程度の資金はある。ノートは引き篭もっていられるなら、ずっと引き篭もっている。だから、ノートを働かせたければシンプルな商談じゃなくて、もっと工夫をしなくっちゃダメだよ」


「工夫?例えば?」


「う〜ん、現状ノートや【クレオール王国】の手持ちリソースでは造れないような実験設備を対価にするとかだね。理想を言えば荷電粒子加速機とかなら間違いなく欲しがるだろうけれど、それは余りにも高額過ぎるから、超高解像度の脳波センサーとかなら適当かな?【神の遺物(アーティファクト)】なら【万能(オールマイティ)3Dプリンター】とか【エメラルド・碑板(タブレット)】とかなら確実に欲しがるね。他は【魔界(ネーラ)】や【七色星(イリディセント)】にしかない希少な素材を提供するとかかな?少なくとも、ノートが食指を伸ばす対象がお金じゃない事だけは確かだよ」

 グレモリー・グリモワールは何かを思い出すようにしてノート・エインヘリヤルが欲しがりそうなモノを指折り列挙します。


 私とグレモリー・グリモワールは、ノート・エインヘリヤルの元同一自我でした。

 時系列で言うなら、グレモリー・グリモワールはノート・エインヘリヤルの約20年後の記憶を持つアバターです。

 なので、グレモリー・グリモワールは自分がノート・エインヘリヤルとしてベータ版をプレイしていた当時の記憶を(さかのぼ)れば、ノート・エインヘリヤルの気持ちが手に取るようにわかりました。


 時間は不可逆なので、反対にノート・エインヘリヤルはグレモリー・グリモワールの記憶は持ちません。


「なるほど。今グレモリーが言った対価となるモノを入手出来るか手を尽くしてみるわ」

 リントは頷きました。

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・・・


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[一言] ノヒトが協力すれば生産設備も作れるんだろうけど……お金で動かない人は厄介だねぇ
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