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第1094話。急な転属辞令。

本日2話目の投稿です。

 ゲームマスター本部ノヒト・ナカ執務室(オフィス)


 私が頼んだカプチーノと、フェリシテが注文したケーキとジュースの出前が運ばれて来ました。


「あの、こんなに沢山は……」

 フェリシテが困惑します。


 フェリシテの前に置かれたケーキはホール・サイズでした。


「ケーキを一人前注文したら普通はカット・ケーキです。フェリシテの身体のサイズを考えて下さい。ホール・ケーキなんて、幾らなんでも一度には食べきれませんよ。それにメニューにもカットとホールとを分けて価格が記載されていますよね?()しんば、カットかホールの何方(どちら)か不明だったとしても確認すれば済む話だったのではありませんか?」

 私は出前を運んで来た【コンシェルジュ】に苦言を呈します。


 出前を運んで来た【コンシェルジュ】は私付きのお世話係なので、ケーキ・バイキングを担当する【コンシェルジュ】とは別個体でした。

 しかし、【コンシェルジュ】はミネルヴァの管理下で統合運用されていますので、【コンシェルジュ】の1個体に言った事は、ケーキ・バイキングの担当【コンシェルジュ】にも同期(リンケージ)されます。


「申し訳ありません。【妖精女王(ピクシー・クイーン)】のウルスラ陛下は、いつもホールでケーキをご注文なさるので、てっきり【妖精】は皆様ご同様なのかと……」

【コンシェルジュ】は謝罪します。


「あ〜、ソフィアやウルスラを判断基準にしてはダメです。彼女達の振る舞いは、言わば……ああいう病気……として生暖かい目で見てあげなければいけません」


「畏まりました」


「あの、お気になさらず。少し驚きましたが、私は平気です。食べきれない分は【収納(ストレージ)】に保管します」

 フェリシテが言いました。


「お気遣い痛み入ります。以後は気を付けます」

【コンシェルジュ】は一礼して退室して行きます。


「お、美味しいっ!」

 フェリシテがケーキを食べて言いました。


「それは何よりです」


「これ程美味しければ、ウルスラ【妖精女王(ピクシー・クイーン)】陛下が、この大きなサイズを御所望になるお気持ちが理解出来ます」


「でも、ウルスラは、このホール・ケーキの上にダイブするのが趣味なのですよ。なので、このホール・ケーキには真ん中に的のようなデザインが描いてあり、ダイブ時に障害物となるような苺は周囲に配置しているのだと思います。フェリシテもケーキ・ダイブをしたいのですか?」


「いや、それは、ご遠慮致します……」

 フェリシテは……フルフル……と首を振ります。


「ならば、ソフィアやウルスラの気持ちが理解出来るなんて軽々しく言わない方が身の為ですよ。うっかり、あのおバカ・コンビに同調したりすれば……ソフィア流ケーキ・バイキング道……なる謎の流派に強制入門させられて、ケーキにダイブさせられるかもしれません」


「それは恐ろしい……。畏まりました。そのご忠告を肝に銘じておきます」


 すると、トリニティとカルネディアとウィローが執務室(オフィス)にやって来ました。


「お父様。おはようございます」


「カルネディア。おはよう」


 私達は挨拶を交わします。


「マイ・ハイネス。初めまして。私は、あなた様の従者(しもべ)……フェリシテと申します」

 フェリシテがテーブルの上で跪きました。


「あ、はい、初めまして。カルネディア・ナカと言います。どうぞ宜しく」

 カルネディアは……ペコリ……とお辞儀をします。


「カルネディア。理由なく臣下に頭を下げてはいけません」

 トリニティがカルネディアに注意しました。


「ごめんなさい」


 臣下って……。

 まあ、良いですけれど。


「謝らなくても大丈夫ですよ。知らない事は1つずつ覚えれば良いのです」

 トリニティがカルネディアの頭を撫でます。


「わかりました」


「トリニティ。カリュプソは?」


「カプタ(ミネルヴァ)様からの指示で物資を【転送(トランスファー)装置(・デバイス)】で送っていますが、もう間もなく集合すると思います」

 トリニティは説明しました。


 程なくしてカリュプソもやって来ます。


「トリニティ。カルネディアにフェリシテの事について説明しましたか?」


「ミネルヴァ様から、ご説明がありました」


「カルネディアはフェリシテと【盟約(コベナント)】を結ぶという事の意味がわかりますか?」


「わかります」

 カルネディアは頷きました。


「宜しい。早速フェリシテのマスター権限を、私からカルネディアに移譲します。一応その後も私はフェリシテのマスター権限の第1位を持ち続け、新たにトリニティとミネルヴァにもフェリシテのマスター権限を与えますが、フェリシテは、あくまでもカルネディアを主人(ミストレス)として仕えて下さい。カルネディアが数え15歳になったら、主人(ミストレス)権限第1位はカルネディアに譲渡して、私達は権限第2位以下に繰り下がります」


「わかりました」

「畏まりました」

 カルネディアとフェリシテは同意します。


「では、フェリシテの主人(マスター)権限第1位を私、第2位をトリニティ、第3位をミネルヴァ、第4位をカルネディアとします。位階やゲームマスター本部での序列ではミネルヴァがトリニティを上回りますが、トリニティはカルネディアの保護者である事を考慮してフェリシテの主人(ミストレス)権限ではトリニティを上位に置きます。良いですね?」


「わかりました」

「仰せのままに致します」

 ミネルヴァとトリニティが了解しました。


「では権限移譲を実行します」

 私が宣言すると、指定通りに権限移譲が行われます。


 これで良し、と。


【盟約の妖精】が依代とするのは、主人(マスター)権限第1位者の【器】か【コア】です。

 従って、本来フェリシテを【召喚(サモン)】や【帰還(リターン)】出来るのは主人(マスター)権限第1位の私という事になりました。


 しかし、それでは不具合があるので、私はゲームマスター権限で、カルネディアがフェリシテを【召喚(サモン)】・【帰還(リターン)】出来るように運用変更しています。


「マイ・ハイネス……カルネディア様。私フェリシテは、マイ・ハイネスに終生の忠誠をお誓い申し上げます」

 フェリシテは改めて宣誓をしました。


「えっと……励みなさい」

 カルネディアはトリニティの顔をチラチラ見ながら言います。


 きっと【念話(テレパシー)】で……こう言いなさい……とトリニティから教えてもらったのですね。


「カルネディア、ウィロー、カリュプソ。他にも【ドゥーム】から来た新しい仲間達を紹介したいので、とりあえず着席して待っていて下さい。飲み物などは各自で好きに頼んで下さい」


 一同は長テーブルに腰掛けました。


 席次が如何(どう)とかで一瞬戸惑う場面が見受けられましたが、ミネルヴァが素早く捌いて事なきを得ます。

 私は、こういう席次の上下(かみしも)などの儀礼格式は好みませんが、ミネルヴァから……そういうルールとして決まっていれば混乱が生じず、誰も不愉快な思いをしなくて済む……と説明されれば、致し方ありません。


 ミネルヴァが決定したゲームマスター本部正規職員と関係者の序列は、不在者や今後加入予定のメンバーも全て含めて……。


 私が最上位で、次席がミネルヴァ、三席がトリニティ……。

 その後は、カルネディア・ナカ、カリュプソ、ウィロー・マリー・エミール・サンクティティ、ガブリエル、アマンディーヌ・アポリネール、フェリシテ、デア・エクス・マキナ、ユーリア、ジャンヌ・ラ・ピュセル、アープ・パッサカリア、【フラテッリ】、【コンシェルジュ】。


 ただし、カルネディアと不可分の存在である【盟約の妖精】のフェリシテは、カルネディアとの同席が認められます。


「存外アマンディーヌの序列が低いのですね?ミネルヴァ直属であるアマンディーヌの方が、トリニティ直属であるウィローとガブリエルより上位かと思いました」


「ゲームマスター本部では執行権限を持つゲームマスターとゲームマスター代理、そしてゲームマスター代理代行がメイン・スタッフで、その他はサポート・スタッフという扱いです。ウィローとガブリエルはゲームマスター代理代行ですので、執行権限を持たないスタッフより必然的に上位になります」

 ミネルヴァが説明しました。


「では、カリュプソとウィローとガブリエルより上席に位置するカルネディアは?この娘はゲームマスター本部正規職員ではなく関係者枠ですよね?」


「チーフとトリニティの養女であるカルネディアを下位に見るような者はゲームマスター本部にはいないでしょう」


 ミネルヴァの説明にカリュプソとウィローが頷きます。


「あ、そう。まあ、ミネルヴァが、これが適当だと判断するなら別に構いませんけれどね」


 しばらくしてアマンディーヌと【フラテッリ】が集合しました。

 手狭になったので、執務室(オフィス)の仕切り棚を壁に寄せてスペースを広げます。


 一同は挨拶と自己紹介をしました。

 初めてのメンバーには、ミネルヴァの指示で【コンシェルジュ】から、必要なアイテム類が入った【宝物庫(トレジャー・ハウス)】や【スマホ】などスターター・セットが配られます。


「ウィロー、カリュプソ。朝食が済んだ頃合を見計らって【ファミリアーレ】を連れて【竜城】の礼拝堂に集合して下さい」

 私は指示しました。


「わかりました」

「畏まりました」


「では、解散」


 途端【フラテッリ】が……ご飯だ〜っ……と駆け出して、ミネルヴァから……静かに歩きなさい……と叱られます。

 やれやれ……。


「アマンディーヌ。あなたは執務室(オフィス)に食事を運ばせますので、今後の業務の進め方について話し合いましょう。そして今日は【ワールド・コア・ルール】内の見学。明日以降は【知の回廊】内や【シエーロ】各地の視察です。天使長のミカエルという者が護衛と案内役で同行します」

 ミネルヴァが言いました。


「わかりました」

 アマンディーヌは頷きます。


「さてと、私達も食事に行きましょう」


「仰せのままに」

「はい」

「畏まりました」

 トリニティとカルネディアとフェリシテは言いました。


 私達は【竜城】に向けて【転移(テレポート)】します。


 ・・・


 セントラル大陸中央国家【ドラゴニーア】の【竜都】。

【竜城】の礼拝堂。


 おや?


「ノヒト様、トリニティ様、カルネディア様、と……?」

【竜城】の【高位女神官(ハイ・プリーステス)】が挨拶の途中で固まりました。


「彼女はカルネディアの【盟約の妖精】フェリシテです」

 私は空気を読んで説明します。


「失礼致しました。ノヒト様、トリニティ様、カルネディア様、フェリシテ様。おはようございます」

高位女神官(ハイ・プリーステス)】は挨拶をやり直しました。


「「「おはようございます」」」

 私とカルネディアとフェリシテは挨拶を返します。


「ジャンヌ・ラ・ピュセル?ああ、なるほど……」

 トリニティが少し驚いた後、納得しました。


 出迎え役はジャンヌ・ラ・ピュセルです。


「ノヒト様達が御到着なさったら大広間にお連れするように……とアルフォンシーナ様より申し使っております。ご案内致します」

 ジャンヌ・ラ・ピュセルは緊張気味に言いました。


 私達は大広間に向かいます。


 私はソフィアに遅れるので先に朝食を始めてくれるように頼んでいました。

 なので、いつも出迎えてくれるアルフォンシーナさんは既に大広間の方にいるのでしょう。

 アルフォンシーナさんの代わりがジャンヌ・ラ・ピュセルという事。


 しかし、ジャンヌ・ラ・ピュセルは【黒の結社】の秘密メンバーで【竜城】の機密情報を外部に漏洩させていたスパイでした。

 彼女は、降格処分を受けて現在は閑職に回されているので、儀礼格式上【神格者】である私を出迎えるような役割になる筈がありません。


 お客をスパイに接遇させるとか、失礼とかいう以前に情報管理的に大丈夫かと疑われます。

 何しろ私達は、ジャンヌ・ラ・ピュセルがスパイだと、アルフォンシーナさんや【竜城】に教えた側なのですから。


 まあ、【黒の結社】の動向を探る為に泳がされているので、建前上ジャンヌ・ラ・ピュセルが降格された理由は、【黒の結社】とは関係ない別件という事になっているのだそうです。

 なので、ジャンヌ・ラ・ピュセル自身は、自分が【黒の結社】に機密を漏らしている事をゲームマスター本部や【竜城】の上層部が掴んでいる事を知りません。


 アルフォンシーナさんがジャンヌ・ラ・ピュセルに私達の案内役を指示した理由は、ソフィアの頼みでゲームマスター本部がジャンヌ・ラ・ピュセルの身柄を引き取る件を、今からアルフォンシーナさんがジャンヌ・ラ・ピュセル本人に伝えるからなのでしょうね。


 ・・・


【竜城】の大広間。


「おはようございます。ノヒト様、トリニティ様、カルネディア様、フェリシテ様」

 アルフォンシーナさんが挨拶をします。


「おはようございます」


 私達は挨拶を交わして、テーブルに着席しました。


 アルフォンシーナさんが初対面のフェリシテの名前を言えた理由は、ソフィアとパスが繋がっているからです。


「ジャンヌ。こちらに来なさい」

 アルフォンシーナさんが、一礼して退室しようとしていたジャンヌ・ラ・ピュセルを呼び止めて命じました。


「はい?畏まりました」

 ジャンヌ・ラ・ピュセルは少し驚きましたが、命じられた通りにアルフォンシーナさんの側に歩いて行きます。


「ジャンヌ。あなたは、たった今からノヒト様のプライベート・代理人(エージェント)事務所(・オフィス)への転属を命じます。これが転属辞令です」

 アルフォンシーナさんは、ジャンヌ・ラ・ピュセルに【竜城】の正式な辞令を手渡して命じました。


「えっ?」

 ジャンヌ・ラ・ピュセルは驚きます。


 まあ、そういうリアクションになるでしょうね。

 今回の話は事前の内示や打診などが一切なかったのですから。


 正に、晴天の霹靂(へきれき)


 そもそも【神竜神殿】に昇った聖職者が、本人の承諾もなく、そんな訳のわからない事務所に転属させられる事なんか、あり得ません。


「我がノヒトに頭を下げてお願いし、ノヒトが快く引き受けてくれたのじゃ。ジャンヌよ、くれぐれも我とノヒトに恥をかかせるでないぞ」

 ソフィアが反論を許さない口調で言いました。


「あ、あの、理由をお伺いしても宜しいでしょうか?」

 ジャンヌ・ラ・ピュセルは取り乱して訊ねます。


「理由は其方が【竜城】の機密を意図的に外部に漏洩させていたスパイ防止罪の嫌疑でじゃ。動かし(かた)い証拠もある(ゆえ)、もはや言い逃れは出来ぬと心得よ。本来ならば極刑は免れぬところじゃが、我とアルフォンシーナの格別な慈悲を以って、其方を生かす為に【調停者(ゲームマスター)】たるノヒトの預かりとしてもらったのじゃ。じゃから、其方はノヒトに誠心誠意仕えて自らの罪を償え。ジャンヌ・ラ・ピュセルよ、これは【神竜(ディバイン・ドラゴン)】としての神命である」


「あああ……」

 ジャンヌ・ラ・ピュセルは力が抜けたように、その場にへたり込みました。

お読み頂き、ありがとうございます。

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・・・


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[一言] (凄い真面目そうな顔で言ってるけど顔にソースついてるソフィアしかイメージ出来ない……)
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