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第106話。サウス大陸の守護竜。

名前…ピットーレ・アブラメイリン

種族…【ハイ・エルフ】

性別…男性

年齢…なし

職種…【(グランド・)錬金術師(アルケミー・マスター)

魔法…【闘気】、【収納(ストレージ)】、【鑑定(アプライザル)】、【マッピング】、【錬金術(アルケミー)】など。

特性…【才能(タレント)錬金術(アルケミー)

レベル…99


デザイン事務所勤務。

グレモリー・グリモワールのパーティ・メンバー。

ユーザー。

 異世界転移、21日目。


 この世界(ゲーム)に飛ばされて、早、3週間ですか……。

 2週間経過時点にも思いましたが、長かったような、あっと言う間だったような……。


 とにかく、現状の最大限を日々行っていれば、過去や未来は問題ではありません。

 私は、あまり難しい事を、クヨクヨ考え込んだりしない性質(たち)なのです。


 王家の人達に断って、今朝は、朝食を私とソフィアだけ、早く食べました。


 昨晩から、ずっと、ソフィアが【ファヴニール】の復活を急かすのです。

 それに、オラクルにギルドカードを作ってやり、冒険者登録もしなければいけません。


 今日は、早朝出勤。

 色々と立て込んでいます。


 私達は、王都【アトランティーデ】の王城中庭で、王家の面々、剣聖一行に見送られて、出発しました。


 千年要塞に【転移(テレポート)】します。


 ・・・


 千年要塞、冒険者ギルド支部。


 まずは、オラクルの冒険者登録をして、ギルドカードを作りました。

 昨日の買取査定の結果が出ている、というので、ついでに確認。


 私は、【超位】59頭のコアと肉以外の部位買取で……177万金貨(1770億円相当)。

 ソフィアは、【超位】75頭のコアと肉以外の部位買取で……225万金貨(2250億円相当)。


 何だか、1千億円単位の金額を見ても、動揺しなくなっていますね。

 正直、麻痺して来ています。

 いかん、いかん……庶民感覚を失ってはいけません。


 オラクルは、発行されたギルドカードを大切そうに【宝物庫(トレジャー・ハウス)】にしまいました。


 オラクルは、パーティ登録も行いました。

 オラクルには、まだ、国籍がありませんので、仮、という扱いになります。

【ドラゴニーア】に戻った時点で、国籍を取得し、正式な登録を行わなければいけません。


 オラクルは、もちろん、ファミリアーレのメンバーになります。

 昨日の内にファミリアーレの他のメンバーには、連絡をして、承認を得ていました。


 ファミリアーレの他のメンバーは、オラクルに会った事がないので、合うのを楽しみにしているそうです。


 私達は、千年要塞の冒険者ギルド支部を後にしました。


 ・・・


 千年要塞、銀行ギルド出張所。


 ゴトフリード王からの、お達しがあり、銀行ギルド出張所は、営業時間前にも関わらず、店舗を開けてくれました。


 昨日の予定通り、私とソフィアの口座から、出来たばかりのオラクルの口座に、500万金貨を送金します。

 入金を確認すると、アルフォンシーナさんとの段取りに従い、250万金貨が贈与税として、差し引かれていました。


 因みに、冒険者ギルドの買取査定は、所得税が源泉徴収されている金額です。


 私達の保有現金(可処分所得)は……。


 私……640万金貨(6400億円相当)。

 ソフィア……740万金貨(7400億円相当)。

 オラクル……250万金貨(2500億円相当)。


 と、いう金額。


 うん、もはや、金銭感覚がバカになっているのは、間違いありません。


「オラクル。この、お金は、あなたの物です。どのように使っても構いませんし、私やソフィアに許可を取る必要もありませんからね」


「じゃが、オラクルは、美味しい物を食べられないのは、残念じゃの。お金を稼ぐ喜びの、82%は、美味しい物を食べる為なのじゃ」

 ソフィアが、極論をぶちます。


 その数字は、何処から出て来たのでしょうか?

 残り18%は、何?


 割合は、個人差があるのでしょうが、あながち間違いとも言えないような気もします。

 私も、食べ物には、出費を(いと)いませんので。


「ソフィア様、ノヒト様、私も、ファミリアーレの一員にして頂きましたので、パーティ積立に参加しなくてはいけません。振り込んで参りますね」

 オラクルは、そう言うと、嬉しそうに、パーティ口座に振り込みをしています。


 私達は、時間外に店舗を開けてくれた、銀行ギルド職員の皆さんに丁寧に、お礼を言って銀行ギルド出張所を後にしました。


 ・・・


 出発しようとしていると、聖職者達がやって来ました。

 彼らは、私達の前に跪き、口々に……【ファヴニール】様を復活させて下さい……と懇願して来ます。


「あなた達の気持ちは、間違いなく【パラディーゾ】まで、持って行きます」


「任せておくのじゃ」


 さて、行きますか。


 私達は、まずは、所用を済ませる為に、【タナカ・ビレッジ】に【転移(テレポート)】します。


 ・・・


 私達は、【タナカ・ビレッジ】の門の前にやって来ました。

 スマホで呼び出すと、クイーンが現れ、笑顔で迎えられます。

 私達は、【タナカ・ビレッジ】に入りました。


 昨日、私が、クイーンに与えた【自動人形(オートマタ)】達は、しっかり働いているようです。

 畑の世話は、オーセンティック・エディション達が行っており、シグニチャー・エディションがそれを指揮。

 クイーンは、【自動人形(オートマタ)】達の統括指揮をしている様子でした。


 クイーンは、労働力が増えたので、畑を広げようとしているのだ、とか。


「これから、忙しくなります」

 クイーンは、本当に楽しそうに言いました。


 クイーンに人権が認められた事は、昨日、スマホで一報を伝えていましたが、今日は、ゴトフリード王と【パラディーゾ】の聖職者達から預かった、クイーンの人権を認める、という勅書と認状を直接手渡します。


「クイーン・タナカ。あなたに【アトランティーデ海洋国】と【パラディーゾ】より、人権が認められます。また、【パラディーゾ】国籍も同時に与えられます」

 私は、王使と、聖職者の代理として、証書の内容を読み上げました。


「クイーン・タナカ。其方に、セントラル大陸の守護竜として、人権を認めるのじゃ」

 ソフィアも、直筆の魔法文書をクイーンに手渡します。


「謹んで、お受けいたします」

 クイーンは、跪いて、3枚の証書を受け取りました。


 因みに、クイーン・タナカ、という名前は、一般呼称である女王と混同しないように、という配慮で与えられた家名です。

 つまり、クイーンが名前、タナカが家名、という事。


 クイーンは、マスターであるエンペラー・タナカ氏と同じ家名を名乗れる事を、大いに喜んでいる様子でした。


「では、また来ます」


「なのじゃ」


「はい。お待ちしております。いつでも、お越し下さい」


 私とソフィアとオラクルは、クイーンに挨拶をして、【転移(テレポート)】します。


 ・・・


 私達は、【パラディーゾ】近郊の、昨日の到達地点に到着しました。


 早速、ソフィアが魔物を蹴散らしながら、【パラディーゾ】の都市城壁に向かって進みます。

【超位】の魔物が、まるで紙吹雪のように舞っていますね。

 ソフィアの振るう【クワイタス】の高速の斬撃は、まるでシュレッダーのようです。


 私達は、苦もなく、【パラディーゾ】の城門に辿り着きました。


 さあ、【パラディーゾ】に入りましょう。


 ・・・


【パラディーゾ】の中の様子は、【ベルベトリア】と同じようでした。


 つまりは、廃墟。


 900年前は、【パラディーゾ】は、サウス大陸最大の大都市で、人口が世界で最も多かったはずですが……。

 現在は、不気味なほどの静寂に支配されていました。


「中央塔に行こう」


「なのじゃ」


 私達は、東西南北に走る中央通りの1つ、南北のメインストリートを進みます。

 魔物がウロついていますが、数は多くありません。

 私とソフィアで、軽く掃除出来ます。


 私達は、【パラディーゾ】の中央塔にやって来ました。


 いよいよですね。


 私達は、エレベーターで最上階に昇り、礼拝堂に入りました。


 とりあえず、転移座標を設置しましょう。


「さてと、早速、やっつけてしまいましょうね」

 私は、礼拝堂の八つの角にある【ファヴニール】を(かたど)った、彫像をクルクルと回して、中心に向けます。

 巨大な彫像がまるで抵抗なく動きますが、この像は、レベルがカンストしている地球人(運営者とユーザー)でないと、動かせません。


 八つの像の向きを中央に向け終えると……。


 ゴゴゴゴゴ……。


 始まりましたね。

 守護竜降臨イベントです。


 空間そのものを揺さぶるような振動と共に、礼拝堂の中央に描かれた魔法陣から光が放たれ始めました。

【ファヴニール】の降臨イベントが始まります。


 ゴゴゴゴゴ……ビカーーッ!


 眩しっ!


「【ファヴニール】である。強き者よ、お前に、恩寵を与えよう」


「【ファヴニール】。お前を顕現させ、現世に留まり続ける事を、ゲームマスターとして許可します」

 私は、【ファヴニール】の台詞に被せ気味に言いました。


「え?」

【ファヴニール】は、【(ドラゴン)】形態のままでも、はっきりわかるくらいに、ポカーン、とします。


「今日は、忙しいので、事情は、道々、説明しますので、準備して下さい。すぐ、出かけられますか?」


「え?え、あの、何?」

【ファヴニール】は、取り乱していました。


「久しいのじゃ、ファヴ。いつ以来かの?」

 ソフィアは、【認識阻害(ジャミング)】の指輪を外して言います。


「はっ!お姉様?」

【ファヴニール】は、言いました。


 ん?

 お姉様?

 ソフィアが?

 このチンチクリンの幼稚園児みたいなのが?


 ええ!

 そんな設定知りませんでした。


「ファヴよ。ともかく、人化せよ。見上げておると、首が疲れるのじゃ」


「わ、わかりました」


【ファヴニール】は、溢れ出ていた魔力を身体に巻き付けるようにして、縮んで行きます。


 シュルルル……ポンッ!


 そこに、いたのは、ソフィアと同年代くらいに見える幼い男の子でした。


 なるほど。

【ファヴニール】の性別は、(おす)なのですね?

 そして弟属性……。


 ・・・


【パラディーゾ】の中央塔。


 私が、【収納(ストレージ)】から取り出した服を、言われるがままに着て【ファヴニール】は、未だ、状況が飲み込めていない様子。


 私とソフィアで代わる代わる、事のあらましを説明しました。


「つまり、僕の守護するサウス大陸を人種の手に取り戻す為に、お姉様達3人は、戦ってくれているのですね?」

【ファヴニール】は、言いました。


【ファヴニール】は、多少、舌足らずな口調ながら、知性は高そうです。


「そうじゃ、ファヴ。じゃから、手伝うのじゃ」


「わかりました、お姉様。ならば、僕の役目は、人種の防衛でしょうか?それとも、攻勢でしょうか?」


「うむ。攻め手一本槍なのじゃ。楽な戦なのじゃ」


「わかりました。では、まず、スタンピードを止めませんと」


「なのじゃ」


【ファヴニール】は、極めて理知的でした。

 見た目は、幼稚園児ですが……。


【ファヴニール】は、塔の窓から、首都【パラディーゾ】の様子を黙って眺めていました。

 この荒れ果てた【パラディーゾ】は、彼の国なのです。

 今、この滅亡した国には、【ファヴニール】の民はいません。

 彼の表情には、深い悲しみと共に、決意の炎が揺らめいていました。


「【ファヴニール】。まずは、チュートリアルを受けてもらいますよ」


 急いで最前線に飛び出して行くより、時間を取られてもチュートリアルによって戦力の底上げを図る方が奪還作戦の効率が上がりますからね。

【マッピング】は戦闘に役立ちますし、有用な【贈物(ギフト)】も得られます。


「チュートリアル……確かユーザーが受けるという、モノだったような」


「うむ。これなるノヒトの手によれば、我ら守護竜もチュートリアルを受ける事が可能なのじゃ」


「そうなのですね。わかりました」

【ファヴニール】は、理解しました。


 飲み込みが早くて助かります。


「ファヴよ。我は、ノヒトから、ソフィアという名をもらったのじゃ。今後は、そのように呼ぶが良い」


「ソフィア……ソフィアお姉様ですね。素敵な、お名前です」


「私の事は、ノヒトと呼んで下さい」


「ノヒト。では、僕はファヴと。ソフィアお姉様に付けて頂いた愛称(ニックネーム)なのです」

【ファヴニール】改め、ファヴは言いました。


「わかりました、ファヴ。これから、よろしく」


「こちらこそ。どうぞ、よろしくお願いします」

 ファヴは、ペコリと頭を下げました。


 ・・・


 私達は、礼拝堂で検討会を行なっています。


【ファヴニール】の装備をどうするか、という問題。


 鎧の方は、ソフィアとお揃いの【ヴァルキリーの鎧】で、すぐ決まりました。

【ヴァルキリーの鎧】は、軽鎧で動きを阻害せず、また、魔力親和性が高いので、魔力が高い守護竜の装備としては、うってつけかもしれません。

【ファヴニール】としては、ソフィアと同じ鎧が良かったようです。


 因みに、【ヴァルキリーの鎧】は、軍団兵装である為、全部で99セットありました。

 性能の違いは、ほとんどありませんが、見た目がわずかに違います。

 その99セットの内、指揮官用の【ヴァルキリーの鎧】が3つあり、それぞれ【ウルドの鎧】、【ヴェルダンディの鎧】、【スクルドの鎧】と云います。

 この3つが【ヴァルキリーの鎧】の中でも特に優れている、とされていました。

 が、実際のスペックは、ほとんど変わりません。

 特注品と既製品の違いのようなモノでしょうか……。


 ソフィアの装備する物は、【ウルドの鎧】。

【ファヴニール】が装備する物は、【スクルドの鎧】。


「鎧は、ともかく、武器に何を選ぶかは、重要なのじゃ。戦闘スタイルを左右するのじゃ。やはり、魔力を込めると性能が向上する武器を選ぶべきじゃな」

 ソフィアは、以前は武器・防具の類をあれほど嫌っていた癖に、今は、【ファヴニール】に武器戦闘の利点を盛んに力説していました。


 この変わり身の早さを、私は、むしろソフィアの美点だと思いますね。


 君子豹変す。


 現実主義であり合理主義。

 私は、これが、最高ではないとしても、最もマシな思考だと思います。

 おかしな思想や理想に囚われて、自縄自縛になる愚かさは、醜悪そのものですからね。


【ファヴニール】は、私が手渡した装備品リストを熟読して、やがて、ソフィアに勧められて、一つの武器を選択しました。


 十文字槍【クルセイダー】。


「これが、格好良いのじゃ」

 ソフィアが言います。


「ソフィアお姉様に見立てて頂いた武器ですので、間違いありませんね」

【ファヴニール】は、嬉しそうに言いました。


【クルセイダー】も、私が愛用する【アルタ・キアラ】や、ソフィアの【クワイタス】同様、魔力を流せば、魔力量に応じて性能が高まる、という特殊効果を持ちます。

 このギミックは、魔力が無尽蔵な守護竜が使うならば、必須でしょうね。


 また、【クルセイダー】は、【クワイタス】のような、魔剣や魔槍に類する物ではなく、聖なる属性の武器なので、随分穏当でした。


 因みに、聖なる属性とは、【回復(リカバリー)治癒(ヒール)】の効果を高める、という効果を云います。

 つまり、【クルセイダー】を持った状態で、【回復(リカバリー)治癒(ヒール)】を使うと、魔法触媒として働き、その効果を高める訳ですね。


【ファヴニール】は、オラクルに手伝ってもらい、鎧を着付けます。


 なんというか……。

 ソフィア同様、ハロウィンの子供のコスプレにしか見えません。


 ともかく、【ファヴニール】の装備は、決まりました。

お読み頂き、ありがとうございます。


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活動報告も、ご確認頂けましたら、幸いでございます。

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