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第1047話。自由渡航許可。

 ゲームマスター本部ノヒト・ナカ執務室(オフィス)


 ソフィア達【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】が【秘跡(クエスト)】のクリア報酬で貰った【エンプティ・指輪(リング)】には、安全の為に私がゲームマスター権限を用いて特殊ギミックによる所有者登録が行われました。


 私がゲームマスター権限で行わなくても、ユーザーであれば冒険者ギルドで同様の所有者登録が行えます。

 ユーザーが冒険者ギルドで行う事が出来る特殊な所有者登録は、所有者登録をしたアイテムを何処(どこ)かに置いたまま離れると自動的に【収納(ストレージ)】にアイテムが収容されたり、死亡判定が出た際に装備していたり【収納(ストレージ)】内にあるアイテムごと【復活(リ・スポーン)】が可能になるというギミックです。


 この所有者登録をしておけば、原則としてアイテムを紛失したり盗まれたりする心配はありません。

 例外として【世界の(ことわり)】の解釈上、違法なプレイヤー・()ヴァーサス・()プレイヤー()などが行われた場合に、正当防衛でPVPを撃退した側が、違法襲撃側の装備したり所持するアイテムを所有者登録の有無に関係なく全て奪う事が認められるルールがありました。

 ただし撃退出来なかった時には、相手の持ち物を奪う事は出来ません。


 この特殊なギミックの所有者登録は、ユーザー向けのサービスなので本来NPCには利用不可能です。


 ソフィアやウルスラやトリニティなど不死身設定を持つ個体以外のNPCは、死亡すると【復活(リ・スポーン)】しません。

 なので不死身ではないNPCが携行したり【収納(ストレージ)】に保管しているアイテムは、死亡時に死体と一緒にその場に遺り、【収納(ストレージ)】内のアイテムはその場にバラ撒かれます。


 ただし私がゲームマスター権限を用いれば、ユーザーの特殊なギミックの所有者登録をNPCに与える事が可能でした。


 なので私は、その特殊なギミックの所有者登録をゲームマスター本部要員や【レジョーネ】や【ファミリアーレ】に対して、私やミネルヴァが貸与しているアイテム類について行っています。

 私が貸与している訳ではない、各自の所有物に関しては、その限りではありません。


 この場合ゲームマスター本部要員や【レジョーネ】や【ファミリアーレ】のメンバーで不死身設定がない誰かが死亡してしまった場合、私が貸与しているアイテムは自動的に私の【収納(ストレージ)】に戻って来ます。


 閑話休題。

 私がゲームマスター権限で所有者登録をした事で、とりあえず【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】が持つ【神位魔法】のギミックが内包された【エンプティ・指輪(リング)】が盗まれたり、何処(どこ)かに置き忘れて他人に持ち去られたりする事で、不特定の誰かに強大な【神位魔法】を使われて被害が出るリスクが回避出来ました。


 また私のゲームマスター権限でなくても、ミネルヴァなら銀行ギルドや冒険者ギルドなど、ゲーム時代から存在する各ギルドのフォーマットを自由に使えます。

 ミネルヴァが冒険者ギルドの登録フォーマットをハックすれば、NPCにユーザー向けの所有者登録をする事も可能でした。

 今回は私がやった方が早いので、ゲームマスター権限で所有者登録をしています。


 なのでミネルヴァが、その気になれば世界(ゲーム)中のNPC達の銀行ギルドの預金を、全て私の【ギルド・カード】に()()()()移してしまう事も出来てしまうのですよ。

 もちろんゲームマスターの業務遂行に必要な場合を除いて、そんな事はしませんけれどね。


 実際に【エンプティ・指輪(リング)】にソフィアの【神位魔法】の何を【効果付与(エンチャント)】するのかは、これからパーティ・メンバーで相談して決めるそうです。


 ただし、ティア・フェルメールが持つ【エンプティ・指輪(リング)】に関しては、既にソフィアが【神位魔法】を【効果付与(エンチャント)】していました。

 ティア・フェルメールの【エンプティ・指輪(リング)】には【神位結界(バリア)】が【効果付与(エンチャント)】されたのです。

 ソフィアは【ドゥーム】での経験で、ソフィア達【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】の中で唯一不死身ではないティア・フェルメールを保護する為に相当気を遣ったのだとか。

 なので、ティア・フェルメールが持つ【エンプティ・指輪(リング)】の【効果付与(エンチャント)】は【神位結界(バリア)】一択だったようです。


 不死身の設定を持たないティア・フェルメールが万が一の危機に遭遇した際、咄嗟に【神位結界(バリア)】を張ればソフィア達が救援に駆け付けるまで【結界(バリア)】に立て篭もっていれば、ほぼ全ての脅威から身を守れるので、この選択は妥当でしょうね。


 ソフィアなら都市や国家丸ごとなどという法外に巨大な【結界(バリア)】も張れてしまいますが、ソフィア以外の【神格者】ではない【ラ・スクアドラ・(チーム・)ディ・ソフィア(ソフィア)】のメンバーは強力な魔法触媒を用いても広大な領域をカバーする【神位結界(バリア)】発動のコストとして必要な莫大な魔力が賄えません。

 ただしティア・フェルメール1人用の小さな【神位結界(バリア)】なら【ソロモンの指輪】など最高水準の魔法触媒を魔力タンクとして使用すればギリギリ必要量の魔力が捻出可能でした。

神の遺物(アーティファクト)】の魔法触媒を大量に使って別々に魔力を貯めておけば合算で相応の魔力量にはなりますが、複数の魔法触媒から自由自在に魔力を取り出して運用する事が相当に難しいので、グレモリー・グリモワール(クラス)の魔法制御能力がなければ無理ですからね。


 こうしてティア・フェルメールの【エンプティ・指輪(リング)】には【神位結界(バリア)】が【効果付与(エンチャント)】され空っぽ(エンプティ)ではなくなり……【神位結界(バリア)指輪(リング)】……になりました。


 オラクルとヴィクトーリアは、ソフィアの内部【収納(ストレージ)】に保管してある【バック・アップ・コア】の残機があれば不死身なので防御系ギミックではなく、何か他の魔法を選ぶ方向性になりそうです。

 とはいえオラクルとヴィクトーリアも、ティア・フェルメールの場合と同様に【神位級】の【攻撃魔法】などを広範囲に行使する為には魔力コストが莫大になるという問題があるので、いずれにしろ局所的で効果を絞ったモノにならざるを得ません。


 ウルスラとトライアンフに持たせる【神位魔法】は、防御系でも攻撃系でもない第3の選択にするようです。

 ウルスラとトライアンフは不死身ですし、トライアンフには当たり判定自体がありません。

 なので両者に防御系は必要ありませんし、攻撃系をウルスラとトライアンフに持たせる事にはソフィアが懸念を示しました。

【低位】の魔物に襲われて【神位魔法】を使った挙句、無関係な人達が流れ弾に巻き込まれたり……という事を危惧しているようです。


 私も、そう思いますね。


 ウルスラは主人(誰かさん)に似て、絵に描いたような……おっちょこちょい……です。

 トライアンフは存外に知性と理性が高いので、誤った魔法の運用によって周囲に被害を及ぼす心配はないと私は考えていますが、ウルスラの【使い(ファミリア・)(スピリット)】であるトライアンフは、ウルスラから誤った【命令(コマンド・)強要(インシステンス)】が行われた場合には命令を拒否出来ません。

 念の為、トライアンフにも【神位】の【攻撃魔法】を持たせない方が安全です。


 ウルスラとトライアンフは現在ケーキ・バイキングにいて席を外しているので、具体的に何の【神位魔法】を【効果付与(エンチャント)】するのかは?後で本人達と相談して決める事になりました。


「待てよ……。つまり詠唱で自由に【神位魔法】が使える我にとって、この【エンプティ・指輪(リング)】を持つ意味が全くないのではないか?」

 ソフィアが根本的な問題に気が付きます。


「まあ……そうですね」


「なぬーーっ!?やっぱり我は損をしているではないか?【創造主(クリエイター)】め〜っ!」

 ソフィアは怒り出しました。


「ソフィアの分の【エンプティ・指輪(リング)】はアルフォンシーナさんに持たせてはどうですか?海洋の守護竜たるソフィアの首席使徒であるティアが【神位結界(バリア)】のギミックを内包したエンプティ……もとい、【神位結界(バリア)・リング】を所持するなら、セントラル大陸の守護竜たるソフィアの首席使徒であるアルフォンシーナさんも同じモノを持つ事でバランスが取れるでしょうからね」


「なるほど、それは両首席使徒に差を付けぬ意味で一理ある。とかく、人種という生き物は愚かじゃから、2つある我の神殿で此方(こちら)の首席使徒は【神位結界(バリア)・リング】を持ち、彼方(あちら)は持たないという事になると、片方がもう片方に対して優越感を持ち、それが時代を経ると良からぬ選民思想になったりするモノじゃからな。わかった、我の【エンプティ・指輪(リング)】は【神位結界(バリア)】を【効果付与(エンチャント)】してアルフォンシーナに持たせよう」

 ()っかちなソフィアは、すぐに【効果付与(エンチャント)】を済ませて、アルフォンシーナさんに【神位結界(バリア)指輪(リング)】を渡します。


「こんな素晴らしいアイテムを頂いても宜しいのですか?私はティア猊下(げいか)のように【ドゥーム】でソフィア様のお手伝いをした訳ではございませんのに」

 アルフォンシーナさんは言いました。


「構わぬ。どうせ我には無意味なアイテムじゃからの」


 すぐにミネルヴァによって、ソフィアの【エンプティ・指輪(リング)】の所有者登録が、アルフォンシーナさんに名義変更されます。

 因みにティア・フェルメールとアルフォンシーナさんが所有する事になった【神位結界(バリア)指輪(リング)】は、2人が亡くなった場合、後任の大海宗と大神官に名義変更して代々受け継がれる事になりました。


「とりあえず【エンプティ・指輪(リング)】の取り扱いは良いですね」


「何を言っておるのじゃ。我は自分の報酬をアルフォンシーナに譲渡したのじゃから、ノヒトに損失補填を要求するのじゃ」

 ソフィアが訳のわからない理屈を言います。


「ソフィアは、自分の報酬をアルフォンシーナさんに譲渡するという形で権利行使したではありませんか?ましてや【秘跡(クエスト)】の報酬に関する管轄部署は、ゲームマスター本部ではありません。なので私が損失補填する理由がありませんよ」


「【創造主(クリエイター)】が我には無意味なアイテムを報酬にしたのが全ての元凶なのじゃ。チーフ・ゲームマスターたるノヒトは、現世における【創造主(クリエイター)】の全権代理なのじゃろう?ならば、ノヒトには【創造主(クリエイター)】のミスを補填する義務があるのじゃっ!」

 ソフィアが滅茶苦茶な言い掛かりを付けて来ました。


「一応要望を聞くだけ聞きましょう。ソフィアは私にどのような損失補填をして欲しいのですか?」


「我は、【ドゥーム】への自由渡航の権利を要求する」


「【ドゥーム】に渡航して何をするのですか?」


 大体の予想は付きますけれどね。


「【ドゥーム】に自由に渡航出来るようになれば、時間軸の違いによってサボり放題じゃ」

 ソフィアは臆面もなく言ってのけました。


 やっぱり、という感想です。


「わかりました。許可しましょう」


「ん?良いのか?ノヒトならダメだと言うかと?」


「構いませんよ。その代わり、【レジョーネ】や【神竜神殿】や【神竜海洋神殿】の職務は、きちんと熟して下さいね。それを約束するなら、【ドゥーム】への自由渡航を許可します」


「本当か?ノヒト、ありがとうなのじゃ。では、この後、早速1秒ほど【ドゥーム】に行きたいので、連れて行って貰おう」


「1秒……つまり現地時間で1日ですね。わかりました。ただし、私が連れて行かなくてもソフィアならば自力で【ドゥーム】の【転移座標】に【転移(テレポート)】出来ますよ。現在の【ドゥーム・シナリオ】は、そもそもソフィアが起動したモノですので。【ドゥーム・シナリオ】の【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】は……とりあえず、このゲームマスター本部の1階エントランスの受付係の【コンシェルジュ】に持たせておきますので、それで自由に渡航して下さい。ただし誰かが呼び出したら、すぐ帰還して下さいね。それを守らないなら渡航禁止にします。それから、わかっているでしょうが寿命がある者を【ドゥーム】に連れて行くと、【オーバー・ワールド】を基点として見ると86400倍で寿命が消費されますので注意して下さい」


「ふむ。わかったのじゃ」

 ソフィアは頷きました。


 私がソフィアに対して簡単に【ドゥーム】への自由渡航を許可した理由は、元から今ある【ドゥーム・シナリオ】はソフィアが起動した【秘跡(クエスト)】なので、ソフィアなら自由に現在の【ドゥーム・マップ】へ渡航可能だったからです。

 元来ソフィアが自由渡航可能な【マップ】に、自由渡航を許可したところで状況変化が起きないので、私には全くコスト負担はありません。


 それに、そもそもの話ソフィアは、私やミネルヴァの分離体やトリニティが転移座標や【転移(テレポート)目標(ターゲット)】を設定している場所へなら、裏技を使えば何処(どこ)へなりとも【転移(テレポート)】可能なのですけれどね。


【オーバー・ワールド】と【ドゥーム・マップ】の間には、私が無限魔力を流しっ放しにする事で亜空間バイパスが開通していました。

 現状【ドゥーム】は私がゲームマスター権限で【秘跡(クエスト)】から除外(オミット)しています。

 なので今までのように……【ドゥーム・シナリオ】の【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】を開く……という通常の方法ではプレイヤーは【ドゥーム】にはエントリー不可能になりました。

 渡航可能なのは、私と【共有アクセス権】があり尚且つ【転移(テレポート)】能力があるメンバーだけ。

 つまり私、ミネルヴァの分離体、トリニティ、ウィロー、カリュプソです。


 カルネディアもトリニティを経由して【共有アクセス権】に連なっていますが、私が幼いカルネディアの【共有アクセス権】の行使を禁止しているのと、カルネディアは今はまだ【転移(テレポート)】を使えないので、カルネディアが自力で【ドゥーム】に渡航する事は出来ません。


 そして、もう1名【共有アクセス権】にアクセス可能な者がいました。


 それはソフィアの脳に共生する【知性体】のフロネシスです。

 フロネシスは私が【神竜(ディバイン・ドラゴン)】にソフィアと名付け(ネーミング)を行った事で、ソフィアの脳内で独立(スタンド・アローン)してしまった、もう1つのソフィアの自我でした。

 私はフロネシスと【盟約(コベナント)】を結び支配下に置いていますので、フロネシスも【共有アクセス権】を持っています。


 ソフィアはフロネシスのアシストがあれば、私の【共有アクセス権】の効力が及ぶ場所への【転移(テレポート)】が可能でした。

 まあ、フロネシスは私の支配下にありますので、結局は私の許可が必要にはなりますけれどね。


 閑話休題。

 とりあえず今夜の【ドゥーム】代表者会議は、お開きです。

【ドゥーム】の代表者達は、【ワールド・コア・ルーム】のホテルに向かいました。


 また明日の朝から【ドゥーム】代表者会議は再開されます。

 もはや【ドゥーム】の住民(NPC)達は、ティア・フェルメールが率いる【神竜海洋神殿】の所属となったので、今後の【海洋神殿】の運営などに関して話し合う事が沢山ありますからね。


 明日以降は【神竜海洋神殿】中央執行部会議は、私の執務室(オフィス)ではなく会議室の方で行ってもらう事になりました。


 この後、ティア・フェルメールを除いた【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】は、先程私とソフィアが約束した通り、【ドゥーム】に1秒(【ドゥーム】の1日)だけ向かいます。

 私も【ドゥーム】の様子を一度確認しておくつもりでしたので、丁度良い機会でした。


 ミネルヴァの分離体が時間の流れが違う【ドゥーム】で数十年間フル・スイングで開発を行なった結果、現地の状況がどうなっているのか見るのが怖いですね。


 私の執務室(オフィス)にいる一同は解散しました。

お読み頂き、ありがとうございます。

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活動報告、登場人物紹介&設定集もご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告には、訂正箇所以外のご説明ご意見などは書き込まないようお願い致します。

ご意見ご質問などは、ご感想の方にお寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

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[一言] ノヒトたちがRPGやってる間にミネルヴァだけ都市開発シミュレーションしてるですねわかります
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