第1045話。人事を尽くして天命を待つ?
本日2話目の投稿です。
ゲームマスター本部ノヒト・ナカ・執務室。
【ドゥーム】の住民は、将来的に海洋の守護竜である【神竜】の【神竜海洋神殿】総本山の聖職者や神殿騎士や事務方や諸事雑務係になる事となりました。
ソフィアが、それで良いなら私に異論はありません。
そして【神竜海洋神殿】の中枢を担う役職の人事が始まったのです。
「メディア。其方を神官長……いや、ティアが大海宗じゃから、海宗長に任ずる」
ソフィアは言いました。
「へ?私が聖職者……それも、ティア大海宗猊下の次席になるのですか?」
メディア・ヘプタメロンは困惑して訊ねます。
「何じゃ?不服か?」
「不服など、とんでもない。しかし私は【真祖】の【ヴァンパイア】ですが宜しいのですか?【ヴァンパイア】などの【魔人】と聖職者は言わば【対抗者】。【ヴァンパイア】が聖職者になるなど前代未聞でございますよ」
「だからどうした?伝統やら前例などというモノは、寿命に支配され世代を連ねなければ知識を受け継いで行く事が出来ぬ人種が勝手に重視しておるだけで、我ら【神格者】は、そんな下らぬ事には全く拘らぬ。【ヴァンパイア】が聖職に就いてはならぬ……などという【世界の理】もないのじゃ。このトリニティも【魔人】の【エキドナ】じゃが、【創造主】の御使にして【調停者の首座】であるノヒトの直仕たる【調停者】代理なのじゃぞ?【調停者】とは神聖にして侵すべからざる職責じゃ。つまり聖職者の中の聖職者じゃ。【エキドナ】が聖職者を務めておるなら、【ヴァンパイア】も聖職者を務めて何の問題がある?それに我の妹でウエスト大陸の守護竜たるリントの所の首席使徒に至っては、もはや生物ですらない【神の遺物】の【自動人形】のティファニーが務めておるじゃ。じゃから種族の問題などは些末な事。我は人格と見識と資質のみを重視して人材を登用する主義なのじゃ」
「はあ……」
「で、受けてくれるな?」
「か、畏まりました。微力ながら身命を賭してソフィア様にお仕え致し、海宗長の重責を果たして参ります」
メディア・ヘプタメロンは跪いて礼を執りました。
「うむ」
「あの、ソフィア様。お役目を拝命した後から、お伺いするのは恐縮なのですが、海宗長の役割はどのようなモノなのでしょうか?」
「ふむ、ティアよ。説明してやるのじゃ」
ソフィアはティア・フェルメールに丸投げにします。
ソフィアは海宗長(神官長)の役割などについて詳しい事は何も知らないのでしょうね。
「海宗長は【神竜神殿】の神官長に相当する役割です。主に大海宗である私の代理を務め、職位・職権においても私の次席で【神竜海洋神殿】の序列2位です。海宗長固有の業務としては【神竜海洋神殿】の全聖職者達の管理と育成を管轄する人事と教育の責任者でもあります」
ティア・フェルメールが説明しました。
「わかりました」
メディア・ヘプタメロンは了解します。
「チェルノボーグ。其方を儀典長に任ずる」
ソフィアは言いました。
ソフィアは【魔人】のメディア・ヘプタメロンに続き、【上位悪魔】のチェルノボーグも高位聖職者にしてしまいます。
他宗教の聖職者が聞いたら気絶しそうな人事ですね。
まあ、私も特定の種族に偏見はありませんので、ソフィアがOKなのであれば反対はしません。
「畏まりました。ソフィア様、儀典長とは名称から想像するに、儀式・典礼を司る役職ですか?」
チェルノボーグは跪いて礼を執りました。
「ティアよ」
ソフィアは再びティア・フェルメールに丸投げにします。
「はい。儀典長は、儀式・典礼・祭祀の責任者であり、神殿の祭具・宝物の管理、布教、信徒の戸籍管理に加えて、地元コミュニティや他の宗教との対話の責任者も担います」
ティア・フェルメールが説明しました。
「戸籍の管理もですか?」
「はい。儀典長は信徒の冠婚葬祭を管轄します。信徒は生まれたら神殿で洗礼を受け、神殿で結婚式を行い、亡くなれば神殿で葬礼を行います。ですので、儀典長が戸籍を管理するのが合理的なのです」
「わかりました」
「それから、ベロボーグとヴァンダービルトよ。其方らは【盟約】を結んでおるが、それを我が【破棄】して、改めて我がベロボーグと【盟約】も結び直しても構わぬか?」
ソフィアは訊ねます。
「ソフィア様の御意向であれば、構いません」
「私もソフィア様の御意に従います」
ベロボーグとヴァンダービルトは了解しました。
「うむ。ならば【盟約破棄】……【盟約】。これで良し。ベロボーグは神殿騎士団長に任ずる。ヴァンダービルトは神殿使節長じゃ。本来聖職者は世襲ではないが、ヴァンダービルトに関しては特例として1代に限り息子のアップダイクへの使節長の世襲を許す。アップダイクはヴァンダービルトから使節長を継承する時まで使節に任ずる」
「騎士団長はソフィア様の近衛を担います。使節長は神殿の外交使節の長でございます。ただし外交の責任者は職責上、私が兼務しておりますので、使節長の外交権限は私の次席という扱いになります」
ティア・フェルメールが、もはやソフィアからの指示を待つまでもなく説明します。
「重責を謹んでお受け致します。また、愚息の将来にまで御高配を賜りありがとうございます」
ヴァンダービルト王改め、使節長は跪いて礼を執りました。
「ありがとうございます」
ヴァンダービルト使節長の息子アップダイク使節も跪いて礼を執ります。
「ソフィア様の御意向には従いますが、神殿騎士団長とはソフィア様をお守りする筆頭の役職でございます。私より、メディア海宗長様や、チェルノボーグ儀典長様の方が戦闘力が高いのですが?」
ベロボーグが疑義を呈しました。
「構わぬ。我を害する力を持つ者は【創造主】とノヒトくらいじゃから、元来我に護衛など必要ない。むしろ【海洋神殿】の騎士団は我の命で出動し、神殿や使徒や信徒を守る役割が主となるじゃろう。じゃからメディアやチェルノボーグより個体戦闘力で劣っておっても、軍団指揮能力に長ける其方の方が我の騎士団長には相応しいのじゃ」
ソフィアは言います。
「そういう事であれば、謹んでお役目を拝命致します」
「ロデリックは神殿事務長、スチュアートは副事務長、ロズリンは大海宗付きの筆頭秘書官、シドニーは秘書室長、テスは海宗長付きの秘書官じゃ」
ソフィアは言います。
「事務長は神殿の事務責任者でございます。筆頭秘書官は私の専属秘書官の最上位者であり、神殿の全秘書官のトップの職位・職権者です。同時に筆頭秘書官は、万が一私の身に何かあった場合には大海宗を継ぐ役割です。秘書室長は全秘書官の管理責任者で神殿秘書官としてはロズリンさんに次ぐ序列2位、海宗長付き秘書官はメディアさんの専属秘書官としては最上位者で、神殿秘書官としては序列3位です」
ティア・フェルメールが説明しました。
「謹んでお受け致します」
「身命を賭して相勤めます」
シドニー秘書室長と、テス海宗長付き秘書官は跪いて礼を執ります。
「お、お、お待ち下さい。私がティア大海宗猊下の役職を継ぐなどと、畏れ多い事でございます。とても、そのような重いお役目は、私などの任に耐えません」
ロズリン元皇太王女は言いました。
「ロズリンが適任じゃ」
ソフィアは言います。
「いいえ。ソフィア様には、ウルスラ様やオラクル様やヴィクトーリア様がいらっしゃるではないですか?お3方のどなたかになさって下さいませ」
「ウルスラは、ああ見えて【エリュシオン】の【妖精】族の生息領域の女王じゃ。さすがに他所の地の君主を【海洋神殿】の所属には出来ぬ。オラクルとヴィクトーリアは我の側に居てもらわねば困る。適材適所じゃ」
「し、しかし……」
「不服か?」
「いえ、不服などあろう筈もございません。ただ、大海宗を継ぐだなんて私には到底能力的に無理でございます。ティア猊下は私より若年でありながら既に【聖格者】様でいらっしゃる特別な御方ですので」
「ああ、【聖格】はソフィア様から大海宗に【指名】された時に、同時に身に付くモノですので、大海宗になれば、その時はロズリンさんも自動的に【聖格者】になれますよ」
ティア・フェルメールが説明しました。
「えっ?いや、でも……」
ロズリン元皇太王女は首を振ります。
「それに私の大海宗という職位は、基本的に終身職です。つまり私が死ぬか傷病、あるいは精神や素行に問題があるなどで職責を果たせない場合にのみ、継承権者が大海宗になります。なので失礼ながら普通に考えれば、年齢が若く【聖格者】として長命でもある私より、ロズリンさんの方が先に寿命が尽きると思います。それとも、私が早死にするとお考えなのですか?」
「いいえ。私は能力の問題を申し上げております」
「能力は我があると判断したのじゃ。では何か?我の判断より、ロズリンの判断の方が正しいと言うのか?」
ソフィアは言いました。
「えっ?そ、そのような事はありません。ただ私には、そのような大任は果たせません」
「ロズリン。この通りじゃ……任を受けてくれ。お願いします」
ソフィアは突然土下座をします。
「どうか、御容赦下さいませ……」
ロズリン元皇太王女もソフィアに土下座をし返しました。
何だ、この土下座合戦は?
「う〜む。我が、これ程頭を下げても、あくまでも固辞すると言うのか?我の心からの頼みを、こうも手酷く拒否された経験はない気がするのじゃ?」
「あ、あ、いえ、その……お……お受け致します」
ロズリン元皇太王女、改めティア・フェルメール付き筆頭秘書官は職位を怖ず怖ずと受任します。
ロズリン筆頭秘書官は、半泣きでした。
【神格者】による酷い脅迫の現場を見ましたね。
「一応これで【神竜海洋神殿】世界中央神殿の主要な役職は決まりました。その他の細かな各部署の人材に関しては、今ソフィア様から任命された皆さんと私とで相談して適材適所、配属先を決めて参りましょう。また、【ドゥーム】の子供達は保護者の方と一緒に【竜城】で生活して、大神官アルフォンシーナ猊下の御指導の下、将来の【神竜海洋神殿】の聖職者や神殿騎士や事務方となるべく修行や訓練や学習を始めて頂く事になりましたので、宜しくお願い致します。ソフィア様から何か付け加える事はございますか?」
ティア・フェルメールが言いました。
「うむ。元バイパー中隊のオックスフォードを指揮官に抜擢して、新たに【海洋神殿】所属の【強化外骨格】兵団を組織したいと思う。我は【ドゥーム】で【強化外骨格】という【魔導兵器】を見て、その機動性、即応性、汎用性を高く評価するに至ったのじゃ。【強化外骨格】の海洋型モデルを造って海上・海中・海底を自由に高速航行して防衛や治安維持に当たらせたい。【強化外骨格】兵団の母船となる【強襲揚陸艦】など複数の飛空船は、既に【ドラゴニーア】から譲渡されて確保しておる。元の名称がクサリ蛇中隊じゃから、海洋【強化外骨格】兵団の新名称はコンガー兵団じゃ。ノヒト、【ドゥーム・マップ】の【ロヴィーナ】にある【強化外骨格】を何機か見本として、こちらに送ってくれぬか?アレを元に【ドラゴニーア】の国営工廠で海洋型【強化外骨格】を開発するのじゃ」
ソフィアは言います。
「わかりました。……送られて来ましたね」
私が【ドゥーム】にいるミネルヴァの分離体に超速【念話】で依頼したところ、すぐに【転送装置】で送ってくれました。
「早いの」
ソフィアは言います。
「ええ、時間の流れが86400倍ですからね」
「うむ。アルフォンシーナよ、後で【強化外骨格】を【宝物庫】に容れて持って帰り、国家技師団に渡してくれ。オラクルから国家技師団には指示してある」
ソフィアはアルフォンシーナさんに指示しました。
「畏まりました」
アルフォンシーナさんは頷きます。
「ところで、ソフィア。何故に穴子なのですか?バイパーの海洋版なら海蛇や海蛇の魔物【シー・サーペント】などなのでは?」
私は、どうでも良い事を訊ねてしまいました。
どうしても気になったのです。
「バイパーは陸のニョロニョロじゃ。海のニョロニョロと言えば穴子じゃ。穴子は美味しいのじゃ」
ソフィアは言いました。
あ、そう。
聞くまでもない下らない理由でしたね。
さてと、【神竜海洋神殿】総本山の、とりあえずの主要人事は決まりました。
「あのう〜、私には何か役目がないのでしょうか?」
【上位妖精】のキアラが挙手して訊ねます。
「キアラの役目はウルスラの従者じゃ。キアラには今後ウルスラの直臣として仕えて欲しいのじゃが?どうじゃ?」
ソフィアは言いました。
「喜んでウルスラ陛下にお仕えいたします」
キアラは嬉しそうに宙返り飛行をして言います。
「うむ。ウルスラもトライアンフに続いて従者を得た事を喜ぶじゃろう。我が【ドゥーム】の【サブ・クエスト】のフル・コンプを成し遂げる上で、ウルスラは【ゴーレム・操者】として随分と活躍してくれたから功に報いてやらねばならぬからのう」
ウルスラのステータスを見て【ゴーレム製造】の【能力】が増えていたのは知っていました。
それは【ドゥーム】にいる間に何かしらで【能力】が生えたのでしょうから良いのです。
しかし、やはりソフィア達は【ドゥーム・シナリオ】で【サブ・クエスト】に挑んで遊んでいたのですね。
【ドゥーム】で【ピラミッド】をクリアすると味方ユニットになる名持ち【上位妖精】のキアラが、ソフィア達と一緒にいた時点で【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】が【サブ・クエスト】に挑戦していたのも知っています。
ですが、【サブ・クエスト】フル・コンプリート?
遊び過ぎではないですか?
まあ、お説教は終わったので今更叱ったりはしませんが……。
お読み頂き、ありがとうございます。
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・・・
【お願い】
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心より感謝申し上げます。
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