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第1039話。やはりソフィア(馬鹿娘)からは目が離せません。

 異世界転移56日目(世界暦919年10月26日)。


七色星(イリディセント)・マップ】。

【パンゲア】南方国家【ヌガ法国】法都【ヌガ】。

 玉座の間。


 ソフィア達【ラ・スクアドラ・(チーム・)ディ・ソフィア(ソフィア)】は、【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】の中に吸い込まれてしまいました。


ラ・スクアドラ・(チーム・)ディ・ソフィア(ソフィア)】が【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】の中に飛ばされた後、【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】も【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】が置かれていた祭壇も光の粒子になって消滅してしまったのです。


 ソフィア、ウルスラ、オラクル、ヴィクトーリア、ティア、トライアンフ……誰も失う事なく全員で無事に帰って来て下さいね。

 私は心から祈りました。


 ……まあ、ソフィアなら問題なく【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】の【秘跡(クエスト)】をクリアして戻って来るでしょう。


 何故ならソフィア達が強制的に飛ばされてしまった【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】は、有名な【終末(ポスト・)後の(アポカリプティック)世界(・ワールド)・マップ】の【ドゥーム・シナリオ】。

【超絶級】難易度が揃う【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】の【秘跡(クエスト)】の中でも、この【ドゥーム・シナリオ】の建て付けは最もソフィアのスペックや性質との相性が良いシナリオだと思います。


箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】に限らず【秘跡(クエスト)・マップ】は、チュートリアルなどと同様に、空間的にも時間的にも【オーバー・ワールド】とは【同期(リンク)】していない設定になっていました。

 というのは……あくまでも香り付け(フレーバー)設定で、ゲーム時代にはチュートリアルは2回目以降から、【秘跡(クエスト)・マップ】は常に【オーバー・ワールド】と同じ時間軸にならざるを得ないのですけれどね。


 しかし異世界転移後、その香り付け(フレーバー)設定は、全て現実になっていました。

 なので【秘跡(クエスト)・マップ】内の時間の流れは、チュートリアルと同様に1日が【オーバー・ワールド】の1秒に相当する筈です。


 なので、私がこうしている間にも、【秘跡(クエスト)・マップ】にいるソフィア達の時間は、あっという間に数日経過していました。

 ソフィア達は、もう戻って来ると思います。


【ドゥーム】の【マップ】に【再配置(リ・ロケーション)】された初見プレイヤーの(ほとん)どは、まず運営からの【秘跡(クエスト)】の概要を読み、次に現在地を確認して【マッピング】を行う為に【マップ】を表示する筈。

【マップ】画面を開けば、自動的にフィールド名が目に入ります。

 そうすれば【再配置(リ・ロケーション)】された場所のフィールド表示と、目で見る風景の違いに気が付く筈。


 基本的に環境不変のフィールド設定がある場所は、ユーザーや一般のNPCなどプレイヤーが環境を変える事は出来ません。

【森林】フィールドの木を伐採しても一昼夜で木は生えて【森林】に戻りますし、【砂漠】フィールドに植林しても一昼夜で木はなくなります。


 ただし例外的に【神格者】は環境不変のフィールド設定に干渉して、環境を変えてしまう事が可能でした。

 そして一度設定に干渉して変えてしまったフィールドを元に戻す事も可能です。


 ソフィア達が飛ばされた【ドゥーム】には砂漠しかありませんが、フィールド表示は……【(グレート・)平地(オープン・フィールド)】とか【大平原(グレート・プレーンズ)】とか【(オーシャン)】とか、様々な名称となっていました。

 つまり……フィールドの表示がおかしい……と気付く訳です。


 この世界(ゲーム)では、見た目が砂漠であるなら、フィールドは【砂漠】と表示されました。

 環境不変ではない【平原】や【原野】に植林すれば【森林(環境変更可能)】というふうに表示され、都市を作れば都市名が表示されるのでフィールド表示も変更されます。


 つまり【ドゥーム】が砂漠に覆われているのに、フィールド表示が【(オーシャン)】など【砂漠】以外であるのが設定的に何か変だという事は、誰でも気付けました。


 いや……ソフィアだから、もしかしたら気付かないという事も……。


 いやいや、大丈夫ですよ。

 あ〜見えても、ソフィアだって(れっき)とした【神格者】なのですから。


神竜(ソフィア)】には【創造主(クリエイター)】から、この世界(ゲーム)の基本的な知識がプログラムされています。

 ましてやソフィアは守護竜。

 守護竜なら、時には自分が管轄する大陸の一部地域の環境を変える事だってあるのですからね。


 さすがにソフィアだって……大丈夫ですよね?


 ともかく……フィールド表示がおかしな事になっている……と気が付けば、【神格者】のソフィアなら環境フィールド設定を正しい状態に戻してみようと考える筈。

 すぐに気が付かなくても、【ドゥーム】のシナリオを少し進めてみれば、【ドゥーム】の滅亡の理由が環境破壊だとわかります。


 その段階で……環境をデフォルトの状態に戻せばOK……だと気が付き、【神格者】のソフィアが……自分なら環境フィールド設定を元に戻せる……と考えて実行すれば、それで最高難易度のクリア条件を達成してしまえました。

【神格者】ならば頭がアレでも出来る簡単なお仕事です。


 まさか、それがわからない程、ソフィアも頭がアレではないですよね?

 何だか急に心配になって来ました。


 その時、近くに魔力反応が発生したのです。


 ほっ。


 どうやらソフィア達が帰って来ました。

 ソフィアの【神格者】の特性を利用して環境フィールドをデフォルトの設定に回復させたにしては、少し時間が掛かり過ぎですが、まあソフィアの事ですからクリア条件を達成した後で、【ドゥーム】内の【サブ・クエスト】などで遊んでいたのかもしれません。

 仕方のない神様ですよ……まったく。


 ともあれ無事に帰還したのであれば問題ありません。


 まずはティア・フェルメールが帰還して来ました。


「お帰りなさい。お疲れ様でした。無事で何よりです。他のみんなは?」

 私はティア・フェルメールを労ってから訊ねます。


 ティア・フェルメールは、ソフィアが迂闊(うかつ)に起動させてしまった【秘跡(クエスト)】のエントリーに際して、パーティ・メンバーに登録されていたので巻き込まれてしまっただけでした。

 なので良い迷惑だったのです。

 ソフィアは、お説教をしてやらなければいけませんが、巻き込まれた被害者組は労ってあげなければいけません。


「ノヒト様。ソフィア様はクリア条件を満たした後……死亡リスクがある私を一足早く帰還させ、ご自身は【ドゥーム】の自然環境を回復する……と仰って、他の皆と一緒に【ドゥーム】に残られました」

 ティア・フェルメールは報告しました。


「ん?時系列が逆になっていませんか?ソフィアの【神格者】権限で環境フィールド設定をデフォルト状態に戻してクリア条件を満たし【転移魔法陣】が出現したのですよね?ならば、もう自然環境は一昼夜放置すれば勝手に回復しますよ。つまり……一昼夜待って環境が回復するのを見届けてから帰って来る……という事でしょうか?随分と律儀というか何というか……」


【ドゥーム】の環境とは、【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】を起動キーとする【秘跡(クエスト)】の中の環境でしかないので、仮にソフィア達が今回の【秘跡(クエスト)】で自然環境を回復したとしても、また別の【箱庭(ザ・ブック・オブ・)の書(サンド・ボックス)】で誰かが【ドゥーム】シナリオを始めれば、結局は最初の死の砂漠の状態に戻ってしまうのです。

 つまりはソフィア達が自然環境回復を見届ける意味がありません。


 まあ、【ドゥーム】の中に配置されたNPC達に思い入れを持ってしまう気持ちも、わからなくはないです。

 ゲーム時代も【ドゥーム・シナリオ】の【導き手(メンター)】のメディア・ヘプタメロンは人気キャラでしたしね。


 兎にも角にも、こうしてティア・フェルメールが無事帰還した訳ですから、既に帰還用の【転移(テレポート)魔法陣】は確実に開かれています。

 そしてソフィア達は、エントリー時に運営から送られて来る【秘跡(クエスト)】のルールも当然知っていました。

 つまりソフィア達はタイム・リミットの99日(【オーバー・ワールド】では99秒)以内には間違いなく帰還出来る訳です。


 多少心配しましたが、さすがにソフィアも馬鹿ではなかったのですね。

 安心しました。


「環境フィールド設定?いいえ。ソフィア様は【微小機械(ナノ・マシン)】を【神位】の魔力波放射によって無力化してクリア条件を達成したのです。なので【ドゥーム】の自然環境は、まだ回復されていません。ソフィア様はウルスラ様とキアラの【祝福(ブレッシング)】で【ドゥーム】に草木を生やし何百年後かになるかわからないけれども、【ドゥーム】の環境回復を目指すのだと仰っていましたが?」

 ティア・フェルメールは言います。


「えっ?」


「えっ?」


 私とティア・フェルメールは、お互いに頭の中に……?……が浮かびました。


 その時……。


 管理規定(コード)9999……チーフ・ゲームマスター……【ドゥーム・マップ】で【生贄のトーテム】による儀式が行われましたが、捧げられた対価が【神竜(ディバイン・ドラゴン)】の生命ですので、ミネルヴァの分離体をスポーン対象としても宜しいでしょうか?


 運営のガイド音声が訊ねて来たのです。


 その運営からの通知は言葉というより、圧縮されたデータそのものでタイム・ラグがない0秒で伝わって来ました。


 ん?

神竜(ディバイン・ドラゴン)】の生命?

 つまりソフィアの生命という事ですか?

 何を言っているのか、全く意味がわかりません。


 チーフ……すぐに【共有アクセス権】で私の演算能力を使用して全力の思考加速をして下さい。


 ミネルヴァが、ほぼ0秒の超速【念話(テレパシー)】を送って来ます。


 私はミネルヴァに言われるまま、【共有アクセス権】でミネルヴァの演算能力を借りて全力の思考加速を実行しました。


 どういう事ですか?


 私は超速【念話(テレパシー)】でミネルヴァに訊ねます。


 これは世界(ゲーム)・システムからの緊急管理規定(コード)の使用許諾申請です……【ドゥーム】にいるソフィアさんが、【生贄のトーテム】に自分の生命を捧げて儀式を発動しました…… 世界(ゲーム)・システムは、ソフィアさんの生命の対価に見合うスポーン対象として、私の分離体を選定しました……ですが現在フィールド・ワーク中の私の分離体は、チーフと【盟約(コベナント)】を結んでいるので、【生贄のトーテム】による儀式のスポーン対象には出来ません……なので世界(ゲーム)・システムは、新たな【空アバター】を生成して、チーフと【盟約(コベナント)】を結んでいない私の分離体を【ドゥーム・マップ】内に送り込みたいそうです……これはシステム上権限保有者全員の裁可が必要ですが……現在世界(ゲーム)にアクセス可能な状態にある権限保有者はチーフと私だけです……私は許諾します……チーフも裁可か拒否か判断をお願いします。


 ミネルヴァは超速【念話(テレパシー)】で説明しました。


 大体の状況が把握出来ましたね。

 ソフィアの馬鹿が、また派手にやらかしてくれました。

【生贄のトーテム】に自分の生命を捧げるなんて、どういう了見なのでしょうか?


 ソフィアは【神蜜(ネクタール)】を1本持っています。

 なのでソフィアは……死んでも【神蜜(ネクタール)】で蘇生出来る……と高を括っているのかもしれません。


 しかし現在のソフィアは、脳内に共生するフロネシスなど当初ゲーム会社が想定していない不規則存在(イレギュラー)に変質しているのです。

 不規則存在(イレギュラー)のソフィアは、ゲーム会社が設定した【神蜜(ネクタール)】の効果では完全な形で蘇生出来る保証がありません。


 だからこそ、私は普段からソフィアに……不可抗力による避けようがない事ならば致し方ないとしても、【神蜜(ネクタール)】があるから大丈夫だなどと甘く考え、【神蜜(ネクタール)】の効果を過信して()えて自ら不必要な死亡リスクを取るような真似は絶対にしてはならない……と繰り返し言い聴かせて来たのです。


 にも拘らず、あんのヤロ〜は【生贄のトーテム】に自分の生命を捧げただと〜。

 本当にアイツは真性の馬鹿です。


 もしも蘇生が上手く行かなくて【神竜(ソフィア)】が今のソフィアで()くなってしまったら、まるで自殺ではないですか?

 今度の馬鹿には、さすがに呆れました。


 ソフィア……私は怒りましたからね。

 覚えておきなさい。

 色々と酷いですから。


 チーフ・ゲームマスター権限によって、システムの申請による管理規定(コード)9999の代理執行を許諾する。

 ID……531・SM・NK・TT・JP・CK。

 パスワード……GAME4LIEE12130091。


 私は取り敢えず、世界(ゲーム)・システムからの申請に裁可を与えました。


 チーフ……私の2体目の分離体が【ドゥーム】にスポーンしました……今から2体目の分離体と【盟約(コベナント)】を結べば【共有アクセス権】のプラットフォームに2体目の分離体も加わるので、パスを通じてチーフが【ドゥーム・マップ】に【転移(テレポート)】可能になります。


 ミネルヴァが超速【念話(テレパシー)】で説明します。


 世界(ゲーム)・システムが【生贄のトーテム】の儀式によってスポーンさせる時点では、誰とも【盟約(コベナント)】が結ばれていない(さら)の状態のミネルヴァの分離体が必要だった訳ですが、一度【生贄のトーテム】のでスポーンしてしまった後ならば、【盟約(コベナント)】を結んで【共有アクセス権】を構築してしまっても何ら問題ありません。

 そもそもゲームマスター本部に所属するミネルヴァを、ソフィアが【盟約(コベナント)】で従属させる事など不可能なのですから、横から【盟約(コベナント)】を()(さら)ったところで、誰からも文句を言われる事などないのですから。


 私は【ドゥーム・マップ】にスポーンしたミネルヴァの2体目の分離体と【盟約(コベナント)】を交わしました。


 すると【ドゥーム】にいるミネルヴァの2体目の分離体から【念話(テレパシー)】が届きます。


 チーフ……ソフィアさんが【生贄のトーテム】で儀式を行った理由は、【ドゥーム】の民達に穏やかな営みを享受させる事だったようです……つまり、これは【ドゥーム・マップ】の【秘跡(クエスト)】からの除外(オミット)を要請されたと考えられます……私の権限では判断出来ないので、チーフの判断をお願いします。


【ドゥーム】にいるミネルヴァの2体目の分離体が【念話(テレパシー)】で言いました。


 ん?

【ドゥーム・マップ】の【秘跡(クエスト)】からの除外(オミット)

 また、ソフィアの奴、訳のわからない事を……。


 わかりました……取り敢えず、そちらに向かいます。


 私は超速【念話(テレパシー)】で伝えました。


 私は【ドゥーム】にいるミネルヴァの2体目の分離体を目標(ターゲット)にして【転移(テレポート)】します。


 ・・・


【ドゥーム】。


 私が【ドゥーム】に到着すると、ティア・フェルメールが報告したように、【ドゥーム】は未だ地平線の彼方まで砂漠でした。

 やはりソフィアは、【神格者】の権限で環境フィールドをデフォルト設定に戻してクリア条件を満たした訳ではないようです。


 そして、この一連のトラブルの元凶であるソフィア(誰かさん)が、こちらに背中を向けてダッシュする姿が視界に入りました。


 おそらくミネルヴァの2体目の分離体から、私が来る事を伝えられて、慌てて逃げようとしているのでしょう。

 つまりソフィアも私が怒っている事は、薄々気が付いているのかもしれません。


 私は【短距離(ショート・レンジ・)転移(テレポート)】で瞬時に距離を詰め、ソフィアが着ている鎧の背中の襟刳(えりぐり)をガッチリと掴みました。


 逃がしませんよ。


 私が鎧を掴んでソフィアを持ち上げたので、彼女は地面から足が離れてトルクが0となっています。

 もう逃げられません。


「ソフィア。色々と話があります」


「ぎゃーーっ!」

 ソフィアは叫びました。

お読み頂き、ありがとうございます。

もしも宜しければ、いいね、ご感想、ご評価、レビュー、ブックマークをお願い致します。

活動報告、登場人物紹介&設定集もご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告には、訂正箇所以外のご説明ご意見などは書き込まないようお願い致します。

ご意見ご質問などは、ご感想の方にお寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

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[一言] お〜し〜お〜き〜だ〜べ〜!! 言っても再封印やら卵禁止やらゲンコツやらお尻ペンペンくらいしかないんだけども。いや十分だこれ(´・ω・`)
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