第1032話。へっぽこ軍団の終末世界旅行…33…ウルスラの成長。
本日2話目の投稿です。
【カラミータ】の古代都市遺構。
ソフィアとウルスラとトライアンフは【ガチャ】の景品を確認していました。
「【ヌアザの銀の義手】は、義手として使用出来る他、身体の好きな部位に装着して腕の機能を増やす事も可能。ほ〜う、なかなか面白い。つまり両手と【ヌアザの銀の義手】に剣を持てば、三刀流も可能な訳じゃ。ふむ、ソフィア流戦闘術の新たな必殺技を編み出せそうな気がするのじゃ」
ソフィアは言います。
「ねえねえ、ソフィア様。【魔導戦車】はわかるんだけれど、この【魔導機関砲のガン・ポッド】って何?【魔導機関砲】とは違うモノなの?何か形もアタシが知っている【魔導機関砲】とは違うけれど……」
ウルスラが訊ねました。
「【ガン・ポッド】とは、このまま飛空船の甲板や船底や舷側などにくっ付けて有線や無線で【魔導機関砲】の砲塔として使えるパッケージの事で、このケースの中に【魔導機関砲】が入っているのじゃ。例えば【ゴーレム】に【魔導機関砲】を装備する場合は【ゴーレム】の手で持たせて【ゴーレム】の【照準】で撃たせるか、あるいは別途照準器やレーダーなどと接続をせねばならぬ。【ガン・ポッド】には既に、そういう機能がケース内に同封してある故、【ゴーレム】の肩などに【ガン・ポッド】を固定して演算装置と同期させれば、すぐ使えるのじゃ」
「ふ〜ん。【ゴーレム】と言えば、この【超位ゴーレム製造習得のスクロール】が欲しいな〜。アタシのガーゴ(ミネルヴァから貸与された【オリハルコン・ガーゴイル】)は、チェルノボーグにやられちゃったから、その戦力補填をしないとだし。ソフィア様も、オラクルもヴィクトーリアも既に【超位ゴーレム】を造れるから要らないでしょう?」
「ふむ……まあ、そうじゃな。【妖精】族であるウルスラは攻撃威力値に大きな【弱体化補正】が掛かる故、攻撃手段として【ゴーレム】を造れるようになるのは、【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】としてもパーティ戦力の底上げにはなりそうじゃ。良かろう、この【スクロール】はウルスラに使わせてやるのじゃ」
「やった〜。【超位】の【ゴーレム】って事は、ミネルヴァ様に貰った【オリハルコン・ゴーレム】も造れるのかな?」
「あれは【神の遺物】の【ゴーレム】じゃから製造不可能じゃ。【超位】の【ゴーレム製造】という魔法は位階として難易度が高いという意味じゃ。もちろん【超位】の【ゴーレム製造】で造られた【ゴーレム】の方が、【高位】以下の【ゴーレム製造】で造られた【ゴーレム】よりは強いし数も沢山造れるが、造った【ゴーレム】の戦闘力や耐久力や汎用性が【神の遺物】の【ゴーレム】と同じになるという意味ではない。一撃だけ【超位級】の攻撃を行っただけで壊れたり、一撃だけ【超位級】の攻撃に耐えただけで壊れても、一応は【超位級】の【ゴーレム】じゃ。しかし【神の遺物】の【オリハルコン・ゴーレム】は外装が超硬度の魔法金属である【オリハルコン】で出来ておるから、【超位級】で何度も攻撃も防御も出来るし、機動力も高い。ウルスラが【超位】の【ゴーレム製造】を覚えて今ここで【ゴーレム】を造り出したとしても、オリハルコンを素材にしなければ、【オリハルコン・ゴーレム】は造れぬ。この辺りにある素材は砂じゃから、ここでウルスラが造れるのは精々が【砂岩・ゴーレム】じゃろう。【砂岩・ゴーレム】は脆い。【神の遺物】の【オリハルコン・ゴーレム】には到底太刀打ち出来ぬ」
「そっか……。まあ、しょうがない」
「ウルスラが回した【ガチャ】で出たのは、【投擲の能力習得本】か。う〜む、【妖精】の種族特性で攻撃力に【弱体化補正】が掛かるウルスラとは相性が悪い【能力】じゃ。我の【ガチャ】の景品と交換してやろうか?」
【能力習得本】とは、本の中に記された【能力】を習得出来るという、そのままのギミックを持つ本の事。
【投擲の能力習得本】は、投擲のステータスが最大値まで向上します。
実は、この景品もソフィアの豪運により最高の【能力習得本】が出ていました。
通常【能力習得本】は……【中位】まで……とか……投槍の投擲【能力】……というように位階や投擲武器の種類が限定されます。
しかしウルスラが持つ【能力習得本】は無制限。
つまり……あらゆる投擲物を扱う【能力】が種族限界値まで上がる……という事でした。
ソフィアとウルスラが手に入れた【能力習得本】は破格の効果を持つのです。
「ううん。これはアタシが回した【ガチャ】の景品だから、アタシが覚えるよ」
ウルスラは言いました。
「そうか……。そうじゃ。ウルスラよ、我は良い事を考えたのじゃ。【投擲の能力習得本】と【ペインフル・ストーン】を使用したウルスラの今後の戦闘のバリエーションじゃ。戦闘時、まずウルスラはトライアンフの口の中に隠れる。トライアンフは透明化して【敵性個体】の側面や背後に回り込む。その上でウルスラは隙を見て【敵性個体】を狙って【ペインフル・ストーン】を投擲する。ウルスラは攻撃威力値に【弱体化補正】が掛かる故、ダメージは期待出来ぬが、しかし【ペインフル・ストーン】の痛みを与えるギミックはダメージとは無関係に働く。【敵性個体】は【ペインフル・ストーン】を投げて来るウルスラにヘイトを向けるじゃろう?しかし、ウルスラはトライアンフの口の中にいる限り無敵じゃ。この方法なら、ウルスラはヘイトを引き付けて敵を撹乱する役割として、この上ない」
「なるほど」
「まあ、最強の我と一緒にいる限り、ウルスラが敵を撹乱しなければならぬような状況にはならぬじゃろうが、何が起きるかはわからぬ。戦い方の1つとして覚えておいて損はない筈じゃ」
「敵の背後に回って投擲して隠れるんだね?」
「そうじゃ。ウルスラ、早速【超位ゴーレム製造習得のスクロール】と【投擲の能力習得本】を使ってみよ」
ソフィアは促します。
「は〜い」
ウルスラは【投擲の能力習得本】を開きました。
すると【投擲の能力習得本】に書かれている文字が光の粒子に変わってウルスラの体内に吸収され、【能力習得本】も光の粒子に変わって消滅します。
ウルスラの【投擲能力】は種族限界値まで上昇しました。
ウルスラは続いてソフィアから譲渡された【超位ゴーレム製造習得のスクロール】も使用します。
【スクロール】の文字が光の粒子に変わりウルスラに吸収され、【スクロール】も消滅しました。
ソフィアはウルスラに【ペインフル・ストーン】を譲渡します。
ウルスラは【ペインフル・ストーン】を試投して、数十m離れた小さな的に百発百中の精度で命中させました。
【投擲】の【能力】がカンストすれば100m以上、種族によっては数百mもの正確な遠投が出来るのですが、小さなウルスラには数十mが限界です。
しかし、それでもソフィアが考えたヘイトを引き付けて撹乱する目的には適うので問題ありません。
ソフィアは満足そうに頷くと、試しに今回の【ガチャ】で入手した投斧の【トマホーク】をウルスラに投げさせてみました。
しかし、ウルスラの膂力では【トマホーク】は重過ぎたようで、上手く投げられません。
【トマホーク】は【神の遺物】なので使用者に合わせてサイズが変わるギミックがあるのですが、しかし、それでもウルスラには重過ぎました。
ウルスラは【能力習得本】の使用で【投擲】の【能力】はカンストしましたが、【膂力】のステータスは以前と同じなので、どうやら重量物は投擲出来ないようです。
その後、ウルスラは【ゴーレム製造】で【砂岩・ゴーレム】を造ってみました。
ウルスラのスペックでは、最大9体の【ゴーレム】が製造出来ます。
オリハルコンなどの高性能素材を予め【宝物庫】にストックしておけば、ウルスラは強力な【ゴーレム】兵団を使役可能になりました。
【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】にはソフィアという規格外の最強戦力がいるので、パーティとしては、あまり戦力は変わりませんが、ウルスラ個人としては相当に戦力が上がっています。
ウルスラは個体としての攻撃力が、近接も魔法も子猫が戯れ付く程度しかありません。
それが、強力な【ゴーレム】を9体も使役出来るようになったのですから雲泥の差です。
「ウルスラよ。そろそろ昼食じゃ。その辺りで切り上げよう」
ソフィアは【ゴーレム】の操作に熱中しているウルスラに声を掛けました。
「は〜い」
ウルスラが制御を止めると9体の【砂岩・ゴーレム】は砂に還って……バサーーッ……と崩れ落ちます。
ソフィアとウルスラとトライアンフは、【カラミータ】のシェルター内に戻りました。
・・・
昼食。
「ソフィア様。それは、一体?」
オラクルが困惑気味に訊ねます。
ソフィアは【ヌアザの銀の義手】をオデコに付けてスプーンを持たせ食事をしていました。
「これは【ヌアザの銀の義手】という【神の遺物】の機械の手じゃ。こうして両手に加えて【ヌアザの銀の義手】も同時に使えば食事が捗るのじゃ。我は賢いのじゃ」
「ですが、先程から食べ物が口に入っておりませんが……」
オラクルは【ヌアザの銀の義手】の制御を誤って食べ物で顔を汚しているだけのソフィアを見て苦笑いします。
「感覚が中々難しいのじゃ。しかし、訓練をすれば上手に扱えるようになるのじゃ。そうなればソフィア流戦闘術三刀流という必殺技が……。あーーっ!もーーっ!煩わしいっ!」
ソフィアは癇癪を起こし、オデコの【ヌアザの銀の義手】を取り外して投げ捨てました。
「ソフィア様。その機械の手はイメージした通りに動かせるのですか?」
「うむ、そうじゃ。しかし、これを動かそうとすると、普段の手の感覚とは違う故難しくて、結局は両手と一緒には使えぬ。このアイテムはガラクタじゃ」
「確かに両手と一緒に使うとなると大変そうでございますね。しかし怪我などで腕を失った者が義手として使うならば素晴らしい性能でございます。それに私に少し考えがあるのですが、お借りしても構いませんか?」
「うむ。そんなポンコツは要らぬ。オラクルに何か使途があるなら、自由にして構わぬのじゃ」
「ありがとうございます。では、こう致します」
オラクルは【ヌアザの銀の義手】を拾ってトライアンフの頭に装着します。
「にゃ〜」
トライアンフは頭に付けられた異物に不快感を示しました。
「トライアンフ。このペンを【ヌアザの銀の義手】で持って、この紙に文字を書いてみなさい。あなたは文字を理解していますね?」
「にゃ〜」
トライアンフは紙に文字を書き始めます。
トライアンフは綺麗な文字で……この変な機械を外して下さい……と書きました。
「ふむ。トライアンフの猫の手では上手くペンが扱えぬが、本来【知性体】であるトライアンフは知性が高く言語も文字も理解しておるのじゃ。トライアンフの感情は何となくわかるが、トライアンフと細かな情報をやり取りするにはパスが繋がるウルスラに通訳を頼まねばならぬ。じゃが、【ヌアザの銀の義手】があれば、トライアンフは自分で意思表示が出来る訳じゃな?なるほど良い考えじゃ」
「もしもソフィア様が必要ないのでしたら、この【ヌアザの銀の義手】は以後トライアンフに使わせてみては如何でしょう?」
「良かろう。異存ないのじゃ」
こうして【ヌアザの銀の義手】はトライアンフが自分の【収納】内で管理して、何か意思表示や情報伝達が必要な際に文字を書く目的で使用する事になったのです。
ただし頭に【ヌアザの銀の義手】を装着するのは嫌だったらしく、トライアンフは尻尾に装着して使用していました。
・・・
昼食後。
オラクルとヴィクトーリアとティアとキアラは、午前中同様に【ドゥーム】の首脳達との会議に参加します。
ソフィアとウルスラとトライアンフは、地上で少し狩をしてみる事にしました。
ウルスラの【ゴーレム】制御の練習の為です。
ウルスラは【スクロール】の使用によって【ゴーレム製造】は種族限界までステータス・カンストしましたが、【ゴーレム】の制御は熟練値が低いままなので、相応に訓練が必要でした。
ソフィア達は【カラミータ】のシェルターの安全に影響がない距離まで移動して、【誘引の角笛】で魔物を呼び寄せ狩を始めます。
ウルスラは【スワン・クローク】を着たトライアンフに跨り、右手に【ペインフル・ストーン】を持ち、左手に【テュルソス】を持ち、【ゴーレム製造】を詠唱し9体の【砂岩・ゴーレム】を造り出しました。
ウルスラは【テュルソス】を振るい【砂岩・ゴーレム】に【超位バフ】を掛けます。
間もなく【サンド・ワーム】が集まって来て砂の中から飛び出しました。
ウルスラは【砂岩・ゴーレム】を操って、数頭の【サンド・ワーム】を倒します。
最高レベルの【支援職】であるウルスラが強化した【砂岩・ゴーレム】は砂で出来ているとは思えない程に高い戦闘力を持っていました。
また、【サンド・ワーム】が【砂岩・ゴーレム】に攻撃を行おうとすると、巧みにウルスラが【ペインフル・ストーン】で牽制するので、【サンド・ワーム】もヘイトが散らされて目標が絞れず混乱している様子。
ウルスラが元来持つ【強化補正】と、新しく覚えた【ゴーレム製造】と、【ペインフル・ストーン】によるターゲット取りの相乗効果は高く、また【スワン・クローク】で飛べるようになりウルスラの【装甲運搬機】として能力が上がったトライアンフとの相性も良く、ウルスラは飛行能力を持たない【敵性個体】相手なら、かなり戦えるようになっています。
ソフィアはウルスラの成長を満足気に見守っていました。
こうして夕食時までウルスラの訓練は続いたのです。
終末まで残り90日……。
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