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第1017話。へっぽこ軍団の終末世界旅行…18…【ディストゥルツィオーネ】。

本日2話目の投稿です。

【カラミータ】。


 朝。


 ティアとトライアンフが起床して身繕いを済ませた頃、ソフィアとウルスラが目覚めます。

 ソフィアとウルスラが着替え終わると朝食が始まりました。


 オラクルとヴィクトーリアが昨晩グレモリー・グリモワールの著作……【ゾンビ】でもわかる【秘跡(クエスト)】攻略法……を元に(まと)めたレポートがソフィアに提示されます。


「なぬっ!メディア・ヘプタメロンとは【秘跡(クエスト)・ボス】なのか?」

 ソフィアが驚きました。


「グレモリー様の著作によれば、ルートによってはそうなっております」

 オラクルは説明します。


「ふ〜む。じゃが、我らがメディアの側に付けば、ボスはチェルノボーグという【上位悪魔(アーク・デーモン)】なのじゃ。シドニーの話を聞くと、メディアは【カラミータ】の庇護者らしい。なるべくならメディアとは敵対したくないモノじゃ」


「【フレッシュ・キューブ】なるモノの扱いについてメディア・ヘプタメロンと見解の相違を来すと敵対するようです」


「その【フレッシュ・キューブ】とは何じゃ?」


「わかりません。【インセクト・キューブ】という昆虫や蟲魔物を原料とする高タンパク食が存在しますが、それと同じようなモノだと仮定するなら、新鮮(フレッシュ)な素材を使用した立方体(キューブ)状の食べ物という解釈が出来るのではないかと思われます」


「ふむ。その【フレッシュ・キューブ】の生産に関して、メディアは反対の立場なのじゃな?それを我らが賛成すると、メディアから敵視される、と?」


「どうやら、そのようです」


「ふむ。まあ、【フレッシュ・キューブ】というモノには気を配っておこう。で、【カラミータ】・【ロヴィーナ】連合軍と、【ディストゥルツィオーネ】の戦争じゃが、これは防げるとするなら防いだ方が良いのじゃな?」


「はい。戦争の原因が何かは不明ですが、どうやら【微小機械(ナノ・マシン)】を改造する事で【ドゥーム】の環境を回復出来れば、戦争は回避出来るようです」


「まあ、そうじゃろう」


「ですが、私達の手持ち物資ではグレモリー様が記述している方法で【微小機械(ナノ・マシン)】を改造する事は不可能です。だとするならグレモリー様の著作によれば戦争回避が難しいようで、何か他の手立てがないとすると困難な状況になると思われます」


「戦争の原因は、ほとんど利害対立じゃ。じゃから【微小機械(ナノ・マシン)】を改造して【ドゥーム】の環境を回復出来ないとしても、【カラミータ】・【ロヴィーナ】連合軍と【ディストゥルツィオーネ】による利害関係を我らが間に入って調整する事は可能かもしれぬ。我らは普通のプレイヤーではない。【神格者】としての権威が役立つかもしれぬ」


「であれば良いのですが……」


「まあ、何とかなるじゃろう。ノヒトは言っておった。【創造主(クリエイター)】はクリア出来ぬ【秘跡(クエスト)】は発給しない……とな。じゃから、何かしら現有リソースで、この【秘跡(クエスト)】をクリアする方法はある筈じゃ。グレモリーが不可能だと記述していても、それは()()()()という前提があるのじゃ。グレモリーは、この【秘跡(クエスト)】を我らが挑むとは想定しておらぬ。ならば守護竜たる我にならブレイク・スルーが可能やもしれぬのじゃ。とりあえず今日【ディストゥルツィオーネ】に行ってみて新しい情報を収集してみてから対応策を考えようではないか」


「畏まりました」


 ソフィア達【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】は【避難小屋(パニック・ルーム)】を【収納(ストレージ)】に回収して、来客用の部屋を出ました。


 ・・・


【カラミータ】の格納庫(ハンガー)


 ソフィア達【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】を大勢で見送れる場所という事で、歓迎式典でも使われた【格納庫(ハンガー)】に一同が勢揃いしました。

 シドニー女王から、昨日ソフィア達から【カラミータ】の子供達にスイーツとウサギちゃん絵皿が贈られた事に感謝の意が伝えられます。


「ロズリンよ。其方らは、ここで別れても良いのじゃぞ?これから向かう【ディストゥルツィオーネ】は100年も交流がない場所なのじゃ。もしかしたら友好的ではないかもしれぬ。ロズリンは【ロヴィーナ】の王位を継ぐ皇太王女じゃからして、万が一があっては大変じゃ。危険かもしれぬ(ゆえ)、【ディストゥルツィオーネ】へは我らだけで行っても差し支えあるまい?」

 ソフィアは【ロヴィーナ】のロズリン皇太王女に言いました。


「お気遣い感謝致します。しかしながら私達は、父王ロデリック・ロヴィーナより……身命を賭して、ソフィア達の案内役の務めを果たせ……と命じられております。これは王命でございますので、お供させて頂きます。もしも、この身に何かあっても、それは元より覚悟の上でございます。どうぞ【ディストゥルツィオーネ】にお連れ下さいませ」

 ロズリン皇太王女は決然として言います。


「そうか。覚悟の上であれば良いのじゃ……」

 ソフィアは頷きました。


 ソフィアはオラクルとヴィクトーリアから報告された……【カラミータ】・【ロヴィーナ】連合軍と【ディストゥルツィオーネ】の戦争……について伏せています。

 何故なら、それを伝える事で余計に【ディストゥルツィオーネ】への敵意が掻き立てられる事もあり得るからでした。

 少なくとも現時点では、【ロヴィーナ】にも【カラミータ】にも……【ディストゥルツィオーネ】に戦争を仕掛けてやろう……という意思はありません。

 わざわざ、それを焚き付けて藪を突いて蛇を出すまでもない……というのがソフィアの判断でした。


 しかし、【ディストゥルツィオーネ】側から【カラミータ】や【ロヴィーナ】に攻撃を仕掛けてくる可能性はあり得る(現状では、そうなる公算が高い)ので、ソフィアは【ロヴィーナ】と【カラミータ】の上空に【スパイ・ドローン】の【キー・ホール】を張り付けておき、何か異変があれば直ぐに戻って対応出来るようにはしています。


「では、ソフィア様。また後日」

【カラミータ】のシドニー女王は言いました。


「うむ。メディア・ヘプタメロンが【カラミータ】に戻る予定の2日後に、また寄る予定じゃ。その時には宜しく頼む」

 ソフィアは言います。


「はい。お待ち致しております。ロズリンも気を付けて……」


「シドニー女王陛下。お心遣い痛み入ります」

 ロズリン皇太王女は公式の場所なので、叔母様ではなく女王陛下呼びで謝意を伝えました。


「では、行くぞ」

 ソフィアは言います。


 一同は頷きました。


 ソフィア達は【ディストゥルツィオーネ】上空に滞空する【キー・ホール】目掛けて【転移(テレポート)】します。


 ・・・


【ドゥーム】東方【ディストゥルツィオーネ】上空。


「ふむ。古代【ディストゥルツィオーネ】の都市遺構か……」

 ソフィアは眼下の廃墟を見下ろして言いました。


「ソフィア様。言い伝えによると、【ディストゥルツィオーネ】のシェルターも【カラミータ】と同様に都市の地下にございます。シェルターへの入口も【カラミータ】同様に中央神殿の建物内にございます」

 ロズリン皇太王女が言います。


「わかった。とりあえず、都市外の目立たぬ場所に降りて【避難小屋(パニック・ルーム)】を設置し仮拠点とする。皆は、一旦そこで待機じゃ。安全が確認出来るまでは、先ずは我1人で【ディストゥルツィオーネ】の中に向かう」

 ソフィアが言いました。


 一同は頷きます。


 ・・・


 ソフィア達は、【ディストゥルツィオーネ】から北方に向かった先に砂丘を見付け、【ディストゥルツィオーネ】側からは死角となる反対側に降り立ちました。

 ソフィアとオラクルとヴィクトーリアは、砂の地面の広範囲を【圧縮(コンプレッション)】で固め、仕上げにソフィアの【神位バフ】を掛けて地中からの【ワーム】の襲撃を防ぎます。


 そして、ソフィアが【収納(ストレージ)】から【避難小屋(パニック・ルーム)】を2軒取り出して並べて設置しました。

 1軒の【避難小屋(パニック・ルーム)】は今日まで、ずっと使用しているモノで、もう1軒はストックしてあった生活用品などが入っていない空のモノです。


 使用している【避難小屋(パニック・ルーム)】にソフィア以外の【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】のメンバーが入り、ストックの【避難小屋(パニック・ルーム)】にロズリン皇太王女と、スチュアート卿と、タルボット准将が入りました。


 オラクルが空の【避難小屋(パニック・ルーム)】の冷蔵庫に一応食料品を移し入れます。

 水は【避難小屋(パニック・ルーム)】に備え付けの蛇口を捻れば幾らでも出ました。

 なので、手狭な【避難小屋(パニック・ルーム)】で閉所恐怖症などにならなければ数日なら問題なく篭城可能です。


「オラクル。行って来る。安全を確認したら迎えに来るのじゃ」

 ソフィアは言いました。


「はい。お気を付けて行ってらっしゃいませ」

 オラクルは言います。


 ソフィアは頷いて【ディストゥルツィオーネ】の都市遺構に向かいました。


 ・・・


【ディストゥルツィオーネ】の都市遺構。


 ソフィアは、古代【ディストゥルツィオーネ】の廃墟の中をテクテクと歩きます。


 ふむふむ……【マップ】によると地下に人種の反応があるようじゃ。


 ソフィアは【ディストゥルツィオーネ】の中央神殿に入り地下階層に降りました。

 ここは、まだシェルターではなく古代から存在する地下構造です。


 ロズリン皇太王女から教えられたシェルターの入口の方向を目指して歩いて行くと……。


 ほほ〜う、【魔力探知(ディテクション)】を使っておるな。

 つまり我の侵入には気付いておる訳か……。

 いきなり攻撃して来ないという事は、とりあえず話は出来そうかのう。

 ならば……。


 ソフィアは【認識阻害(ジャミング)】の指輪の効果を切り、【神竜(ディバイン・ドラゴン)】の膨大な魔力を発散しました。

【ディストゥルツィオーネ】に【魔力探知(ディテクション)】が行える者がいるなら、ソフィアが規格外の絶対強者である事を理解するでしょう。


「頼もうっ!我が名はソフィア。【ドゥーム】とは異なる世界より来た【神竜(ディバイン・ドラゴン)】である。【創造主(クリエイター)】から与えられた……【ドゥーム】を救え……という使命を果たさねばならぬ。じゃからして【ディストゥルツィオーネ】に情報を得に来たのじゃ。この【ドゥーム】を救う為に役立ちそうな情報があれば教えて欲しい。【ディストゥルツィオーネ】の民を害するつもりはない」

 ソフィアは言いました。


 しばらく静寂が続きます。


 ソフィアは待ちました。


【ディストゥルツィオーネ】の者達は【魔力探知(ディテクション)】でソフィアの魔力量を計測しています。

 あり得ないソフィアの魔力量から逆算すれば、仮にソフィアが敵対した場合、全く抗する事が出来ずに【ディストゥルツィオーネ】が全滅する事が理解出来る筈。

 ならば合理的に考えればソフィアをシェルターに迎え入れて望み通りに情報を与えるしか【ディストゥルツィオーネ】の者達に選択肢はありません。


 おそらく【ディストゥルツィオーネ】の者達は、現在緊急協議を行っているのでしょう。

 そして、その協議内容は……ソフィアを【ディストゥルツィオーネ】のシェルター内に受け入れるか(いな)か?


【ディストゥルツィオーネ】の者達は【魔力探知(ディテクション)】の結果から……ソフィアのスペックなら力尽くでシェルターに押し入る事も可能である……と理解している筈。

 合理的判断をするならば、【ディストゥルツィオーネ】の者達は……ソフィアを受け入れる……という結論に達するでしょう。


 ならば待とう……と、ソフィアは考えました。


 ……が、5分経っても10分経っても音沙汰なし。

 15分経って、さすがに()っかちのソフィアは苛々して来ました。


 とはいえ、ここでキレては平和的で穏便な邂逅(かいこう)を果たし【ディストゥルツィオーネ】から有益な情報を得ようとするソフィアの思惑が台無しになります。

 ソフィアは【ディストゥルツィオーネ】中央神殿の地下にチョコナンと座り、【収納(ストレージ)】からハンバーガーを取り出して食べ始めました。

 食べ物で気を紛らわせ気分を落ち着け、焦れる気持ちを何とか必死に押し殺そうという考えです。


【ディストゥルツィオーネ】の者達にとっても、突然とんでもない戦闘力を持ったバケモノがシェルターに来訪して情報提供を呼びかけて来たのですから、今頃蜂の巣を突いたような騒ぎで善後策を協議している最中である事は想像に難くありません。


 やがて30分が経った頃、状況に変化が現れました。

 プツッ……というスピーカー・ノイズが響いたのです。


「異界よりお越しの【神竜(ディバイン・ドラゴン)】のソフィア様。私は【ディストゥルツィオーネ】の評議会代表ヴァレーラでございます。【ドゥーム】を救う為に情報をお知りになりたい……との事、承りました。しかし1つ条件……と申しますか、お願いがございます。お聞き届け頂けますでしょうか?」

【ディストゥルツィオーネ】の評議会代表なヴァレーラ女史(ソフィアは声から女性と判断した)はスピーカーで言いました。


「うむ。願いとやらを言ってみよ」

 ソフィアは言います。


「【ディストゥルツィオーネ】に所属する者には、一切危害を加えないとお約束して下さるなら、お迎え致しましょう」

 ヴァレーラ評議会代表は言いました。


「良かろう。我や我の身内に対して、【ディストゥルツィオーネ】も危害を加えぬと約束するなら、我らも【ディストゥルツィオーネ】に所属する者には危害を加えぬと約束するのじゃ」


「わかりました。では、双方危害を加えないという約束の元、【ディストゥルツィオーネ】にお迎え致します。どうぞ正面にお進み下さい」


 するとソフィアの正面方向の壁が消えて階段が現れたのです。


「礼を言う」

 ソフィアは地下に続く階段を降りて行きました。

お読み頂き、ありがとうございます。

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・・・


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[一言] チョコナンって聞くとなんとなく美味しそうな食べ物をイメージしてしまう……w
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